※この作品はR-18です。

おそらくはありふれた究極的なやりかた   作:Hastnr

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06-4.BLADE ARTS Ⅳ


 

 調教部屋での交わりは、未だ続いていた。

 余韻に浸る紅髪のアイドルをゆっくりと休ませてやっていると、キリトの背にむにゅりと柔らかな物体が押し当てられる。

 えもいわれぬ程に柔らかく、それでいてハリのあるボリューミーで独特な感触が、ちょうど二つ分。それが誰のものかは、振り返るまでも無くわかった。

 

「――おはよう、リズ」

「おはよ、キリト。人が失神(ね)てる間に、ずいぶんお楽しみだったようで」

 

 いつのまにか意識を取り戻し、キリトの背中に抱きついてきたリズが、軽口と共に体を離す。そのままいそいそとベッドの上を進み、キリトと向かい合う位置に移動した。

 少し前に大量のジュエルメイカーを排出したばかりのリズは、全身にしっとりと汗を浮かべ、興奮で上気させた頬を薄桃色に染めている。出るところが出たグラマラスな肢体は、当然ながら一糸まとわぬままだ。

 

「あたしと遊ぶ分は……ちゃぁーんと残してあるみたいね」

「当然だろ」

「よろしい。……しっかし、いつみてもすっごいわよね、これ」

 

 胡座をかいたような姿勢で座るキリトの下腹部で堂々とその存在を主張する逸物を眺め、リズは口角を上げてにんまりと笑う。レインの蜜壺から引き抜かれた時から状態を変えていない肉棒は、愛液と精液の残滓をまとったまま、調教部屋の天井目掛けてまっすぐに屹立していた。

 

「キリト、さすがにちょっと疲れたでしょ? あたしが気持ちよくしてあげるから、楽にしてて」

「いいのか? それじゃあ、遠慮無く」

 

 見せつけるようにゆっくりと腰を上げたリズは、正面からキリトの首に両腕を回して抱きついて体を安定させる。そのまま両脚を拡げ、肉棒をまたぐように腰の位置を合わせれば、キリトの手がリズの腰に回り、彼女の動作をそれとなく手伝う。

 鞭と排出調教でたっぷりと興奮させられた肉壺の入り口を、固くそびえ立つ肉棒の先端にそっと押し当てて位置を確かめたあと。リズはゆるゆるとした速度で腰を落としながら、雄の象徴を胎内へと受け入れた。

 

「――んんぅぅぅっ……♥ これ、これぇっ……♥ はぁっ、はっ♥ くぅうんっ♥♥」

 

 愛液と精液という二種類の潤滑油を既にまとっていた太い肉棒は、興奮に火照ったリズの肉壺に容易く入り込む。四方八方から絡みつく膣肉を征服し、リズの愛液によって更にコーティングされる雄の象徴を飲み込みながら、リズはキリトの逸物を堪能するように少しずつ腰を落とす。

 そんなリズを支えてやりながら、キリトは組んでいた足を少しだけ広げる。その手に支えられながら腰を落としきったリズの尻が、キリトが作った脚の間にすっぽりと収まった。

 雄々しい肉棒を根元まで銜え込み、膣奥でその感触を味わいながら、リズは両脚をキリトの腰へと回す。先に首へ回された両腕と共に、キリトの体へ抱きつくような姿勢。それはさながら、背もたれの付いた座椅子に逆を向いて座っているような状態だ。

 

「んっ、うぅっ……♥ キリトの、おっきいの……全部挿入(はい)っちゃったわね……♥」

「ああ。リズの膣内、熱くてぐちゅぐちゅで……すぐにでも絞られそうだ」

「えへへ……ちゃんと、我慢しなさいよね……♥ んんっ……♥ 今日は、じっくりたのしみたい気分だから……♥」

 

 キリトの肉棒を杭代わりに、二人は互いの体と体を密着させる。滑り落ちた汗が混ざり合い、吐いた息が蕩け合う。どくどくと鳴る心臓の鼓動すらも共有してしまう程の至近距離で見つめ合えば、言葉にならない何かが互いの間で伝わり逢った気がした。

 

「ふふっ」

「なんだよ、リズ」

「べっつに。なーんでもっ」

 

 くすくすと笑うリズの背にキリトが腕を回せば、リズは慣れた動作で体をすり寄せてくる。実はかなりボリュームのあるバストがキリトの体に押し当てられて柔らかく形を変える中、リズは唇をキリトの耳元へそっと寄せた。

 

「……あたしね。その……あんたに抱かれてると、安心するのよね」

「安心?」

「ええ。なんていうか……あんたのおっきくて固いのが、あたしの中にいてくれるとね。あたし、キリトのオンナにされちゃったんだ……って思える、から」

 

 唇の端から官能の吐息を溢しながら、リズは腰を少しだけ前後に動かし、自らの弱い部分を逸物で刺激する。ボリュームを抑えられた嬌声は、それでもキリトの耳に届くには十分。股間部から響くねっとりとした水音と共に、リズが交合の愉悦を味わっていることをはっきりと伝えてくる。

 

「んぁっ……♥ ん……♥ 腰、止まんなくなりそ……♥♥

 あぅ……えっと……ほら、あんたの周りって可愛い子がいっぱいいるでしょ? アスナを筆頭に、よりどりみどりでさ」

「まあ……確かに、それはそうだな」

「そーいう皆様方と比べると、あたしってば普通もいいとこじゃない? だから、その……時々、ちょっとだけ自信無くしそうになるのよ。

 あたし、見劣りしてるんじゃないのかなー……って」

 

 無意識にか、抱きつく四肢の力を少しだけ強めながら、リズはぽつりと呟く。

 不安げなその体を抱き寄せながら、キリトは彼女の細い首筋に口づけを落とした。

 

「リズ。俺はみんなを比べるなんて事をするつもりはないけどさ……リズは、すごく可愛い女の子だって思ってる。見劣りなんてしてない。

 もちろん、俺以外の誰かに渡すつもりだってないよ」

「キリト……。そーいう嬉しいことは、ちゃんとあたしの目を見て言いなさいよね」

「お、おう……すまん」

「ふふっ。次回から精進しなさいよね」

 

 注意を喚起するかのようにキリトの耳たぶをかぷかぷと甘噛みしたあと、リズは少しだけ体を離す。下半身で繋がったまま、顔と顔が距離を取り戻す中、キリトとリズの視線が交錯した。

 互いの瞳の中に映り込む己の顔が、ふっと破顔したのを合図に、二人はどちらからともなく唇を重ねた。

 

「――ん……♥」

 

 キリトの唇をつんつんと突いたリズの舌は、キリトの舌を招きながら奥へと引っ込む。その誘いに乗ったキリトは、薄く開いたリズの唇の中へ、己の舌を滑り込ませる。

 リズのぷるぷるとした唇が男の舌に甘く吸い付きながら出迎えの役目を果たし、口内に隠れていた舌が絡みついて奥へと導く。キリトの舌裏、舌先、舌表面――キリトの舌へ丁寧なマッサージを施しながら、リズの舌は這い回り、なめ回しながら絡みつく。

 

「んぁ♥ んふっ♥」

 

 舌を絡め合う濃厚なディープキスを続けながら、リズは己の腰をぐにぐにと動かして肉棒を貪る。

 上下運動は浅く、動く速度は慌てず、急がず。ゆったりとしたリズムで膣奥に亀頭を圧し当てつつ、円を描くように腰を前後左右に動かしては、Gスポットへキリトの逸物を導き擦り上げる。結合部から溢れ出す愛蜜は、先ほどまでの性交の残滓と混ざり合いながらキリトの肉竿を伝い落ちて陰嚢を濡らした。

 

「んっんっんぅ♥ んんっ――♥ ……ぷはぇあっ……あれ、キリト……?」

 

 たっぷりと時間をかけて絡み合った舌を解き、堪能した口づけをやめたキリトの視界に、寂しげな表情を浮かべたリズの顔が映る。

 このままキリトが離れていってしまうのではないか――とでも言いたげなリズの背に片手を回して彼女の体を支える。離すつもりはないと言外に安心させてやりながら、キリトは彼女の胸元に顔を埋めた。

 

「今度は、こっちが欲しくなった。リズ」

「こっちって――やぅんっ♥♥」

 

 柔らかく豊満なバストに吸い付かれ。リズが蕩けた声を上げる。もちもちとした柔肌の上に口づけのラインを描きながら、キリトは少しずつ頭の位置を下げる。 

 そして見えてくる薄桜色の突起――リズの乳房の先端を飾る乳首を、キリトは口へ含んだ。

 

「んっんぁああっ♥ こっち、ってぇっ♥♥ おっ、おっぱいのこと、ね……ひぅ♥♥

 まったく……ああっんんっ♥♥ 赤ちゃ、っん、みたいね……♥♥」

『こんな吸い方する赤ん坊、さすがにいないと思うぞ』

「確かに……ひんんんっ♥♥」

 

 乳房に唇で吸い付いたまま、キリトはわざとちゅうちゅうという音を立てつつ、口内に含んだ乳首を舌で舐る。乳輪をなぞるようになめ回し、舌先で先端を突きつつ、空いている方の手をもう片方の乳房へと伸ばす。指の根元で乳首を挟みこみながら、柔らかな丘を掌で優しくこね回してやれば、リズは嬌声を漏らしながらキリトに体を預けるように身をくねらせた。

 上方から零れる切なげな声と、下方から溢れる水音のボリュームは増す一方。合成音声での会話も抑えめにしながら、キリトはその官能的な音の響きを拝聴していた。

 

「あっ♥あっ♥あっ♥あっ♥ んんっ、んんぁぅぅう♥♥ いい、いいいぅっ♥♥

 おっきいのぉ♥ キリトのが、んっぁっ♥♥ あたっ、しぃのぉ……ひぁぁんぃいいぃん♥♥」

 

 キリトの体にぎゅっとしがみついたまま、リズは少しでも多くの快感を得ようと腰を上下させる。早く細かいリズムで腰を振って蜜壺の奥を何度も何度も突いたかと思えば、時折ねっとりとした動きを挟み、膣内全体で肉棒に奉仕する。胸元にかき抱いたキリトの頭、その旋毛や額にキスを捧げ、蕩けた声音を耳元に落とす。

 緩急の利いた腰の動きに、鍛造工程で振るわれる槌の動きを想起させられながら、キリトは興奮に固くなった乳首を甘噛む。

 

「は、っんんっっ♥♥ んっ♥ ……もう。そんなに、んん、吸い付いたって……おっぱい、出ないわよ……♥」

『いずれ出るようにしてやるよ。こっちでも、現実でも』

「ふふっ。じゃあ、期待しといてあげるわね……ぁふぅ、んんぅううっ♥♥」

 

 腰を落とし、キリトの肉棒と深々と繋がった所で、リズは不意に動きを止めた。体全体を密着させたまま軽く息を整え、乱れた呼吸を落ち着かせた所で、リズはキリトの耳をかぷかぷと甘く噛んだ。

 夜伽の合間、何か伝えたいことがあるときにリズがしてくる悪戯じみたサイン。そのサインに気づいたキリトは、彼女の胸元に埋めていた顔を上げて、リズと視線を合わせた。

 

「ん? どうかしたか、リズ?」

「キリト、あのね…………あたしも、欲しくなっちゃった……っていうか」

「欲しくなったって……何を?」

「だからその……激しめの、やつ。いつもの、すごいの」

 

 キリトへ頬ずりをするような体勢で耳元に唇を寄せたまま、リズはぽつぽつと言葉を口にする。いつもは勝ち気で大胆な彼女が見せる、恥ずかしげな様子に、キリトの嗜虐心は搔き立てられる。

 

「もうちょっと具体的に言ってくれないとわからないなあ、リズ」

「な゛っ……!? あ、あんたねえ……!」

「悪い悪い。冗談」

 

 詫び代わりに唇同士を触れあわせながら、キリトは上体をゆっくりとかがませて、リズの体をベッドの上へと押し倒す。繋がりっぱなしの肉棒をうっかり引き抜かないよう注意しながら、白いベッドシーツの上にリズの背を預けさせた。

 リズお気に入りのスタイルへと持ち込みつつ、彼女の腰は少しだけ上げさせておく。この後の行為をより楽しむために。

 

「ほら、よく見てろよ。リズ」

 

 結合部をリズの視界にはっきりと捉えさせながら、キリトは腰を上げて肉棒を引き抜く。ぶるんっ、と勢いよく撓りながら解き放たれた肉棒は、三人分の体液が混ざり合った粘液で覆われたまま、獰猛に屹立していた。

 目の前の雌に興奮し、征服せんとしている雄の象徴を改めて目の当たりにし、リズはごくりと喉を鳴らす。普段の勝ち気な様子はどこへやら。飼い主に服従する犬のように仰向けになって四肢を広げたリズは、発情と劣情に頬を蕩かせていた。

 

「今からリズの大好きなこいつで、リズの中をめちゃくちゃにしてやるからな。

 ……いくぞ」

 

 こくこくと首を縦に振るリズを抱きかかえるような体勢で上から覆い被さったキリトは、固く勃起した逸物の先端を蜜壺にあてがい――そのまま、リズの奥めがけて押し込んだ。

 

「あっ――~~~~~~~~くぅうぅんあああぁぁああああ♥♥♥」

 

 ほんの一瞬前まで続いていた交わりによって十二分に温められた秘所は、凶悪な肉棒を準備万端に受け入れた。

 溢れ出しそうな程の愛蜜をまといながら、ずぷずぷというナマ音を立てて侵し進んだ肉棒が再度リズの最奥部に達するまで、たいした時間はかからなかった。

 

「……うくぅ、あっ……♥♥ んぅ、んんっ……♥」

「すごいな、もう全部挿入っちまった。リズの膣中、どろどろのぐちゃぐちゃだ」

「や、やだ……言わないでよ、っばかぁ……♥♥」

 

 仰向けになって迎え入れるオンナへ、オトコが覆い被さる、抱き合いながらの正常位。キリトと密着しつつなすがままにされてしまう被征服感、そして何より愛情を強く感じられるこのスタイルを特に愛好する者はかなり多い。たとえばアスナもそうだし、リズもまたその一人だ。

 肉感的なリズの体を組み敷いたまま、キリトは彼女の首と頭に腕を回して抱きしめながら、体と体を密着させる。自然とキリトの背へと回ったリズの腕が、自らを貫く男の体を抱きしめ返した。

 暖かな抱擁への返礼として、リズの頬や首筋へ口づけを落としたあと、キリトは腰をぐいと引き、彼女のお望み通りのピストン運動を開始した。

 

「あ――♥ あんっ♥んっ♥あっあっあっああああぁぁあ♥ んぅ、あふ、んんぅうぅう♥♥

 キリトのっ、んくっ♥いいっ♥ いいぃいぃっっ♥♥」

 

 拍動する心臓の鼓動と同じリズムで、キリトは肉棒を引き抜き、そして力強く突き入れる。肉棒が離れる度に名残惜しく絡みつき、突き入れられる度に喜んで迎え入れるリズの蜜壺へ向けて。

 男の力と体重によってがっちりと抑え込まれる正常位。一方的に『使われる』ことを余儀なくされるこの体位が、リズの中に先ほどまでとはまた別種の快感を呼び覚ましていく。

 そんな風に蕩けたリズの瞳と、キリトは至近距離で見つめ合う。キリトが少しでも体を動かす度に嬌声を上げ、少しでも離すまいと強く抱きしめてくるリズの姿がたまらなく愛おしい。

 

「すごく綺麗だよ、リズ。これからもずっと……俺の側にいてくれ」

「――ふぇ!? あっ、ずっ、ずるいわよぅ♥ いっ、いまそういうこと言うの、ずる――んんぅぅんんっ♥♥♥」

 

 有無を言わさずキリトは唇を重ね、キスで以てリズの唇を封じる。腰と逸物以外の場所全てで、可能な限りリズと触れあいながら、手心を加えないハードな抽送を繰り返す。

 どこがリズの弱点で、どのように擦り、どういう風に突いてやればよく啼くかは今更知らぬ仲ではない。それについ先ほど、リズ自信の腰使いで改めて教わったばかりだ。

 いわゆるキスハメの状態を維持したまま、キリトは腰を巧みに操り、リズの感じやすい場所ばかりを連続で穿っていく。

 

「んんんぅうぅうんん♥♥♥ んっんっんぅうぅ――――んぅーっ♥ んぅう゛うう゛ううっ♥♥♥」

 

 びくびくと身を痙攣させながら達する度に、塞がれた唇の端からリズのイキ声が溢れる。跳ねる体も、嬌声も抑え込まれながら、固く立派な逸物で雌穴を貫かれるごとに満たされていく、人間としての敗北感と、一匹の雌としての充足感。この雄の精で子を孕むという未来への期待と喜悦と共に、蜜壺は肉棒を締め付けては子種を乞い願う。

 リズの本能的な奉仕を感じながら、キリトは口づけを解く。代わりに、彼女の首筋に顔を埋めるようにしながらより一層強く抱き寄せる。腰の動きは彼女が達している間だけ止め、そしてリズを溺れさせる快感の波が収まるのを待ってから激しい前後運動を再開。

 

「――ぁあっ♥♥んっ♥ん゛ぅっ♥ だっ、めっ♥だめ、だめぇぇっ♥♥ いま゛っ、今イッたばっかりなのにひぃいぃぃ♥♥♥」

 

 リズの抗議の声を無視しつつ、キリトは抽送の速度を一気に加速させる。ギリギリまで引き抜き、深々と突き刺す――堂々たるストロークでリズの弱い場所を遠慮無く打ち、若い情熱をぶつけるように激しく貫く。

 

「あっ――あっあっあっああっ♥♥ キリト、キリトぉっ♥♥♥」

 

 シーツの上に飛び散る汗と愛液。びくびくと震えながら雌の快楽を享受する体。亀頭が子宮を圧す度にあふれ出る悦楽の声。

 己の下に組み敷いたリズの総身から発せられる興奮のサインに昂ぶらされたキリトの本能は、繁殖という根源的な欲求に従いながら陰嚢をフル稼働。精巣の内に溜め込まれた濃厚にして活発な精子の大群を、まもなく行われる種付けに向けてスタンバイさせる。

 

「い、いぃ♥いいっ♥んぃいい♥ ああっあっぁぁあっ♥♥♥ き、りとのぉ、ぢんぽぉっ♥ まひゃ、またっおおきくなっへ、るぅうぅう♥♥」

「お、ぐうっ……さすがに、そろそろヤバい……。いっぱい出してやるから……ちゃんと孕めよ、リズ」

「はらむぅっ♥ はっ、あっんんっ♥♥ キリトの、んぁっ、あんっ、あっ、赤ちゃん♥♥ 絶対、はりゃんだげるかりゃあぁぁあ♥♥♥」

 

 前後する腰の速度は最高点に達し、下腹部から駆け上る射精欲求がキリトの脳内を支配する。雄である以上は抗えぬ衝動に突き動かされた体は、目の前の雌に己の遺伝子を植え付ける為、獰猛な程の苛烈さを以て蜜壺を蹂躙する。

 射精前の数瞬。愛しき女も、卑しき雌も、等しくただの肉穴として使われる僅かな時間。その最中にありながら、それでもリズの体は歓喜に震え、仰ぎ見る男への愛しさを積み重ねていく。

 そして、最後の一突きによって腰と腰が密着し、亀頭がリズの子宮口に圧し当てられた直後――蠢く膣肉に包まれた肉棒から、白濁した精液が迸った。

 

「あっ――あっ♥あっっ♥♥ぅっあああああああああっ♥♥♥ あああ゛っああんああぁあんぁああっっっ♥♥ ――きてっ……りぅううぅううう♥♥ きりと、のぉっ゛……せーえきいぃいぃひいいぃいいんんっっ♥♥」

 

 胎内全てを灼き尽くされそうな程に熱く重い、子種汁の奔流。脳裏にスパークする絶頂の感覚。声にならぬ声をあげ、びくびくと肢体を痙攣させながらも、リズの体は精液を一滴たりとも逃すまいと無意識にキリトの体へしがみつく。

 彼女の両脚に腰をホールドされたキリトは、肉棒を抜き放つ術を失ったまま、どくどくと湧き出る子種をリズの膣内へ注ぐ。吐精が為される度に体を震わせ、甘い鳴き声を漏らす愛しい女の体を抱きしめ返しながら。

 

「んあっ♥♥ ……あっ、ぅくっ、あふぅぅうっ……♥♥ あ……きり、とぉっ……♥♥」

「大丈夫だぞ、リズ。俺ならここにいるから」

「はひゅ……♥ ひぅっ……うん、居る……♥♥ ちゃんと、いてくれる……♥♥」

 

 膣内射精の熱と感覚に酔い痴れるリズと抱きしめ合ったまま、キリトは彼女の首筋にキスをしながら、射精後の気怠さを静かに味わう。

 やがて、リズの四肢から力が抜け、目一杯の力がこもった抱擁がほどけていく。ぐったりとしたリズの髪を軽く撫でたあと、キリトもまた抱擁を解くと、リズに覆い被さる形になっていた体を起こした。

 

「うおう……っと」

 

 ようやくリズの雌穴から引き抜かれた肉棒は、ぶるんと勢いよくしなってみせたかと思うと、リズの下腹部へ男女の営みの残滓をまき散らす。塞ぐモノが抜けてしまった肉穴から、しばしの時間をおいて逆流し始めた泡立つ白濁液の姿は、まるで降りかかる精液と愛液の混合物が呼び水になったかのようだった。

 二つの肉壺を犯し抜き、三人分の体液で汚れきった己の分身。とりあえずタオルか何かで拭こうと、キリトが個人ストレージへとアクセスしようとした、まさにその瞬間だった。鈴を鳴らすように軽やかで、聞き慣れた声が背後から聞こえてきたのは。

 

「何かお探しですか? ご主人様」

「……レイン?」

 

 呼び声に振り返ってみれば、いつの間にか回復していたレインの姿があった。

 ベッドの上で膝立ちとなったその体にまとうのは、少し前までリズが着ていたメイド服、そのミニスカート部分のみ。上半身はもちろんトップレスの状態であり、実はボリュームのあるバストが露わにされていた。

 

「店長権限でリズっちから勝手に借りちゃった。どうかな、似合ってる?」

「ああ。こういうレインも……なんていうか、ギャップがあってまた……エロくて可愛いと思う」

「えへへ……♥ 恥ずかしいけど、キリトくんにそう言ってもらえてよかった♪

 ……ところで、ね。キリトくん。ちょっと相談なんだけど」

 

 粘液にまみれつつも、未だ余裕で天を向く怒張へちらりと視線を向けたあと。レインはスカートの裾を両手で掴むと、そのままゆっくりとたくし上げた。

 露わになる無毛の股には、当たり前のように下着が存在しない。緩く広げられた脚の間からは、レインとたっぷり楽しんだ時に注ぎ込んだ白濁汁が、ぼたり、ぼたりと重く粘つきながらベッドシーツ目掛けて落ちていく光景が垣間見えていた。

 

「キリトくんから注いでもらった大事な大事な精液、ベッドの上にこぼしちゃったの……。

 このままじゃ、おまんこの中、空っぽになっちゃうよぅ……ねえねえ、どうしたらいいと思う?」

 

 汗で首筋に張り付く紅い髪。ぺろりと唇を舐める真っ赤な舌先。挑発と期待がふんだんに込められた妖しい眼差し。

 先の交尾で体力を使い果たして倒れ伏す友人の姿をキリトの肩越しにちらりと見ながら、レインはこれ幸いとばかりににじりよってくる。

 その蠱惑的な雰囲気と均整の取れた肢体は、さながら女豹。なれど、彼女が望むのは狩人の立ち位置ではない。レインが望むのは、黒衣の狩人を焦らし、弄び、たっぷりと興奮させてからその毒牙にかかる、哀れにして美しき獲物の立ち位置。

 

「そうだな……『新しいのをたっぷり注いでやる』っていうのは、どうかな。レイン?」

「わぁっ♥ それ、ナイスアイデアだよキリトくん♥」

 

 わざとらしい程にアイドルめいた笑みを浮かべながら、レインは後ろ手にコンソールを操作し、『サキュバス・ストレージ』を手動で起動。腹の内を満たしていた精液を残さずゴム型収納容器に入れて、しれっと個人ストレージに収納すると、正面からキリトへ抱きついた。

 

「ユイちゃんに、新しい弟か妹――作ってあげようね♥」

 

 耳元へ囁かれる甘い誘いに、もとより砕けていたキリトの理性が溶かされていく一方で、肉棒の硬度だけはより固くなっていく。

 ふと『このペースでいくと、ユイの弟妹は何人くらいになるんだろうか』などという想像に耽ったのも一瞬。奇しくも先ほどのリズと同様に抱き合うような姿勢で腰を上げたレインの体を支え――キリトは可愛らしいアイドルにもう一度種付けしてやるべく、レインの身をゆっくりと引き下ろした。

 

 

 

 その後も『黒夜館』内部では、若さに任せた熱い交わりが続いた。

 たとえば――。

 

「――あっ♥あっ、ああぁっ♥ いけませんっ、いけません旦那様ぁ♥ 奥様に、奥様にしかられてしまいますぅっ♥♥

 あっぁぅああぅ♥♥ だっ、旦那様のちんぽに負けた駄メイドとして、奥様に折檻されてしまいますぅうう♥♥」

「口ではそう言っていても、体はこんなに喜んでいるじゃないか、レイン。まったく……主人に色目を使うような淫乱メイドには、やはりお仕置きが必要だな」

「色目だなんて……ああぁああぁっ♥♥ んっ、んううぅううっ♥♥ だめ、でっ、すぅうぅうぅっ♥ あっあっ――あぁぁああ~~~~♥♥」

 

 本妻(アスナ)が不在にしている間に、好色な主人に無理矢理手込めにされる哀れな紅髪のメイドであったり。

 あるいは――。

 

「……す、ストリップクラブ『リズベットナイトハウス』……ほ、本日、開店……」

「笑顔が硬いぞ、リズ。もっと客寄せしないと、借金の返済なんて夢のまた夢なの、わかってるか?」

「わ、わかってるわよそれくらい!!

 『リズベットナイトハウス』、本日開店で~す! 美人キャストが繰り広げる、開脚へこへこおまんこダンス♥ ぜひ覗いていきませんか~♥♥」

 

 借金のカタに差し押さえられ、ストリップ場兼売春宿に改装された懐かしの店を取り戻すため、必死に働く桜色の髪のストリッパーであったり。

 もしくは――。

 

「いかがですか、ご主人様。当メイドリフレ自慢のオイルマッサージ、よく効くでしょう? 体中の固くなった部分が、じんわり、じんわり、解れて……♥」

「本当は、これ以上の事はNGなんですけど……こんなに立派なご主人様のアソコ見てたら……ねえ?」

「うん、うん♥ だからね、ご主人様。サービス料金、こっそり倍額で払ってくれたら……♥」

「お店には内緒で……いーっぱい気持ちよくしてあげる♥ もちろん、ナ・マ・で♥♥♥」

 

 金で体を売る淫売リフレガール二人組と、その身柄ごと違法メイドリフレ店から買い上げる客であったり、と。

 趣向と設定にアレンジを加えながら、行為を続けに続け、営みを重ねに重ね――諸々の交わりが一段落する頃には、ベッドはすっかり3人の体液まみれになり、元の白い色を残している部分をかきあつめても、もはや掌ほども残っていなかった。

 

「――確かに、いい『打ち合わせ』になったかも」

「でしょ?」

 

 新しく設置したばかりの綺麗なベッド――こういう事が簡単にできるのもVRの強みだ――の上で、キリトの両腕を枕代わりに寝転んでいたレイン、そしてリズが、どこかぼんやりとした口調で言葉を交わす。

 三人揃って真っ裸。身に纏うのは薄手のシーツ一枚。それで十分なのは、ここが空調の効いたVR空間の室内であるという事もあるし、褥を共にした余韻の熱がまだ残っているせいもあった。

 

「キリトくんの手の動き、武器の扱い方、体重の移動や打ち込みのクセ……全部よくわかっちゃった。これなら、ぴったりの剣が作れそうだよ」

「ね。これがアスナやユウキにアリスあたりだったら、直に斬り結んでわかりあうってとこなんでしょうけど……さすがに、アタシじゃあそこまではいけないしね。

 ……あ、でもレインならわりといけるんじゃない?」

「いやいや。さすがにキリトくんクラスとなると《多刀流》を使わないと厳しいし……。でも、そうなると斬り結ぶっていう戦い方じゃなくなっちゃうから……」

「あー、そっかそっか。それも確かに」

 

 うつ伏せになったまま言葉を交わす二人の鍛冶士。『最後にもう一度』と一本鞭をねだって望み通りに打擲されたその豊満な尻には、赤々としたダメージエフェクトのラインがいくつも刻まれていた。ベッドの上でうつ伏せになって尻を突き出す二人の姿はとてつもなくエロティックで、キリトはやりすぎないように己を抑えるのに苦労した程だ。

 そうした行為を経た後――いわゆる事後特有のまったりとした空気は、キリトにとっても心地よい。これで煙草の一本でも吸えばサマになるのかもしれないが、生憎とキリトは非喫煙者であるし、そもそも煙草型のアイテムも実装していない。

 なんとはなしの手持ち無沙汰を誤魔化すように、キリトは両手を少しだけ動かし、二人の髪にそっと触れた。

 

「いい剣を期待してるよ。二人とも」

「まかせときなさい。その代わり……お財布の方はよろしくね。キリト」

「レアな金属素材の方も、どうにかしてくれると嬉しいな。キリトくん」

「お、おう……努力します……。あと、リズ。しばらく、武器のレンタルを頼む……」

「はいはーい。レンタル料は安くしといてあげるから、感謝しなさいよね」

 

 しばらくの間、プレイヤーキラー狩り(PKK)稼業に戻るか、あるいはシノンやリーファを経由して、アリシャ・ルーやサクヤに割のいい傭兵業を回してもらおう。なるべくなら、エクスキャリバーを抜かなくてよいレベルのものを。

 プライベートVR空間では湯水のように金を作り出せる管理者も、他のVRMMOでは一介のプレイヤーに過ぎない。鍛冶士二人にくつくつと笑われていることにも気づかぬまま、キリトは一人金策に頭を悩ませるのだった。

 

 


 

 

 その日。《ALO》スプリガン領の一角、『ルカヴィール遺跡群』エリアは、かつてない程の熱気に包まれていた。その理由は単純明快。遺跡群の中央に鎮座する、古代ローマのコロッセオを思わせる大闘技場で闘技大会が繰り広げられたためだ。

 スプリガン領とウンディーネ領の貿易協定締結を祝し、スプリガン領領主の名の下に開催されたトーナメントには、《ALO》中からそれなり以上に実力のあるプレイヤーが種族を問わず多数参加し、スプリガン・ウンディーネの両領主、そして見物に集まった観客達の前で互いの力と技を競った。

 折悪しく、あの《絶剣》やユージーン将軍といったスーパーメジャー級プレイヤーのほとんどは不参加だったが、それでも第一戦から決勝戦までのすべての試合で観客達を大いに満足させるだけの熱い戦いが繰り広げられた。

 特に決勝戦。相手に押される一方と見えた両手剣使いのサラマンダーが、一瞬の隙を突いて形勢を逆転し、愛刀の刀身より紅蓮に燃える炎の奔流を放ち対戦相手を灼き尽くして大逆転勝利を決めた。その瞬間観客席は興奮の坩堝と化し、惜しみない拍手を送ってその健闘を讃えた。

 

「そろそろ……出番かな」

 

 勝利を讃えてなお収まらぬ客席の熱狂。それなりの距離を経ているはずなのにしっかりと響く程に大きな喧騒が、薄く開いた控室の扉越しに聞こえてくる。キリトは長椅子から立ち上がると、貸し出された儀礼用装備のベルトを改めて締め直した。

 

「――あんたとしては、エキシビジョンマッチよりあっちの本戦の方に出たかったんじゃない? キリト」

「仕方ないだろ、リズ。領主殿直々のご指名なんだからさ」

「ほーんと、有名人サマは大変ですこと。ねえ、黒ずくめ(ブラッキー)先生?」

「勘弁してくれ……」

 

 揶揄たっぷりの笑みと共に上着を差し出すリズに、キリトは深々と溜息を返しながら上着の袖に腕を通した。スプリガンのテーマカラーである黒をベースに、ウンディーネのテーマカラーである青を差し色としたこのロングコートは、このイベントの為にわざわざ用意された特注品であり、此度の大会において特別選手として選出された事を示す一品でもあった。

 大会本戦後に開催されるエキシビジョンマッチ。両種族の発展を祈念した特別試合、そのスプリガン側の代表選手として領主が指名したのが、誰あろうキリトその人だった。

 

『貴様が実質レネゲイドであることは百も承知だが、書類の上では我がスプリガン領の一員だ。それくらいはわかっているだろう? ミスター・ブラッキー』

『その呼び方は勘弁してくれ……。で、そんな半端物(ほぼレネゲイド)を代表選手にしていいのかよ、領主サマとしては』

『ああ。貴様の実力は知っている。勝てばそれでよし、負けてもスプリガン本隊の名誉に傷は付かん。これ以上無い配役だ。

 本当なら普段から我が領の為に働かせたい所だが、貴様をあまりこき使うなと何(・)故(・)か(・)アリシャとサクヤが五月蠅く言ってきている。

 ……妙に顔が広いな、貴様』

「は、はは……まあ、色々ありまして……』

『――というわけで、だ。せめてこういう時くらい、同族の為に一肌脱いでみせたらどうだ?』

 

 支配者然としながらも、どこか暗殺者めいた暗い雰囲気を纏うスプリガン領領主――キリトにしてみれば初対面の男の、脅しにも似た要請を受け、代表選手として試合に出ることを決めたのはつい3日前の事だ。

 実際、スプリガン領にろくに顔を出していない事への負い目は無くもなかったし、同族(フィリア)の為にも領主に恩を売っておくに越したことは無い。キリトにしてみても悪い話ではなかった。

 

「ま、なんにせよ……負けたら承知しないわよ、キリト。今回は、この子のデビュー戦でもあるんだから」

 

 そう言ってウィンドウ型UIを呼び出したリズは、自らのストレージに格納していた渾身の逸品――黒鞘に収まった剣をオブジェクト化し、どこか恭しくキリトへ差し出す。

 鞘ごと掴み取るようにして剣を受け取ったキリトは、その柄を右手でしっかと握りこむと、かすかな鞘鳴りの音を響かせながら剣を抜き放った。

 

「どうよ、あたしの自信作の出来栄えは」

「…………」

「ちょっと、なんとか言いなさいよ。キリト」

「悪い、ちょっと見惚れてた。

 ――すごく、いい剣だ。相変わらず……いや、前以上だな。こいつは」

 

 使い手の姿を映すほどに磨き上げられた漆黒の刀身を眺めながら、キリトはそんな感想を述べる。

 鉄の塊をそのまま削り出したかのような無骨さと、職人の心配りを随所から感じる細やかさが渾然一体を成す、漆黒の片手用両刃直剣。流麗、なれど華美ならざる意匠に込められているのは、鍛冶師の誇りと確かな実用性。

 あの日、白竜の巣の底で共に見上げた夜の闇を十重二十重に折り重ねて創り上げられたかのような黒い刀身に浮かぶのは、一切の乱れ無き直刃(すぐは)の刃文。柄の幅から刃長に至るまでの全てが、たった一人の使い手の実力を余す所なく引き出す事を目的としてフルチューンされた至高の一振り。その剣をキリトが軽く振り下ろしてみれば、ずしりと重く頼もしい感触が還る。

 

「この子の名前は、《アイオーン》。日本語で言ったら……『永遠』、『永劫』とかになるのかしら。

 魔剣クラスの化物武器(エリュシデータ)にだって負けない出来だし、もちろん――」

「『情報屋の名鑑には載ってない剣』か?」

「そういうこと。今のあたしにできる、最っ高の剣――受け取ってくれる、キリト?」

「ああ。もちろんだ、リズ」

 

 死すらも死ぬるという時の果て・永劫(アイオーン)――その名を冠するに恥じぬだけの斬れ味と耐久性を備えた漆黒の剣をもう一度眺めたあと、キリトはその刀身を鞘へと収め直し、背中のウェポンラック部分にマウントする。

 直後、聞き慣れたSEと共にカーディナル・システムが装備情報を上書きし、『アイオーン』をキリトの装備として設定しなおした。

 

「――あーあ、残念。リズっちに先越されちゃった」

 

 背後から聞こえてきた涼やかな声にキリトが振り返れば、そこにはもう一人のレプラコーンことレインの姿があった。

 

「ふっふーん。年季が違うのよ、年季が」

「むぅ……」

 

 自慢げに胸を張るリズの気配を背中で感じながら、キリトは悔しげに頬を膨らませてむくれるレインの側に歩み寄る。

 

「最終調整、完了したんだな。レイン」

「なんとかね。キリトくんに合わせたカスタマイズを追求してたらギリギリになっちゃったけど……その分、すごくいいものができたよ!

 だから……受け取って、くれる?」

「むしろ、こっちからお願いするよ、レイン。君の剣を、俺に預けてくれないか?」

「うんっ! もちろんだよ、キリトくん!」

 

 レインは首を縦に振ると、ウィンドウ型UIを呼び出し、自身のストレージから目的のアイテム――黒鞘に収まった一振りの剣をオブジェクト化する。

 細い両腕で剣を支えるレプラコーンに頷きを返したあと、キリトは右手で鞘を、左手で柄を握り込み、静かに剣を引き抜いた。

 

「どう……かな?」

「月次なことしか言えなくて悪いが……綺麗な剣だ。見てるだけで、吸い込まれそうになってくる」

 

 月の光を束ね、星の輝きで織り上げた――そう言われれば納得してしまう程に眩く美しい刀身が、鞘の内よりその姿を顕す。

 アイオーン同様の片手用両刃直剣の形を取る、鍔(ガード)と一体となった鋭き刀身。根本から鋒に向かうに連れてわずかに幅を狭くする刺突と斬撃の両立を意図した構造と、刀身そのものが持つ色から醸し出されるどこか優美な印象によって、まるで観賞用の芸術品であるかのような錯覚すら覚えるが、それが武具としての性能を第一に考えて鍛造された事は一度振るってみるだけで十分に伝わる。

 

「《シルヴ・ミティオール》――それが、この子の名前。私がキリトくんに初めてあげる、剣の名前だよ」

「シルヴ・ミティオール……どういう意味の言葉なんだ?」

「スラブ語……ざっくり言うと、ロシアに近い地方の古い言葉で『銀の流星』って意味なんだよ」

「『銀の流星』か……。なるほど、確かに」

「でしょ? でも、もっと武器らしい名前になおしてあげるなら……さしずめ《銀星号》ってところかな?」

 

 天より降り来る星の輝きを『号』――刀剣に与えられる愛称のようなもの――として戴く、銀の騎士剣。振られる度に切り裂かれる空気が奏でる刹那の音は、さながら銀星の光が奏でる歌の如し。

 レインより預かったその剣を、キリトが自らの装備として登録すれば、右手に掴んでいた鞘が背中にマウントされる。

 同じ装飾を施された黒鞘に収められ、キリトの背の上で交差する二振りの剣。

 それはまさに乱麻を断ちし快なる刀。一度その鞘より抜き放たれれば、刀光閃き首を刈り、剣影躍りて屍を増やす。たとえいかなる血戦場であろうと、黒き王の敵、その悉くを討ち果たす為に鍛え上げられた比翼連理にして無双の剣。

 

「うんうん。やっぱり、キリトはこうでなくっちゃ。ね、レイン」

「そうだね。こうしてると、やっぱりキリトくんらしいって感じがしてくるよ」

 

 見慣れた『二刀流』装備を調えたキリトを正面から見つめながら、リズとレインは満足げに頷く。

 かつての愛剣達が共にリズの手によって生み出された兄弟剣だとするならば、此度の『アイオーン』、そして『銀星号』は、さしずめ”異母兄弟剣”という所になるだろう。

 その二振りの核となったのは、ドラグーンケイブ大峡谷地帯でPKクランに襲撃を受ける直前に二人が手に入れたレア素材アイテム。そのレア素材をベースに、複数の高レベル鉱物を惜しみなくつぎ込み、リズの鍛造で基礎スペックを大幅に上昇させたあと、レインが得意とする特殊効果付与の技を組み合わせるという超高難易度の『鍛冶スイッチ』を経て生み出された二振りの魔剣。

 

 キリトの懐事情への遠慮など最初からかなぐり捨て、ただひたすらに高みを見据え、より良き刃を鍛え上げんとする志の元に鍛造された剣。どちらも甲乙付けがたく、そしてそう簡単にお目にかかれるような代物では無い。

 純粋なステータスはともかく、その質の高さと込められた熱量は、キリトが密かに携える守り刀――《ALO》最強の剣・レジェンダリーウェポン『エクスキャリバー』にも引けを取らないだろう。

 

 今なお伝説に名を残す騎士の王が携えた一振りに限りなく近しい名を冠する、金色の剣。かつて故国の安寧を守る戦いに生涯を捧げたかの王の側に、同じ円卓を囲んだ英傑達が居たように。今のキリトの周りにも、共に苦難に立ち向かってくれる大勢の仲間がいる。

 決して折れる事なき大剣が放つ、眩き黄金の輝き。その輝きをかけがえのない仲間との絆の象徴とするならば、いまキリトが背負う相極の剣は、キリト自身の象徴といえるのかもしれない。

 仮想世界の光も闇も併せ呑み、何かを守るために刃を振るうという矛盾を進む。そうしてどうにか踏み越えてきた道の苛烈さを、そしてこれから進み行く道に待つであろう苦難を、背負った二振りの剣はその重さを以ていつも思い出させる。

 

「今度は折れる前に持ってきなさいよ、キリト。うちの店で完璧に修理してあげるから」

「メンテだって任せてもらっていいんだからね、キリトくん。まあ、さすがにお店は無いけど……野外メンテキットはいっぱいあるし!」

 

 そして、剣は教える。決して切れる事の無い絆によって、いつも支えられているということを。己が孤独などではないということを。幾度となく砕かれ、その身と魂をへし折られようとも――再び立ち上がることができるのだということを。

 

「リズ、レイン。二人がくれた剣の凄さ、観客全員に思いっきり見せつけてやるよ」

 

 信頼のにじみ出た笑みを浮かべる二人の鍛冶士を、キリトは両腕でまとめて抱きしめる。

 黒い剣を握る右腕で、リズを。

 白い刃を操る左腕で、レインを。

 武具を鍛える炎のように暖かな温もりごと、己の腕の中へと収める。

 

「バッチリ勝ってきなさい、キリト」

「負けちゃヤだよ、キリトくん」

 

 欲望に満ちたエゴイスティックな抱擁の中、二人はごく自然な所作で身を寄せ、キリトと唇を重ねる。レインは淑やかに。そして、リズベットは情熱的に。

 それは、愛する者の勝利を願う優しい接吻(おまじない)。唇と心に触れるその柔らかさが、キリトの静かな闘志の炎に新たな燃料をくべる。

 負けられない理由が、また一つ増えた。その重みが、今はとても心地よい。 

 

「じゃあ――いってくる」

「いってらっしゃい、キリトくん」

「あたし達も後で観客席行くわ。応援してるからね」

 

 最後にもう一度、二人の体を強く抱きしめる。そうして、わずかな名残惜しさを感じつつ抱擁を解いたキリトは、二人に背を向けて控え室を出た。

 そのまま出場選手用の通路に足を踏み出し、試合会場へと向かうことしばし。

 途中、出場選手用の通路と観客席へ続く通路が繋がったT字路まで来たところで、キリトはそこに見知ったプレイヤーの姿があることに気づいた。

 

「……ルクス?」

「ひゃいっ!?」

 

 観客席側へ続く通路の壁に隠れるような位置で蹲っていたルクスが、驚愕の声と共に飛び上がる。

 ふんわりとした長い髪が大きく揺れ、普段はおっとりとした印象を与える大きな目には困惑と驚きの色がありありと浮かんでいた。

 

「やっぱりルクスか。どうしたんだ、こんな所で」

「きっききききキリトさま!??! どっどどどうしてここに!? いえキリト様がいるのは当然ですよね!? ですよね! 私はわたわたえっとえっとごあいさつというか連絡というかええっっっと!?」

「うん、驚かせたのは謝るから、一旦落ち着こうな。ルクス。はい、深呼吸深呼吸」

「深呼吸、深呼吸ですねキリト様……すー、はー……すー、はー……」

 

 衣服越しにもそうとわかる大きな胸を揺らしながら、ルクスはどうにかこうにか落ち着きを取り戻す。

 キリトやキリトの友人達同様に《SAO》サバイバーであるルクスだが、キリトが彼女と知り合ったのは《ALO》をプレイし始めてからだ。一時期のルクスが、キリトの姿を真似たようなアバターで活動していたおかげで人違いされた事がきっかけだったが、リズやシリカ、それにリーファはだいぶ以前からルクスと一緒に《ALO》をプレイしていたらしい。

 そんなルクスは、まるで今し方、短距離走で全力を出したかのように激しく消耗している。その様子に怪訝な思いを抱きはしたが、それ以上にキリトは彼女がここにいる所以の方が気になった。

 

「それで……こんなところで一体どうしたんだ、ルクス」

「ええと、その……もうすぐ試合開始時間だから、キリト様に一声かけてきて欲しいと、アスナさんにお願いされまして……。

 ウンディーネである自分が行くといらぬ面倒が起きそうだから……と」

「それでわざわざ来てくれたのか……ありがとう、ルクス。手間かけさせちゃったな。

 それと、『様』付けはしなくていいんだぞ」

「はっ、はい。キリトさま……じゃ、じゃなくてっ。キリトさん」

 

 無意識にやっていたのだろう。ルクスは慌てた様子で口元に両手を当て、こくこくと首を縦に振る。

 リズの紹介で彼女と友人になってから気づいたが、ルクスはどこかキリトを英雄視、もしくは神聖視している節がある。そう思われること自体は不快というほどでは無いが、己の身の丈に合っていない高すぎる評価だと思っているし、『様』付けの敬称と共にルクスの憧れと信頼で満ちたような視線を浴びるのは流石にこそばゆい。

 

「アスナに伝えておいてくれ、ルクス。『ルクスが来てくれたおかげで、試合に遅刻せずに済みそうだ』って」

「いえ、そんな……では、伝えておきますね。キリトさん」

「ああ、よろしく頼む。じゃあ、いってくるよ。ルクス」

 

 そう言ってキリトはルクスに背を向け、試合会場へと続く廊下を再び歩き出す。

 

「――あ、あのっ! キリトさんっ!」

 

 五歩ほど歩いたところで、不意に背中に投げかけられたルクスの声。その声を当然無視するわけも無く、キリトは脚を止めて振り返った。

 

「どうした?」

「あの、えっと……キリトさん、その……」

「……ルクス?」

「ごっごめんなさい! なんでもありません! ごっごご武運、お祈りしておりますっ!!」

 

 どこか慌てた様子でぺこりと一礼したあと、ルクスは観客席に続く廊下を走り去っていった。

 彼女の落ち着きのなさと、妙に歯切れの悪い口ぶりは気になったが――少なくとも、応援されていた事だけは間違いないだろう。

 あっという間に見えなくなってしまったその背中に向けて勝利を誓ったあと、キリトは試合会場に向けて再び歩き出した。

 

 


 

 

『――大変長らくお待たせいたしました! 本日の特別試合! ウンディーネ・スプリガン両領主が選出した特別選手達による、エキシビジョンマッチ! 

 実況はあ(・)て(・)ことバレット・ライガーが引き続きお送りさせていただきます!!』

 

 実況席を占拠したトランジスタグラマーな金髪美少女ケットシーがマイクから響かせる声に合わせて、客席のボルテージが一つ上のステージへとシフトする。増しゆく一方の喧騒の中で、少女――ルクスはようやく、自分が観客席に帰ってきている事に気づいた。

 いつ、どこをどう通ったのかもはっきりとしない。よほど慌てて席まで戻ってきたのだろうか、心臓の鼓動はバクバクと激しいビートを重ね、収まる気配を一向に見せようともしなかった。

 ――いや、ルクスにはわかっていた。この心臓の高鳴りが、決して不意の全力疾走によるものだけが原因ではないことを。

 

(キリト様が……キリト様が……キス、してた……キスしてた! リズと……レインさんとも……。

 あんなに激しく……ぎゅってしながら……!)

 

 薄く開いた控え室の扉越しに見てしまった、その光景――見間違いや勘違いで片付けるには、三人の口づけはあまりに長く、そしてあまりに情熱的だった。優勝者を称える会場の喧騒が、ルクスの鼓動の音を、走り去る足音をかき消してくれていなければ、今頃気づかれていてもおかしくなかっただろう。

 

『水妖精(ウンディーネ)側の代表選手に続いて、現れたのは――おお、まさか! この黒ずくめはまさかっ!!

 傷の痛みも患わず、謀られてなお嗤うヤツ! 誰が呼んだか二刀流、影の果てより来た男!!! 

 影妖精(スプリガン)族代表選手・キリトの入場だああああああああああああああああああっ!』

 

 闘技場の中央に広がる、砂地のバトルフィールド。二振りの長剣を背負った漆黒のスプリガンがそこに姿を表すと、戦場を取り囲むように配置された観客席の至る所から歓声が上がる。

 

「お兄ちゃーん! 頑張ってー! 負けたら晩ご飯のおかず、あたしがもらっちゃうからねー!」

「こうしてみると……意外とサマになってるわね、キリト。馬子にも衣装ってやつかしら」

「あはは……それはちょっとかわいそうだよ、シノのん……」

 

 ルクスと同じボックス席に配置された長椅子に腰掛けたリーファ、シノン、そしてアスナが思い思いの感想を述べる。その一段下の長椅子では、トーナメント一回戦で華々しく散ったガーネットを挟み、シリカ、そして遅れてやってきたリズとレインがキリトに向けて声援を送っていた。

 観客達が送る(ウンディーネ側の代表選手への応援と比較すると、かなりの割合で怨嗟と嫉妬と揶揄が混じった)声援に軽く片手を上げて歓声に応えながら、キリトはそれとなく周囲を見渡す。

 何かを探しているようなその視線が一瞬、ルクスを捉えた――気がした。

 

(……っ!?)

「あっ、お兄ちゃんがアスナさんの方見た。すっごくいい顔してる」

「あら、ほんとね。……こんなに観客がいても、ちゃんとアスナの居場所は把握してるのね」

「も、も~! リーファちゃんもシノのんも! 私を見たんじゃなくて、みんなを見たに決まってるでしょ!」

「それはどうですかね~? ねえ、シノンさん」

「ええ。怪しいものね。たぶんアスナしか目に入ってないわよ、あの人」

 

 二人にからかわれ、アスナは頬を真っ赤に染めて抗議するが暖簾に腕押し。せめてもと、味方を求めて彷徨う水色の瞳が、隣に腰掛けるルクスの瞳を捉えた。

 

「ルクスさんも、キリトくんと目が合ったよね? キリトくん、私だけじゃなくて、ルクスさんの事も見てたよね?」

「え、えっと……。はい、私もキリト様と……こほん。キリトさんと目が合った気がしたよ。アスナさん」

 

 崩れかけた普段の口調をどうにか立て直し、ルクスは首を縦に振る。

 アスナと見つめ合っていたのは、実際には一秒あるかないか程度の時間だったのだろう。それでも、清らかな水面のように透き通った水妖精の瞳は美しく、ルクスの全てを見透かされてしまいそうな錯覚を覚えるには十分すぎる時間だった。

 ――いや、もしかしたら本当に、ルクスの何もかもを見透かされてしまったのかもしれない。視線を逸らす寸前、アスナが浮かべた慈愛とも寛容とも取れぬ曖昧な苦笑の理由を、ルクスは見つけられなかったのだから。

 

「ほーら、ルクスさんもこういってるじゃない! キリトくんは、ちゃんと皆を見てたんだからね?」

「むう……まあ、ルクスがそう言うなら……」

 

 自慢げな顔つきでアスナがそう言うと、渋々といった様子でリーファが引き下がり、シノンも軽く肩を竦めて追及を止めた。

 眼下に広がるバトルフィールドでは、キリトが背中の鞘より二振りの剣を引き抜き、ウンディーネの代表選手と対峙していた。その凜とした佇まいは、まさにルクスが憧れた解放の英雄。今も心より恋い慕う、最強の剣士。

 だが、その人の隣には既に愛する人が居る。共に未来を歩むと誓った相手が居る。故に、この想いが叶うことはなく、苦く切ない痛みと共に抱え込んでいく他に無い――そんな風に、思っていた。

 ルクスと同じ想いを抱え、ルクスと同じ苦しみを抱く友人が――ルクスの想い人の腕に抱かれながら、熱い口づけを交わす姿を見るまでは。

 

(私は、どうしたら……私は……どうしたいの……?)

 

 答えの出ない問いだけが、ルクスの胸の中でぐるぐると渦を巻く。会場を沸かす観客達の熱狂も、友人達の応援の声も、今はどこか遠くに聞こえる。

 

『両者準備が整ったところで……それでは参りましょう! 時間無制限一本勝負!

 エキシビジョンマッチ、レディ――ゴオオオオオオオオオオッ!!』

 

 高らかに鳴り響くゴングの音と共に羽を広げた二騎の妖精は、瞬く間にトップスピードへ到達し、空中で激しく切り結びながら火花を散らす。

 その光景も、応援の声を上げる友人達の姿すらも、今のルクスにはどこか遠い世界の出来事に思えて仕方が無かった。

 惑いに沈む心と裏腹に、高鳴る心臓の鼓動。何かがはっきりと変わってしまった世界で、居場所を見失ってしまったかのような切なさを感じながら――ルクスは何かにすがりつくかのように、黒の剣士の戦いを見つめ続けた。

 

 

 

 ルクスはまだ知らない。

 この場に居る女子達の多くが――というか、ルクスとガーネット以外の全員が、既にキリトと深い仲であることを。ストレートに言ってしまえば肉体関係にあることを。それがあまりに爛れきったものであることを。

 それらの驚くべき事実と共に、とある個人宅のサーバ内に設置されたプライベートVR空間にルクスが辿り着くのは、これよりもう少し後の事になるのだが――それはまた、別のお話。

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