淫欲に上書きされるファントム・ワールド 作:ノテス
ファントム。
それは、かつては妖怪や悪魔、幽霊と称されてきた不可思議な存在の総称だ。
人間達の強い想いによって生まれるそれらは、古くから人々に災いをもたらしてきた。
そんな彼らと戦うホセア学院の2年生、川神舞は、その美貌と傍若無人な振る舞いで校内でも有名な少女であった。
だが、有名であるというのは、決して良い事ばかりではない。
廊下を歩く舞に怨嗟の込もった視線を向ける小太りの男子学生は、奥歯をギリッと噛み締めた。
「クソッ! あの女、ボクを馬鹿にした挙句、パソコンまでぶっ壊しやがって!」
この男子学生は所謂オタクであり、常に自前のノートパソコンを持ち歩いていた。
そして、休み時間や昼食の際には、人目につかない場所でパソコンを起動し、アダルトゲームに興じるのが日課だったのだ。
しかし、先日の昼休みの時間に、校内にファントムが出現した際に、彼のパソコンは壊れてしまった。
ファントムが出現したのは彼がエロゲーに興じていた場所のすぐ近くであり、ファントムを倒すべく駆けつけた舞は、通り道にいた彼の存在に気付かず、パソコンを足で蹴り飛ばして破壊した。
ファントムとの戦闘が終わった後、男子学生は舞にパソコンを弁償するよう詰め寄ったが、パソコンの割れた液晶画面には、アダルトゲームのヒロインである女の子の裸体が映ったままだったのだ。
それを目にした舞は、パソコンを壊した事は謝りながらも、「弁償できるお金がない」「学校でそんな物を見ているなんて気持ち悪い」と男子学生を罵った。
「ボクを散々馬鹿にしてたけど、あいつこそ、まるでエロゲーに出てくる女みたいな体をしてるじゃないか。あいつを陵辱ゲーのヒロインみたいに、いやそれ以上の目に遭わせてやりたい!」
パソコンを壊された男子学生の怒りと欲望は、際限なく高まっていく。
彼の脳内では、これまでにプレイしてきた膨大な数のエロゲーから、特にキツい内容の展開が舞をヒロインにすり替えて再生されていた。
その想いに、舞のグラマーな肢体に欲望を抱く校内外の男達の邪念が加わる。
「犯せ、壊せ、堕とせ……!」
壊れたパソコンに大量の邪念が集まり、見る間に巨大化していく。
やがて、パソコン自体が意思を持ち、自力で宙に浮き上がった。
多くの男達の欲望が、舞をエロゲーヒロインに堕としめる力を持った新たなファントムを創造したのだ。
パソコンの画面に今まで映っていたエロゲーヒロインの姿は、標的の少女に変わっていく。
「そうだ、その女だ。そいつを、ヤッちまえぇっ!」
男子学生の叫びに、ファントムとなったパソコンは電源を点滅させるという形で応え、何処かへと飛び去っていった。