影法術士は託す
「アルテイル様。儀式の準備ができました」
白い髪を長く垂らした女が話しかけてくる。
この職業を持って長くになるが、もう潮時か。
「わかった。連れていってくれ」
この通り、今の私は老人のように弱々しい。
飯を食らうにも、配下であるターナの介護が必用だ。
能力もほとんどが機能を停止している。
「君は、怖くないのか?儀式がおわったら、君も朽ちるんだぞ」
「今まで、アルテイル様に十分に可愛がって頂きました。恐怖など欠片も浮かびません」
私のベッドを押すターナに手を伸ばす。
私の配下は年をとらない。胸のはりだってそのままだし、髪もツヤツヤのままだ。
「アルテイル様。どうかそのような顔をしないでください。私はちゃんとここにいますから」
私だって死にたくない。
けれど、全盛期よりもすっかり衰退してしまった私では、先代の目標は達成できない。
やるしか、ないのだ。
「ありがとう、ターナ。愛している」
「もったいなきお言葉」
ターナが歩みを止めて顔を寄せ、口づけをしてくる。
幸せだ。
幸せ故に、離したくない。
思えば、ずっとこの職業に振り回されてばかりだったな。
ターナはまた歩みはじめ、やがてギィと扉の開く音がする。
「アルテイル様、部屋につきました」
「…ついに来たか。始めろ」
ターナが引き継ぎの祝詞を紡ぐ。
あれが完成したら、私やターナ、他の配下が朽ち、
「────影の名におき、次へと還さん───」
やっぱり、ターナは詠唱が上手だ。待たせてくれない。
あぁ、どうか。
次の後継者は、もっと自由に生きられますように──────
「おい、シェイ!」
「えっ、なに…?ヒュウリ君」
僕は今、長い長い列に並んでいる。
お店かと問われれば、そうじゃない。
「お前、自分がなんの職業になると思う?俺様はもちろん、勇者だぜぇ!」
「無理だよ、【勇者】は世界に一つの職業なんだから」
「んだよぉ、つれねぇなあ」
そう、僕らの職業を決める列だ。
12歳になると、職業が決められる。
【剣士】、【魔術師】、【狩人】…
さらには【大工】や【調合術士】、なんて細かい職業まである。それらは、僕らの未来を形作る土台となる。
自分がどんな職業に選ばれるか、みんなワクワクしている。
「んで、お前は、どんなのが良い、シェイ?」
「そうだなぁ、【魔術師】とか…【獣使い】とか?」
「見事に後方タイプだなぁ。っと、来た来た、俺の番!」
普段は協会にいる【聖女】の職業を持つお姉さんが、神様に祈って職業を開花させてくれる。職業が開花すれば、自分のステータスの確認ができるようになり、そこで職業を知る訳だ。
「ありがとうございます!さぁて、どんな職業かなっと」
「さてお次は~?お、シェイ君だぁ」
ヒュウリ君がどき、僕の番だ。
「よろしくお願いします」
「まっかせて?『神よ、導きを』…」
そうして、僕も職業を得られた。列から抜け、ステータスを開く。
あれ?職業
聞いたことがないなぁ。
「おうシェイ、どんなだった?」
「影法術士だって。なんだろう、これ?僕、知らないんだけど」
「お姉さーん!シェイが変な職業開花したー!」
すぐにヒュウリ君がお姉さんを呼びにいく。
「どうしたの、シェイ君?」
「【影法術士】ですって」
「え…それは、私にも分からないわねぇ。もしかして、新種かな?」
職業は無数にあって限界はわからない。どこかの【学者】さんは新種の職業があっても、おかしくないと言ってた。
「げぇー!マジかよシェイ、新種!?スキルは?何使えんの!?」
「え、えーと…うわ、見たことない。
「すげぇ!」
僕はワクワクしていた。
この先、どんな未来が待っているのか。
良い未来だと良いな。
長いのにエッチシーン無くてスマソ。たぶんしばらくないから過度な期待しないでぇ