「おっ…ごぼっ……かはぁ…んご…」
「ぶひひっ。ぶひゅこっ!」
「プゴップゴップゴッ」
「れぇろ…ぶひ…」
なんだ、これは。
なんなんだ、これは。
「あっ?あ~?おにゃのこ発見!」
「男も発見!」
「アンタたち、ここはオークがいるから早めに出なよ?そうでないと、女の子が犯されちゃうよ?」
「既に一人餌食になったんですけどぉ?」
「アハッハハハハ!」
なんだ、こいつらは。
なんなんだ、こいつらは。その笑顔は。
「ちょっとお~、聴いてんの~?」
「し、シェイさん、これ…」
「……姉だ。俺の、姉だ」
「わお!しすたー?お姉さんなの?」
「どーりで冒険者になるとき切羽詰まってると思ったぁ~!」
「【シェイド】」
右手から影魔法を放ち、オークを一掃する。
「アヤメ。姉さんを診てくれ」
「わっ、わかりました」
「おい、そこの女三人」
「は?なに、アンタ?」
「これはどういうことだ?今の今まで犯されていたのは、俺の姉なんだが?」
たいした武装もしていない女の三人組は、どこか驚いたようすで、しかし視線は自らの爪を眺めている。
いちいち癪にさわるヤツらだ。
「え~?さっきも聴いたけどお姉さんだったんだ~!」
「でもでも、パーティに入れるとき『なんでもします』って言ってなかったっけ~?あ、ピピロ爪めっちゃ綺麗じゃん」
「毎日お手入れしてるし、当たり前っしょ?」
「……おい。なんで今の今まで眺めていた」
怒りで殺しにかかりそうになる身体を抑え、低い声で訪ねる。
「え?ウチら武器使うのだるいし」
「したっぱが戦うのが当たり前だよね~」
「絆とか、仲間とか、暑苦しいっていうか?」
「ちょっとミサ、それは傷つくんですけど?」
「ごっめ~ん!大丈夫だって、ヘスカとピピロは別!」
「…………………」
「って言うか、いつまでそこにいるの?」
「もしかして~、ウチらに惚れちゃった?」
「ちょっとヘスカ、冗談やめてよお。こんな男こっちから願い下げだわ」
まだだ。まだ早まるな。
姉さんが生きていればそれでいいんだ。
こいつらとの縁を切るように促して、それで。
「…アヤメ、姉さんは」
「…………」
「アヤメ?」
「……息がありません。多分、喉に精液でも詰まったのではないかと」
「……………………………………は?」
「ちょっとぉ、喉詰まらせて死ぬとかダサくない?」
「わたしたちのパーティの名に傷つけすぎでしょ」
「アタシ、ちょっとケイベツ──「黙れ」──あ?アタシがまだ喋ってんですけど?誰に許可とってんの?」
「黙れと言ったんだ」
姉さんが、死んだ。
いつも理知的で、本ばかりよんでいた俺に『外に出なさい』と行ってくれた姉さん。
料理が美味しくて、さらに俺とヒュウリを会わせてくれた姉さん。
そんな姉さんが、死んだ。
許さない。許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さないユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ、許さない。
「……………………皆殺しだ」
「は?」
「なに?」
「あ?」
「てめえら全員ッ!!!!!皆殺しだァァァアア!」
地面に向かって、渾身の力で叫ぶ。
「ぷふー!なに?皆殺しだ?」
「笑えないんですけど。アンタに何ができるよ?」
「ちゃんと、自分の力を理解しましょーねー!」
俺は無言で法術を発動させる。
頭上からライトを照らしたように、俺の影が幾つにも別れ、中からオーク達が這い上がって来る。
「…は?アンタ、モンスターテイマー?」
「はは、ははは…」
「ねえ、もう行こ?こいつに付き合ってらんないよ」
「待てよ、ゲスが。まだ取って置きがあるんだ」
オーク達を見た瞬間に後ずさりをはじめたヘタレに俺は取って置きを見せてやる。
影から這い上がって来たのは、ヌメヌメとした先端、ピンクと紫の身体。
そして一際大きい頭には、刻印が刻まれた宝石。
「………殺せ」
「──────────!」
背を向けて走り出したクズどもを、俺は触手に乗って追い始めた─────