【今回の夢魔女】
白波瀬 千景(しらはせ ちかげ) 15歳
階級:中尉
身長:160cm
使い魔:黒猫
備考:扶桑出身。感知系の固有魔法を持ち、ナイトウィッチでありながら明るく活発な性格。ゆえに人付き合いも良いが、それが原因で本人も知らない場所で複雑な人間関係を作ることも。小さい頃からウィッチとして軍に従事しており、世界中を飛び回っていたため至るところで(無自覚に)ファンを作っている。
備考2:スリーサイズはちょっと控えめ。気にしている
備考3:肩甲骨あたりまで伸ばした髪を邪魔にならないよう後ろでくくっている。揺れるポニーテールは活気溢れる印象のひとつ。
カールスラント空軍、特設夜間戦闘航空隊。世界中でも数少ない、ナイトウィッチが集められた部隊において二人が出会ったのは冬の日のことだった。
「こんにちは。あなたがシュナウファー大尉ですね」
「は…はい……あの、あなたは…」
「扶桑皇国海軍所属の白波瀬千景中尉です。これからよろしくお願いします」
「あ……」
丁寧に名乗り、差し出された手を逡巡しながらも控えめに握り返す。扶桑人らしい、鮮やかな黒い髪を揺らして微笑む千景に思わずほっと息を吐いた。その日はその場で別れることとなったが、翌日から千景とハイデマリーはペアで夜間飛行を行い、それからよく二人で飛ぶようになった。その夜の空の上で。
「あ…あの」
「うん?」
「し、白波瀬中尉は…」
「あっ、名前で呼んでくれていいよ!階級も付けないで。ほら、堅苦しいし」
「えっ、と…でも…」
引っ込み思案で人付き合いの苦手なハイデマリーだったが、千景との仲は共に飛んだ初めての日から深まっていた。
「私もハイデマリーさんって呼ぶから、ね!」
「……わ、分かりました…千景、さん…」
「うん!それで、なにか聞こうとしてた?」
「あ、はい……その、千景さんはいつから軍に居たのかと…」
というのも、千景の多少強引ながらも引っ張ってくれるようなコミュニケーションの賜物だろう。誰にでも分け隔てなく接する彼女の明るさは心の壁を打ち破るのも早かった。
「んー、8歳だったかなぁ…私の家、貧乏だったから家族に楽させてあげたくて。ウィッチになればたくさんお給金ももらえるからね」
「そう、なんですか…私と一緒くらいなんですね」
「ハイデマリーさんも早かったの?」
「……私は…」
出会って間もない期間で打ち明けられたハイデマリーの境遇を、千景は何も言わずに聞いていた。
「…ごめんなさい…聞きたくなかったですよね、こんな話…」
が、ハイデマリーが自分を卑下するとそれを励ますように寄り添い、手を取って笑う。
「そんなことないよ。今まで辛かったんだよね」
「…は、い」
「じゃあ、これからは寂しくないように友達になろう!あなたが一人にならないように、私が一緒にいる!」
「え……あ…」
突然の申し出に、ハイデマリーは目を白黒させたかと思うとほんのりと頬を染める。忙しい表情の変化だ。
「嫌かな?」
「あ……そ、そんな!そんなこと、ありませんっ!私も、千景さんとお友達になりたいです!」
手を握り返し、珍しく大きな声を出した彼女に少し驚きながらも、新しい友達ができたことに千景も喜び笑顔を見せる。
「やったぁ!よろしくね、ハイデマリーさん!」
「ひゃっ…!?」
雲の上で突然抱き着いてきた千景に肩を跳ねさせるハイデマリー。同年代の友達ができた嬉しさや、こうして誰かと密着しているという気恥ずかしさやらで爆発しそうになりながらも支えるように背中を持つ。
「あ…危ないですから…気をつけて…」
「えへへ、ごめんね。嬉しくってつい」
彼女にとってこういった直接的なスキンシップは慣れないもので、触れ合うだけで鼓動が早鐘を打ってしまう。自分で回しておいたものだが、支えている手がまるで抱き返しているように思えるのもそれに拍車をかけていた。
「…あ、あの」
「ん?」
「っ……」
いつまでくっついているのか。という疑問を投げかけようとしたはずが、こんなにも近くにあるまっすぐな眼光に射貫かれると思わず言葉が詰まってしまう。だが冬の夜の空にも関わらず、こんなにも身も心も温かいのならばまだ甘えていたいと。
「…なんでもありません…」
「? そっか」
腕に込める力を、そっと強くした。
この頃から。自分の中にある一般的な友へ抱くような感情と、ハイデマリーの中に燻り始めたものが同じものであるという認識はズレ始めていた。というのも原因の大半は千景の自覚のない振る舞いばかりだったが。
ある日のこと。ここカールスラントでは扶桑と違って身体を湯船に浸ける入浴文化がほとんどない。千景も扶桑人の例に漏れず、ほぼほぼシャワーばかりの毎日に飽き飽きしており、せめてもの欲求を満たそうと廃材のドラム缶を転がしていたところだった。
「千景さん?」
「あ、おはようハイデマリーさん」
この日は二人ともオフの日だった。夕刻頃、目が覚めたハイデマリーは基地中を探し歩いても見当たらない千景をハンガーでようやく見つけた。特に用事があったわけではない。ただなんとなく、一緒に居たいと思っていただけだったが、ストライカーユニットの整備をするでもなく、訓練に出るわけでもない千景がドラム缶を転がして何を画策しているのか気になった。声を掛けると、振り返った彼女は人懐こい笑顔を見せる。
「そのドラム缶は何を…?」
「うん?ああ、これはね。お風呂にするんだよ」
「お風呂…?」
「そう。ハイデマリーさんも一緒に入る?」
「えっ…い、一緒に、ですか…?」
二人とももう幼い子供という年齢ではない。同性とはいえ思うところがあるのか、ハイデマリーは少し驚いたような、恥じらうような表情を浮かべるが対する千景はなんてこともなさそうにしている。
「イヤかな?」
「い…いえ、そんなことは…」
「じゃ、一緒に入ろっ!」
「は、はい…」
勢いに流されるがまま、準備が進められていくのを眺める。彼女はどこでもこのドラム缶の風呂を拵えたことがあるのか、てきぱきとした作業であっという間にドラム缶の中に湯を沸かしてしまった。
「ふう、これでよし!」
「す、すごい…本当にお風呂になるんですね…」
「即席の五右衛門風呂ってやつだよね!」
「ゴエモン…?」
目の前の光景も、聞き慣れない言葉にも困惑を隠せない様子のハイデマリー。しかし彼女はこの後、さらに驚くことになる。
「よーし、じゃあさっそく!」
「…!?」
意気揚々と服を脱ぎ出す千景。ハンガーの外、つまり野外であるにも関わらず彼女は一糸纏わぬ姿になった。下に水着か何か着ているのかと思っていたハイデマリーは当然慌てふためくが、千景は気にした様子もなく段差にしたレンガ片を踏み越えてドラムの湯の中に飛び込んでいく。
「ふぁ〜、やっぱりこれだよねぇ〜…ほら、ハイデマリーさんも早くおいでよ」
「こ、ここで脱ぐんですか?」
「? お風呂ってそういうものでしょ?」
「で、ですが…」
「大丈夫だよ、男子禁制って立て札はしてあるから」
「う、うぅ…」
友達からのせっかくの好意。一度言ってしまった以上無下にはできない。覚悟を決めたように深呼吸をし、周りを見回しながら服を脱いでいく。千景と同じように生まれたままの姿になると、おずおずといったふうにドラム缶の中に身体を沈めた。
「し、失礼します…」
「えへへ、いらっしゃい」
「…………」
こうして実際に入ってみると思ったよりもずっと距離が近い。狭いドラム缶の中に二人が入ると肌が密着していた。
「二人だとちょっと狭いね」
「そ、そうですね…」
「でもこれはこれであったかいなぁ」
「は、はい…」
千景は特に気にしている様子ではなさそうだが、ハイデマリーは終始彼女の方ばかり見ていた。というのも、普段明朗快活な印象を与えるポニーテールが降りていて、どこか大人びたように見えたからだ。濡れて頬や肩に張り付いた、鴉を思わせる美しい漆黒の髪。程よく焼けた健康的な肌は瑞々しく、筆先のような髪から零れ落ちた雫を崩すことなく受け止める。その首筋を伝う水滴は思わず指ですくい取りたくなるほどだ。そして熱い湯の中で揺らめく胸元。扶桑人らしく慎ましく、主張の少ないそれが呼吸に合わせて膨れ、萎んでいくのがどうしようもなく魅力的に感じられて。こんなのはおかしいと思いながらも目を離せずにいた。
「…………」
「……うん?」
しかしそこまで見ていると当然千景も気付いて声を上げる。そこで我に返ったハイデマリーも顔を上げ、二人の視線は交差した。
「…あ、あのっ…!こ、これは違うんです…!」
「…むう。やっぱり私の胸、小さいよね」
「…えっ?」
友達をそんな目で見ているのか、と叱責を受けるつもりだったがその予想は大きく外れ、千景は恨めしそうに自分の胸をぺたぺたと触っていた。そしてその興味はハイデマリーに移る。
「というか、ハイデマリーさんがおっきいというか…ほんとに同い年だよね?」
歳の割によく実ったものを持っているハイデマリー。グラマラスな体型を夢見る千景にとってはそれが羨望の的なのだろう。
「え、えっ…?あ、あの」
「何を食べたらこんなに大きくなるんだろう…」
「きゃあ!」
すっ、と伸びてきた両手が豊かなそれに触れる。思わず声を上げるが、不思議とイヤな気分にはならない。それどころか、むしろ———高揚しているような気さえした。触れられた部分が熱く、滾っているような感覚。ぺたぺたと這い回る手の動きが、指先までしっかりと感じ取れる。このまま触られ続けるとどうにかなってしまいそうで、たまらずに手を伸ばした。
「ひゃんっ!?」
「お、おかえし、ですっ…」
「あ、あふっ、あはははっ!はっ、ハイデマリーさ、く、くすぐったいよ!うふっ、ふふふふはははは!」
その手は千景の身体をまさぐっていく。お返しと言いながらもしなやかな指先によるフェザータッチで全身をなぞられ、たまらず笑いながら身をよじるが狭いドラム缶の中では逃げ場などなく、より身体を押し付けられる形になり、そして。
「ふあっ、ひっ、あんっ!」
「…!」
指先がどこかを掠めたのか。それまで子供のようにはしゃいでいた声は閨の女のように艶めかしく、ハイデマリーの心を強く揺さぶった。思わず手が止まると一気に罪悪感が駆け上がり、すぐに謝ろうとしたがやはり千景は気に留めたふうでもなく。
「あ…ああーっ!お湯、結構なくなっちゃった…」
暴れ回り、湯が跳ねて出ていってしまったことを嘆いていた。そしてすぐに向き直りながら。
「えへへ…おとなしくしてよっか」
また、にこりと笑うのだった。そんな彼女にハイデマリーが思ったことは。
『嫌じゃ、なかったのかな』
『触っても、いいのかな』
『それって…そういう、こと…?』
そう。欲望が音を立てて歪み始めた瞬間だった。
またある日のこと。二人の仲はかなり親密になっていた。それこそ四六時中一緒に居るような、たまに同衾すらする仲だ。それをハイデマリーがどう思っていたかなど千景は考えもしなかっただろう。だからこそ、噛み合っているという認識は噛み合わなくなっていく。
「千景さん、今大丈夫でしょうか?」
「あ、うん。入っていいよ」
「失礼します……あ、それは…?」
部屋に入るなりハイデマリーは目を白黒させる。その先にあったのはテーブルに乗せられた紙束だった。千景はそれに目を通しているようだ。
「座って座って」
「あ…はい」
近くで見てみるとそれは便箋であることが分かった。多くの郵便物が彼女のもとに届いていた。
「…手紙、ですか?」
「…うん?ああ、うん。今まで会った人たちからちょくちょく送られてくるんだ…読まないのも失礼だしね」
「…………」
文章を読みながらのせいか、どこかうわの空で話す千景。どれもこれも彼女に宛られたものなのだろう。自覚はしていないだろうが、多くの人たちに慕われていると思うと胸の奥に靄がかかったような気分になった。ふと、すでに読み終えたであろう一枚の手紙に目が向く。そうなれば文章を辿るのは自然なことだ。
「………!?」
驚きを隠せないハイデマリー。なぜならそこには、情熱的な愛の言葉が書かれていたからだ。差出人の名前は女性のもの。他のものも、書き方は違えどどれも恋慕の想いを綴ったものばかり。胸がじくじくと、カッターで突き刺され続けるように痛みを生み始める。
『どうしてこんなに苦しいの?』
『どうして、一緒に居るわけでもない人が千景さんにこんなものを寄越すの?』
『どうして…いちばん近くにいる私を見てくれないの?』
始めはほんの些細な嫉妬心だったのかもしれない。だが一度点いてしまった火は燃え上がり、心の奥を焼き続ける炎となっていった。
「うん、いいよ。一緒に行こう」
『あぁ、いや。やめて、行かないで』
千景に手を引かれていく他のウィッチを見るだけで、気が狂いそうになるほどの嫉妬が湧き上がる。あれだけ自分に対して優しく、親しく接してくれた千景が自分以外の人間と一緒に居る。話している。触れ合っている。自分だけの場所が侵されている。そう思うだけで、舌の根から一気に苦味だけの何かが込み上げてくるような気がした。
「千景さん…あなたのことが、大好きです…」
少しは現状が変わるかなと淡い期待を抱き、勇気を振り絞って告白したこともあった。だが返事はあっけなく。
「うん。私もハイデマリーさんのこと好きだよ」
「…………」
好きだと言われるのは嬉しいが、自分の好きとはまるで意味が違う好きということはすぐに理解できた。でも、それでも、この人が恋愛的なそれを持たれていると認識していなかったとしても。他の人間が千景に近付くのは容認できないところまで来てしまっていた。
「わっ!は、ハイデマリーさん?」
「…………」
「い、いたた…苦しいよ…もうちょっと優しくして…」
思い切り抱き締めてみれば彼女の存在を肌で感じることができた。だがこんなにも近い距離だというのに心までは近付けない。それに———自分の見ていないどこかで同じようにした人間が居たのか、自分のでも千景のでもない匂いがして。
『…やめて。私から千景さんを奪わないで…!』
『千景さんは私の大切な人、私の大切な人、私の、私の、私だけの…!』
それを塗り潰すように、あるいはかき消すように。身体を擦り付けて匂いを上書きしていく。それだけ熱心なスキンシップを受けても千景は照れたように笑っているだけだ。この想いを伝えるにはどうすればいい?他の人に渡さないためにはどうすればいい?嫉妬に、愛に溺れ、狂い、理性の箍を外したハイデマリーが行き着いた答えはひとつだった。
「明日から一週間、久々に休暇をもらうことになったんだ」
そう千景が言った日の夜のことだった。彼女は話しておきたいことがあると、ハイデマリーに呼び出されて部屋に向かっていた。すでに消灯時間が迫り、静まり返った廊下。ドアの前まで来てノックをするが応答はない。
「…あれ?ハイデマリーさん?」
呼びかけてみても返事が来る様子はない。試しにドアノブを捻ってみると鍵はかけられておらずすぐに扉は開いた。中を覗いてみても明かりは点けられていない。約束の時間を忘れているのかと能天気なことを考えながらも、中で待っていようと部屋の電気のスイッチを押す。数回のライトの点滅のあと、部屋全体が明かりに包まれる。
「———」
それと、千景が背後に気配を感じるのは同時だった。が、振り返るより早く。
「が……っ…」
後頭部に加えられる強い衝撃。鈍器のような何かで殴りつけられたことは分かるが、その主が誰であるかを見る前に意識は遠のいていった。
ーーーーー
「——……う……」
鈍い痛みによって意識が目覚める気分は最悪だった。殴られた部分だけではなく、終わらない耳鳴りのように頭そのものがぐわんぐわんと回っている感覚だ。気絶していた状態から本能的に次に行うことは、目を開くこと。だが。
「……え…?」
目を開いても、目を閉じているんじゃないかと錯覚するほどの暗闇。自分がいる場所がベッドのような寝床であることは直感で理解できたが、どこかの部屋であれば必ずあるであろう窓すらもない。部屋の隅がどこなのか、どこまでが壁なのかすら見えない、ただ暗黒ばかりの空間。そして。
「な…なにこれっ!?なんで…!」
手は、頭の上で交差するように拘束されていた。がちゃがちゃと音を立ててもまるで外れる気配のないそれはどこかに繋がれているもので、身体を起こすこともできなさそうだった。あまりに現実離れした状況に急激な不安感が湧き上がる。しかし長年ウィッチとして空を飛び続けていた千景はすぐに平静を取り戻し、魔導針を具現化させてせめてもの明かりにしようと魔法力を発現した。
「ひっ…!」
しかし、使い魔の影響によって夜目が利くようになって見えたのは彼女を硬直させるには十分すぎるものだった。暗闇の中、凍り付いたように自分だけをじっと見つめ続けている深紅の双眸。それは思わず上がった千景の声に、うっとりと細められた。
「…ふふ。気が付いたんですね」
「え……ハイデマリーさん?」
知った声が聞こえ、幾分か安心し、それが声色にも出る。こつこつと慌てた素振りもなさげな足音を鳴らしながら近付いてくる人物が魔導針の輝きによって姿を現す。
「あぁ、よかった…」
それはまぎれもなくよく見知ったハイデマリーで、千景は心底安心したように息を吐いた。しかしそれも束の間。彼女は拘束具をどうにかするなどはせずに、うっすらと微笑をたたえたままベッドへと乗ってくる。
「……ふふ…」
「……?あの、ハイデマリーさん…?」
横たわるだけの千景を見つめ、嬉しそうに笑う。その表情は念願叶ったり、といったふうに穏やかで、どこか不気味なほどに優しかった。そしてそれを崩さないまま。
「ひゃっ、う!?」
しなやかな指が太腿を滑る。千景にとっては視界外からの、さらに予想外の接触で反射的に悲鳴のような声を上げてしまった。それを聞いて、至近距離で見えたハイデマリーの口元は愉悦に歪んでいた。
「はぁ…可愛い…」
「え…え…?は、ハイデマリーさん…?」
「…………」
「あの……こ、これ、外してもらえないかな?私、動けなくて…」
徐々に不安が募る。まさか、と。想像したくもないことが頭をよぎる。違う、そんなことは、と否定したかったが彼女の口から出た言葉に心臓が凍り付いた。
「…どうしてですか?」
「え…」
「どこにも行かないようにこうしておいたのに……どうして外さないといけないんですか?」
「……こ、これ、ハイデマリーさんが…?」
おそるおそる、震える声で。言い切るより早く、ハイデマリーは「はい」と答えた。
「なっ…な、なんで!?どうしてこんなこと…!」
「大切で、大好きな人を誰にも奪われたくなかったから…こうすればもう、独り占めできるでしょう?」
「ひっ…!?や、やめてっ…!」
「ああ…千景さん…千景さん……」
顔の横に手を付いた体勢から遠慮なく覆いかぶさってくるハイデマリー。ぎゅう、と痛いくらいに強く抱き締められたまま首筋に舌を這わされる。湿った感触に小さく声を漏らし、ここまで来てようやくその「大好き」の意味を知った。
「いやっ…!やめて、ハイデマリーさん!私っ、あなたのことそんなふうに見てなんて……」
「知ってます…知ってるんですよ?だからこうして、分かってもらいたくて……あなたのことを愛してるんです。世界で一番、絶対誰にも負けないくらい……」
「わからない…わからないよっ!私たち、女の子同士だよ?友達なのにこんなの、おかしいよ…!」
分からない。分かりたくない。友達を、それも同性を恋愛的な目で見ることなど千景には想像も付かないことだった。首を振って拒絶するがハイデマリーの肢体は遠慮なく絡み付いてくる。
「女の子同士がおかしい…? ……そう、かもしれませんね…おかしい……ふ、ふふ…でも、あなたで狂えるのなら私、とっても嬉しい…♡」
「————」
絶句するしかなかった。恍惚の表情を浮かべながらそう呟くハイデマリーは千景からすれば狂っているようにしか見えない。愛がここまで人に狂気をもたらすことなど知らなかったのだ。身近で親しい人物がそうなってしまい、恐怖するが悪夢はまだ始まったばかりだった。
「千景さん……んっ」
「んむっ!?んんーーっ!!」
頬に手を添えられ、何かを言う前に問答無用で唇を奪われる。大いに混乱し、叫んだつもりがそれは全て吸い込まれてくぐもった声にしかならない。身を捩って逃れようとしても自分は身体の自由が利かないまま、相手にはしっかりと抱き締められていてまるで意味を成さないことだった。
「ん…ん…!ぷあっ!はぁっ、はぁっ……うう…ひどいよ…こんなっ……私、わたし…」
「——初めてだったのに」。千景の唇がそう動くのを、ハイデマリーは見逃さなかった。初めてのキスをした相手が自分という事実に、急速に全身が愉悦感のようなものに支配されていく。誰のものでもなかった唇が自分だけの占有物になった。それだけで脳みそが溶けそうになるほど満たされていく。
「初めて同士、だったんですね…私、嬉しいですっ…」
感激しているハイデマリーを見つめる千景の瞳はすっかり弱々しく、涙すら浮かべている。普段、ネウロイに対しても果敢に立ち向かっていく彼女が初めて見せるような怯えた表情はハイデマリーをより昂らせる材料にしかならなかった。
「あぁっ……好き、好きですっ…!」
「やっ…!いや、やめ……んむぅ…!」
興奮を抑え切れず、再び口付けられる。
「んうぅ…!?」
さっきのがファーストキスだったことなどお構いなしに容赦なく舌が割って入り、逃れようとする舌を捕らえて執拗に絡ませる。そんな大人のキスを知っているかすらも怪しい千景は驚きに目を見開き、拘束具をがちゃがちゃと鳴らすが敏感な部分を触れ合わせるという未知の感覚にすぐに大人しくさせられてしまった。
「ちゅっ…んっ、ちゅうぅっ…あむっ…じゅる…♡」
「ふあ…ぁ……んむ…ちゅぷっ…」
それでもなお振りほどこうとしているのか、それともなにかが呼び起こされようとしているのか。咥内を蹂躙する舌の動きに時折身体が小さく跳ねる。今だ羞恥や忌避感を拭えない特別なキスに緊張が解けず、ぎゅっと目を瞑る様はハイデマリーの目には可愛らしい小動物のように映った。
「んぅ……ちゅっ…すき…♡んん、好き…♡千景さん……れろっ…ちゅぱっ……」
「ぷぁ…んん…!ん、ふぅ…」
追い出そうとしているのか、あるいはこの行為が快感に変わりつつあるのか。中を探る舌へ、向こうからアプローチをかけてくる。どちらにせよハイデマリーからすれば、接触してくるのが嬉しいことには変わりない。むしろ今の彼女は『相手の方から求めてきてくれた』と好都合な解釈をする生き物だろう。その昂ぶりを隠そうともせず、舌先をすくい、容赦なく啄んで自身の咥内へ引きずり込んだかと思うとおもむろにしゃぶり始めた。
「んあぁっ…!?は、ぁう…!」
驚愕に声を上げる千景。しかし舌を吊り上げられて言葉らしい言葉はまるで出ない。そんな彼女をお構いなしに、引き込んだ肉茎を唇でにゅぷにゅぷと丹念に愛撫していくハイデマリー。厭らしい水音が響き、咥内だけでなく耳まで犯されていくかのようだ。柔らかい肉に包まれ、上下の動きだけで溶かされてしまいそうだというのに咥え込まれたままの舌先は同じ場所でチロチロと舐め回され、刺激を受け続けている。
「はむっ…んっ、じゅる…ふふっ♡んぅ……あむ……ちゅっ…♡」
「ふあぁッ…!」
火傷しそうなくらいに熱を持った部分が濃厚に絡められ、しゃぶられ、吸い尽くされる。その感覚だけですでにいっぱいいっぱいになってしまっている千景に抵抗の意志はほとんどなく、流れ込んでくる唾液すらもこくこくと喉を鳴らして飲んでいた。当然、それを見ていたハイデマリーはひどく酒に酔うような高揚感を覚え、もっと熱烈に舌を動かした。
「……ぷぁ…ふぅ…♡」
「んぁっ…はぁ…はぁ…」
やがて顔を離され———それでも互いの吐息を感じるほどに近いが———、大きく肩で息をしながらめいっぱい酸素を吸い込もうとする千景。その口からは犬のようにだらしなく舌が垂らされたままで、涎なんかも流れていくばかりだ。元気いっぱいに輝いていた瞳はすっかり翳りを見せ、虚ろに伏せられている。呆然としたまま、鈍く光る眼がハイデマリーを捉える。そうすると彼女は口を三日月形に歪ませて。
「はぁ……可愛い……♡んっ…♡」
「んむぅぅっ!?」
再び口付けてきた。そう、あれで終わりではなかった。狂気の愛があれだけで終わるはずもなかった。満たされたのはほんの少し、氷山の一角だけ。それは余人には到底計り知れない底無しの愛だった。
「うぁ……ぁ……っん、くっ……は……」
「千景さん…千景さん……千景さん……♡」
それから、数十分…否、数時間ほども愛され続けていただろう。
「好き……好きっ…♡好きぃ……♡」
「ぁ…ん、う……あっ…」
その間、ひたすらに熱烈なキスだけを受け続けていた千景は我を失ったように、唇への刺激に対して身体を跳ねさせるだけの人形へと変わり果てていた。
「んん……っ……♡」
ひときわ長く、強く唇を押し当てられる。それが離れると二人の間には幾重もの銀の糸がかかった。そしてこれまでずっと抱き締めていた手がようやく離れたかと思うと、今度は服の上から身体をまさぐり始める。
「んあっ…」
両腕は頭上で拘束されているので弱い部分もがら空きだ。腋も、わき腹も思うがまま。触れる度にぴくぴくと弱々しく反応する身体を見てハイデマリーはくすくすと笑みをこぼした。
「…ふふっ…」
その手はやがて扶桑式の寝間着の紐へとたどり着くと、メインディッシュのドームカバーを開くように緩慢な手付きでそれを解き始める。そこでようやく、千景は理性を取り戻した。
「…あ…だ、ダメっ!やめて、ハイデマリーさん!」
「恥ずかしがらなくてもいいんですよ?ここには私とあなたしか居ませんから……そう、二人っきりです…ふふ…ふふふっ…」
自分の言った言葉に愉悦が止まらないのか、どこか夢を見ているかのように笑い始める。しかし手は働きを止めず、すでにひとつ目の紐は解かれていた。せめて次だけは解かれまいと身を捩るがそれが余計に衣服を捲れさせてしまう。自分から肌を晒しているも同義だがやらずにはいられなかった。しかしそれも意味を成すはずがなく、あっという間に最後のひとつまでが摘み取られて裸体が露わにされてしまう。
「い、や……み、見ないで…」
「…素敵です、千景さん…♡」
これまで何度も見られてきたはずの身体。だが相手が明確にそういった欲求を持っていると分かると、急激に恥じらいを覚える。目を逸らし、羞恥で耳まで真っ赤に染まった千景を見て思わず感嘆の息が零れる。慎ましくもハリのある可愛らしい乳房。そしてその頂点で痛々しいくらいに自己主張をしている桜色の果実。薄く腹筋の浮かぶスレンダーな体型、その肌は暗闇の中だと言うのにきめ細かさが分かるほどに美しい輝きを放っているようにすら思えた。
「…ひっ、ぁ…!?」
しなやかな指が控えめな膨らみを押し上げる。すでにキスで熱を帯びさせられた身体はそれだけで反応した。そういった行為の知識はほとんどなく、自分を慰めるのも数回しか経験したことがなかった千景は自身の感じように心底驚いていた。
「感じて、くれてるんですか?嬉しいです…」
「ち、ちがっ…私、そんなんじゃ…!」
「ふふ、素直になってください……ここだって、もうこんなに物欲しそうにしてるじゃないですか…」
「あんっ!?や、ひうっ!」
ぷっくりと充血しきった頂点が指先で摘まれる。たったそれだけのことなのに電撃のような鋭い快感が迸った。指の腹でそこを捏ねられ、与えられる刺激。汗ばんだ首筋を這う舌がそれらを加速させていく。
「あぁ…可愛い、可愛い…♡もっと感じて、もっと見せてくださいっ…」
「や…いやぁ……んうっ…!」
空いた片方の果実へハイデマリーが吸い付いた。ちゅうちゅうと吸い上げられると、浮遊感にも似た快楽が駆け上がってくる。
「はむっ……れろ…んっ、ちゅうぅっ…」
「はぁんっ!あっ、んん!」
舌先で弄ぶように転がされ、唇で執拗に啄まれ、唾液に濡れた桜色の頂きは厭らしい光沢を放っている。仕上げと言わんばかりに甘く歯を立てられると思わず腰が浮いてしまうほどだった。
「はぁ、はぁ、はぁ……も…やめ、て…」
「どうしてですか?こっちはもうこんなに溢れてきているのに…」
「ひあぁっ!」
ハイデマリーの手が、最も大事な部分の入口へと添えられる。そこはズボンの上からでもはっきりと分かるほどに興奮の証である液体が染みていた。
「熱い……とっても……」
「あっ、あふあぁっ!やっ、だめぇ…!」
割れ目に指を沈ませるように力を込めたままなぞられる。そんな触れるだけの行為ですら打ち震えるくらいの快感が染みてくる。熱に浮かされた思考は大いに混乱していた。動きを封じられたまま、好き放題されて。こんなのイヤなのに、イヤなはずなのに。自分でするよりもよっぽど気持ちが良くて溺れてしまいたいとすら思える。それが何よりも怖くて、流されてしまいそうで必死に理性を繋ぎ止めていた。
「こわがらないで?気持ち良くしてあげますから…ほら……こうして…」
「ひ、ぁあっ…!んっ、くぅ、らめぇ!」
ズボンの中へ侵入した指が花園へとたどり着き、そのうちの二本がこじ開けるように押し込まれた。耳元でのウィスパーボイスに、やさしく蕩かすようにゆっくりすぎる手付き。このまま身を委ねたくなるほどに甘やかされている。それが悪魔の囁きだと分かっていても発情しきった身体に押し寄せる快楽の波は抗いがたいものだった。
「ふぁ……ん…っ、う…」
どうにかなってしまいそうなほどに緩慢な責めを耐えた後に残るものは切なさばかりだった。初めは恐怖の色に染まっていた瞳もすでに何かを求めるように潤んで儚げに揺れている。
「見てください…私の指、千景さんのでこんなにびしょびしょになってしまいました」
自身の下腹部から出てきた白い指はねっとりと糸を引き、ぬらぬらとした液体で濡れている。とてつもない羞恥が奥底から湧いてくるが、それと同時になにか、ぞくぞくと背筋を駆け抜けるようなものも感じた。決して嫌ではないなにか。それが背徳感であることに気付く暇もなく、ズボンが下ろされる。露わになった秘部からもまた、ズボンと繋がった糸が伸びていた。
「もう、そろそろ……いいですよね?私も我慢できませんっ…」
「………!」
息も荒く、頬を紅潮させたまま自分もズボンを下ろすハイデマリー。その股ぐらにはとても彼女に似つかわしくない、立派な逸物がそびえ立っていた。どうして女性の身体に、どうしてあんなにいきり立っているのか、考えることはたくさんあるはずだが、それらは本能的に覚えてしまった下腹部の疼きによって掻き消されていく。ただ不気味なほどにどこか冷静に思ったことは『ああ、私はあれの快楽を欲しがっているんだ。あれに串刺しにされてたくさん悦ばされて滅茶苦茶にされてしまいたいんだ』という雌の本能そのものだった。
「はぁ…はぁ…千景さん…♡」
「ふあっ、あぁ…!」
空気に触れ、ぴくぴくと小刻みに震える剛直が期待にとめどなく溢れる秘裂へと当てがわれる。上下に擦り付けられるだけの単純な動作でさえ与えられる刺激に気が狂いそうなほどに悶えてしまう。ハイデマリーに覆いかぶさられ、きつく抱き締められるといよいよ逃げ場はなかった。ぴたりと割れ目に沿って当てられた丸い亀頭がピンク色の肉を押し開き、みちみちと進んでくる。自身の中へと侵入されるのは怖くて、拒むべき行為だったはずなのに押し入ってくるモノの感触が堪らず、拘束具がなければしがみついてしまいそうだった。
「はぁ……はぁっ…入りました…♡」
「んんぁっ…!ぁ…あ…!」
「ふぅ……ふぅ…動き、ますねっ…」
「はあぁっ…!」
挿入されただけで息も絶え絶えになっているというのにハイデマリーは腰を引き、またゆっくりと奥を目指して押し進めてくる。逞しい男根に肉襞が絡み付いているのが自分でも手に取るように分かった。指での愛撫なんかより、太い幹で柔肉を擦り上げられる方がよっぽど気持ち良い。腰が砕けそうなほどの快楽に絶え間なく絞り出されるような声が漏れてしまう。そのうちにハイデマリーの方も辛抱ならなくなったのか、徐々にペースが早まってきた。
「千景さん……千景さんっ、千景さんっ♡」
「あっ、やっ、はぁっ!あんっ、んんっ!くっ、ふぅ…!」
ぱちゅん、ぱちゅんと、肉がぶつかり合う小気味良い音が響き始める。それに交じる女の嬌声。そこに怯えはなく、ただ快楽に染まって色欲を貪るケダモノとなっていた。熱い肉と肉が混ざり、溶け合うくらいに激しく打ち付けられる。下半身から響き渡るのは粘っこい水音と、雁字搦めのような鋭い快楽だけ。それが頭から足の爪先まで巡り、全身を支配している。休む間もなく与え続けられるそれに、焦らされ続けた身体は上り詰めようとしていた。
「あっ、あ…出ます…中に、出しますっ…!」
「はっ、あぁ、あああぁーーーーっ…♡」
やがて限界を迎えた双方は絶頂へ達した。方や雄を弾けさせ、存分に精を肉壺へ吐き出して。方や収縮を繰り返すそこで貪欲に、最後の一滴まで搾り取ろうと。余韻に浸るように荒く、熱い息を吐き続ける二人だったが、ハイデマリーの方から唇に吸い付いて厭らしく水音を奏でながらゆっくりと咥内を堪能し始めた。あまりに強すぎる快感で頂点へ押し上げられた千景は意識に靄がかかったままなのか、ぼんやりとそれを受け入れている。
「………っ……!」
「………♡」
そのうちに挿入されたままのモノが硬度を取り戻し始めた。それは強く咥え込んでいる千景からも知覚できて、わずかに戻った理性が再び犯されようとしているのを止めろと警鐘を鳴らし出す。
「ま…まって、もう休ませっ…」
「千景さん…♡」
しかし抱き締められたまま、絶頂の余韻の残る身体ではまともに脚を動かすこともできず。
「んぐうぅぅっ!!?」
完全に怒張しきった男根で奥をひと突きされ、ほんの少しの抵抗も虚しく強制的にスイッチを入れられてしまう。いけないと分かっていても最奥の、雌を悦ばせる部分をぐりぐりと抉られると重く響くような深い快感が意識を淫蕩で押し潰した。
「もっと……もっと、いっぱいになるまで…」
「あ、ぁ…!?い、いや……いやぁ…」
脚を抱え上げられ、ぴたりと胴に付けられてひっくり返されるような体勢にされ、そこへマウントを取ってくるハイデマリー。結合部からわずかに覗いた根元でさえ青筋が浮かんでいて、そのはち切れんばかりの興奮ぶりはこれからが本番だと知らしめるには充分だった。
「あぁっ…たまりません……そんな顔、されたらっ…♡」
「んむぅっ!?ん、んんー!!」
怯えきった表情にこれ以上ないほどの嗜虐心を刺激され、たまらず覆いかぶさるハイデマリー。唯一の抵抗の手段とも言える口は塞がれ、割って入った舌に蹂躙され、言葉さえも奪われてしまう。そして、繋がったままの下半身の運動も始まった。
「はっ、んん♡ちゅぶっ、ちゅっ、はぁ、すき、すき…♡んちゅうぅ…♡」
「んぶっ!?んっ!んうぅぅ!!んーーーーっ!!」
全体重を掛けた力強いピストンが容赦なく膣内を掻き回し、ポルチオを穿つ。酸素を求めて口を開いても流れ込んでくるのは彼女の熱いばかりの舌と唾液と吐息だけ。酸欠で朦朧とした脳みそにダイレクトに響いてくる強烈な快楽。ひとたび突かれるごとに軽い絶頂を繰り返しているかのように肩が、中心が、脚がびくびくと痙攣している。投げ出された手は何かを請うかのように握っては開いてを繰り返していた。
「んっ、んぅ、ちゅっ♡好きっ…好きぃ…♡千景さぁん…♡」
「んぐうぅぅっ!!ん、っ、うぅぅーーー!!」
イヤイヤと首を振って逃れようとしてもがっしりと抱き締められていてキスの呪縛から抜け出せない。だんだんと上がっていくテンポに射精が近付いているのがすぐに理解できた。だが獣のように交わるこの体勢では逆らうことなど不可能だった。
「はっ、はっあぁ、千景さんのナカ、私のでいっぱいにっ♡」
「あっ、や、やめっ、てぇ!いや、いやぁ!」
拒絶も虚しく、濃厚な種付けが行われる。とろとろに蕩けた女陰へ遠慮もなしに種子を弾けさせ、擦り込むようにぐりぐりと奥へ押し当てる。二度目の強制膣内射精に涙が零れるが、それすらも丁寧に舐め取られてしまう。そして再び口付けられ、ゆっくりと咥内を舐られ、また…中のモノが硬さを帯び始めて。
「え…な、なんで…」
「はぁ…はぁ……まだ、物足りません…」
「い、いや……もう、許して…」
「千景さん…♡」
「やだ……やだよぉ…」
「これからたくさん、愛し合いましょうね……♡」
「いや……いやぁぁ……」
到底人智の及ばない底なしの精力と愛。二人だけの空間に囚われた千景の、終わらない快楽の地獄はまだ始まったばかりだった。
ーーーーー
「んあぁっ!!はっ、あんっ!んぁ、もっとぉ!」
「千景さんっ♡千景さんっ♡」
それからどれほどの時間が経っただろうか。途方もなく長い時間。気をやるように眠っては目を覚まし、少しばかりの食事と水分補給を兼ねた休憩をしてその後はまた淫靡な遊びへと導かれる。長い長い監禁生活はそれのループだった。やがて全てを奪われ、全てを壊された千景はこの行為に縋ることでしか生きる意味を見い出せなくなり、それからは狂ったように自分からも求めるようになった。
いや、実際に狂ったのだろう。少なくともこの愛の巣に囚われた当初は輝きを放っていた瞳は見る影もなく、文字通り光を失ってしまった。今の千景はただ快楽を求め、喘ぐだけのただのケダモノだ。とっくに手を戒めていた手錠は外されている。それでもなおハイデマリーにしがみつき、自分から腰を合わせて精を搾り取ろうと躍起になっているほどだ。だがそれに溺れられるのならそれでいいのだろう。
「うあっ、あぁ、きもちい、きもちいよぉ…もっとしてぇ…」
「千景さん……千景さん……♡千景さん、千景さん、千景さん、千景さん、千景さん千景さん千景さん千景さん千景さん千景さん千景さん千景さん千景さん千景さん千景さん千景さん千景さん千景さん千景さん千景さん………」
誰にも邪魔されず、ただ互いを求め合う。今日もまた深淵には二人の女の嬌声と水音が響き渡るのだった。