なので、ここで一発、調節をしようかと思います。
許して。ホントにごめんなさい。
影法術士は成長する
勇者をからかう手紙を置いて、神殿を離れた俺たちはある岩室の前にいた。
「さて、フレイヤ」
「はい」
「俺は今からこの中に『三年』もの間籠もることになるのだが」
「重々承知しております」
この岩室は、【ジゲンノトビラ】と言われる現象が起きやすい場所であり、それに巻き込まれると時間の流れが早くなるそうだ。伝説の龍使いや獣使いは、孵化に何百年もかかる卵をここで短縮した、という噂もあるくらいだ。
ジゲンノトビラは魔力の塊であるため、俺が魔力を調節して一年を十秒に短縮する。
簡単に言うならば、この中に入ると、外の世界では三十秒でも、体は三年が経っている計算だ。
「悪い、フレイヤ。俺の物になったばかりなのに」
「一瞬のことですから」
「そうか。じゃあ、早いところ入るか」
俺はそう言い、岩室の中に入る。
早く配下を増やして勇者を殺したいところだが、この12歳の体はあまりにも弱い。
しかし、今から三年、レベルを上げながら待つだけだなんて、面白くない。
岩室の中では体は外の時間通りに成長するため、急激な体の成長による痛みが全て脳内に刷り込まれる。
が、一瞬で三年経つというのは魅力的だ。
フレイヤには外で待っていてもらう。
フレイヤは年をとらないのと、途中で岩室が解放されると魔力が狂って暴発してしまうため、岩室の見張り役だ。
「よぉし…フレイヤ、閉めてくれ」
「では、行ってらっしゃいませ、
今フレイヤが閉めている岩扉が完全に閉まったら俺は急な成長をする。
制御をしないと、一瞬でよぼよぼの爺さんになってしまうだろう。
完全に閉まったタイミングで、魔力を全解放。
俺の魔力で岩室を満たす。
そして時間の制御。
「かっ、ああああ」
受けたことのない苦痛。
たかが三年、されど三年。
足が延びるのがわかる。
腕がしなるのがわかる。
骨格が変わり、成長痛が全身にやってくる。
三十秒まで残りいくつだ?
手元の懐中時計で確認。
「…3…2…1…」
岩扉を開け放つ。魔力が霧散し、時の流れがリンクする。
痛みが消える。
「ぐっ…がはっ…」
「【キュア】。お疲れ様です、主様」
フレイヤが近寄り、回復魔法をかけてくる。
長く苦しい戦いだった。
しかし、あれだけの痛みを伴ったのだ。
目論見通りに成長していないと、むしろ困る。
水たまりに顔を映す。
そこに移っていたのは…
「…おぉ」
少し痛みに青ざめてはいるが、一回目で死ぬ前の見慣れた顔。
服には旅用にサイズが自動で変わるエンチャントをしてもらっているため、服はどこも破れていない。
「成功だな」
「そうですね、主様。おめでとうございます」
てか、あの痛みの後に旅かぁ。
イヤだなぁ。
疲れたなぁ。
癒やしが欲しいなぁ。
なんかこう…猫とか犬とかいないだろうか。
モフりたいのだ。
「…おし決めた。次はローレルに行きます」
「ローレル、ですか」
「知らないか?ギャンブルができて奴隷が売ってる。夢のある国だが同時に恐ろしい国でもあるんだ」
そして、ローレルで獣耳の奴隷を買う。高いだろうけど、【特上】がいればいいなぁとか思ったり。
そんな野望を抱えながら、俺は成長した体で一歩踏み出すのだった。
あーなんかもう…後付け感がパない。ごめんなさい。