「う、ううん…?」
「お、起きたか?」
後ろからチヨの声がする。
振り向いてチヨの方を見れば、チヨが起き上がっている。
「う、うん。ボク、結構寝て…た……ッ!?」
一度寝て思考がクリアになったことで
と、そこであるはずの無い毛布に気付いたようだ。
「これ、シェイが…?」
「あぁ。風邪を引かれたら困るからな」
「そっか。ありがとう…」
俺は微笑し、外套の腹ポケットに手を突っ込んでチヨの元へと向かう。
「月を見てたの?」
「あぁ。今夜は月が良く出ていたからな」
先程まで、窓側で月を見ていたのだが、大変良いものだった。
満月に勇者の顔が鏡のように浮かび上がって来て、思わず暗い笑みが溢れて来た程だコンチクショウメ。
「ねぇ、あまり覚えてないんだけどさ、【特上】ってどういう意味?」
「うーん、そうだな…。気に入った女をそう呼んでいるだけだ」
「それは…フレイヤさんも【特上】なの?」
「あぁ。最初の特上だ」
「そっか。フレイヤさん、優しいもんね」
優しい?セックスの時以外無表情であまりわからないが、女同士なにか通じる物があるのだろう。
「さて、そのフレイヤも待ってる事だし、早いところ帰るか」
「あっ、ちょっと待って」
「ん?なんだ?」
「父さんの部屋に行かせてよ」
チヨの父の部屋…?
何があるのかは知らんが、まぁ特に急用もないので、それぐらいは良いだろう。
近そうだし。
「あぁ、良いだろう。どこだ?」
「この部屋の隣」
近ぇ。隣かよ。
「んじゃあ、いくか」
「うん。よっこらせ…ふやあっ!?」
ベッドから勢いよく飛び降りたチヨは、急に体を震わせると股に手を伸ばした。
「さっきの…漏れて…!?」
「あー、うん。悪い」
どうしようもないのでとりあえず謝り、チヨを肩に抱えて部屋を出る。
隣の部屋のドアを開ければ、ボロボロの机や椅子が並んでおり、元は質の良い物だということが素人目でもわかる。
「ここが、チヨの父さんの部屋か?」
「うん。ちょっと、よりたくてさ」
チヨを降ろし、俺は俺で部屋を物色する。
何か、地図や面白そうな物があれば良いのだが…っと、これは?
机の奥に何かがしまってあり、引っ張り出して見れば赤や金で装飾された、古ぼけた日記帳のようだった。
チヨの父さんの最期がなんとなく気になったので、最後のページを開く。
『この手記を読んでいる人へ。娘を頼む』
…バカな人だ。
これを読んでいるのが他の獣人だったらどうするつもりだ。
だが、好感は持てる。
日記を机の上に丁寧に置き、目を閉じて冥福を祈る。
「娘さんは俺が貰いました。幸せかどうかはわかりませんが、悲しませるような事はなるべくしません」
「…シェイ?」
「どうか、安らかな眠りを」
そこで目を開き、チヨの方を向く。
「さて、もう良いか?そろそろフレイヤが待ちくたびれるぞ」
「…そうだね。行こうか、シェイ」
そう言って部屋を出たチヨが、階段から飛び降りた拍子に再度股から精液を漏らすのは2分後の事だった。