※この作品はR-18です。

おそらくはありふれた究極的なやりかた   作:Hastnr

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01. 氷の狙撃手は黒の剣士の夢を見るか? (シノン)

――――――

 

 居住空間のレイアウトには、住む人の性格が出るという。

 それが現実の世界に比べ、カスタマイズ性に圧倒的な自由度を誇る仮想世界であれば尚更だ。

 そんな仮想世界に於いて、『現実の自分の部屋とさほど変わらぬレイアウト』を設定している人間がいるとすれば、それは余程の変わり者か、あるいは実用性第一主義者と判断していいのかもしれない。

 

「――シノン、居るか?」

 

 そのどちらでもない”彼女”の部屋の前に立ち、キリトは扉を二度ノックした。

 最高権限管理者(アドミニストレータ)にはユーザーログイン通知機能が付随するため、シノンがログイン済である事は知っている。いざとなれば彼女の空間座標を即座に把握したり、鍵のかかった部屋を強制的に開けることもできるとはいえ、『マナー』や『エチケット』はどこにでもある。

 どれだけ深い仲になろうとも、守るべき一線というものはあるのだ。

 

『待って。今、開けるわ』

 

 扉の向こうから微かな声が聞こえてから数秒の後。解錠を示す効果音(サウンドエフェクト)と共に、目の前の扉がゆっくりと開く。

 

「こういう場合、『お邪魔します』って言うべきなのかな。シノン」

「……微妙な所ね。ここ、一応あなたのお家の一部なんだし。

 まあ、それはともかくとして……入って、キリト」

 

 そう言って出迎えたシノンに招かれ、キリトは彼女の私室へ足を踏み入れた。

 『GGO』最強のスナイパー・『シノン』。『氷の狙撃手』の異名を持つ、BoB優勝経験も持つ女傑(クール・ビューティ)。

 そのアバターを使用してログイン中の彼女――『朝田詩乃』が、キリトのプライベートVR空間に用意された私室スペースに再現しているのは、現実の世界で自分が暮らしているのとほとんど変わらない間取りだった。

 ちなみに、キリトがこの空間にログインする際に使用するのは、もっぱら『SA:O(オリジン)』のアバターだ。それは今日も例外ではない。

 こうして他のVRMMOからアバターデータを流用できるのも、システムの中核に『ザ・シード』を据えた恩恵の一つだ。

 

「そういえば、先週はありがとう、キリト。

 キリトが手に入れてくれた装備、有効活用させてもらってるわ」

「どういたしまして。俺も楽しかったし、『HSGC』がまた開催されたらぜひ呼んでくれ」

 

 そう言って、冷蔵庫や二口コンロが設置された一人暮らし用のさほど広くないキッチンスペースをシノンの後に続いてキリトが通り抜ける。

 『HSGC』――正式名称を『High Speed Gunner Cup』という、『GGO』の特色の一つである『乗り物』をフィーチャーしたタッグ制の新イベント。

 一台の乗り物にドライバーとガンナーの二人一組が乗り込み、規定のチェックポイントを通過して最も早くゴールに辿り着いたプレイヤーが優勝となる、『BoB』や『SJ』とはまた少し趣の異なるイベントだ。

 概要のみ聞けば普通のレース系イベントと変わらないように思えるが――なにせ開催されているのは『GGO』。スタート地点から第一チェックポイントまでの火器封鎖エリアを抜けて以降は、敵チームの車両や人員に自由に攻撃を加えてよいというルールになっている。

 当然、火器封鎖エリアを越えた途端、各チームの車載火器やガンナーの対戦車ロケットランチャー等が一斉に火を吹き――結局、参加した全50チームの中で、どうにかゴールまで辿り着けたのはたったの3チームしかいなかった。

 銃撃戦になることを想定し、参加者の大半が装甲車や兵員輸送車、あるいは高機動戦闘車や火器付きホバークラフトで参加する中、見事優勝を掻っ攫ったのはトライクにまたがったキリトとシノンのタッグ。武装や装甲をほとんど搭載していないビークルでの参戦、そして勝利に、イベントを中継していたグロッケンのバー内は大いにどよめいたらしい。

 

「でも、あれ。最後はちょっとだけ危なかったわよね……」

「ああ……危うく、負ける所だったよな」

 

 『HSGC』終盤。

 先頭を行くキリト達と、その後方にぴったりとくっついてきた高機動型ジープとの優勝を掛けた一騎打ちという状況。

 連装式大型グレネードランチャーを両手に一丁ずつ構えた小柄なガンナーが、先を行くトライクめがけて炸薬弾を雨あられと降らせてくる中。わずかな間隙を縫ってシノンが放った弾丸が、ついにジープのエンジン部を直撃。

 機関部をぶち抜かれ、燃料に引火したジープはその場で爆発炎上。これで優勝は間違いないと、シノンが胸をなでおろした瞬間――爆炎の中を貫くようにして飛び出してくるピンク色の人影が一つ。

 その人間とは思えない加速性に、シノンは一瞬、それが今しがた爆散させたジープのドライバーであることを――更に言うなら、見知ったプレイヤーである事を認識できなかった程だ。

 

(まさか、レンとフカ次郎まで参加してるとは思わなかったよな……)

 

 要を為さなくなったジープを捨て、二本の脚で砂礫の大地を駆けるピンク色の人狩り兎(ヴォーパル・バニー)――レン。

 爆炎すらもアシストとして活用し、文字通りのロケットスタートで一気に速度を上げたレンの姿をサイドミラー越しに視認した時、キリトは驚愕のあまり危うくハンドル操作を誤りかけた。

 無論、驚愕に襲われていたのはシノンも同様だったらしく、小柄な追走者を狙って放たれた対物ライフルの弾丸は僅かに狙いを外し、レンの体を直撃するコースを逸れた。もしその逸れたヘカートⅡの弾丸が、レンが腰に下げた愛銃・P90を直撃して彼女の速度を少しばかり減衰させなければ、レースの行方はわからなかったかもしれない。

 結局、半泣きになって罵詈雑言を叫びながらもレンは最後の最後まで喰らいついてきたが、最終的には僅差でキリト達が先にゴールし、優勝賞品である超高精度スコープはシノンのものとなった。

 なお、P90を破壊した詫びとして、レンとフカ次郎にはグロッケンのレストランで美味い飯をたらふく奢ってやる羽目になったが、その金のほとんどはキリトが出した。おかげで優勝賞金のほとんどが飛んでいったが、使い道としてはさほど悪いものではないだろう。

 

「それで、シノン。呼ばれたから来たけど……今日はどうしたんだ?」

 

 シノンに案内されるままキッチンを隔てる扉を抜け、キリトは彼女の生活スペースへ脚を踏み入れる。

 キッチン同様、こちらの部屋の内装も、シノンが現実で暮らす部屋のそれとほとんど変わらない。唯一違う所があるとすれば、現実ではシングルサイズであるシノンのベッドが、こちらでは大型化している事ぐらいか。

 ――ちょうど、二人で寝転んだらしっくり来そうなサイズにまで。

 

「その……特に、何かあったわけじゃないんだけど……」

 

 そのどこか弱々しい声はどう考えても何かあった時の声音であるし、そのうつむき加減の顔から覗く表情はどう考えても何かあった時の曇り具合を見せている。いくらキリトが自他ともに認める朴念仁であるとしても、さすがにそれが分からないようであれば、彼女の部屋に招かれる資格など今すぐ剥奪されるべきだろう。

 ベッドの端に腰掛けるシノンに視線と言外の仕草で隣に座るよう強請られ、キリトは大人しく彼女の隣に腰を降ろすと、逡巡する彼女が場の主導権を握るより早く口を開いた。

 

「なあ、シノン。『HSGC』と言えばさ」

「何?」

「シノンはスコープが手に入ったからいいけど、俺は何も貰えてないんだよな。賞金もほとんど残らなかったし」

「……そういえば、そうね。賞品を一つしか用意しないなんて、ザスカーも意外と気が回らないのね」

「だろ? だからその代わりに、俺の相棒(ガンナー)から賞品を貰おうと思ってさ」

「それは構わないけど……今、あげられるような物なんて持ってないわよ?」

「知ってる。だからさ」

 

 きょとんとするシノンの体に腕を回して彼女の体を優しく抱き寄せれば、シノンは特に抵抗することなく、キリトの胸板に頭を預けてきた。

 全てがデータで構成された仮想空間とはいえ、互いの体を通して伝わるこのぬくもりと拍動は、きっと本物なのだろう。

 

「シノン。君が眠るまで、側にいていい権利を俺にくれないか。

 ……昨日、ちゃんと眠れてないだろ?」

 

 彼女の蒼い瞳を真っ直ぐに覗きこみながら、キリトは核心に触れる。観念したかのようにため息をついたシノンが素直に頷いたのは、それから十秒ほど後のことだった。

 

「――まったく。なんで、そういう事ばっかりカンがはたらくのよ。あんたは……」

「カンというより、経験と観察に拠るものだけどさ」

 

 キリトは何も見栄を張って嘯いたわけではない。シノンがこんな顔をする時、何に苦しんでいるか分からない程付き合いの浅い間柄ではないのだ。

 

「……ちょっとした変態ね」

 

 呆れたような声で詰りつつも、シノンは大人しく抱きすくめられたまま、その細い体をキリトの腕の中より離そうとはしない。

 ――かつて、トラウマの治療のためにメディキュボイドを使用していたシノンは、システム上の不具合により《SAO》にログインしてしまった事がある。キリト達と知り合ったキッカケもそれだ。

 慣れないフルVR空間、しかもデスゲームという異常に異常を重ねた状況下に突如追い込まれた彼女が不安を憶えないわけはなく、それは時折、不眠症状として顕著にあらわれた。

 そんなシノンが安心して眠れる数少ない場所の一つが、攻略組トッププレイヤーの一人であったキリトの側――そんな事情もあり、キリトは何度か彼女と寝所を共にしたことがあった。同じベッドで朝を迎えたりしたこともありはするが、誓って疚しいことはしていない。安心させるために手をつないだり、不可抗力で抱きついたりはした事はあるが。

 そんな、《SAO》で不眠に苦しんでいた当時と同じような表情をしていたシノンの体をベッドの上に倒し、キリトもその隣へ仰向けに寝転んだ。

 

「……ねえ、キリト。もう少し、そっちに行っても……いい?」

「ん? ああ、もちろん」

「……ありがと」

 

 ダブルベッドが必要な程の間隔から、シングルベッドでも並んで眠れる程にぴったりと身を寄せてきたシノンは、そのままキリトの左半身を自分の枕代わりに占領する。

 彼女の頭が定位置についた事を確認し、キリトは伸ばしていた左腕を曲げると、空いていた左手でシノンの後頭部に触れる。指先に絡み、そしてすぐさま解けていく蒼色の髪の感触が心地いい。

 

「キリトの指、くすぐったい」

「嫌か?」

「ううん……。いやじゃない」

 

 キリトの問いかけに応えるシノンの涼やかな声の中には、たっぷりの安堵と隠しきれない甘えが少しだけ溶け出していた。

 とくん、とくん、と脈打つキリトの心臓の音を確かめるように体を密着させたままじっと見つめてくるシノンから少しだけ視線を外し、キリトはコンソールウィンドウを空中に呼び出すと、空いていた右手をウィンドウに伸ばして装備解除コマンドを入力する。

 外見データのみを流用した見た目だけの装備とはいえ、戦闘用も兼ねた衣服のまま横になってはあまりリラックスできるものではない。手早く装備を外しシャツとハーフパンツというラフな姿になったキリトがウィンドウを閉じると、今度はその隣にシノンが同様のウィンドウを開いた。

 

「前から気になってたんだけど……管理者権限って、他の人のウィンドウやデータも操作できたりするの?」

「まあ、一応。そういうアカウントだからさ」

「ふうん……。隠さないのね」

「隠される方が嫌だろ? 悪い事には使わないから、それで勘弁してくれ」

「じゃ、私の代わりにこのボタン押してくれたら、信じてあげる」

 

 開きっぱなしになったシノンのコンソールウィンドウに表示された『装備解除』コマンドの実行ボタン。そのボタンにキリトが指先で触れると、ウィンドウが閉じると同時に聞き慣れた効果音が響き、シノンのアウター装備がストレージに格納された事を伝える。

 タンクトップ型の水着を思わせる、『GGO』アバター仕様のアンダーウェア姿になったシノンは、「ありがと」と小さな声で告げてそのまま静かに目を閉じた。

 このまま彼女が寝落ちするまで隣にいよう――腕の中で無防備な姿を晒すシノンの抱きまくらか湯たんぽにでもなったつもりで、その体をしっかりと抱き寄せたまま、キリトはただぼんやりと静かに時を過ごす。

 

「…………夢を、みたの」

 

 時計の秒針が二回りする頃。目を閉じたまま横たわるシノンの唇から、ぽつり、ぽつりと言葉が零れ落ちる。

 

「キリトと一緒に『SAO』をクリアしたことも、現実世界に帰ってこれた事も、何もかもが夢で……。

 たった一人で、誰もいない『SAO』に囚われ続けている……そんな、夢」

「…………」

「目を閉じたら、また同じ夢を見ちゃう気がして……そんな事で眠れなくなっちゃうなんて、子供みたいよね」

 

 少しだけ震えた声で自嘲するシノンの寂しさが、触れあう肌を通して伝わってきたせいだろうか。彼女の体を抱く左腕の力を、キリトは無意識に強めていた。

 

「――前、ある人に問われたことがある。

 『目を覚ましたら、まだアインクラッドに囚われたままかもしれない』――そう思ったことは無いか、って」

 

 強まった男の力に驚いたのか、あるいはキリトの答えを確かめるためか。シノンは閉じていた両の瞼をゆっくりと開け、キリトの瞳を真っ直ぐに見つめた。

 

「思ったことは何度もある。そう望んだことはない。……でも」

「……でも?」

「そこにアインクラッドがあって、シノンがあの城に囚われているのなら――俺は何度だって『SAO』にダイブする。75層だろうが100層だろうが全部突破して、シノンを現実世界に連れ戻すよ」

 

 『夢も仮想世界も似たようなもの。全ては泡沫に過ぎない』――かつて、キリトに問いを投げかけた白い髪の少女は、何かを諦めたかのような表情でそう語った。確かにそれは真理の一端なのかもしれないが、しかし決して真実そのものではない事をキリトは知っている。

 目を覚ませば全てが消え去る夢とは違い、世界そのものが崩れ去った後でも仮想世界で紡いだ記憶や絆が消え去るわけではないのだから。無論、今この腕の中にある温もりも、消え去りはしないモノの一つだ。

 

「……そういう事を本気で言えちゃうのが、キリトの悪(ズル)いところよ」

「そ、そうか……?」

「でも、おかげで今夜は安心して眠れそうな気がしてきたわ。

 ……ありがと、キリト」

 

 氷を融かす春の日差しのような暖かさを含んだ声でそう言い、シノンは再び瞼を閉じた。

 左腕に彼女の体を預かりつつ、キリトはそっと右腕を動かして空中にコンソールウィンドウを呼び出すと、自動ログアウト設定の項目を確認する。

 《アミュスフィア》とのデータ連携に問題は無い。このままシノンが深い眠りに落ちれば、キリトのシステムを経由した後の(・・・・・・・・・・・・・・・)脳波データを受け取ったアミュスフィアが、ハードウェア自体の仕様に従って彼女を自動でログアウトさせる。あとはそれを待つだけだ。

 

「……ねえ、キリト」

「ん? 悪い。起こしちゃったか?」

「い、いいえ。そうじゃなくて……」

 

 ふるふると首を横に振って否定しつつ、シノンはゆっくりと両の瞼を上げる。その瞳からは、明らかな戸惑いの様子が見て取れた。

 

「……このままだと、私。普通に眠れちゃいそうなんだけど……いいの?」

「ああ。自動ログアウト設定も有効になってるし、問題は何も――」

「そういうことじゃなくて……」

 

 目は口ほどに物を言うというが、蒼い瞳を潤ませながら何かを訴えかけようと見つめてくるシノンの言葉は歯切れが悪く、キリトが意図を読み取るには目も口も共に情報が不足している。

 

「……キリト。その、今日は……………………しなくて、いいの?」

 

 不足していた情報が埋まるどころかオーバーフローするまで、約10秒あれば足りた。

 対物ライフルから放たれた弾丸を真正面から受けて無事でいられる人間がいるだろうか? いや、いない。

 では、大理石のように怜悧な普段の印象がどこかに吹き飛んでしまうほどに頬を赤らめ、羞恥と期待が入り混じったような視線を向けてくるシノンの潤んだ蒼い瞳に至近距離で見つめられ、理性を無事に保てる人間がいるだろうか? いや、いない。

 少なくとも、宇宙船の装甲板よりも遥かに硬いと一部界隈で有名な、キリトの超高圧鍛造加工済クリスタライト積層式理性装甲は一撃でぶち抜かれ、ものの見事に砕け散った。

 

「それは……正直、したいですけども……」

「……けど?」

「シノンが弱ってる時に”そういうこと”をするのは、なんていうか……弱みにつけこむみたいで、最低だろ」

 

 粉々になった理性をどうにかこうにか寄せ集めて積んだ防壁で、溢れ出しそうな欲望にブレーキをかける。

 既に多くの女性と関係を持ち、いつ誰に刺されても文句は言えない――実際、彼女ら以外に刺されたり斬られたり殺されかけた経験は山のようにあるが――立場とはいえ、いや、そういう立場だからこそ、自らにセーブをかける必要があった。

 でなければ、本当に獣になる。しかも、『兎』とか『虎』とか『狼』のそれと変わらない所まで行ってしまう事を、キリトは既に痛感していた。

 

「シノンが気を使ってくれるのはすごく嬉しいけど、今日は……」

「――ねえ、キリト。わかってる?」

 

 ぎりぎりの所で踏みとどまろうとするキリトの言葉を、シノンが有無を言わさぬまま制する。

 

「…………つけこんでほしいから、部屋に呼んだんじゃない……バカ」

 

 飢えた獣の檻に、血の滴る新鮮な肉を投げ込んだ時、『喰われる』以外の結末がどこにあるというのか。

 破片を積んだだけの防壁めがけてグレネードを投げた時、『吹き飛ぶ』以外の結末がどこにあるというのか。

 少なくとも、今のシノンはキリトにとっての最上の獲物であり、わずかに俯きながら最後の言葉を絞り出すその様は最後まで残った理性の欠片を吹き飛ばすには十分すぎる破壊力を秘めていた。

 

(……ああ。これは、もう)

 

 さよなら理性。こんにちは獣性。また会おう自制心。ようこそ嗜虐心。

 完全にスイッチの入ったキリトは、腕の中に抱いたシノンごと自らの上半身を起こすと、そのまま彼女の唇を奪う。

 倫理コードなどという無粋なものを解除する必要はない。元より実装していないのだから。

 

「ひや、んんっ――♡」

 

 唇と唇を重ね、無理矢理こじ開けたシノンの口内に己の舌を送り込む。それと並行して片手をシノンの後頭部に、もう一方の手を細い腰に回して力づくで抱き寄せ、極めて冷徹に彼女の逃げ場を奪う。丁寧に作られた弓のように靭やかな肢体を密着させ、薄布一枚越しに互いの熱を感じ合いながら、ただひたすらに唇を貪り合う。

 

「んっ……んんっ……ぁふ♡」

 

 つややかな唇の端から甘やかな吐息を漏らすシノンは、今や呼吸する自由すらキリトに差し出していた。

 息継ぎする間もなく男の舌に口内を蹂躙され、一方的に弄ばれ続けながらも抵抗はみせず、むしろもっともっとと貪られる事を望む。新鮮な空気を取り込むのは、酸欠寸前になってようやく緩む拘束の合間だけ。そして、まるで呼吸する時間すらも惜しいとでもいうかのように短い息継ぎを終えた途端、再びキリトの舌を口内に招き入れると、彼を逃すまいと自らの舌をねっとりと絡めて奉仕する。

 そんなシノンの背に回していた手の位置を、キリトは戯れにゆっくりと下方向へスライドさせる。不躾な男の手がほっそりとした腰を経て、適度に引き締まりつつも扇情的なカーブを描く臀部に至る。その手の持ち主がキリトで無ければ、今頃身体的にも社会的にも抹殺されているだろう。そうする代わりに、シノンは腰を少しだけ前に動かし、キリトの下腹部を覆う布を内側から押し上げる硬い物体へ自らの下腹部を浅くこすりつける。

 健気にアピールするシノンの仕草に愛おしさを感じつつ、キリトは彼女の頬に手を当て、長々と続いていた口づけに一旦幕を引いた。

 

「キリト……」

「ちょっと待っててくれよ、シノン。

 ――システムコマンド。オブジェクトID・『大型クッションタイプC』、マルチジェネレート」

 

 キリトの音声命令(ボイスコマンド)に従ったシステムが、ベッドの上に白いクッションを複数生成(ジェネレート)する。小さな山のように積み重なったクッションを背もたれ代わりにして体勢を整えたキリトは、シノンの身体を正面から抱きしめるようにしながら、彼女を自分の脚の間へと座らせた。

 

「――脱がすぞ、シノン」

 

 優しく、しかし有無を言わさぬ強さと共に耳元で囁いてやれば、瞳を情欲にとろけさせたシノンは躊躇いもせずに首をこくりと縦に振る。

 素直な彼女の頬に軽い口づけを落とした後、キリトはコンソールウィンドウを呼び出し、管理者権限で彼女の装備情報に割り込むとシノンが身につけていたもの全てをストレージへ格納する。

 聞き慣れた効果音と共に顕になるのは、しなやかながらも主張することを忘れない均整の取れたボディライン。そして氷の彫像を思わせる白い肌。しかして、その肌の内より迸る愛欲の熱は、シノン自身の理性と、その姿を見つめる事を許された男の理性を共に蕩かし尽くすだけの熱さを秘めている。

 首の下から爪先まで、産毛の一本すらも生えていないその姿は、まるで神々の美をたたえて捧げられた彫像の如し。

 瞬く間に一糸まとわぬ姿へと変えられたシノンは、肌を晒す羞恥を表情にありありと浮かべつつ、キリトの首に腕を回す。

 

「……離れちゃ、イヤ」

「ああ、わかってる。どこにもいかないよ、シノン」

 

 シノンの身体を引き寄せ、再び唇を重ねる。先程まで繰り広げられていた貪るように激しい口づけとは異なる、甘くゆったりとしたリズムでキスを交わし、互いの存在がここにあることを確かめ合う。

 唇と唇の間から幾度となく溢れる、熱い吐息と水音。いやがおうにも昂らされる女体の柔肌に手を這わせたキリトは、彼女の形の良い乳房を撫で回し、色素の薄い先端部を指先で弄ぶ。

 

「ひゃっ……んんぅっ♡ キリ、ト……それ、ふゃぁっ、だめぇ……♡」

「管理者権限で却下させてもらう」

 

 切ない声を上げるシノンを、キリトの手と口は無慈悲に辱め続ける。

 柔らかな肌色の双丘を優しく揉みほぐす一方で、不意のタイミングで乳首を強めに刺激する。反射的に上がる嬌声を抑えようとするシノンの唇をこじ開け、室内に艶めいた歌声を響かせ続ける。

 与えられる快楽と身の内よりあふれる熱に浮かされたシノンは、無意識のうちに腰を動かし、自身の下半身をキリトの下半身を覆う布に擦り付ける。固く大きな柱上の物体によって下から押し上げられた布地に、シノンの秘所から溢れ出した粘質液が染み込み、言い訳しようのない黒黒とした痕跡を残した。

 

「ほんとに可愛いな、シノンは。それに、すごくやらしい」

「あっ、あんたが、んんぅっ♡ 私をこんな風にした、んっ、でしょ……! ゃあ゛っんっ♡」

 

 盛りのついたメス猫のように腰をへこへこと振って、シノンは布地一枚向こうにある雄の象徴をねだる。

 彼女の秘所に触れるキリトの中指と人差し指の先で、くちゅくちゅという粘ついた水音があがり、肉壷の奥から溢れ出した劣情の証が絡みつく。彼女の内側を擦り上げ、より深い官能に堕ちていけるように導きつつ、しかし達する寸前で押し留めながら焦らし続ける。

 男の太い指の刺激に一段と高い嬌声を上げるシノンの眼前に、彼女の秘所をいじったばかりの指を差し出す。キリトが何も言わずとも、シノンはその指を口に含み、自分の奥底から染み出した蜜を丁寧に舐め取った。

 

「……キリト、キリトぉ……♡ わっ、私、もう……」

「ん? 何か言ったか?」

 

 当然、シノンの声は聞こえているし、この状況で彼女が何を求めているか分からないはずもない。

 わざとらしくとぼけてみせたキリトは、シノンの頭にぽんぽんと触れて指舐めを終えたことを褒めてやりつつ、唾液まみれになったもう片方の手でコンソールウィンドウを呼び出す。

 

「……意地悪」

「ごめん、やりすぎた」

 

 ともすれば泣き出しそうな顔をみせるシノンに謝りつつ、キリトは残っていた自らの装備を全て解除した。

 長らく拘束されていた肉棒は、解放と同時にぶるん、という効果音がつきそうな程の勢いでしなるように飛び出し、その存在を主張する。

 可能な限り控えめに見積もっても標準の太さと長さを大きく上回るキリトの赤黒い雄の象徴は、天を衝けとばかりに力強く反り返って主の興奮度合いを如実に表しながら、大きく張り出した先端部でシノンの下腹部に触れる。

 かつて自らの純潔を喰らい、これまで幾度となく己を貫いたキリトの一物の感触と、どこかグロテスクなその形状を目にしたシノンは、まるでチャームでも喰らったかのように陶然としたまま腰を浮かせる。準備はできていると言うかのように。

 

「シノン」

「――きて、キリト」

 

 シノンの腰を持ち上げたキリトは、彼女の脚と脚の間に屹立した肉棒の先端を充てがう。ぐじゅりという音を立てて互いの性器を触れ合わせて狙いを定めた後、シノンと真正面から見つめ合ったまま、その細い身体を真下へと引き下ろす。

 

「――ぁっ……! くぁうっ、お゛っ――あいかわらず、お、っきい……♡」

 

 少女の奥から湧き出る蜜を潤滑油とし、狭い肉の通廊を強制的に押し広げながら進む太い肉棒の感触に、シノンが甘い鳴き声をあげる。

 キリトの脳から背筋に駆け抜けるのは、雌穴の入り口から奥までの全てを支配していく感触と本能的な悦楽。その悦楽を更に容赦無く貪りたいというギラついた欲求を抑えながら、キリトはシノンの身体を支え、互いの身体を再び密着させた。

 

「キリトの――あっ……奥まで、んっ、きてる……♡ 私のなか、いっぱいにされてる……♡」

「痛くないか? シノン」

「だいっ、じょうぶ……もう、キリトの形、んんっ……ちゃんと、憶えちゃったから……♡」

 

 根本まで完全に挿入された肉棒に貫かれ、張り出した亀頭に子宮を刺激されるシノンの口から、与えられる悦楽に酔いしれる吐息とともに喘ぎ声が溢れ出す。いわゆる対面座位の体勢で繋がったシノンの体に、膣内を貫く肉杭の形が今日もまた刻み込まれていく。

 キリトの首に両腕を、腰に両足を回して、愛する男を離すまいとぎゅっとしがみつくシノン。そんな彼女の腰と背に手を回し、バランスを崩さないよう支えてやるのは言うまでもなくキリトの務めだ。

 

「じゃあ――動くわね、キリト」

「ああ。頼む」

 

 発情に蕩けた表情のまま、シノンはもう一度口づけを交わすと、密着させていた腰をゆっくりと上げる。ゾクゾクするほどの悦楽を全身で味わいながら、シノンは肉棒の先端が自らの内から抜ける寸前の高さまで腰を持ち上げる。根本から半ばまでが露わになった肉茎はたっぷりと滲み出た女の蜜によってコーティングされ、天井のLEDライトから降る光を反射してぬらぬらと妖しくテカる。

 腰を上げきり、頂点で味わえる快感をじっくりと堪能したシノンは、キリトに体を支えられながら先ほどとは真逆の動きで腰を沈める。わずかでも離れたくないとでも言うかのように、器用に腰だけを動かして肉棒を受け入れていくその姿は、締め付ける雌肉の感触と共に雄の本能的な繁殖欲求を刺激する。

 

「――っっぅっんんんっ! はあぁっ、あ゛っ゛……♡」

「そういえば、シノンはこの辺りが弱いんだったよな」

「ひゃっ――んっ゛、やぁああああああっっっ♡♡」

 

 支える手の力によってストロークの軌道が微妙に変化した事で、張り出したカリの部分がシノンの内壁を抉る。根本まで突きこまれた肉棒が子宮口を刺激し、そこが誰の子を孕む為の場所かを直接教え込む。

 

「お゛っ、あっ、んいひぃっ♡ あああっ♡ やっ、やぁああんっ♡♡」

 

 下から上へ、そして上から下へと繰り返され続けるピストン運動によって、シノンの感じやすい部分はダイレクトに刺激され続ける。脳神経が焼ききれそうなほどに激しく与えられる快楽は許容量をとっくにオーバーしており、シノンは半ば忘我の境地で腰を上下させ続けていた。

 

「やああっ、んんんっ! ――キ、リト、しゅき、あっ、ああ゛っ♡ あ゛ーっ、あ゛あひぃぁやああっ♡」

「俺も、好きだぞ、シノン……!」

 

 シノンの耳元で愛を囁き、気まぐれに唇を奪う。上下する彼女の腰の動きに合わせ、キリトもまた下から肉棒を突き上げる。今や一突きごとに軽く達する程に登り詰めさせられたシノンは、互いの腰が密着する度に接合部からぷしゃぷしゃと愛液を撒き散らしながら、膣肉で雄の象徴を包み込み射精を促す。

 抑え込んでいた昏い欲望を己の体を動かす燃料として焚べ、キリトは腕の中に抱いた女を幾度となく突き上げ、シノンの媚肉を貪り続ける。

 そして訪れる、腰の中身を全て引き抜かれそうな、冷たく、そして熱い独特の感触。体中の神経間隔と熱量を集め、番う相手に子を宿させる準備が整った事を示す放精の兆候に支配され、キリトの思考は一点のみに集約されていく。

 

「っ……! シノン! シノンの中に、全部出すからな!」

「きて、全部、んんっ、きてぇ、キリトぉっ! ――あ゛っ、っふ、ああ゛ああっ♡」

  

 射精したい。この女を己の物としたい。この雌に自分の子を孕ませたい。

 己の内より沸き立つ原始的な欲求に突き動かされたキリトは、腕の中に抱くシノンに今日最も激しい抽送を叩きつける。ラストスパートに入った今、両腰をがっちりと固定されたシノンに最早逃れる術はない。

 シノンに出来るのは、男の体に両手両足を絡めて与えられる快楽を享受し、その果てに来るモノを待つことだけだ。

 そして――彼女の蜜壺の最奥までを深々と貫き、キリトは溜め込んだ全てを解き放った。

 

「――っ、シノン!」

「キリ――――――ぁぁあああ゛あ゛っ♡♡♡ んゃっ、やああああああっっっ♡♡♡」

 

 最後の一突きで深い官能に達したシノンの肉壁が、愛する男の子種を求めて収縮する。その動きに導かれるように、キリトは白濁した精液を放出する。

 子宮口にぴったりと押し当てられた亀頭から勢いよく吐き出される子種汁は、どっぷりと重く、そして濃い。ただでさえ深い絶頂の中にいるシノンの体は、男の種を受け入れた衝撃と喜びに本能的な快楽を呼び覚まされ、子宮を満たす精液の感覚によって幾度も幾度も絶頂の中へと叩き込まれていく。

 その歓喜に打ち震える膣内が連鎖的に蠢き、深々と突き刺さるキリトの肉棒を再び刺激し、さらなる射精を誘発した。太い茎で栓をされ、迸る精液を一滴残らず子宮で受け止める悦楽に溺れさせられたシノンは、自分の体を支える力すらも失い、くったりとした様子でキリトへもたれかかった。

 

「…………おつかれ、シノン」

「――――……ゃ、ぁっ……」

 

 未だ絶頂の中から帰ってこれていないシノンを抱きとめつつ、キリトは汗に濡れた彼女の髪を優しく梳く。

 ふと、己の分身をシノンの股ぐらから引き抜こうかと思ったが、以前同じことをした時にシノンがご機嫌斜めになった事を思い出して取りやめとした。

 

(ま……あとで、いいか……)

 

 ぼんやりとそんな事を考えつつ、キリトはクッション側に体重を預け、行為中より少しだけ深く姿勢を倒しながらシノンが『戻ってくる』のを待ち続けた。

 

 それから約数分の後。どうにか正気を取り戻したシノンが見せた、行為の余韻に浸るどこかしっとりとした雰囲気と悦楽に蕩けた顔に思い切り興奮してしまったキリトは、思わず彼女をベッドの上に押し倒してしまうのだが――まあそれは、キリトとシノン、そして他の愛人(ヒロイン)達にとってはいつものことだ。

 無論、精巣が空になるまでぶっ通しで、いわゆる『種付けプレス』の体勢でシノンの胎内に精を放ち続け、彼女の足腰が立たなくなるまで幾度となく絶頂の快楽を味わわせてしまうことも、だが。

 

 

――――――

 

 

「……ねえ、リーファ。私の顔に、何かついてる?」

 

 第一回『HSGC』終結から10日後。キリトのプライベートVR空間の一角。

 眩しい太陽の光が降り注ぐプールサイドに置かれたビーチチェアに寝そべりながら、シノンは隣にいる視線の主に問いかけた。

 

「い、いえ! そういうわけではないんですけど……」

 

 金色の髪を括ったポニーテールが目を惹く少女――リーファは、わたわたと慌てた様子でシノンの問いを否定する。シノンもリーファも水着姿ではあるが、泳ぐほどの気分には少しだけなれず、パラソルの下でビーチチェアに寝転がりながらまったりと時間を過ごしていた。

 

「ただ、その……今日のシノンさん、なんだか機嫌が良さそうだなー……って」

「そう?」

「はい! まあ、なんとなくそう思っただけですけど……」

「……そう見えるのだとしたら、たぶん、今朝見た夢のせいね」

「夢、ですか……?」

 

 今ひとつ飲み込めていないという表情のリーファをよそに、シノンはサイドテーブルに置かれていた青いハワイアンドリンクに口を付ける。

 これはアスナお手製のレシピを《ALO》から移植したものらしく、味は折り紙付きだ。少なくとも、《GGO》で実装されているドリンク類では勝負にならないのは確かだ。

 

「ええ。とっても素敵な、いい夢よ」

「いいなー。どんな夢なんですか?」

「それは秘密」

「えー! そんなー! ここまできたら、気になっちゃいますよ!」

 

 不満な顔を見せるリーファを適当にあしらいつつ、シノンは空中にコンソールウィンドウを呼び出し、『MMOトゥデイ』の配信ページを開いた。ちょうど、第二回『HSGC』の開催およびARアイドル・ユナとのコラボレーションが発表されたばかりらしく、画面上は興奮したコメントで埋め尽くされていた。

 

「だったら、あそこにいるあなたのお兄さんに聞いてみたら? たぶん、ヒントくらいは知ってるだろうから」

「お兄ちゃんに、ですか?」

 

 きょとんとするリーファの視線が、プールの側に立つ白い飛び込み台の上を先端に向かって歩く義兄・キリトと、その両腕に抱えられたフィリアの姿を捉えた。

 

「――き、キリト! 無理! これ絶対無理だよおおおお~~~~~!!」

 

 少なめに見積もっても30メートルはあろうという高さの飛び込み台。その端に立ったキリトの腕の中に捉えられたフィリアが、甲高い悲鳴を上げながら必死に身を捩る。

 STR値の違いか、もしくは男女の肉体の違いによるものか、そうでもなければ管理者権限でも使っているのか。明るい髪色をした哀れな女性を拘束するキリトの腕はビクともしない。

 それはつまり、フィリアの運命は既に定まっている事を意味していた。

 

「飛び込みしてみたいって言ったのはそっちだろ? 大丈夫だって。ダメージや痛覚判定は入らない設定にしてあるし。

 だいたい、《ALO》じゃもっと高い所から飛んだり落ちたりしてるじゃないか」

「そうだけど、そういうことじゃなくて!!」

「よーし、じゃあ行こうか、フィリア。後ろでユウキが待ちきれないって顔して待ってるし」

「い~~~~~や~~~~~~!! あとでアスナに言いつけてやる~~~~~~~!!!」

 

 フィリアの抗議も虚しく、キリトは一切ためらうこともなく飛び込み台の上から身を躍らせる。そのまま二人の体は水面目掛けて真っ直ぐに落ちていき、それから数秒の後に大きな水柱を上げた。

 

「うっわ、お兄ちゃんとフィリアさん、大丈夫かな……あたし、一応様子見てきますね」

「ええ」

「あ、戻ってきたら、さっきの夢の内容、教えてくださいよ?」

「そうね……考えておくわ」

 

 期待に目を輝かせながらビーチチェアから立ち上がり、プールに向かって歩いていくリーファの背中を見送ったあと、シノンは『MMOトゥデイ』を開きっぱなしにしたまま目を閉じた。

 欲しい情報は耳で聞くだけで事足りるし、もし寝落ちしてしまっても大した問題はない。

 もう、《SAO》に囚われる悪夢を恐れる必要はない。たとえそこが悪夢の中だろうとしても、ひとりぼっちでは無いのだから。

 

(――ちゃんと来てくれるあたり、ほんと……ズルい人なんだから)

 

 シノンを――『朝田詩乃』を、恐怖と絶望の底から救い出してくれた英雄。

 迷宮の闇も、悪夢の闇も切り裂いて現れた、白と黒の剣を携えた二刀流の剣士。

 また《SAO》の悪夢を見たとしても、今朝のようにきっと――否。絶対に現れてくれる『黒の剣士』。

 彼のパーソナルカラーに染まった視界の中で、その姿を思い返すシノンの顔には、いつのまにか穏やかな微笑みが浮かんでいた。

 

――――――

【12】最もエロシーンが見たいキャラは誰ですか。以下のリストから選んでください

  • ストレア
  • サチ
  • ルクス
  • アルゴ
  • イーディス
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