キリトの個人サーバにて運用されるプライベートVR空間。そこに作られた無数の部屋は、大きく二種類に分けることができる。
『鍵のかかる私有部屋』と『鍵のかからない共用部屋』の二種類に、だ。
前者はログイン権限を持つ各人が個人的に使うための部屋だ。入室に必要な鍵情報は各人のアカウントに紐付けられているため、もしそれ以外の人間が入ろうとするならば、部屋の主から招かれるか、最高管理者権限を以て強制的に解錠するかのどちらかしか無い。
対して、後者は文字通りの共用スペースである。多少の例外はあるが、ログイン権限さえあれば誰でも自由に立ち入り、自由に使うことができる。
蒼い髪のウンディーネ――もとい、アスナが今いるこのカフェテリアも、そんな共用スペースの一つだった。
「――あれ、このお茶。前よりなんだか良い香りがしませんか、アスナさん」
「そこに気付くとは、さすがシリカちゃんね。実は、茶葉のブレンドを少し変えてみたの」
明るい珪砂色の髪の間から、それと同じ色をした大きな猫耳を生やしたケットシーの少女――シリカは、アスナに褒められ、気恥ずかしそうにはにかんだ。
その容姿と雰囲気から普段は年齢以上に幼く見られがちな彼女だが、実際はアスナ達と然程大きな年齢差があるわけではない。そしてこの空間にログインできているという事は、シリカもまたアスナの『姉妹』――頭に『義』ではない漢字一文字が付くタイプの――である事は言うまでもないだろう。
「その……アスナさんも、キリトさん待ちですか?」
「うん、そうだよ。シリカちゃんも?」
「はいっ」
白い丸テーブルの向こうから問い返すアスナに対し、シリカはこくりと首を縦に振って応える。
今のアスナ、そしてシリカのように――プライベートVR空間内の共有スペースで、キリトがログインしてくるのをゆったりと待つ。その行為自体が、キリトを閨へ誘っているのと同義――そんな暗黙の了解が浸透したのは、いつ頃だっただろうか。
ノーリスク・ハイリターンを絵に描いたようなキリトのVR空間ができてからというもの、黒き王の後宮に集う女性陣は、己の内に滾る青く情熱的な欲望を抑え込む必要が無くなった。若さという特権から危険性が除去されたのだ。そこに残るのは、青春の中に溢れる本能的な情欲と互いへの燃え盛るような愛情だけだ。
かつてはキリトの方からが大半だった『お誘い』も、今では女性陣の方からキリトに仕掛ける事の方が圧倒的に多くなってしまった。当然、その誘い方も気分次第で大きく変わる。
たとえば、今のアスナ達のように、キリトがログインしてくる事を知っていて、彼の到着をただのんびりと待つ事もある。
あるいは、「お前との大変不適切な関係をより強固なものにしに来ました――と言ったら、寝所に導いてくれますか?」と涼しい顔で宣う金色の騎士や、「アタシと気持ちいいことしようよー、キリト」と上目遣いでねだるMHCPのように、直球ど真ん中の誘惑を仕掛けてくる事もある。
また、他のVRMMOで一緒にダンジョンへ潜ったあと「キリトのおかげですっごいお宝が手に入ったから……お礼、させて」と遠回しな言い方をするトレジャーハンターや、「《ALO》で使う新しい水着、どれにしようか迷ってるんだよね。だからー、お兄ちゃんの意見、じっくり聞かせてもらえない?」と意味ありげな視線を向けるスピードホリックのように、あれこれと口実を用意する事もある。
――結局、誰も彼もが溺れているのだ。この甘く蕩ける、肉欲に塗れた蜜月の日々に。
「今日はどんな事しよっか、シリカちゃん。なんだか悩んじゃうよね」
「はい。あ、でも……そうですね。この間は確か、あたしがアスナさんをテイムしましたよね」
「うん、そうそう。シリカちゃんにテイムされて、ペットにされちゃったのよね。私」
少しだけ温くなった茶に口をつけたあと、アスナはこくこくと頷く。
遡ること何日か前、キリト、それにシリカを加えた3人で事に及んだ際、アスナはシリカのテイムスキルに屈し――たという
テイムスキルの効果で《常時強制発情》、《絶対命令服従》、《全装備強制解除(指輪除く)》の永続バッドステータスを刻み込まれた状態で、シリカのご主人様――とどのつまりはキリトに引き合わせたあと、シリカはいつもと変わらぬ笑みを浮かべたまま、足元に跪くペットに向けて淡々と命令を下した。
『じゃあ今から、あたしとキリトさんは新婚夫婦のらぶらぶえっちをしますから、アスナさんはそこで見ててくださいね。
え? 「どうして」って……だって、ペットがご主人様達と一緒にえっちできるわけないじゃないですか♪
特別に、あたしがキリトさんに抱かれてるとこ見ながらオナニーするのは許してあげますから、それで我慢してくださいね。
ただし、あたしの許可なくイッたり、オナニーするのを止めたりしたら……お仕置きですからね』
――優秀なペットであるアスナは、シリカの言いつけをしっかりと守った。
二人のご主人様が、いつもより幾分ゆったりとしたテンポで肌を重ね、愛情に満ちた交合をじっくりと愉しんでいるそのすぐ側で、惨めなほどに激しく自慰行為に耽りながら、絶頂しないよう必死に自分を抑え込み続けた。
結局、イクことを許されたのは、シリカが『夫』の精液を胎内で5度受け止めたあと。顔の上に跨ったシリカの股座から溢れ出す濃厚な精液を舌で舐め取りながら、キリトの肉棒で貫かれた瞬間、アスナは大量の潮を撒き散らしながらはしたなく絶頂を迎えた。
「――だから、今日はあたしがアスナさんのおもちゃにされるべきだと思うんですよね」
「そう? 私は別に、この間の続きでもいいよ。なんだかんだでキリトくんのノリもよかったし」
「うーん……でも、今日はちょっぴり、テイムされる方の気持ちも味わいたい気分といいますか……」
茶菓子として供したアスナお手製のクッキーを齧りながら、シリカはいまだ迷う。
いざ事に及ぶ前、女性陣の間でこうした根回しめいた話し合いがされることは珍しくない。皆基本的にヤりたい盛りであることは共通しているが、求めるプレイの内容が全く同じであることはあまり無いからだ。
アスナ自身の事を考えてみても、ただの結城明日奈として愛情をたっぷりと感じながら優しく抱かれたい時もあるし、《GGO》で囚われの身となってキリトのセックススレイブにしてもらいたくなる時もある。また、時にはウンディーネの神殿娼婦として黒いスプリガンに春を鬻ぎたくもなるし、王妃ステイシアとして夜伽に興じたくなったりもする。
二人きりで交わる時ならば、そういった状況をそれとなく作るなり、あるいは押し倒されてから耳元でそっと囁くなりすれば、あとはキリトの方からうまく合わせてくれるためそれで事足りる。だが、いわゆる3Pとか4Pとか5Pとか12P――現状想定されうる最大人数――となるとそうもいかない。
最大多数の最大幸福、と称するのはいささか正確ではないだろうが、それに近い結果を目指すため、誰が何を求めているのかをある程度把握しておく事は重要だった。
「ねえ、シリカちゃん。どうせなら、私の部屋でお風呂にでも入りながら話さない?
キリトくんがログインしてくるまで、まだ時間あるし」
「いいですね、それ。大賛成です」
「じゃあ、早速行こっか」
「はいっ」
カフェテリアを後にしたアスナは、シリカを伴ったまま廊下を歩く。その目的地はアスナが所有しているいくつかの私室、その内の一つだった。
キリト曰く『サーバの記憶容量等の諸々から判断するに、一人あたり50部屋まで作っても全く問題ない』――というお墨付きが出ていることもあり、女性陣の大半が複数の私室を持っている。アスナもそうだし、シリカもそれは同じだ。
入浴用として誂えた一室――三方向に広がるガラス張りの壁から満月の昇る夜空と夜景を望む、ナイト・オーシャンビューが売りの浴室へと続く扉を開け、アスナはシリカを中に招き入れた。
「……アスナさんって……こういうお風呂部屋、いったいいくつ持ってるんですか……?」
「うーんと……そんなに多くないよ。ここと、あと5部屋くらい。
普通の銭湯風のと、天然檜風呂と、青空と海が見える露天風呂と、バブルバスのと……あとは、うちのお風呂を再現したので全部かな」
「さ、さすが……」
呆気にとられつつ、シリカは装備全解除ボタンを押して裸身になると、窓際に置かれた大きなバスタブへと近づく。
壁や床に埋め込まれるように一体化している白いバスタブは、一般的な大人5人くらいなら同時に入れそうな程には大きい。仮想空間特有の、透明度が高く屈折もしないお湯がなみなみと入ったバスタブに入るべく、シリカはバスタブの縁に手をかけた。
「あ、待ってシリカちゃん」
呼び止められて振り返ったシリカの視線の先で、一糸まとわぬ姿を晒すアスナがストレージから小さなガラス瓶を取り出す。ぽん、という軽い音と共にコルクの蓋を引き抜いたアスナは、シリカの眼前にその小瓶を差し出した。
「これね、私が時々使ってる、お気に入りの入浴剤なんだけど……よかったら使ってみる?」
「どんな入浴剤なんですか? ローズマリーとか……それとも、『草津の湯』みたいな感じのですか?」
「ふふっ。なんだと思う? 嗅いでみて」
小瓶の口に鼻先を近づけ、シリカはすんすんと匂いを嗅いでみる。
白色をした中身から立ち上る、鮮烈で、欲に塗れ、それでいて魅惑的な――本能の一番深いところを刺激する香り。嗅覚がその信号を脳髄に伝えた瞬間、シリカはその香りの正体を即座に理解した。
「これ……キリトさんの、精液ですよね」
「大正解♪」
空いている手でシリカの頭(と猫耳)を撫でつつ、アスナはにっこりと笑う。
「これね、ストレアさんにお願いして、こっそり作ってもらった特製入浴剤なの。
これをお風呂のお湯に入れると……お湯をね、ぜーんぶキリトくんの精液に変えてくれるのよ。
それでね、良かったらなんだけど……シリカちゃんも試してみない?」
「是非」
「ふふっ。シリカちゃんなら、そう言ってくれると思ったよ」
一も二もなく頷いたシリカの横で、アスナはバスタブの湯に向けて小瓶をそのまま放り込む。湯に触れた瞬間、瓶は破壊エフェクトを伴いながら消滅し、中に入っていた入浴剤が透明な湯の中に音もなく溶けていく。
変化は、すぐに始まった。入浴剤が溶け込んだ部分を起点に、透明な湯が白く濁った精液に置き換わっていく。ぼこぼこと沸き立つような音と共に増殖し始めた白い領域は、数秒で透明な領域を喰い尽くし、バスタブの縁に触れた所でようやく止まった。
ほんの少し前までとは比べ物にならないほどに粘性と濁り具合を増した液面からは、小瓶から漂っていたのと同じにしてより濃厚な雄の香りがこれでもかという程に立ち上っている。その香りを鼻を通して肺の奥まで深々と吸い込んでから、シリカはようやく口を開いた。
「……これ、全部。キリトさんの精液なんですよね……」
「そうそう。今までキリトくんが出してくれた精液の情報を解析して、それを大量にコピーしてるって、ストレアさんも言ってたわ。
奥の方は少しだけ深くしてあるから、ちょっとだけ気をつけてね」
そう言って、アスナはバスタブの縁をまたぐように左脚を上げ、白濁した精液の中に自分の身を沈み込ませていく。官能に蕩けた恍惚の表情を浮かべるアスナの脚に、腰に、腹に、胸に、腕に――どろりとした濃厚な精液が絡みつく。
そして肩はもちろん、入浴用に髪をアップにした事で顕になっていたうなじの一部まで深々と体を沈めたアスナは、湯の中から片手を出してシリカを優しく手招いたあと、指先に絡みついた精液の塊を口に含み、はちみつを舐める小熊の様に丁寧に舐め取った。
アスナの淫靡な仕草に、ごくりと喉を鳴らしてつばを飲み込んだあと――シリカもまたバスタブへ脚を踏み入れた。
「あっ……意外と温かいんですね。普通のお風呂に入ってるみたいです」
「でしょ? もちろん、他のお風呂と同じで、目に入れても痛くなったりしないし、中で息もできるように設定してるから安心してね」
「さすがアスナさん、気が利いてますね……」
苦笑しつつ、アスナと対面するような位置へシリカは腰を下ろす。
ねっとりと張り付くような感触と共に、キリトの精液が肌を撫でながらシリカの体を包み込む。液面から沸き立つ精臭が呼吸の度に嗅覚を支配し、条件反射的にシリカの興奮を呼び起こす。
少しだけ体を動かす度に、どろりとした精液の液塊が追従してくる。雌を孕ませることに特化した元気な精子、その一粒一粒についばまれているような感触は、シリカが想像していた以上に心地よかった。
「アスナさんがドハマリする理由、ちょっとわかった気がします……」
「でしょう? ほら、もっと側においでよ、シリカちゃん」
「は~い♪」
両手足をバスタブの底へ付けた四つん這いのような姿勢で進むシリカを、アスナは両腕を伸ばして迎え入れ、そのままぎゅっと抱きしめる。
「ふふっ、シリカちゃんの肌、すべすべで気持ちいいな~♪」
「手付きがやらしいですよー、アスナさーん。ハラスメント通報されても知りませんよ~?」
「女の子同士だから通報できませ~ん♪ それに、もし通報されても、キリトくんが握りつぶしてくれまーす」
「あっ、ずるいですよそれー」
小柄なケットシーの肌に手を這わせ、アスナはバスタブの中にどっぷりと溜まった精液を塗りたくっていく。元より首から下のほとんどを精液に浸けている状態とはいえ、ただ液体が触れているのと、塗り込まれるのとでは感じるものもだいぶ違う。
細胞一つ一つに至るまでの全てに、キリトの精の匂いをマーキングされているかのような感覚に、シリカはゾクゾクとした退廃的な快感を覚えていた。
「んっ、んぅっ……♪」
「ふふっ。いい顔してるよ、シリカちゃん。女の子が人前で簡単にしちゃいけない、とろっとろの顔になってる」
「そういうアスナさんだって……♥」
白濁した精汁の海の中より少しだけ身を起こしたアスナは、淫蕩な女の貌で微笑む。彼女のなめらかな肌の上を滑り落ちた精液の群れが、豊満な胸の谷間に溜まっていく。胸元に抱かれたシリカは、胸元に顔を埋めるようにして口を近づけると、アスナの肌に舌を触れさせながら精液を舐め取っていく。
ねっとりとした子種汁を舌の上で転がせば、独特の香りと苦味が口の中いっぱいに広がっていき、粘つくのどごしと共にごくりと喉を鳴らして飲み干せば、繁殖欲求を刺激された雌の身体が疼き始める。
「美味しい? シリカちゃん」
「はい、とっても……♪」
「好きなだけ飲んでね。減った分は自動で補充してくれる仕組みになってるから。
もちろん、肌に塗ってみたり、シャンプーしてみたりするのも気持ちよくておすすめだよ」
精液まみれの片手を持ち上げたアスナは、アイテムウィンドウを開くと、木製のジョッキをオブジェクト化する。質の良い天然木を丁寧に削り出して作られたジョッキを腕ごとバスタブの中に沈めたアスナは、バスタブの中を軽くかき回すように腕を動かしたあと、再びジョッキを持ち上げた。
溢れんばかりの――というか、収まりきらなかった白濁液で側面をコーティングされているかのような状態となったジョッキの中には、アスナとシリカの大好物がなみなみと充填されている。
すっかり重くなったジョッキを落とさないよう、慎重な手付きで持ち上げるアスナの顔に、笑顔以外の何かが浮かんでいようはずもない。
「でもやっぱり一番は……これだよねー♪ いただきまーす♥」
側面を垂れ落ちる精汁を舌で丁寧に舐め取ったあと、アスナはジョッキの縁に口を付け、白く濁った中身を喉へと流し込んでいく。
舌に絡みつきながら口内を支配していく雄の体液。本来は雌を孕ます為に生成された子種達を束の間味わったあと、アスナは喉をごくり、ごくりと鳴らしながら一気に嚥下していく。
一杯目は、飢え渇いた体を落ち着けるため、息継ぐことすらせずただただ飲み込む。待ちに待ったずしりと重い精液が食道を駆け抜け、胃袋に落ちていく度、アスナの体はキリトの為だけに生きる雌として作り変えられ、アスナの心は内側からキリトに支配されていく。
底に残ったわずかな分すらも啜り上げるようにしてジョッキを空にしたあと、アスナはバスタブ表面付近にジョッキを這わせ、二杯目となる精液を掻き集めると、それを再び口元へと運んだ。
「中に溜まってる新鮮なのも最高なんだけど……空気に触れてる部分も、また独特の風味があって美味しいのよね」
うらやましそうに見つめるシリカを一瞥したあと、アスナは再びジョッキを傾けた。
二杯目となる今回は、中身を一気に飲み干すような事はしない。まずはたっぷりと口の中に含む。下品な振る舞いと知りつつも、アスナはわざと口を開け、ぐちゃぐちゃと音を立てながら濃密な精液を咀嚼する。噛めば噛むほど溢れ出す濃厚な雄の味。その味を舌に、そして口全体に覚えこませながら、鼻腔に抜けていく精臭をじっくりと堪能する。
時間を贅沢に使い、口の内側全体に精液を塗り込むように舌を動かしてから頭を後ろに倒す。粘つく液体を喉へと送り込みながら口を開けたアスナは、そのままガラガラと喉を鳴らして『うがい』を始めた。
「――んぐ、んん゛っ゛……ぁうっ……」
ねっとりと濃厚な液体にどうにか空気を流し込み、半ばえづくような形になりながら、アスナは精液で喉を潤していく。それは本来、喉から汚れや雑菌を落とすための行為。しかし、アスナが企図するのはそれとは真逆――より濃く、より深く、声音一つにもキリトの気配が漂う事を願って、喉奥に精液の塊をなすりつけていく。
アスナの姿を見ただけで、声を聞いただけで、気配を感じただけで――この極上の雌には、既に存在の全てを捧げて番った最上の相手が既にいるのだと、キリト以外の全ての雄が本能的に理解して諦める事を願いながら、泡立つ精液を一滴たりとも残さずに飲み込む。
「……っ、ふうっ……。ごちそう、さまでした……♥」
いつものクセで口を大きく開けたアスナは、この場にいないキリトに向けて、大事な精子をキレイに飲み干したことをアピールする。自らが優秀な精子便所であることを強調するそんな行為が、たまらなく心地良い。もしこの場にキリトが居れば、『よくできました』と言いながらご褒美に頭を撫でてくれただろう。
しかし、もしもご褒美がキスだったなら、アスナは間違いなく拒んでいただろう。なにせ口の中にはまだ、キリトの精子の後味が残っている。そしてその後味は、そしてキリトの精子そのものは、全て一切の例外なく『キリトを愛する少女達の物』だ。
(だから、キリトくんにはあげない……♥ この子達は全部、私達だけのものだから……♥)
故に、たとえそれがキリトから生み出された物であろうと、キリトへ渡すわけにはいかない。それは女性陣の共通認識であり、フェラチオ等の口腔奉仕系プレイの後、わざわざ口内を別の味に塗り替える理由でもあったりする。
あっというまに二杯目を空にし、恍惚の表情を浮かべて喜びに浸るアスナの手から、空になったジョッキがこぼれ落ちる。精液の海に落ち、比重演算に従ってそのままずぶずぶと沈み込んでいくジョッキを見送ったあと、シリカはアスナの瞳を正面から見つめた。
「アスナさん」
「なあに、シリカちゃん」
「その……アスナさんの髪、洗わせてもらってもいいですか?」
「うん、もちろんだよ。お願いするね。シリカちゃん」
膝立ちの状態になって浴槽を進みながら、シリカはアスナの背後へと回る。
リアルではミルクティーを思わせる美しい淡色の髪をしているアスナだが、今日のように《ALO》仕様のアバターでログインしている時に限っては、その髪色は流水の如き青に染まる。
その美しさにシリカが視線を奪われている間に、アスナは後頭部に付けていたヘアクリップを外して、入浴用にまとめていた髪を解く。絡まる事もなくほどけた長い蒼髪は、その半分ほどが白濁した液面に触れた。
「じゃ、かけちゃいますね」
「はーい。たっぷり仕様の贅沢コースでお願いするね、美容師シリカちゃん」
「贅沢コースですね、任されました!」
両手の中になみなみと精液をすくったシリカは、それをアスナの頭の上に持っていき、指盃を静かに傾けた。
粘性の高いどろりとした白濁液が手のひらから流れ落ち、アスナの頭の上に落ちる。頭皮に沿って流れ始めた精液は、何本かの太い筋に分岐しながら伝い落ちつつ、アスナの蒼い髪を白く染め上げていく。
精液風呂の中にもう一度手を浸し、指先にたっぷりと精液をまとわせたあと、シリカはアスナの髪へと触れた。
「――アスナさん。アスナさんはどうして……あたし達がキリトさんとお付き合いすることを認めてくれたんですか?」
「それは……最初に言ったでしょ。キリトくんをうんっと幸せにしてあげたいから、って」
「……本当に、それだけですか?」
アスナの髪を痛めないよう優しい指使いを心がけながら、シリカは蒼い髪に白濁した精液を揉み込むようなシャンプーを始める。ぐちゅぐちゅという粘着質な音と共に泡立つ精液を指に纏わせ、普段自分がしているシャンプー以上の丁寧さでアスナの髪を洗う。
「あたし、思うんです。キリトさんを幸せにするだけなら、アスナさんが隣にいるだけで十分なんじゃないかって。
なのに、アスナさんがあたし達にこんなチャンスをくれたのが、なんだか不思議で……」
「シリカちゃん……それは、その……」
「も、もちろん! 何か裏があるとか、アスナさんが悪巧みをしているなんて思ってませんよ!
ただ、その……なんだか、自分の中で納得がいかない部分があるというか……」
歯切れの悪い言葉を零しつつも、シリカの手は止まらない。長い髪の根本から毛先まで、プロの美容師のように丁寧に指を滑らせ、白く濁った雄の体液で包み込んでいく。
大抵のVRMMOでは処理負荷軽減のため、プレイヤーの髪は独特の質感を持った薄いフィルム状のオブジェクトで再現されている。何十万というプレイヤーの同時接続を捌きつつ無数のMobやNPCを即時制御しなければならない以上、処理負荷軽減は開発陣のモットーであり、そのせいで髪の毛の感触再現が切り捨てられるのは仕方のないことではある。
逆に言えば、最大同時接続人数が20人にも満たず、MobやNPCを出す必要のないこの空間では、髪の感触の再現性にリソースを大きく割り振る事ができる。シリカがアスナの髪を丁寧に洗うことができるのも、そういった事情が関係していた。
「キリトくんをたくさん幸せにしてあげたいっていうのも、その為に皆を引き込んだのも本当よ。《SWORD協定》を持ちかけた理由の90%はそれ」
「ということは……それだけじゃないんですね」
「……考えてみたのよ。仮に、私が《協定》を持ちかけなかったとするじゃない。
そのまま何年かして、私とキリトくんが普通に結婚したとして……シリカちゃんは、大人しくキリトくんを諦められる?」
「無理です。絶対に諦めません」
「でしょ。私だって、立場が逆だったら同じこと言うもん」
即答するシリカに苦笑しつつ、アスナはほんの少しだけ視線の角度を下げてバスタブの水面を見つめた。
「仕方ないよね。私にとっても、皆にとっても……キリトくんは命をかけたって惜しくない運命の人だもの」
「はいっ」
「だからね。そんな風に皆と一生冷戦を続けていくくらいなら……いっそ、皆をそこまで夢中にさせちゃったキリトくんに、まるごと責任取ってもらっちゃうべきかなって」
「そうだったんですか……。なんというか……器がとんでもなく大きいですね、アスナさん……」
「ふふっ。実際、そうでもないのよ。これでも結構、利己的に考えた結果だし」
シリカの指先に髪を預けたまま、アスナは長い脚を白濁液の中で抱え込む。
「ほら、ここ最近……キリトくんったら、いろんな事件に巻き込まれっぱなしだったでしょ? しかも全部……私の手が届かない所で。
もちろん、《O:S》の時は皆がキリトくんを助けてくれたし、《GGO》の時はシノのんが、アンダーワールドではアリスさんやユージオさん達が力を貸してくれたからどうにかなったけど……。
この先、同じようなことが起きた時……また私はそこにいないかもしれない。キリトくんを助けてくれる誰かだって、いないかもしれない。そう思ったら……考えが止まらなくなっちゃって」
道に迷った幼子の様に、膝を抱え込み俯くアスナの声の中には――誤魔化しきれない震えがほんの少しだけ入り混じっていた。
「私も、キリトくんも、シリカちゃんも……そして、皆も。少しずつ大人になっていく。今、皆を繋いでいるこのあったかい《
その日が来たあと、もし、私が
何もしなかった自分を、何の備えもせずに安穏と過ごしてきた自分を――《閃光》の名に賭けて、絶対に許さない」
「アスナさん……」
空気が重苦しくなったことを察したのか、アスナは慌てて声のトーンを戻した。
「もちろん、私だって自分のことを憎みたくないし、キリトくんの助けになってくれる人が増えるならそれに越したことはないしね。
だから、みんなを引き込んだの。これが、残りの9%」
「なるほど…………あれ、計算合わなくないですか? 全部合わせても99%ですよね?」
きょとんとした顔でシリカが洗髪の手を止めたタイミングを衝き、アスナは体ごと後ろに振り返った。シリカの丁寧な指運びによって、根本から先端までたっぷりと精液を塗り込まれた蒼い髪――今や白い部分がほとんどだが――を重たく揺らしながら、アスナはシリカと再び向かい合った。
「まあ、その……1%分だから、本当に大した事じゃないんだけどね……」
「はい」
「――私一人だと……体が、保たないかな……って」
「…………あっ、そういうアレですか」
「そういうアレよ」
これまでの経験を元に、シリカはアスナが言わんとする旨を察した。言わずもがな、夜の夫婦生活の話である。
とは言いつつも実際の所、アスナが現実世界でキリトと肌を重ねた『日数』はそこまで多くはない。調べたことがあるわけではないが、一般的な学生カップルの平均と比較すると、おそらく少ない方に入るだろう。
何かあるたびにキリトが事件に巻き込まれるせいでそんな事をしている余裕があまり無かったというのが主な理由なのだが、『回数』となると――平均の数値など鼻で笑えるとアスナは確信していた。無論、こちらも調べたことは無いが。
「というわけで、これからも末永~く協力よろしくね。シリカちゃん」
「はいっ♪」
元気よく頷くシリカに向けて微笑みかけながら、アスナは広げた両腕をシリカに向けて伸ばす。すぐさま意図を察したシリカは、身体を少しだけ前に出し、アスナの腕の中へ大人しく収まった。
「さあって、と。シリカちゃんにたっぷりシャンプーしてもらったし……今度は私がシリカちゃんをキレイにしてあげるね」
「よ、よろしくお願いします。あたしもシャンプーしていただけるんですか?」
その質問には敢えて答えず、若干緊張した面持ちのシリカを正面から抱きしめたまま、アスナはゆっくりと身体を前に倒す。半ば押し倒されるような体勢になったシリカの身体が、背中から少しずつ精液の海の中に沈んでいく。
「――ねえ、シリカちゃん。知ってる? 《ALO》で魔法ビルドしてるウンディーネが、最初に覚える魔法」
「えっと……ヒール系、とかですか?」
「残念だけど、ハズレ。正解はね……液体の動きを操作する、水系攻撃魔法よ」
にっこりと笑いながら、アスナがそう言った瞬間――白濁した液面がぼこりと泡立ち、四方八方からシリカの身体を囚えた。
まるで精液そのものが何かの意思を持ったかのような素早い動きで、シリカの四肢が絡め取られる。たちの悪いことに、シリカを捕まえている部分だけは異常なほどに強度と粘性を増しており、とてもではないが引きちぎることはできない。
「あ、アスナさんっ!? こ、これっていったい……!?」
「ふふっ。怖がらなくても大丈夫よ、シリカちゃん。これ、ストレアさんがおまけで実装してくれた機能でね。
《ALO》の水魔法みたいに、この中にあるキリトくんの精液限定で、ある程度自由に動かすことができるようになるの」
「え、えっと……つまり……? あたしはいったい、どうなっちゃうんでしょうか……?」
困惑するシリカの視界の中で、シリカの四肢を絡め取っているのと同じ白い流体が、アスナの体にもまとわりついていく。雄の匂い立ち込める濁った水面へ、シリカ共々少しずつ引きずり込まれながら、アスナはただ優しく笑う。
「つまり――キリトくん純度100%の精液の中に漬け込まれたまま、このザーメン流体で体中隅から隅まで優しく、優しく……嬲られちゃうんだよ♥ もちろん、私も一緒に。
精液に包まれながら、体にたっぷりザーメンイキ癖覚え込ませて……♥ キリトくんのチ●ポで子作りすることしか頭にない雌豚ウンディーネと淫乱ケットシーを作りながら……キリトくんが来るのをゆーっくり待とうね♥」
妖艶に笑いながら見下ろすアスナの髪から、精液が一筋、地獄に垂れる蜘蛛糸のように糸を引きながらこぼれ落ちる。その精液の雫がシリカの唇に触れたのとほとんど同じタイミングで――バスタブ内に溜まっていた大量の精液が一斉に隆起し、二人をまとめて呑み込んだ。
――そして、それから数十秒が経過した。
最初こそ時化のごとく暴れ蠢いていた白い水面は今やすっかり凪いでおり、隆起するどころか波すら起きない。蒼い髪の水妖精と砂色の髪の猫妖精は、白く濁った液体溜まりの奥深くにまで沈み込んでしまったらしく、今やその姿をバスタブの外から伺うことはできない。分厚い精液層が音すらも封じ込めた結果、今や浴室内は無人と思えるほどの静寂を取り戻していた。
故に、妖精達の声は誰にも届かない。触手ではなく、ましてや他人の手でもなく、愛する男の精液そのものに全身隈無く愛撫され、際限なく与えられる子種汁で胃の腑を満たす歓びに浸る二人の痴態を目にする者はいない。
たとえ、押し止められ続けたあとにようやく与えられる絶頂の悦びに咽び泣こうとも。発情期の動物のように浅ましい啼き声を上げようとも。
ただの雌へと堕ちてゆく妖精達の嬌声は――誰にも、届かない。
以下後書き
いつも皆様には感想&高評価をいただけて身に余る光栄と感じております。
個別に感想返ししようとすると筆が止まるため、感想返しは控えさせていただいておりますが、常々読み返しては拙筆を動かす活力とさせていただいております。
ではまた、次の機会に。