※この作品はR-18です。

影法術士は月に笑う   作:翠晶 秋

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影法術士は裏切られる

影法術士。

それは、僕の職業だ。

 

「魔法か!おっし、シェイ!俺と組もうぜ!」

「あれ?ヒュウリ君の職業はなんだったの?」

「ふふん!聞いて驚け!【ウェポンマスター】だ!」

「ウェポンマスター!?全部の武器が難なく使えるって有名な、あの!?」

 

ヒュウリ君は、僕が思うなかで一番強い【ウェポンマスター】の職業に就いたらしい。

 

「おうよ!だから、シェイ!いっしょにさ、冒険しようぜ!」

 

そう言ってくれて、すごく嬉しい。

でも、未知の職業。しかも、今まで発見されてない、【影魔法】が使えるんだよ?

そんなの、きっと…

 

「ヒュウリ君。ごめんねぇ、シェイ君なんだけど」

「?どしたんすか、聖女様」

「勇者君と、一緒に行かなきゃならないの」

 

その瞬間、ヒュウリ君から光が消えた。

 

「ごめんねぇ、義務なの」

「……。ははっ!そうだよな!シェイ!頑張って、魔王倒してこいよ!んで、空きの時間で俺と組もうぜ!」

 

ヒュウリ君は、そうカラカラと笑っていた。

 

「…うん。絶対に、強くなって帰ってくるよ」

「約束だぞ?えーと…【影法術士】!」

「【ウェポンマスター】」

 

互いにそう言って、拳を合わせあった。

それから、僕の服が渡された。

勇者の仲間がみすぼらしい服装だと、格好がつかないから、だそうだ。

 

「聖女様?これ、ちょっと大人っぽすぎる気が…」

「似合う似合う♪さぁ、勇者君とのご対面へ、れっつごー!」

 

黒い外套に黒革のブーツ。黒い籠手と黒い短剣。

まさに【影法術士】って感じなんだけど、元の黒い髪と合わさって、なんかこう…恥ずかしい。

それで、出会った勇者様は優しい人だった。

 

「君が、未知の職業を開花させた人?」

「そうです!まだ戦闘経験は無いですが、よろしくおねがいしみゃっ!?」

「ははは、噛んじゃったね。そんなに緊張しなくても良いよ」

 

そんな訳で、僕は勇者様とその仲間に受け入れてもらえた。

 

そして、三年がたった。

 

 

 

 

「【シェイド】!」

 

俺は手に魔法を纏わせ、襲ってきた魔物にアイアンクローをお見舞いする。

炎とも電撃とも言えないナニカが魔物を包み、やがて魔物は消えた。

 

「おつかれさん。どうだ?なんかスキルは?」

「まだだね。レベル、結構上がったのに」

 

先程まで俺の戦闘を見ていた勇者が草むらから出てくる。

この三年で勇者はずいぶんと変わってしまったが、旅による疲労からだろう。

 

「お疲れ様です。どうぞ、お水です」

 

そう言って俺に水をくれるのは【聖者】のエルナ。

気配りができる優しい人だ。因みに俺が勇者パーティーに入ったときからいたりする。

 

「結構危なげなく戦ってたじゃない」

「ですです。そろそろ、新しいスキルを覚えてもいい頃だと思うのです」

 

んで、こっちが【魔術師】のリンネと、ですます口調が特徴の【ビーストファイター】のタミィ。

リンネはエルナと同じく最初からいたが、タミィは俺が入って二ヶ月くらいたった後に入ったんだったか。

 

「んぐっ、んぐっ…ぷはぁ。成長の限界じゃないといいけど」

 

そんなの、ヒュウリに笑われてしまうからな。

早く魔王を倒して、ヒュウリに会ってみたいものだ。

 

「さて、少し休憩にするか。エルナ、リンネ、タミィ。先にテントに戻って食事の準備をしてくれ」

「「「はーい」」」

 

三人がぞろぞろとテントに向かっていく中、勇者は俺に並んだ。

今いるのは龍の頭谷(りゅうのとうや)と言われるところで、二人で大きな谷の向こうを見ている。

 

「シェイ。レベル、いくつになった?」

「まだ76。お前らには追い付けねぇよ」

「悪いな。勇者のスキルで経験値を倍増させられるのは、自分を含めて四人までなんだ」

「知ってるさ」

 

勇者のスキルは、パーティーメンバーの取得経験値をパーティーの人数分かけてくれるスキルだ。

今、パーティーに登録されているのは俺を抜いた四人なので、全員が四倍の経験値を得られる。

一人抜いて俺をパーティーに登録すれば、はかどると思うのだが…言わないでおこう、疲れてるんだろ。

 

「魔法以外にも、覚えたいんだけど───ッ!?」

 

不意に、背中に押された感触。

目の前は谷なので、当然落ちる。

 

「【シャドウ・バインド】!」

 

俺と勇者の間に黒い靄のような物が現れ、ロープのようにピンと張った。

俺は一命をとりとめ、勇者に頼む。

 

「おい、透明系の魔物か何かにやられた!ちょっと移動して引っ張ってくれ!」

 

シャドウ・バインドは汎用性の高い、拘束系スキル。

本来は敵の影と自分の影を繋ぎ、身動きをとれなくしたり、引っ張ったりするスキルだが、俺がまだ未熟なため、自由に動かす事はできない。

 

「・・・」

「…?おい、引っ張ってくれー」

「…んだよ」

「?」

「お前、要らないんだよ」

 

おおう。戦力外通告。

やっぱり、ただ珍しい魔法が使えるだけじゃ、戦力にはならなかったか。

 

「わかった。すぐにパーティーを抜ける。とりあえず、引き上げてくれ」

「なぁシェイ。俺は光魔法が使えるんだよ」

「んあ?知ってるが?」

「光で俺の影を照らしたら、どうなると思う?」

「んなもん、影が消えて俺のスキルが解かれ─────ッ!!」

 

いつのまにやら、勇者は人差し指に【ライト】の魔法を纏っていた。

 

「おいやめろ!俺が死ぬだろ!」

「殺すんだよ、お前を」

「はっ!?お前、何言ってんだ!?」

「理由はあっちで考えろよ」

 

そう言い放つと、勇者は自らの影を照らした。

拘束されていた靄がプツンと切れ、俺は─────

 

 

────落ちた者の魂を喰らうと言われている『龍の頭谷』に落ちた。

 

 

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