影法術士は方針を探す
「…ごほん」
「あ!シェイ、戻った?」
「ご無事ですか、主様?」
「ああ。身体には特に異常はない」
そこまで言って区切る。
どうしようか、このスフィアに神と戦う方法を聴こうと思ったのだが、今の会話を見るにそんなことは知らなさそうだ。
「ん…なにかな」
「いや。神に挑む権利が欲しくてな、あてはお前だったんだが…」
「それは悪いことしたね。知ってることなんて、せいぜい『星の神殿』に向かうことくらいだし…」
「星の神殿?」
「え、知らないの?太陽と月を結び、その間の異次元空間にいる神に会うって」
初耳だ。
「で、星の神殿で影法術士とその配下の特上8人が力を合わせ、神を地上に引きずり出す」
初耳である。
「本来なら一人でも神に会えるんだけど、それだと神の用意したフィールドで戦うことになるから、神と会うときに捧げる魔力の量を増やして神をフィールドから追いやる」
初耳でござる。
「まあ、こんなもんかなぁ。まさか知らないとは思わなかったよ」
初耳で
つまりは、配下を増やして神を引きずり出し、そして殺す。
やっていることは変わらない。
このまま配下を増やせば自然と目標に近づくのだから。
「さてと。私からは伝えれることはないね。あ、そうそうシェイくんや」
「ん?」
「この魔道具に、マナと魔力を込めて欲しいんだ。影法術士の研究だよ」
「なんのメリットがあるのかわからないが…まあ、少しくらいなら良いだろう」
魔力を込め、そしたらそこでもう別れる。
拍子抜けだな。とりあえずは、やることは終わった。
どうにかして星の神殿へ向かわないと…。
図書館。確か図書館があったはずだ。
「フレイヤ」
「はい」
「星の神殿の情報を図書館で調べてこい」
了解しました、と一言だけ言って姿を消すフレイヤ。
あとは…。
「レナ。星の神殿について何か知ってるか?」
「知らないなぁ。強いて言うなら、そこに勇者しか扱えないサークレットがあるって話だけど」
「そうか。…ん?勇者?」
「え…知らないの?おとぎ話では有名だよ?昔の話を元に作られてるやつ。最近読んだけど面白かったよ」
「知らん。ってかその年でおとぎ話とか読んでるのか」
勇者、勇者か…。一回目の世界だとまだレベルは下の方だったが、俺がちょっかいをかけたせいで変わっているかも知れない。
そう言えば、旅の途中に勇者にベタ惚れの女パーティーがいたな。
時期的には、そろそろ会うはずだ。
彼女らは聖なる鎧を探していると言っていたが、これは…。
聖なる剣、聖なる鎧。そして勇者のサークレット…。
「行ってみる価値はあるな。チヨ」
「なに?」
「しばらくの間、チヨとレナで留守番を頼む。フレイヤが帰ってきたら俺を追うように言っておいてくれ」
「え…わかったけど、シェイ、どこか行くの?」
「ああ。少し危険だから」
あそこはオークやゴブリン、飲み込み触手…性に関する魔物が多いからな。
女冒険者のタブーとされている場所で何をしているのやら。
◆
俺は勇者だ。
生まれたときから今まで、俺に逆らう者はいなかった。
それがなんだ、このザマは。
『影』と名乗るクソガキに散々コケにされているじゃないか。
見た目は同い年だ。だったらなおさら、俺の価値は知っているはずだが…。
「ああクソっ!!」
思わず悪態をつき、聖剣を魔物に突き刺す。
この剣だって、アイツに先取りされた。
イラつく。
「ど、どうしましたか?」
「いや、なんでもない。それより、今夜いいか。そんな気分なんだ」
「あ…その、少し恥ずかしいですけど…その、大丈夫…です…」
「ありがとう」
一歩踏み出した瞬間、鎧の皮ひもがちぎれた。
「ああ、鎧が…」
「だいぶ長く使っていたからな。ここらで買い換えるのもいいかも知れん」
「ああ、それでしたら、今向かっている聖堂に鎧があるそうですよ?」
「そうか。ならそれを貰っていこう」
「きゃっ」
聖女の腰を抱き寄せ、俺はほくそえむ。
待っていろ『影』。俺は必ずお前を殺す。