双発型熱量圧縮式ジェットエンジン、安定稼働中。
腰部および脚部サポートスラスター、異常無し。
鋼素――もとい、ナノメタル製大型ウィング、シールドモードで機体前面に展開。メインカメラおよびサブカメラによる視界確保に支障なし。マルチツールテール、オートバランサーモードで稼働中。
センサーシステム異常なし。到達高度および上昇速度を確認。問題なし。
雲海突入。事前想定時刻より2.8秒の遅れだが許容範囲内。雲海圏突破まで、3、2、1――突破。
『――お待たせいたしました、お嬢様方。ようこそ、限界高度空域へ』
まん丸の月と星の光に照らされて、夜の中に浮かぶ一面の雲海。そんなコントラストの効いた白い海原を堂々とぶち抜いた鋼鉄の異形から響くのは、どこかおどけた男の声。
夜の闇を凝縮したかのような黒金の翼を広げれば、鋭い角を王冠のように掲げた竜の如き頭部と、翼と同じ色で統一された鋼の肉体が露わになる。背中に据え付けられた二基のジェットエンジンと脚部のスラスターを噴かし、雲海の少し上で高度を安定させる異形。その太い両腕が握っているのは、巨大な籠――気球の下についているようなサイズの――だった。
「やっと到着ですか。……思っていたより時間がかかりましたね。キリト」
『仕方ないだろ、アリス。速度より安全重視で飛んでるんだから、これくらいかかるって』
「私としてはもっと早くても良かったのですが……。リーファ以上に早く飛べるのでしょう? この鋼素の竜は」
『それはそうだけど、頼むからうちのスピード狂を基準にしないでくれ……。
籠の上部に張られていた防護カバーの下からもぞもぞと這い出てくるなり、金髪の女騎士――アリスは、鋼鉄の竜に向かって愚痴る。 むむむ、と眉根を寄せて難しい顔をするアリスに若干エフェクトがかかった声で応じるのは、誰あろうキリト。このプライベートVR空間の管理者にして、翼持つ鋼の竜――アンダーワールド製パワードスーツ・『
外部カメラで捉えたアリスの顔を見つつ、ヘルメットとフェイスガードが一体となった頭部装甲越しにキリトが苦笑いしていると、アリスに遅れて他の乗客達もカバーの中から這い出してくる。
「ふうっ……。なかなか心地よいフライトだったわよ、キリトくん」
『そりゃどうも、アスナ』
「帰りも安全運転でよろしくね? わかってる? 安全運転だからね?」
『わかってる、わかってるって。そんなに言わなくても、安全最優先で動かすから大丈夫だって』
「どうかなあ……なんとなくだけど、キリトくんには
創世神ステイシア――の、アバターでログインしているアスナに、キリトは頷きを返す。といってもキリトの頭は月影の頭部装甲にすっぽりと覆われているため、そのモーションははっきりと見えはしなかっただろうが。
そして、アスナとアリスが出てきた籠の中――防護カバーの下でもぞもぞと動く最後の乗客の姿を、『月影』のメインカメラが捉える。
『大丈夫か、ロニエ』
「ん――はっ、はい! 大丈夫です、キリト先輩!」
『一応、防寒システムは作動させてるつもりだけど……もし寒かったり、息苦しくなったらすぐに教えてくれ』
「はいっ! わかりました、先輩」
やっとのことで姿を現したのは、キリトの可愛らしい後輩――ロニエ・アラベル。左右に一房ずつ束ねたごく細いお下げと背中まで伸びた後ろ髪がよく似合っている彼女は、乱れた髪を手ぐしで軽く整えてからこくこくと頷いた。
ロニエ。
そう、ロニエ・アラベル。
かつてセントリアの修剣士学院でキリトの側付きを勤めていた、健気な後輩。
200年という永き時を鋼の竜の内にて越え、今ここに至った彼女の姿は、
ロニエ自身の記憶として残っているのも、アンダーワールド全土を巻き込んだ戦いが終わってざっくり一年ほどが経過したあたりまでらしい。彼女の口から、ロニエとティーゼが反旗を翻したノーランガルス皇帝を討ったという話を聞かされたキリト達はもれなく驚かされた。
もっとも、ローランネイの口から『テロを未然に防いだり、養子を迎えたりしてましたよ。ちなみに私はその子孫です。よろしくお願いしますね、ひいひい……とにかく、おばあさま』という話を聞かされたロニエも口をあんぐりと開けて驚いていた。養子を取っていた事に驚いたのか、10代でおばあさま呼ばわりされたことに驚いたのかは判断がつかなかったが。
そんなロニエの容姿がそれほど変わっていないのも、彼女の記憶の多くが封じられているのも――おそらくは星王となったキリトの所業だろうというのがキリト自身の見解だった。おそらくはシンセサイズの秘儀に近い何かを施した上で『月影』と共に眠りにつかせたのだろう。その当時の記憶を持たないキリトには、たとえかつての己がした事であっても、残された状況証拠より類推する他になかった。
なお、ロニエを含まない女性陣の見解は――
『キリトくんが迎えに来てくれた時に、自分だけずっと年上になっていたらイヤだもんね……』
『星王陛下がそこまで汲み取って、おばあさまをいい感じに調整してくれたんでしょうか。どう思われます? アリス様』
『いえ、おそらくは星王妃……当時のアスナの差し金でしょうね。キリトがそこまで気を回せるか……正直に言って怪しいものです』
――という方向で一致していたが、それをキリトに伝えようとする者は誰一人としていなかった。
とにもかくにも、アンダーワールドにあるアラベル家の地下でアリスとアスナ、そしてローラ立ち会いの下、キリトによって
彼女のフラクトライトは現在、ラース支社のセキュリティルーム内に
そんな経緯で彼女がログアウトに成功してから、今日でちょうど一週間になる。
そろそろ《ALO》あたりのアカウントを用意すべきだろう――そんな事を考えながら『月影』をコントロールするキリトの視界には、アスナとアリスに左右を挟まれたまま月を見上げるロニエの姿が映っていた。
「わあっ……。なんて、きれい……」
籠から上半身を乗り出しながら、ロニエは夜の美しさに感嘆の声を漏らす。
『月は無慈悲な夜の女王』とは、誰かの形容だったか、あるいは何かのタイトルだったか。どちらにせよ、切れ間無き雲海を従えて仮想世界の夜を煌々と照らすその白い輝きは、女王の名に相応しいものだった。
現在の『月影』は、セントラル・カセドラルの頂上や《終わりの壁》を余裕で見下ろせる高度に在る。こんな高さから月を見る機会など、アンダーワールド出身であるロニエにはあるはずがなかった。
「こんなに近くでお月様を見るなんて初めてです……。なんだか、本当に手が届いてしまいそう……」
『よし、それじゃあこのまま月まで飛ぶか――って言えれば格好がついたんだけどな。今の俺じゃ、この高さが限界なんだよな……。
――いや、待てよ。高度はどうにもならないけど、月面を再現することならできるんじゃないか?
適当なルームにフィールドをつくって、重力パラメータを制御して……でもそれだけだと物理演算と動作へのフィードバックがちょっと怖いか……?』
「……せんぱい? あの……キリト先輩? せんぱーい?」
『…………うぉっ、ご、ごめんロニエ。ロニエと話してると、どうも止まらなくなっちゃうんだよな……』
口から思いついたばかりのアイデアが溢れ出すキリトに置いてきぼりにされて、所在なさげな様子ではにかむロニエと、なんともきまずそうなキリトの声。そんなキリトとロニエの姿を横から眺めながら、アスナとアリスはくすくすと笑う。
一週間ほど前、ロニエを連れてくるついでに回収した『月影』の第五次テスト飛行。そのついでに、たまたま居合わせた面子によって企画された雲上お月見会は、至極まったりとした雰囲気と共に続いている。
キリトとセブンによるモジュールとマテリアルの置換作業や、過去三度の墜落を経て出力とバランスを調整された『月影』も、限界高度まで約10メートルという高高度にあっても安定した飛行を実現していた。
「ねえねえ、キリトくん」
『ん? どうした、アスナ?』
リラックスした微笑みと共に満月を鑑賞していたアスナが、不意にキリトの方へ視線を向ける。
「――『月が、綺麗ですね』」
『だろ? 結構苦労したんだぜ。デフォルトで入ってる背景オブジェクトは、近づくとやたらとぼやける仕様でさ……』
「そうじゃなくて……もー、相変わらずなんだから」
『えっ? ええ?』
どこか不満げな表情を見せるアスナの様子にキリトは戸惑う。己の対応に、何か不適当なものがあったのだろうか――と。そうして、月が綺麗、月が綺麗、と脳内で反芻すること暫し。
やっとのことで思い至るのは、そのフレーズについて回る有名な逸話。
『…………あっ!』
「やっとわかった?」
『あっ、はい……わかりました。やっと』
「よろしい。じゃあ、今度はキリトくんから……ね?」
煌々と輝く満月の光に照らされた頬をうっすらと紅く染めながら、アスナはキリトの言葉をねだる。
ごくごく当たり前な言葉の裏に含まれた意図と期待にすぐさま気付けなかった事への申し訳なさを感じながら、キリトは改めて口を開く。
『アスナ』
「はい」
『――月が、綺麗ですね』
照れ交じりの視線の先でぱっと華やぐのは、月光よりも眩いアスナの笑顔。
「うん……すごく、綺麗。キリトくんと一緒に見てるからだね、きっと」
とある有名な文豪が迂遠に、そして奥ゆかしく訳したというその言葉の源流は、実にストレートな愛の言葉。最初から気づくことが出来ていればもっとサマになっていただろうが、こうしてギリギリの所でリカバーできただけよしとしよう。
暫しの間目を閉じ、キリトの言葉と声を堪能するアスナ。互いの位置関係も相まって、その姿はまるでキスを求めているかのよだった。とはいえ、パワードスーツを装甲していてはそれも叶わない。
頭部のみ装甲解除する機能を付け忘れていた事をキリトがひっそりと後悔している横で――二人の世界からはじき出されたもう二人がもぞもぞと蠢く。
「あ、あの、アリスさま。キリト先輩とアスナさまは、いったい何の話を……」
「おそらくですが……リアルワールドの人間にしか分からない符牒で会話をしているのでしょう。
覚えておきなさい、ロニエ。あの二人は時々こういうことをします」
「はい、アリスさま。勉強になります。いいなあ、アスナさま……」
「あとで意味を問いただすことにしましょう。……主に、キリトの方に」
ひそひそと囁きを交わす二人の横で、アスナは若干気まずげな微笑みを浮かべる。アンダーワールドとリアルワールド――というか日本は、使っている言語こそ同じだが文化や風土は大きく異なる。アンダーワールドにいない文豪の逸話を持ち出したところで、ロニエ達がピンと来ないのは当然のことだった。
カメラ越しに突き刺さる、アリスの『それで、さっきのあれはどういう意味だったのですか?』とでも問いたげな剣呑な視線。微妙な表情をしている己の顔をアリスの視線から守ってくれた頭部装甲の存在に、キリトは改めて感謝した。
『さて、お客様方。そろそろ戻ろうか。オートパイロットのテストもしたいしな』
「オートパイロット……とは、なんなのですか。キリト」
『簡単に言うとだな、アリス。俺の代わりに
目的地は……とりあえず、一番近い発着パッドでいいか』
話題逸らしがてら、キリトはオートパイロットシステムを起動する。
『月影』の回収後、キリトはVR空間内の各所にメンテナンスベースを兼ねた発着用パッドを数カ所設置している。SF映画に出てくるような、機体が着陸するとハンガーが迫り上がってくるタイプのアレである。
当初はガレージの地下を起点に床と天井をぶち抜く垂直射出式リニアカタパルトを実装していたが、テスト飛行中にふらっとガレージを訪れたシノンが落下しかけるという事故が起きて以来、この方式に変更された。
キリトがオートパイロットに操縦権限を預ければ、システムが最寄りの発着パッドを検索して目的地を設定。そのまま『月影』は、乗客に負荷をかけない程度の速度と姿勢を維持したままで高度を落としていく。
高度が下がる時に感じる、鳩尾の辺りが冷えるようなふんわりとした浮遊感。《ALO》で慣れっこのキリトとアスナ、そして飛龍に乗り慣れたアリスにとっては当たり前の感覚に対し、きゃあきゃあと声を上げてはしゃぐロニエの様子がまた愛らしい。
「先輩! 下を見てください! あんなに建物がいっぱいです!」
籠から身を乗り出しながら、ロニエは下方に広がる光景に興奮する。女性陣に望まれるがままキリトが次々に建物やら風景やら設備やらを違法建築し続けた空間である。最近ここに足を踏み入れたばかりのロニエには何もかもが珍しくて仕方が無いのだろう。
建築中の水族館が完成したら、真っ先に連れて行ってやろう――そんな事を考えるキリトの側で、ロニエは無邪気な様子で建物の一つを指さす。
「先輩、先輩! あちらの、地面が薄茶色をした所にある丸い建物はなんなのでしょう?」
『ああ、あれは
よく、アリスやユウキ達がデュエル……お互いの実力を測るための場所として使ってるよ。もちろん、俺もな』
「なるほど……手合わせをするための場所なのですね」
言えない。
まさか『全身に卑猥な文言を落書きしたアリスや、目隠しと首輪付けて猿ぐつわを噛ませたユウキを観客(群衆モデルを使ったプリレンダムービー)の前に引きずり出して公開陵辱するプレイ』に使った場所だとは。
「先輩! あちらの、なんだかちょっとくたびれたような建物は……」
『あれは……アパ……集合住宅だな。あの建物一つに部屋が何個も集まってて、一つの建物の中で色々な家族が暮らせるようになっているんだ』
「そうなのですか……。なんだか、修剣学院の寮を思い出しますね」
言えるわけがない。
まさか『強制売春アパート 狙われた女子大生・アスナ』とか『強制売春アパートPart2 裏切りの親友・リズベット』みたいなプレイに使った場所だとは。
そこら辺の事情を把握しているアスナとアリスは、ロニエの服の裾を左右からそっと抑えながら、ただただ微妙な苦笑いを浮かべるに留めた。少なくとも、キリトはウソを言っているわけではないのだから。
「あっ、先輩先輩!」
『ん?』
「『月影』の行き先、この黒い建物みたいです! あれはどういった建物なのですか?」
『黒い建物? ……ああ、あれか。
あれは……え、あれは――ああああああああああっ!!!???』
外部カメラが捉えた映像を見て素っ頓狂な声を上げるキリトに釣られ、アスナとアリスも籠から身を乗り出す。四人の視線と『月影』が揃って向かう先、それは夜の闇よりなお黒く暗い尖塔を生やした王城の如き建物――『黒夜館』の名で知られた、今最も接近する必要のない場所だった。
とどのつまりは、娼館。あるいはラブホテルである。
いや、今やこの空間にある建物のほとんどが実質的なラブホテルであるとはいえ、『結果的にそうなった』ものと『最初からそういう目的で作った』ものでは若干毛色が異なる。もちろん、『黒夜館』は後者である。
そんな『黒夜館』の屋上にも、『月影』用の着陸パッドが一つ増設されていた。なかなか格好良さそう――などという理由で、なんとなく着陸パッドを増設したことをキリトは今更になって後悔するが時既に遅し。
「……先輩?」
『あ、ああ……えっと、あれはな、ロニエ……』
純粋な後輩への答えに窮しながら、キリトはオートパイロットを解除して別の場所へ着陸しようと試みる――が、どうにも解除されない。もう一度解除コマンドを送信してみる。まあ当然というか、解除されない。おそらくは新しく組み込んだシステム故の不具合だろう。新規実装したシステムには時たまこういう事象が発生する。
突き刺さる視線が痛い。アリスの『何を考えているのですか?』という視線が、アスナの『どういうつもり?』という視線が痛い。首を小さく横に振って『違うんだ、これは』と弁解しながらオートパイロットを解除しようと何度も試みるキリトだったが、結局それは徒労に終わった。
事前の目標設定に忠実に作動したオートパイロットシステムは、最寄りの着陸地点――『黒夜館』の屋上に据え付けられた着陸パッドの直上に到達すると、スラスターを軽く噴かしてゆっくりと降下。そのまま静かに着陸してみせると、乗客の乗った籠を着陸パッドの上に降ろした。
「……オートパイロットシステムは、まだまだ改良が必要みたいだな……」
「ええ、そのようですね」
一足早く籠の縁を飛び越えて降りてきたアリスが、パワードスーツの上部装甲を解除して降りてきたキリトにちくりと小言を刺す。呆れたような視線に苦笑いを返しながら、キリトは籠の中に腕を伸ばすと、アスナ、そしてロニエを抱え上げて籠から降ろした。
「あっ……ありがとうございます、先輩」
「どういたしまして、ロニエ。どうだった? 初めてのフライトは」
「ちょっと緊張しましたけど……でも、とっても楽しかったです!」
「そうか、ロニエが気に入ってくれたみたいでよかったよ。よし、それじゃあ、今日はこの辺で……」
「先輩。それで……ここは一体どういう建物なのでしょうか?」
なんとなく雰囲気で誤魔化してやり過ごそうとしたキリトの計画を水泡に帰す、ロニエのストレートな質問。
「あ、ああ……。ロニエ、ここはな……その……」
「……もしかして、ですけど。
先輩と、アスナさまや
答えに窮するキリトを真正面から貫く、後輩の眼差しと問いかけ。どうにか助け船を出そうとタイミングを見計らっていたアスナとアリスも、予想外の事態に戸惑って動けずにいた。
そうとは気づかぬうちに状況の支配者となったロニエは、自らが口にした内容と三方から送られる戸惑いの視線に頬を真っ赤に染めていた。
「そ、その……私、たまたま見てしまったんです」
「見たって……何をだ?」
「先輩とアスナさま達が……している映像を、です。
そ、その、ここでできることを自分なりに調べていたら、たまたま『共有映像フォルダ』という所に辿り着いてしまって、手が滑って、それで……! わざとではないんです! わざとではないんですけど……目が離せなくて……」
「わかった、大丈夫。ちゃんとわかったから落ち着け、ロニエ。ロニエは何も悪くない。これは何から何まで俺が悪い」
わたわたと慌てふためく後輩を、キリトはどうにかこうにか宥め賺す。
件の『共有映像フォルダ』――とどのつまりは『今までここで撮りためてきたハメ撮り映像コレクションを納めたフォルダ』には、外部から参照や保存が行われないよう何重ものセキュリティがかけられている。ただ、それはあくまで外部からの話であって、管理者であるキリトはもちろん、正規のログイン権限を持つアスナ達は自由に閲覧可能だ。
そしてそれは、一週間ほど前にログイン権限を得たロニエも例外ではない。
あのフォルダには、キリトと関係を結んだ女性――アスナを筆頭に計11名分の痴態がぎっしりと納められている。よしんば映像そのものを再生しなくても、ずらりと並んだサムネイル画像とタイトルを見ただけで、ここで何が行われているかは察するに余りあるだろう。
「ロニエ。今まで黙っていて、本当にごめん。もし、まだ間に合うなら……改めて説明させてくれないか。俺とみんなの関係について」
「……はい。聞かせてください、先輩」
事情を説明しようとしたアスナを視線で押し止め、キリトは己を取り巻く今の状況をロニエに語り聞かせる。
アンダーワールドでの200年を経てリアルワールドに帰還したこと。その時の記憶のほとんどを失っていること。《SWORD》協定の立ち上げと、協定に参加した愛する者達のこと。世間的には認められ難い関係を結んだこと。そして、いずれはきちんと責任を取るつもりでいること。
話すべきだった事を話し、伝えるべきだった事を伝える。
「――正直、最初はみんなの勢いに押し切られた所もちょっとあった。
でも、今は違う。俺は俺の意思で、俺が望んで皆と関係を結んでる。だから、何が起きても全ての責任は俺にあるし、何も起きないようにするのが俺の務めだ。
……こんな所かな」
「…………」
頬でも張り倒され、詰られるだろうか。そうなっても仕方の無いことだろう。そう覚悟しながらの説明が終わっても、ロニエはしばらく俯いたままだった。胸元でぎゅっと握りしめられた彼女の両手は、微かに震えている。どう声をかけて気遣ったらいいか迷うキリトが、その答えを見つけ出すより早く、ロニエは顔を上げた。
固く強い決意を秘めたその眼差しを――アスナの方に向けて。
「――アスナさま! 私……私にも、アスナさまの《協定》に参加する資格はあるのでしょうか!?」
「んー……そうねえ……」
ロニエの突拍子もない発言と、必死さの滲み出た声音にキリトが思わずぎょっとする。
その一方でアスナとアリスはといえば――まるでそうなることを最初から予期していたかのように悠々とした態度で、ロニエの言葉を受け止めていた。
「ロニエさんなら……正直な所、何の問題も無いのよね。ね、アリスさん?」
「確かにそれは私も同感ですが……よいのですか、アスナ。キリトの相手をこれ以上増やしてしまって」
「あら。今だって私を含めて11人もいるのよ、キリトくんのお相手。それが12人になった所で大して変わらないわよ。
それに……キリトくんに会いたいっていう気持ちだけで、100年以上も頑張って待ってた子を無下にできないじゃない?」
「……ええ、そうですね」
アスナの言葉に、アリスは小さく頷く。何もできず、ただ待つ身の辛さを知るが故に。己との再会を願い、未だ眠り続ける妹の存在があるが故に。
「というわけで、ロニエさん」
「は、はい!」
「他の皆にはあとで私から話しておくけど……とりあえずはようこそ、《SWORD協定》へ。
これからキリトくんとどうなっていくかは、ロニエさん次第よ。頑張ってね」
「は、はい! 頑張ります! ありがとうございます、アスナさま! アリスさま! 私……頑張ります!」
深々と頭を下げるロニエの初々しさに、アスナ達の顔から思わず笑みが零れる。そうして、再び顔を上げたロニエは、改めてキリトを真っ直ぐに見つめ――たかと思ったのも束の間、恥ずかしさを堪えきれず視線を下へと逸らした。
「せ、先輩……」
「お、おう。どうした、ロニエ」
「もしかして、私……今、ものすごく恥ずかしい事を口走ってしまったのではないでしょうか……?」
「…………まあ、そうなるな。うん」
うつむき加減のロニエの頬が真っ赤に染まる。《協定》への参加表明、つまりは『私はあなたを愛しています』という愛の告白とほとんど同じことを、想い人の目の前で盛大にしてしまった事を改めて理解したロニエは、頭から湯気が噴き出しそうな程に強い羞恥を味わっていた。
後輩がここまで頑張ったのだ。それに応えられないようであれば、先輩の名が廃るというもの。すっ、と小さく息を吸い、キリトは気合いを入れ直した。
「ロニエ」
彼女の名を呼びつつ両手を伸ばしたキリトは、縮こまってしまった後輩の体を包み込むようにして優しく抱き寄せる。ほとんど密着したような距離の中、まだ顔を上げられないでいるロニエは、若干の躊躇いと共に身体をキリトの腕の中へと預けた。
「まったく、俺はダメな先輩だな……。こんな風になるまで、ロニエの想いに気づいてやれなくて……」
「そんなっ……そんなことありませんっ。私が……私が勇気を出せなかっただけなんです……」
「でも、今は頑張ってくれただろ? だから今度は、俺の番だ。ロニエ」
もう一度、彼女の名を呼ぶ。おずおずと顔を上げた彼女の瞳の中に、丸い月とキリトの顔が映り込む。
己の顔はともかく、その月は――とても、綺麗だった。
「長い間……ずっと待たせ続けて本当にごめん、ロニエ。
もし、ロニエさえよければ……これからも、俺の側に居てくれないか。この先の人生、ずっと」
「……そんなの、そんなの当たり前じゃないですか。
私は……ロニエ・アラベルはこれからもずっと、先輩の側にいます。だって私、キリト先輩の《傍付き》ですから」
修剣学院で共に学んでいたあの頃より、少しだけ伸びた髪と、少しだけ大人びた笑顔。そして、200年の時を経てもなお少しも変わらない想いと共に、ロニエは答える。
彼女の小さな顎に、キリトはそっと手を当てる。自然とその意図を察したロニエは、先輩、と微かに呟くと、そっと両の瞼を閉じる。信頼と期待、そして恥じらいと共に差し出される傍付きの唇に、キリトは静かに唇を重ねた。
「んっ……」
ロニエの口の端から微かに漏れた官能の吐息が、理性の軛に罅を入れる。
初めてのキスにどこか戸惑いながらも、ロニエは唇と唇の逢瀬の感触を受け入れていく。まだ息継ぎがうまく出来ないのはご愛敬というところだろうか。ゆったりと続いたキスが終わり、二人の唇の間に再び距離が生まれると、ロニエはふっと息を吐いた。
恥ずかしそうに微笑むロニエと視線を交わしたまま、キリトは空いた片手で彼女の焦げ茶色の髪をそっと撫でる。
「……先程のような行為を、天界……いえ、こちらの世界では『キス』と言うのですよね。先輩」
「そうだよ、ロニエ。……あれ? 俺、『キス』なんて神聖語、教えたことあるっけ……?」
途端、ロニエの後ろに控える女性二人の目つきが、すぅっと鋭くなる。キリトに突き刺さる『後輩にそんなことまで教えていたの?』という意が込められた視線。その気配を背中で察したのかどうかはわからないが、とにかくロニエはふるふると首を横に振ってキリトのセクハラ疑惑を払拭した。
「い、いえ、違うんです! 先輩に直接教わったわけではなくて……ここにあった映像で、勉強したんです!
アスナさま達がたくさん『キスして』とか『キスしたい』と仰っていて! そうしたらいつも先輩が唇を……なので……」
「なるほど……うん。さすが勉強熱心だな、俺の後輩は」
媒体に問題があったとはいえ、知識を身につけようとした姿勢は認められるべきだろう。焦げ茶色をした少し長い後ろ髪を撫でて、ロニエの努力を褒めてやると、ロニエはキリトの体にそっと抱きつく。
状況に慣れてきた今、キリトは押し当てられる実に豊満な膨らみの感触にようやく気づいた。アンダーワールドにいた頃は全くと言っていいほど意識していなかった、後輩の肢体。それが今になって、某双子整合騎士を彷彿とさせる奇襲具合でキリトの精神に至近距離から抉り込んでくる。
下半身に集まる血と欲望。その叫びと本能に従うのは、理性という名の鎖によって己を抑え込むよりよほど簡単だ。だが、そんな事をしてしまってはただの獣も同然――。
「……せっ、先輩」
「ん!? あ、ああ。ロニエ」
「べ、勉強熱心なのは、良いことです……よね?」
「へ? そりゃあ……いいことだと思うぞ」
どこか引っかかりを感じる声と共に繰り出されるロニエの問いに、キリトは首を縦に振る。その答えにどこかほっと安堵した表情を見せたあと、ロニエは何度か深呼吸をして己を落ち着かせる。
それはまるで、何か重大な決意を――自らの人生を左右する大きな決断をするかのように。
「で、でも、やっぱり一人で学ぶだけでは限界があると思うんです! だからこそ、修剣学院にも傍付きという制度ができたのだと思いますし!」
「まあ、確かにそれはそうだな。一人で学ぶより、誰かに教えてもらう方が効率的だろうし……」
「ですよね、ですよね!
で、ですから、その……その……わっ、私にも、アスナさま達のように……夜伽の術を教えていただけないでしょうか!? キリト先輩!」
――そういえば、今夜は満月だ。
青白く輝く月より降る光は狂気を孕み、時に人畜無害な青年を恐ろしい人狼に変えてしまうという。
そんな月の光に、きっとロニエも
これ以上無いほどの羞恥に震える後輩をぎゅっと抱き締めながら、キリトは自らの本能を縛る理性という名の銀鎖がぶちぶちと千切れていく幻聴をどこか遠くに聞いた気がした。
「――ロニエさんって、ものすご~~~く大胆な女の子だったのね……」
「へっ!? い、いえっ、そんなことは――」
「はいはい、動かない動かない。まだ髪の毛の
せっかくロニエさんが勇気を出したんだもの。一番綺麗な姿にしてあげないとね」
上半身が余裕でまるごと映るほどに大きな鏡がついた鏡台の前に座らされたロニエ。その柔らかな髪に気遣いの窺える手つきで櫛を通しながら、アスナは咄嗟に首を横に振ろうとしたロニエを押し止めた。
娼館『黒夜館』の中に何カ所か設けられた、
「気持ちいい? ロニエさん」
「はい、アスナさま」
「ふふっ。『さま』なんて付けなくても、ただの『アスナ』でいいのよ? アンダーワールドならともかく……ここでは私もロニエさんも、ただの女の子なんだし」
「そ、それはさすがに畏れおおすぎます! アスナさまを呼び捨てだなんて、そんな……」
「そう? 私は別に気にしないよ?」
「私が気にしてしまいます……。ですので、どうか『アスナさま』のままでお願いします……」
恐縮の余り身を縮こまらせるロニエを宥め賺しつつ、アスナは彼女の髪を優しく整える。その様子は妹の身支度を調えてやる姉のようで至極微笑ましい。まあ、ある意味ではロニエはこれからアスナの妹になるようなものなのだから、微笑ましいのも当然と言えば当然かもしれないが。
「でも、ロニエさんには本当に驚かされたわ。キリトくんへの猛アタックっぷりもそうだけど……まあ、キリトくんはかなり鈍いからあれくらいでちょうどいいんだけど。
……本当にいいの? せっかくのはじめての夜なのに……私達が同席しちゃって」
鏡に映ったロニエが、アスナの問いかけに微かな首肯を返す。
遡ること少し前、屋上の着陸パッドで繰り広げられたロニエの告白劇と爆弾発言のあと。二人きりの時間を過ごさせてやろうと気を回し、そっとログアウトしようとしたアスナとアリスを押し止めたのは、まさかのロニエその人だった。
とはいえ「一緒にしませんか?」などという直接的な言葉を口にすることができるはずもなく、ロニエは赤面したまま口を噤んでしまう。結局、さすがに空気を読んだキリトが、後輩の意を汲んでアスナとアリスを誘い――今に至る。
「わ、私一人では、先輩にご満足いただける自信が無くて……。それに、アスナさま達にご一緒していただけた方が、先輩も嬉しいかなと……」
「そうなんだ……こんなに先輩想いの後輩を持って、キリトくんは本当に幸せ者ね」
慣れた手つきでロニエの髪を梳かし終えたアスナは、櫛をストレージに格納すると、ロニエの身体を背後からそっと抱きしめる。首筋に回る両腕、バスローブ越しに触れあう身体を通して、ロニエの鼓動の高鳴りが伝わってくる。
「ロニエさん、緊張してる? ……って、緊張してるに決まってるよね」
「はい……。少し、ですけれど……」
「大丈夫だよ。こういうときのキリトくん、うんっと優しくしてくれるし……私とアリスさんもお手伝いしてあげるから」
待ち受ける未知の体験に身を強張らせるロニエの耳元に唇を寄せながら、アスナは先達としての言葉を囁く。
キリトと初めて褥を共にする直前の女性に相談を受けたり、経験者としてアドバイスを求められたりするのはこれが最初の事ではない。まあ、さすがにその場に居合わせるのはこれが初めてではあるが。
自らの心臓の音をロニエに聞かせるように、アスナは彼女の身体を抱き寄せる。
「リラックス――ええと、つまり、身体の力を抜いて自然の成り行きに任せる……ってくらいで大丈夫よ。
『キリトくんをたくさん気持ちよくしてあげたい』って考えるのは、もう少し慣れてからでもいいんだから」
「そうなのですか?」
「ええ。修剣学院のカリキュ……授業内容は知らないけど、最初からいきなり何もかも詰め込もうとはしないでしょ?
それと一緒。少しずつ学んで、少しずつ覚えていけばいいの。キリトくんや私達と一緒に、ね?」
「少しずつ……少しずつですね。ありがとうございます、アスナさま」
決意を固めるかのように、ロニエはこくこくと頷く。教え甲斐のある生徒を持ったような気分で、アスナは鏡越しにロニエを見つめた。
「それじゃあ、最後に確認。もし、どうしても嫌な事だったり、これ以上続けたくないなって思ったら……」
「『転移結晶』でしたよね、アスナさま」
「うん、その通り。それを言えば、キリトくんは絶対に止まってくれるから。覚えておいてね」
「はいっ!」
抱きつく両腕を通し、ほんの少しだが緊張が解けたような感触が伝わってくる。鏡に映るロニエと視線を合わせて微笑みを交わしたあと、アスナは抱擁を解いた。
微かな開閉音と共に、背後にあるパウダールームの扉が開いたのはちょうどそんなタイミングだった。
「――お待たせしました、ロニエ、アスナ。こちらは準備完了です」
「ありがとう、アリスさん。それで、どの部屋にしたの?」
「突き当たりの大部屋にしました。あの、大きな窓がある部屋です」
「あのお部屋かー。なかなかいいチョイスね」
白いバスローブに身を包んだ金髪の女騎士――アリスが、「でしょう?」とでも言うかの如き自信を滲ませながら頷く。
アスナとロニエより一足早くシャワーを終えていたアリスは、諸々の準備を整えるためにキリトと行動を共にしていた。普段であればそれは『一足先にキリトに抱かれにいく』というのと同義ではあったが、キリトもアリスも流石に空気を読んだらしい。眩い金色の髪に乱れは無く、バスローブから覗く白い肌にも唇の痕がついていたりはしなかった。
「それと……ロニエ。キリトからこれを預かってきました」
コンソールウィンドウを操作したアリスが、ロニエのアイテムストレージに何かを転送する。
まだ慣れないユーザーインターフェイスに触れる指先に若干のぎこちなさを残しながらも、『ステイシアの窓』を開く時と同じ要領でアイテムストレージを開いたロニエは、そこに表示されたアイテム情報に目を見開いた。
「これ……修剣学院の制服……!」
「あの鋼素製の竜――月影の中に、データとして保存されていたそうです。
まったく、キリトときたら……今の今まで渡すのを忘れていただなんて、相変わらず妙なところで抜けていますね」
「あの、アリスさま。これ、着てもよろしいでしょうか」
「ふふ。何を当たり前のことを。それはもともと、お前のものです」
立ち上がったロニエは、微笑むアリスに小さく一礼したあと、制服を装備アイテムとして選択する。ロニエの全身をぱっと包んだ淡い光が消え去る頃、そこには懐かしい制服に袖を通し終えたロニエの姿があった。
黒に近い濃いめの灰色を基調とし、首元にネクタイを結んだ華美さとは無縁の制服。少し大人びたロニエがそれを着用しているというだけで、空気がふんわりと華やぐ。
「へ、変なところはないでしょうか、アリスさま……」
「とてもよく似合っていますよ、ロニエ。アスナもそう思うでしょう?」
「ええ。とっても綺麗よ、ロニエさん」
「えへへ……ありがとうございます。アリスさま、アスナさま」
スカートの裾を緩く翻しながら、ロニエは姿見の前でくるりと回り、己の出で立ちを確かめる。その可愛らしい仕草を眺めながら、アスナは小さい顎に指先を当てて何事かを考え込む。
「やっぱり制服って良いわよね……。そうだ、アリスさん。せっかくだし、今日は私達も制服にしましょうか」
「おや、気が合いますね。ちょうど、私も同じ事を言おうと思っていた所でした。アスナ」
頷きあった二人は、ストレージから制服を選択して装備する。ただしこちらは修剣学院の制服ではなく、帰還者学校のものだ。深い濃紺色をベースに白いラインを入れたシンプルな制服は、アスナにとっては普段から着慣れたものであり、アリスにとってもここで時折袖を通しているものだった。
「よーしっ、それじゃあ……そろそろ行きましょうか、ロニエさん」
「は……はいっ!」
制服に着替えて身支度を整えた三人は、パウダールームを出てそのままキリトが待つ部屋へと向かう。黒夜館の廊下に響くのは、敷かれた絨毯を踏みしめる三人分の微かな足音。先導するアリスに半歩ほど遅れてロニエ、アスナが続く。
ふと、アスナは思う。ロニエは今、どんな思いで歩みを進めているのだろう――と。
愛する男に抱かれるために、交合の為に作られた部屋へと向かう。一歩進む度に縮む距離は、ロストバージンへのカウントダウン。部屋で待っているのが心から恋い慕う者だとはいえ、不安や緊張を抱かないはずも無い。それと同じだけの期待と共に。
そうこうしている間に、三人は目的の部屋の前に辿り着いていた。コンコンと扉をノックしたアリスは、そのまま静かに後ろへと下がった。
「さ、ロニエ」
「はい……」
アリスに促され、ロニエは扉の前に立つ。緊張に震えそうになる両手を胸元でぎゅっと握りしめ待っていた時間は、十秒にも満たなかっただろう。
ドアノブが回る小さな音と共に、扉が内側へと開かれた。
「――っと。お待たせ、ロニエ」
「せっ――先輩……!」
余りにも見慣れた、裾の長いジャケットを思わせる黒い上着――修剣学院時代の制服を着て出迎えるキリトの姿に、ロニエは思わず声を詰まらせる。
一方のキリトも、制服姿のロニエを見て納得したように頷いた。
「着てくれたのか、それ。すごく久しぶりに見た気がするけど……やっぱり似合ってるな、ロニエ」
「先輩こそ……その制服、わざわざ用意してくれたんですか?」
「ああ。ほら、見慣れた格好の方が、ロニエも安心できるかと思ってさ。
まあ、立ち話もなんだし……入れよ、ロニエ」
「はいっ。失礼します、キリト先輩」
未だに修剣学院時代のクセが抜けきっていない真面目な後輩を部屋へ招き入れながら、キリトはアスナ、アリスと視線を交わす。榛と蒼の瞳が『こっちはいいから、ちゃんとロニエ(さん)を構ってあげなさい』と視線で告げる。気を遣わせている事を視線で詫びつつ、キリトは二人を部屋に入れてから静かに扉を閉じた。
廊下を照らしていた照明の光が今宵の閨から閉め出され、部屋の隅に置かれた間接照明の淡い光が、ソファなどの調度品が置かれた室内をほんのりと照らす。
クッションがいくつも積まれたキングサイズの大きなベッド、その足元方向にある壁には、壁の根元から天井まで届く大きなガラス窓が据え付けられていた。
「…………」
大きなガラス窓から覗く、白く丸い月。そこから降り注ぐ月光が、窓の前に立って夜景を眺めるロニエをスポットライトの如く照らす。その側にキリトがそっと歩を進めれば、ロニエは照れ笑いを浮かべたままキリトの方を向いた。
「ロニエ」
「はい、キリト先輩……」
可愛い後輩の名を呼びながらそっと抱き寄せれば、ロニエはその体をキリトの腕の中へと委ねてきた。そうして暫しの間、互いの瞳を見つめ合いながら微笑みを交わし、優しく唇を重ねる。微かに触れあうだけの軽やかなキス。くすぐったい感触に笑い声を零すロニエを抱きしめたまま、甘やかなキスを繰り返す。
「なんだか……あの頃に戻ったみたいだな、ロニエ」
「そうですね……。もう一度先輩の傍付きになれるなんて、夢みたいです……♥ 先輩、私のキリト先輩……♥」
あの頃と同じ服で、あの頃より伸びたロニエの髪の先を弄びながら、あの頃とは違う関係を築く。それがどうにも面映ゆく、そして心地よい。
そうして、十数度も唇の逢瀬を続けた頃だろうか。ロニエの視線が、ちらちらとベッドの方へと向けられる。キリトの視線もまた、同じように。
「先輩……あ、あの……。あれ、していただけませんか……?」
「あれ?」
「えっと、膝と背中で抱えて運んでいただく……なんというんでしょう」
「……なるほど、わかったぞ。ロニエが言ってるのはたぶん『お姫様抱っこ』だな。よし、任せろ」
可愛い後輩からのおねだりを拒む理由がどこにあるというのか。キリトはすっと姿勢を低くすると、両腕の中にロニエを座らせるようにしながら彼女の体を預かる。リクエスト通り、片腕でロニエの両膝を、もう片方の腕で背中を支える。ロニエの両腕がキリトの首に回った事を確認したキリトは「いくぞ」と声をかけて合図すると、ロニエの体を持ち上げた。
ロニエの両脚が床を離れ、体がふわりと宙に浮く。浮遊感と共に感じる、愛する男に抱かれ支えられているという実感。そのふわふわとした感覚に身を委ねながら、ロニエは思わず顔をほころばせていた。
「お、重たかったら申し訳ありません……先輩」
「いやいや。全っ然重くないからな、ロニエ」
十歩にも満たない、ベッドまでの僅かな距離。その距離を惜しむようなゆったりとした速度で歩きながら、キリトは両腕の中に納めたお姫様を運ぶ。月光を背に受け、薄闇のヴェールをまとった部屋の内側へと。
白いベッドシーツが敷かれ、クッションがたっぷりと積まれた大型のベッド。寝ることはもちろん、それ以外の行為にも十分に応えられるよう作られたベッドの上には、アスナとアリスという二人の乙女が寄り添いながら座っていた。
「よっ、っと……ちょっとばかり揺れますよ、お姫様」
「は、はいっ」
ロニエを抱えたまま、キリトは膝立ちになってベッドの上へと上がる。そのままシーツの上を進み、ベッドの中央――ちょうど、アスナとアリスがいる少し手前に腰を下ろしてロニエを座らせ、己はその真後ろに陣取った。ちょうど、両脚の間にロニエを座らせるような体勢だ。
はにかみながら体重を預けてくる彼女を後ろから抱きしめれば、ロニエはキリトの方へ振り返り、可憐な唇をそっと差し出してキスをねだる。もちろん、応えないはずがない。
「ん……♥」
少しだけキスに慣れ、甘い声を漏らし始めるようになったロニエと唇を重ねながら、キリトは舌先で彼女の唇を軽くつつく。その意図を察したロニエは、おずおずと唇を開いてキリトの舌を迎え入れた。初めてロニエの口内に入る、他人の舌。未知の感触に怯えを見せつつも、決してキリトの舌を拒もうとはしない健気な後輩を導くように、キリトは舌と舌を絡ませあう。
「んっ……♥ ぁふ……♥」
攪拌された唾液の立てる水音が、ロニエの聴覚を刺激する。後輩の唇の端から零れる甘やかな声が、キリトの耳を楽しませる。
柔らかな体を抱きしめるキリトの手には、いつのまにかロニエの手が重なっていた。開いた指を絡ませあい、互いの手をぎゅっと握りしめあいながら続くディープキス。キスの感触に酔ったロニエが身動ぎする度、制服の布地が擦れ合って微かな音を立てた。
たっぷりと、ゆっくりと時間を使い、ロニエの口の中で睦み合ったあと。ようやく離れた唇の間では、取り残された唾液が小さな橋を作り、すぐさま千切れ落ちていった。
「脱がすぞ、ロニエ」
「はい、先輩……♥」
興奮と期待、そしてほんの僅かな不安を瞳に滲ませたまま、ロニエは頷く。その体を抱き寄せたまま、キリトはコンソールウィンドウを展開し彼女の装備情報に介入すると、制服の上下を装備解除した。
ほのかな光がロニエの全身を包み、聞き慣れた装備解除SEと共に消えていく。キリトの腕の中で露わになる白い下着。レースとフリルをふんだんに使用したそれは、普段使いとして用いるモノではなく、明らかに人の目を――これから己を抱く男の目を、強く意識したもの。
清冽に、そして扇情的に引き立てる起伏豊かな体に、キリトがごくりと喉を鳴らす。
「――見て見て、キリトくんの目。もうすっかり興奮しちゃってる……♥」
「ええ、本当に……。まるで、獲物に喰らいかかる寸前の獣のよう……見ているこちらまで興奮してしまいます♥」
劣情を抱くキリトとその腕の中に収まったロニエを眺めながら、二匹の雌――アスナとアリスが微笑む。色を含んだ視線でロニエの肢体を眺め、ねっとりとした視線で肌を撫でる。
直接触れる事のない愛撫に、ロニエは頬をかあっと赤らめつつキリトを見上げる。もう一度その唇とキスを交わしたあと、キリトは彼女の体を守る最後の布を剥がすボタンを押した。
「っ……!」
ロニエが微かに息を飲む音は、装備解除時のSEにかき消された。ストレージに格納される下着の残光が消えた後、そこに残ったのは生まれたままの姿にされたロニエ、ただそれだけだった。
発色の良い健康的な肌。日頃の鍛錬によってバランスを保たれた肉感的な肢体。雄を誘惑するに足る程に成熟し、そしてほんの少しの幼さを残したロニエの体は、大人と子供の狭間だけにある魅力でキリトを昂らせる。
デコルテラインから視線を下に移せば、ボリューム感に溢れたバストにどうしても視線を惹きつけられる。こうして目の当たりにしてしまうと、アンダーワールドにいた間、片手では手に余るロニエの発育の良さによく気づかずにいられたものだと思わずにはいられない。
しっかりとくびれた腰。むちむちとして美味しそうな太股。そして毛の一本も存在しない、未開発の股座。未だ汚れを知らぬ彼女の肢体、キリトに捧げるために育ててきたと言っても過言では無いスタイルの全てが、熱く滾るオスの血を下半身に集めていく。これがロニエにとって初めての交わりでなければ、ガマンできずに襲いかかっていた所だ。
「せ、先輩……?」
「あ、ああ。悪い、ロニエ。ちょっと理性が吹っ飛びそうになってた……。ロニエが、すごく魅力的で……」
「そっ、それは……ちょっとうれしいかも、です……♥」
コンソールウィンドウを操作し終えたキリトの片手が再びロニエの体に触れれば、ロニエはその手に己の手をそっと重ねる。ロニエの言葉一つ、仕草一つがキリトの理性に大きなヒビを刻んでいく。
事の推移をじっくりと眺めていたアスナとアリスが、ベッドの上でするりと身を滑らせるようにロニエの左右へ陣取ったのは、まさにそんなタイミングだった。
「もう、二人だけでイチャイチャしちゃって……ずるいんだから」
「そうですよ。私達がいることもお忘れなく、ロニエ」
「アスナさま、アリスさま……。も、申し訳ありません。私ばっかり、キリト先輩を独り占めして……」
素っ裸のままで慌てて謝罪の言葉を述べるロニエに、二人はそろって首を横に振った。
「ごめんなさい、違うの。今日はロニエさんが主役なんだから、むしろキリトくんを独占するくらいでちょうどいいんだからね?」
「そうですよ、ロニエ。お前が遠慮などする必要などどこにもありません。
ただ……同じ男を愛する者同士として、私達はお前とも
そう言いつつ、アスナもアリスもコンソールウィンドウを開き、装備全解除ボタンを押す。惜しげも無く露わになる、二人の肢体。キリトの眼下に広がるのは、甲乙付けがたい極上の乙女達による三者三様のヌード・ショウ。
ロニエの体がキリトに拘束されているのをいいことに、アスナとアリスは左右からロニエの腕をとり、そのまま己の腕を絡ませた。
「無理にとはいいません、ロニエ。でも、少しでも興味があるのなら――」
「私達とも
肌が触れあうほどの至近距離まで密着したまま、ロニエの両耳に注がれる甘い声音。未だ男を知らぬ生娘には抗いようも無いほどの色気に晒され、ロニエは思わず息を零す。
ロニエの首筋にアスナが軽い口付けを落とし、太股を指先で優しくなぞる。大事な場所や敏感な部位にはあえて触れず、あくまで軽いスキンシップに留めながら、これから竿姉妹となる娘を誘惑する。
一方のアリスは、ロニエの小さな顎に手をあてて己の方を向かせると、蒼い双眸で彼女を真っ直ぐに見つめた。
「良いですか? ロニエ」
「は……はい、アリスさま……♥」
「ふふ……♥ それでは、いただいてしまいますね」
熱に浮かされたような表情と共に差し出されるロニエの唇に、アリスは躊躇いなく己の唇を重ねた。絡み合う舌と混ざり合う唾液の音がキリトの耳に届くように、激しく、そして濃密に、初心な後輩騎士の唇を貪る。
超至近距離で繰り広げられる紊乱な光景にキリトが視線を釘付けにされていると見るや、アスナは両手の掌をキリトの頬へ当てると、半ば強制的に己の方を向かせた。
「キリトくんのお相手は、私……じゃ、ダメ?」
「ダメなわけがあるか……!」
榛色の瞳を潤ませ、アスナは誘う。後輩の体を腕の中に納めたまま、キリトは愛妻の柔らかな唇を奪った。劣情をぶつけ合うような容赦の無いディープキスに、アスナは吐息を荒くし身体を震わせながら応える。
アリスとロニエ、キリトとアスナ。二組の口付けが響かせる音が、お互いの聴覚を刺激し更なる興奮を呼び起こす。そうしてたっぷりとキスを堪能したあとは、さも当然のように相手を変えて別の唇とキスを続ける。アリスはキリトと、アスナはロニエと。そしてまた相手を変え、キリトはロニエと、アスナはアリスと。お互いの存在に酔ってしまいそうな程に濃密で淫靡なディープキス・スワッピング。
欲望に塗れたキスのせいで溢れた唾液が口の周りをべたべたにする頃には、三匹の雌はすっかり
「せんぱっ、せんぷぁい……♥♥」
「ロニエっ……!」
完全に蕩けた声音を垂れ流しながら、キリトとのキスに溺れるロニエ。キリトがその身体を後ろから抱きしめ支える中、アリスとアスナは左右からロニエの脚に触れ、そっとその両脚を開かせる。
露わになる、ロニエの秘所。背面にいるキリトからは、ロニエの大きな胸の死角となって直接見ることのできない場所。すっと通った一本筋の合間からこぼれる幾筋からの愛蜜、そして小さな肛門を目にすることができたのは、ロニエと同じ雄に傅く二匹の雌だけだった。
「とても綺麗ですよ、ロニエ……♥ ふふっ、もうこんなに……♥」
ロニエの脚の間に滑り込んだアリスの細い指先が、ロニエの秘裂を左右に押し開く。露わになるのは、粘液の光沢をまとった薄ピンク色の媚肉。キスの興奮をたっぷりと与えられた、文字通りの処女地。
愛液がまとわりつく指先を、わざとロニエの目の高さまで持ち上げてから舐めとったアリスは、己の唾液をたっぷり絡ませてから再びロニエの秘所へと伸ばした。
「これだけ溢れていては、もう準備をする必要はないかもしれませんが……まあ、相手が相手ですからね」
「ひゃぅっ♥」
つぷり、という感触を伴いながら、アリスの指先がロニエの中へ入り込む。あくまで手つきは優しく、静かに。ロニエの秘めた性感を目覚めさせ、少しずつ高めていくために、浅い部分を重点的に擦る。
「はっ、あっ♥ あ、アリスさまっ……♥ んっんっ♥」
「感じやすいのですね、ロニエは。少し指を入れただけで……どんどんと溢れてくるではありませんか」
「ひあっ♥ やあっ♥ んんんっっ♥♥」
「大丈夫ですよ、ロニエ。これはあくまで、お前がキリトを心地よく迎え入れるための準備にすぎません。
お前の純潔も、他人から与えられる初めての絶頂も……ちゃんと全て、キリトに捧げさせてあげますから」
粘度の高い涙をとろとろと流すロニエの雌穴を、アリスの指先が優しく弄ぶ。奥に進もうという意思も、乱れさせるための激しさも無い、アリスの言葉通りの柔らかな愛撫。その穏当な刺激にも、ロニエは脚をぴくぴくと震わせてしまう。
ロニエがうっかり脚を閉じないよう、その片脚に絡められるアスナの脚。肌と肌を触れあわせながら、アスナはロニエの頬や首筋へ幾度も口付け、耳たぶを甘く噛む。そうして弄んだあと、そっと彼女の耳元に唇を寄せた。
「私達がキリトくんと交わってる
どんな風に愛されたい? 優しく? 乱暴に? 奴隷みたいにキリトくんに隷従したり、それとも甘やかしてみたい?」
問いかけと共にロニエが見た映像の記憶を呼び起こしながら、アスナはロニエの柔肌を愛撫する。下腹部――子宮の真上にあたる部位をそっと撫で上げながら、指先を豊満な双丘へ。雄を誘惑するバストに触れ、ピンク色をした乳首をくりくりと弄くり回す。その度に可愛らしい声と共に身もだえするロニエが愛らしくてたまらない。
「んっ♥ ぜっ、全部っ♥ んん……♥ ぜんぶ、してみたいです……♥ 先輩と、キリト先輩となら……全部したいです……♥」
「ふふっ、全部かー。じゃあ、これからいーっぱいキリトくんと交わ……セックスしないとね♥」
「はいっ。します♥ んゅっ♥ キリト先輩といっぱい……せっ、セックス、します……♥」
呑み込みの早いロニエの可愛らしさに、アスナは思わずその唇を奪っていた。キリトに至近距離で見せ付けるような、甘く濃密なディープキス。アリスとアスナによる全身愛撫に悶えるロニエに舌を絡ませながら、アスナは自らが培ったキスのテクニックを伝授していく。まだ初心で、されるがままなロニエの舌に、直接。
初めての交わりを迎えるロニエの不安を快感で塗り潰すように責め立て、身のうちの熱を高めていく。それはさながらVRMMOで新たにクランに加わった新人プレイヤーを育成する時のように、あるいは群れに加わった若い狼に狩りの仕方を教える時のように。先達の技を以て、ロニエの雌としての資質を開花させていく。
「「ぷはぁっ……」」
舌と舌の交わりを終わらせて唇を引き離せば、吐息の音が揃って漏れた。はあはあと、熱の篭もった呼吸を繰り返すロニエは、すっかり劣情に支配された立派な雌の顔をしていた。
その眼前に差し出される、アリスの二本の指。ロニエの蜜壺を整えたおかげでたっぷりと愛液に塗れた指を、ロニエはそっと口に含んみ、自らが流した液体を舐めとっていく。ちゅぱちゅぱと音を立てながらロニエがアリスの指をしゃぶる中、アスナとアリスはそっと見つめ合い、そして頷きを交わした。
準備はもう、整ったのだと。
「さ、ロニエさん。こっちにどうぞ」
キリトと向かい合う位置はそのままに、間に少しだけ距離をとったアスナがロニエを手招く。自らの身体を抱きしめるキリトの腕が緩んだのをきっかけに、ロニエはその招きに応じ、その後にクッションの一つを手にしたアリスが続く。
ちらりとキリトを一瞥した後、アリスはベッドの上にクッションを置き、それを枕代わりにしてロニエを寝かせる。ロニエの頭は窓の方へ、脚はキリトの方へ。そうして、アスナ共々ロニエの膝裏に手を回し、両脚をそっと開かせた。
「さ、キリトに見せてあげましょう。あなたの最も恥ずかしい場所を」
「ひゃわっ……♥」
キリトの真っ直ぐ正面に晒されるロニエの女陰。雌二匹の丹念な愛撫によって蕩かされたその場所は、未だ穢れを知らぬまま、ただ発情の涙を流して雄を待ちわびていた。そのままアスナとアリスは身体を倒し、ロニエの左右へと寝転ぶ。手の代わりに脚を絡みつかせ、ロニエの閉脚をそっと阻止しながら。
一方、ベッドの上で膝立ちになったキリトは、待ち受ける女達の方へ向けて距離を詰めつつ、ようやく思い出したかのように己の装備を全解除した。修剣学院時代の黒服が光となってストレージに消え、その下に隠されていた凶暴な一物がぶるんと勢いを付けて目を覚ます。
キリトの視線がロニエの秘所に注がれたように、待ち受ける雌達の視線がそれに注がれぬはずもない。
「あっ……♥ あれが、先輩の……♥」
「すごいでしょう? キリトくんの。あんなに大きくて、お腹につきそうなくらいの仁王立ちっぷりで……♥ 見てるだけで頭の中まで犯されちゃいそう♥」
「いつ見ても逞しいものですね……♥
映像画面越しに見るのと、こうして目の当たりにするのとでは……同じものでも迫力が違うでしょう? ロニエ」
「はいっ……♥ とってもすごいです……先輩の、お、おっ……」
これから己の純潔を散らす凶器――それに視線を釘付けにされながら、決定的な言葉を口にできないロニエ。かつては己にもそんな時分があったなあと思い返しながら、アスナとアリスは彼女が言うべき言葉を音にして紡ぐ。
「「おちんぽ」」
「っ……♥ 先輩の、おちんぽ……♥ キリト先輩の、おっきくて立派なおちんぽ……♥♥」
左右から包み込むようにして注がれるアスナとアリスの声が、ロニエの耳にダイレクトに届き、雌として更なる成長を促す。太股に押し当てられる先達達の性器――既に肉の快楽を知り、そしてその快楽を教え込んでくれた猛々しい肉棒を目にして興奮の蜜を垂れ流す淫猥な華が水音を響かせる。
はっはっ、と仔犬じみた興奮の吐息を漏らすロニエの側まで近づき、キリトは彼女の瞳を真っ直ぐに見下ろした。
「ロニエ、挿れるぞ」
「はい、キリト先輩……♥」
左右を固めるアスナとアリスごとロニエを抱きしめるように広げた腕を、ベッドの上でついて支えとしながら、キリトはロニエの身体の上へ覆い被さった。そうして少しだけ姿勢を整えれば、張り詰めた亀頭の先がロニエの蜜壺の入り口に触れ、溢れ出す蜜が先端を濡らした。
その感触にロニエが微かな嬌声を漏らす一方、音も無く動いたアスナとアリスの両手が、ロニエの腰に触れて密かに支える。
据え膳食わぬはなんとやら、である。アスナとアリスが腕を奮って供した
「あっ……♥♥」
ロニエの蜜壺を、キリトの太い肉棒が少しずつこじ開けていく。男の体を受け入れた事のない場所を、男の象徴で穢しながら。
愛液でコーティングされた亀頭がロニエの膣内を押し広げ、太い肉軸が進むための道を作る。そうして一度広げられたロニエの媚肉は、すぐさまキリトの肉棒へぎゅっと密着し、あらゆる方向から逸物を包み込みながらキリトの形を記憶していく。
「はっ、はあっ……♥」
「大丈夫か、ロニエ。ペイン・アブゾーバーが効いてるから、痛みはないと思うんだけど……」
「んっ……は、はい。大丈夫です、先輩……♥ だから、このまま……♥」
「ああ、わかった。このままゆっくり入れていくから……な」
ロニエに無駄な負荷をかけないように気を遣いながら、キリトは少しずつ、少しずつ、己の分身をロニエの中に埋めていく。
「あっ……くうっ……♥」
ずぷり、ずぷりと、肉棒が進む度、ロニエは小さく鳴きながら全身で反応する。
ペイン・アブゾーバーの作用は破瓜の痛みすら軽減させてしまうが、それが初めての交わりに臨む彼女を気遣わなくてよいという理由にはならない。
瞳を潤ませるロニエと視線を交わし、物欲しげに突き出される唇とキスを重ねる。そのまま頬へ、耳へ、首へ、肩へ――軽いキスの雨を降らせて慈しむ。キリトに愛されるくすぐったさにロニエが微笑む横では、アスナとアリスが彼女の髪や身体を愛撫していく。
やがて、亀頭の先に感じる僅かな抵抗。一度失えば二度と戻らない純潔の証。
「せん、ぱい……♥」
感触的にか、あるいは本能的にか。
『きて』という無言の願いに頷きを返したキリトは、腰にしっかりと力を込めて前に出し、そのまま逸物を深々と突き込んだ。
「――くあ、ぅっ……!」
痛み無き破瓜の感触に、ロニエが微かな悲鳴を漏らす。一般的な俗称のように膜が張っているわけでは無い、そんな小さな場所。そこを刺し貫いたキリトの亀頭は、そのままロニエの膣内を擦り上げるようにして進み、やがて彼女の最も奥へと辿り着く。
子宮口をぐっ、と押し上げながら密着する亀頭。互いの腰と腰がぴったりとくっつき合い、僅かに見える結合部からは押し出された愛液が、じくり、じくりと溢れ出す。
片手で己の身体を支えたまま、キリトはもう一方の手でロニエの頬に触れた。
「全部入ったぞ、ロニエ。えらいぞ……よく頑張ったな」
「はい、先輩……♥ んっ……♥ なんだか、不思議な感じです……♥」
「痛くはないと思うけど……変な感じはしないか?」
「大丈夫ですよ……♥ 先輩が、私の中にいてくれるのが……ちゃんとわかります♥ あったかくて、おっきくて……♥」
ロニエの両腕がゆるゆると動き、キリトの首に回る。その腕に引き寄せられるようにしながら、キリトは彼女と幾度目かになるキスを交わす。左右で寝転ぶ二人が嫉妬しそうなほど情熱的に、発情しそうな程に水音を立てて、ディープキスで舌と舌を絡めまくる。
キリトの舌による口内陵辱じみたキスにすら、ロニエは喜びと興奮を覚えずにはいられなかった。
「んじゅっ、じゅうっ……♥♥ むふっ、ふぅ♥んっ、んぶぅっ……♥♥」
重なる身体から少しだけ力を抜くが、ロニエに預ける体重は少しだけ。彼女に無用な負荷をかけず、それでいて密着する事で安心感を覚えられるラインでバランスを保つ技には、多くの乙女達の肉体を貪ってきた経験が無意識に活かされていた。
「――『どうしてキリト先輩は、私の中におちんぽを挿れたまま動かそうとしないんだろう』……って考えてるでしょ? ロニエさん」
上と下で繋がる二人を特等席で鑑賞しながら、アスナがロニエの疑問を代弁する。もちろん、ディープキスに溺れ、合成音声システムにもまだ慣れていないロニエがそれに返答できるはずも無い。結局、その疑問に答えたのは、二人を挟んでアスナのちょうど反対側に寝転ぶアリスだった。
「待っているのですよ、キリトは。お前のおまんこが、キリトのおちんぽの形に慣れるのを。
初めてキリトを受け入れて、そして今後キリト以外を受け入れる事の無い場所に……キリトの形を、しっかりと刻み込んでいる最中なのです」
「ロニエさんがキリトくんの身体をぎゅ~ってしてるように、おまんこがおちんぽにぎゅ~って絡みついて、精一杯ご奉仕してる感触を愉しみながら……じっくりと待ってるんだよ♥」
実際、二人の言うことは当たっていた。怪我も無ければ出血も無い、妊娠する事も無いというVR空間内でのセックス。とはいえ、それでも相手のことを気遣うのは当然だ。それがほんの少し前に純潔を失ったばかりの少女であるなら、なおさら。
左右から響く雌達の声を聞きながら、二人は意識が蕩け落ちそうなキスにどちらからともなく区切りを付けた。唇を離すタイミングは一緒。それだけでも、互いの繋がりが深まった事を感じずにはいられない。
「――はっ、はあっ……♥ 先輩……せんぱい……♥」
「悪い、さすがに限界……。そろそろ動くぞ、ロニエ」
こくん、と頷くロニエの鼻先に軽く口づけ、キリトは上体を起こした。いわゆる正常位、非常にオーソドックスな体位で繋がったまま、ロニエの腰を両手で掴み固定する。そうしてロニエの逃げ場を完全に奪ってから――腰を動かす。
「んぅっ♥ あっ……あぅっ、ううっ♥」
あくまで焦らず、ゆっくりと。他の娘達であれば焦らしプレイになってしまいそうな速度で、ロニエの膣内から肉棒を引き抜く。もちろん全てでは無く、亀頭だけは蜜壺の中に挿れたままで。そうしてロニエの反応を見極めながら、再び内部へと挿入していく。
ゆっくりと引き抜き、ゆったりと挿入する。ロニエの性感を開発すると同時に、蜜壺をキリトの逸物にぴったり合うサイズに調教するための前後運動。
「あっ♥んっ♥ んんぅうっ♥ せんぱっ、いのぉっ♥ はっ、はあっ、ふうっ♥♥」
肉棒が出し入れされる度に、ロニエが甘い声を上げる。その嬌声についつい興奮させられ、腰を振る速度はわずかずつ速くなっていく。小さく跳ねそうになる彼女の腰を下から支えながら、キリトはロニエの秘所で肉棒を扱く。
「キリトくんのおちんぽでおまんこどちゅどちゅされるの、とっても気持ちいいでしょう? ロニエさんをオンナにしてくれた、キリトくんのぶっといご主人様おちんぽ……♥」
「肉棒の一突きごとに、お前の身体は覚えていくのです。お前を抱き、孕ます権利があるのはこのちんぽだけだと。ロニエ・アラベルのおまんこは、キリトのおちんぽに奉仕する為の場所なのだと……♥」
先達としての知識をロニエに教え込みながら、二人はロニエの豊満なバストを揉み拉き、乳首をくりくりと愛撫する。健気で敏感なロニエの身体は、その度に膣内を収縮させては肉棒に容赦なく絡みつく。
完全に
それはいわゆる、『種付けプレス』の体位。射精から絶対逃げられない事を雌に教え込む為の体位。
「せんぱ――あぁアッ♥ ああっ♥ んんぅううっ♥ これ、これなにぃっ♥♥ あひっ♥♥ ああぁぁっ♥ 急に、激し――あっあぁあっあっあああっっ♥♥♥」
「あらあら。ロニエさんのおまんこが気持ちよすぎて、キリトくんがすっかり種付けモードに入っちゃった」
「こうなってしまっては、もうどうしようもありません。諦めて――キリトに射精される感触を愉しみなさい、ロニエ。これから幾度となく味わうことになるのですから」
もはや二人の声を聞いていられるだけの余裕は、ロニエのどこにも残っていなかった。前後運動に近かった正常位の挿入から、上下に貫く種付けプレスへ。キリトの身体が上にあることで、必然的に抑え込まれる格好になったロニエの蜜壺は、最初にたっぷりと時間をかけて逸物の形を覚え込ませておいたおかげで、強姦めいた激しいストロークすらも愉しめるようになっていた。
「あっ♥あおっ♥んむうぅ♥♥ せんぷやい、せんぱいひぃっ♥♥」
「ロニエ、ロニエっ! ごめん、もう、止まらない……!!」
「いいです♥ 先輩だったら♥おっ♥おふ♥ すきですかりゃ♥あぁあっ♥♥ あっおっ♥♥ 奥のっ、奥のほうっ♥♥ ぐりぐりってされるのすごい♥すごぃいぃ♥♥」
ばこばこと重く激しく容赦の無い音を立てながら、キリトは肉棒を叩きつける。その度に、組み敷かれたロニエは雌の嬌声を響かせながら更に雄の劣情を煽る。その杭打ちによって結合部から溢れさせられた愛液の滴が、次々にシーツに触れて灰色に変わっていく。
艶めかし喘ぎ身もだえするロニエを腕の中に収めたまま、キリトは彼女を激しく侵し続ける。そしてその行為も、そろそろキリト自身の臨界点を超えようとしていた。
「ぐうぅうっ! ――ロニエ、ロニエっ! このまま
「せんぱい、せんぱいっ! はいっ♥はいっ♥ このままきてぇっ、くだしゃいぃいいっっ♥♥」
ぱんぱんと激しい音を上げながら繰り返されていた杭打ちピストン。その最後の一突きが、こじ開けられた膣道の再奥に突き込まれた。未だ穢れを知らぬ子宮、その入り口に亀頭がぴったりと密着した瞬間――射精が始まった。
「ひぁっ――あっ♥ああっ♥ あっ、あつ、あついぃいっ♥♥ せん――せんぱ、ぃぃいっ♥ あっああっああああぁぁああ♥♥ おく、いっぱい♥いっぱいどくどくってぇええっ♥♥ んぁっ、ぁっ、ひぃいぃいいいっっ♥♥」
ドクドクと脈動する太い肉棒がロニエの膣道をこじ開け、陰嚢で熟成された濃厚な精子が輸精管を一気に駆け上る。放出された先は、もちろんロニエの子宮。子宮口の周囲を完全に塞いだ亀頭は、小さい子宮口から子宮内部にめがけてありったけの精子を送り出す。
白濁液が子宮内壁に叩きつけられる度、ロニエの本能は快感の叫びを上げてロニエを刺激する。知識としては知りながら、実体験としては初めてであるロニエに襲い来る未知の快感。その快感に反応した膣肉が、一層肉棒を締め付け、更なる射精を促していく。
やがて、ロニエの股座からぷしゃりと噴き出す液体。それは、ロニエにとって生まれて初めての潮吹きだった。
「あああっ♥ これが、こんなの……♥♥ だっ、め、だめにひ――だめになっちゃいますぅ……♥♥ あっ、やだぁっ♥♥ すき、すきぃっ♥♥」
全身をびくんびくんと痙攣させながら、ロニエは膣内射精の快感に酔いしれる。口の端から零れ流れた唾液を拭く事にすら思い至らないほどの快楽に酔い、雌の笑みを浮かべて快感に溺れる。所謂種付けプレスの体位でキリトに抑え込まれていなければ、今頃腰を浮かせ、背中を弓のようにしならせながら絶頂を迎えていることだったろう。
いつものことながら、注がれる精液はどっぷりと重い。ここがキリトのVR空間でなければ、一発で受精させられていてもおかしくないと思わせるほどの濃度と量だ。
たっぷりと時間をかけた射精を終え、キリトが肉棒を引き抜く頃になっても、ロニエの緩みきった――それでいて好色な蕩け顔はまだそのままだった。
「はひ……せん、ぱい……♥♥」
「ふう……。たくさん出たよ、ロニエ。ありがとうな」
「はぁ、はぁ……♥ どういたしまして……♥ あっ、なかから、あふれて……くうっ♥♥」
ロニエの蜜壺からキリトが肉棒を引き抜いた途端、射精したばかりの精液が一気に逆流し溢れ出す。股座から生殖の残滓を垂れ流すロニエの姿はもちろん、左右を固めるアリスとアスナの裸体があまりにも眩しい。
元々萎えてなどいない剛直が露わになれば、アスナもアリスも――そして未だ快楽の中で夢見心地なロニエですらも、肉棒に視線が釘付けになった。
「キリトくん……♥」
「キリト……♥」
「キリト先輩……♥」
窓越しに未だ届く満月の光が、部屋の薄闇をわずかに照らす。
夜はまだ――明けるはずもない。
13-2.月下に捧ぐ へ続く。
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