影法術士。
それは、僕の職業だ。
「魔法か!おっし、シェイ!俺と組もうぜ!」
「あれ?ヒュウリ君の職業はなんだったの?」
「ふふん!聞いて驚け!【ウェポンマスター】だ!」
「ウェポンマスター!?全部の武器が難なく使えるって有名な、あの!?」
ヒュウリ君は、僕が思うなかで一番強い【ウェポンマスター】の職業に就いたらしい。
「おうよ!だから、シェイ!いっしょにさ、冒険しようぜ!」
そう言ってくれて、すごく嬉しい。
でも、未知の職業。しかも、今まで発見されてない、【影魔法】が使えるんだよ?
そんなの、きっと…
「ヒュウリ君。ごめんねぇ、シェイ君なんだけど」
「?どしたんすか、聖女様」
「勇者君と、一緒に行かなきゃならないの」
その瞬間、ヒュウリ君から光が消えた。
「ごめんねぇ、義務なの」
「……。ははっ!そうだよな!シェイ!頑張って、魔王倒してこいよ!んで、空きの時間で俺と組もうぜ!」
ヒュウリ君は、そうカラカラと笑っていた。
「…うん。絶対に、強くなって帰ってくるよ」
「約束だぞ?えーと…【影法術士】!」
「【ウェポンマスター】」
互いにそう言って、拳を合わせあった。
それから、僕の服が渡された。
勇者の仲間がみすぼらしい服装だと、格好がつかないから、だそうだ。
「聖女様?これ、ちょっと大人っぽすぎる気が…」
「似合う似合う♪さぁ、勇者君とのご対面へ、れっつごー!」
黒い外套に黒革のブーツ。黒い籠手と黒い短剣。
まさに【影法術士】って感じなんだけど、元の黒い髪と合わさって、なんかこう…恥ずかしい。
それで、出会った勇者様は優しい人だった。
「君が、未知の職業を開花させた人?」
「そうです!まだ戦闘経験は無いですが、よろしくおねがいしみゃっ!?」
「ははは、噛んじゃったね。そんなに緊張しなくても良いよ」
そんな訳で、僕は勇者様とその仲間に受け入れてもらえた。
そして、三年がたった。
「【シェイド】!」
俺は手に魔法を纏わせ、襲ってきた魔物にアイアンクローをお見舞いする。
炎とも電撃とも言えないナニカが魔物を包み、やがて魔物は消えた。
「おつかれさん。どうだ?なんかスキルは?」
「まだだね。レベル、結構上がったのに」
先程まで俺の戦闘を見ていた勇者が草むらから出てくる。
この三年で勇者はずいぶんと変わってしまったが、旅による疲労からだろう。
「お疲れ様です。どうぞ、お水です」
そう言って俺に水をくれるのは【聖者】のエルナ。
気配りができる優しい人だ。因みに俺が勇者パーティーに入ったときからいたりする。
「結構危なげなく戦ってたじゃない」
「ですです。そろそろ、新しいスキルを覚えてもいい頃だと思うのです」
んで、こっちが【魔術師】のリンネと、ですます口調が特徴の【ビーストファイター】のタミィ。
リンネはエルナと同じく最初からいたが、タミィは俺が入って二ヶ月くらいたった後に入ったんだったか。
「んぐっ、んぐっ…ぷはぁ。成長の限界じゃないといいけど」
そんなの、ヒュウリに笑われてしまうからな。
早く魔王を倒して、ヒュウリに会ってみたいものだ。
「さて、少し休憩にするか。エルナ、リンネ、タミィ。先にテントに戻って食事の準備をしてくれ」
「「「はーい」」」
三人がぞろぞろとテントに向かっていく中、勇者は俺に並んだ。
今いるのは
「シェイ。レベル、いくつになった?」
「まだ76。お前らには追い付けねぇよ」
「悪いな。勇者のスキルで経験値を倍増させられるのは、自分を含めて四人までなんだ」
「知ってるさ」
勇者のスキルは、パーティーメンバーの取得経験値をパーティーの人数分かけてくれるスキルだ。
今、パーティーに登録されているのは俺を抜いた四人なので、全員が四倍の経験値を得られる。
一人抜いて俺をパーティーに登録すれば、はかどると思うのだが…言わないでおこう、疲れてるんだろ。
「魔法以外にも、覚えたいんだけど───ッ!?」
不意に、背中に押された感触。
目の前は谷なので、当然落ちる。
「【シャドウ・バインド】!」
俺と勇者の間に黒い靄のような物が現れ、ロープのようにピンと張った。
俺は一命をとりとめ、勇者に頼む。
「おい、透明系の魔物か何かにやられた!ちょっと移動して引っ張ってくれ!」
シャドウ・バインドは汎用性の高い、拘束系スキル。
本来は敵の影と自分の影を繋ぎ、身動きをとれなくしたり、引っ張ったりするスキルだが、俺がまだ未熟なため、自由に動かす事はできない。
「・・・」
「…?おい、引っ張ってくれー」
「…んだよ」
「?」
「お前、要らないんだよ」
おおう。戦力外通告。
やっぱり、ただ珍しい魔法が使えるだけじゃ、戦力にはならなかったか。
「わかった。すぐにパーティーを抜ける。とりあえず、引き上げてくれ」
「なぁシェイ。俺は光魔法が使えるんだよ」
「んあ?知ってるが?」
「光で俺の影を照らしたら、どうなると思う?」
「んなもん、影が消えて俺のスキルが解かれ─────ッ!!」
いつのまにやら、勇者は人差し指に【ライト】の魔法を纏っていた。
「おいやめろ!俺が死ぬだろ!」
「殺すんだよ、お前を」
「はっ!?お前、何言ってんだ!?」
「理由はあっちで考えろよ」
そう言い放つと、勇者は自らの影を照らした。
拘束されていた靄がプツンと切れ、俺は─────
────落ちた者の魂を喰らうと言われている『龍の頭谷』に落ちた。