チヨは表情を硬くし、手甲のある辺りを触る。
「これから、始まるんだね」
「そうだ。だがその前に、作戦を練らなきゃいけない。以前挑んだ時はどう負けた?」
「ボクに殺す気が無いのがわかったとたん、妖術の炎で囲み始めた。それと、単純にボクに武器が無かったのが敗因かな」
「種族の王に徒手空拳で挑んだのか、アホだな」
チヨがぶーっと頬を膨らませる。
しかし、意外と簡単そうだ。
今のチヨは殺気に溢れているし、武器だって持っている。
妖術だって、俺かフレイヤが邪魔をすればなんとかなるだろう。
「行動は夜。それまでに作戦を練るぞ」
「わかった。シェイ、フレイヤさん、よろしくね」
「私は主様についていくまでです。自惚れないように」
とりあえず方針が決まったので、俺はチヨの頭に手を乗っけ、ぐしぐしと撫でる。
「…?どうしたのシェイ、くすぐったいよ」
「んー、チヨ、良いことを教えてやる」
「良いこと?」
俺は言いたかったが中々言えなかったこの言葉を言うことにした。
「追い込まれたキツネはドラゴンより凶暴なんだよ」
あぁすっきりした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
フクロウの声が聞こえる。
そろそろ出発時か。
「準備はいいな、お前ら」
「バッチリだよ!」
「こちらも、出来ています」
服装こそ変わってないものの、マスクや手袋など、所々が変わったフレイヤ達。
俺はその返事で満足すると、窓を開けた。
部屋の灯りを消し、窓に足をかける。
「行くぞ。3.2.1…」
窓から身をのりだし、周りに警備がいないことを確認。
そして…。
「0!」
一斉に窓から飛び出した!
三人とも違う家の屋根に飛び乗り、そのまま走る。
向かうは少し離れたところにある大きな屋敷。
そこに族長全員がシェアハウスしているらしい。
屋根を跳び、軽々と屋敷についた俺達は、屋敷の屋根に飛び乗る。
もちろん、玄関から『こんにちは、死ね!』などというバカな事はしない。
一人一人、じっくりといたぶっていくのだ。
「まずはフレイヤの影と俺の影を繋いで、チヨと二人で降りる。その後は…」
「覚えています。私が下へ跳べば、主様がキャッチしてくださると」
「よし。行くぞ、【シャドウ・バインド】」
一回目もロープとして使った【シャドウ・バインド】で下へするすると降りていく。
鍛練を積んだお陰か、前回と違って影の伸縮は自由自在だ。
チヨを抱えて屋根のベランダに着地し、チヨを降ろしてから跳んできたフレイヤを下で受け止める。
窓の内側のカーテンの影を操り、鍵を抜く。
「良いな。この部屋、影があるってことは人がいるって事だ。フレイヤ。入ったら直ぐに制圧しろ」
「承知しました」
窓に手を添え、勢いよく開けて中に転がり込む。
刹那、白い閃光が部屋を走り、俺達の侵入に驚いていた虎獣人の女性を押さえつけた。
俺はすぐさま持ってきた布で口を塞ぎ、部屋の状況を確認する。
この女以外に人はいないようで、床に落ちた本を見るに読書でもしていたのだろうか。
「むむむーむむー!?」
「フレイヤ、そのまま少し待て。【シャドウ・バインド】」
虎獣人の体が拘束される。
チヨはマスクをしっかりとつけ直し、荒ぶる呼吸を落ち着かせていた。
なんにせよ、まずは
『追い込まれたキツネはドラゴンより凶暴』。
え?なになに?パクリ?パロディ?
うるせぇメタルギア好きなんだよ!