まずは一人、チヨの復讐相手を拘束できた。
目の端に涙をため、虎獣人の女性はこちらを見ている。
「どうする。今すぐ殺るか、情報を引き出すか」
「…まずは情報が欲しいかな」
「わかった。フレイヤ、警戒はしておけ」
今の俺達は影魔法を使い、顔の辺りを暗く見えるようにしているので、相手からは俺達の顔は確認できない。
フレイヤが虎獣人の首に剣を添えたのを見て、ゆっくりと口の拘束を外す。
「き、君たちは、だれ?」
「言う義理はない。お前の命はこっちが握っている。こちらの質問に答えろ」
「…わ、わかった」
「まずは、だ。俺達はお前らに恨みをもっている。理由はわかるか?」
女性は首をふるふると横に振り、そしてチヨの尻尾を見ると目を見開いた。
「そ、それって」
「その通り。コイツは狐獣人でな。お前らの判断で、村を追い出され、さらには奴隷として売り飛ばされた」
「わっ、私は、知らない、命令してない」
「そっか。あくまで、他の長のせいだって言うの?」
チヨは虎獣人の女性の瞳を覗く。
顔を隠すといっても影が濃くなるだけなので、近づくとバレるのでやめて欲しいのだが。
こくこくと首を縦に振る女性。
「でもさ、同意はしたんでしょ?」
「そ、それは…」
「君のせいで。君のせいでボク達は…。自分が何をしたか、わかってないの?」
「き、狐獣人には長がいない!でも、長ができたらこの里を乗っ取られるかもしれないでしょ?」
「そんな事を理由に?なにもしてない狐獣人を売ったの?」
チヨは手甲からシャキンと鉄爪を取り出し、フレイヤの剣をどかしてそれを首に押しやった。
女性は冷や汗を流し、懇願するような目で見てきた。
…この獣人は、戦闘に慣れていない、言わば頭脳タイプだ。
そうでなければ、チヨがフレイヤの剣をどかしたタイミングで誰かを押し退けて悲鳴を上げるくらいはするはずだ。
「おい、時間だ。どうする?」
「ひっ、そ、そんな、私はちゃんとしゃべったはず…」
「…ごめん、腰が引けちゃうや。最初は、君がやってよ」
時間的に、そろそろ次へいかないとまずい。
…ってか、なんのために来たんだ。
俺は別に恨んでない人を殺したくはないぞ。
チヨは爪を外し、こちらをみてくる。
その瞬間をチャンスと見た女性は息を吸い込み──
「誰か助け──────」
一閃。
首が宙を舞う。
「ただし、危害を加えるのなら容赦はしない」
俺は近くに立て掛けてあったショーテルのレプリカの影で剣を作り、あっさりとはね飛ばした。
そのままステータスを確認する。
やはり、レベルが上がっていた。
…ん?【影魔法】の使用可能魔法の欄に、新しい魔法が追加されている。
俺は位置を調整し、俺の影が死体に重なるようにする。
「【
魔法を発動すると死体は俺の影に溶けるように消えていき、体を巡っていた俺の魔力が減った。
もう一度【影空】を発動させると、影から女性の死体が、ご丁寧に首が繋がった状態で出てきた。
収納魔法か、これは便利だな。
「さて、【影空】…。ん?どうした、チヨ?」
「う、うん?大丈夫だよ、次はちゃんとやるから」
…あぁ、なるほど。
多分チヨは人殺しを見たことがないんだ。
俺は一回目の時に人を殺った勇者を見ているし、人型のモンスターもたくさん殺ったので抵抗はなかったが。
「悪い。ちとショッキングだったな」
「…ううん。もともとやろうとしてた事だし、このくらい」
「そうか。じゃあ次行くぞ」
どうにももやもやした気持ちを引きずりながら、俺は次の獲物の所へと行くことにした。