ニーナ・シェルヴィーノ 14歳
階級:少尉
身長:150cm
使い魔:カラス
備考:長く伸びた漆黒の髪が鮮やかなロマーニャ出身のナイトウィッチ。ナイトウィッチらしく控えめで主張が少なく、引っ込み思案な性格。視力が悪く、眼鏡をかけているのもコンプレックスに思っていてかなり自己評価が低い。
固有魔法:魔導光
魔導針の応用の一環で、具現化させたエーテル光を自在に操ることができる。攻撃力は持たないが触れたものを感知するレーダーの役割や、夜間戦闘での支援、また光を吸収するという操作もできるので闇討ちも可能とする。
「…ニーナ・シェルヴィーノ…少尉、です」
皆の前でそう自己紹介を告げた少女は落ち着かなさそうに踵を浮かせている。前髪と眼鏡の奥の瞳は頼りなさげに揺れて、不安を露わにしていて今すぐにでもこの場から逃げ出したいといった願望がありありと表れていた。
「はいはぁい、じゃあ詳しい話はあとでね。ってことで、新入隊員の紹介はおわり!」
場をまとめていた504の隊長であるドッリオが手を鳴らすなり、ニーナはそそくさと逃げるような足取りで部屋をあとにする。新しい仲間に興味を示していた部隊の面々も少し驚いたように目を丸くしていた。
その後、自室に戻ったニーナはまだ午後も回っていないというのにベッドに寝転んでいた。とはいえ寝るためなどではなく、外には出られない事情があったからこうしておとなしくしているだけでもある。
「……また、やっちゃった……」
一人になるといつも考え込む時間がやってくる。人付き合いの苦手な自分を変えられたのではないかという後悔。次にチャンスが巡ってくるのはいつなのかという不安。そもそも二度とチャンスなどないのでは、という漠然とした絶望。暗いままの自分を変えたいとは願っているがそれはいつになっても叶わないばかりか、先ほどのように人前に立つと逃げ出してしまうだけだ。原隊に居た頃もナイトウィッチという、人と違った生活サイクル故に誰とも馴染めずにいた。せっかく統合戦闘航空団という栄えある部隊に抜擢されたというのにまたも自分は変わらないままだと、自虐にも似た負の感情だけが押し寄せる。
「…………」
ネガティブな考えをすると止まらなくなるのは自覚している。けど、周囲の環境が変わったのもあってかこれからの生活に不安が募る。もう考えているのも辛くなって、着任したばかりで本格的な業務に就くのは明日からだし、いっそ目を閉じて意識を手放してしまおう。
…と、思った時。コンコンと響いたノックの音がそれを引き止めた。
「…はい…?」
返事をすると同時にドアが開き、ふわりとした色素の明るい髪とそれに負けず劣らずの人懐っこい笑顔の少女が顔を出す。
「やっほ」
マルチナだ。その上から続いてフェルナンディアが出てきて、さらにその上にルチアナが顔を出した。
「わっ、ずいぶん暗い部屋ねえ」
「ライト点けないの?」
いきなり部屋に押しかけられ、人見知りが発揮されたニーナが固まっているうちに三人が構わず入ってくる。まず驚きの声を上げたのはフェルナンディアで、彼女の言う通りニーナの部屋は厚いカーテンによって閉め切られた上に照明も点けられておらず、日中だというのにほとんど真っ暗だった。
「あ……ま、待って…!」
はっと我に返り、照明のスイッチに手を伸ばすマルチナを慌てて制止するニーナ。振り返る三人の視線に思わず息を詰まらせるが、ゆっくりと呼吸を整えて事情を説明する。
「…わ、私の目…眩しいのに弱くて…」
「ああ、だからさっきもすぐ部屋に戻ったのね」
「ライト点けなくてよかったぁ…」
「大変なんですね…」
「……いえ…慣れてるので…」
ニーナの目は光に過敏に反応してしまう体質だった。昼間、少しでも外に出れば日光で目に負担がかかり、頭痛や目眩を引き起こすことが多い。固有魔法によって周辺の光量を調整することでその負担は無くすことはできるが、魔法力を使うのもタダではないため普段から温存のためにこうして部屋にこもっているのだった。
「…それよりも…その、さっきは…ごめんなさい…」
「いいのよ、そういう事情があったんならしょうがないわ」
「そーそー、それくらいで仲良くなれないってわけじゃないし」
「…え……そ、それって…」
来客用の椅子から立ち上がり、ベッドに腰掛けるニーナの両隣から挟み込んでくるフェルナンディアとマルチナ。そして肩を組まれる。
「おんなじ部隊なんだからもう友達同士、でしょ!」
「階級付けもいらないからさ、仲良くやろ!」
「はい、気軽に名前で呼んでくれたら」
正面に居るルチアナは落ち着き払っていてフェルナンディアとマルチナのように情熱的なスキンシップこそしていないものの、にこやかに微笑んでいて緊張を解してくれている。明らかにニーナが人間関係において積極的でないことを見抜いた彼女なりの気遣いなのだろう。
「私たちもニーナって呼ぶから。ね、ニーナ?」
「は、はい……」
かあっと顔が熱くなっていくのが分かる。こうして人に囲まれているという状況が恥ずかしいのもあるが、こんな自分とも友達として仲良くしてくれるのが何よりも嬉しくて胸が満たされていくようだった。
その後は夜になってから三人に基地の案内をしてもらい、色々と話をしてそれなりに親睦を深め、翌日には本来の業務である夜間哨戒が始まった。普段から専門のナイトウィッチが所属しておらず、ただでさえ隊員たちがシフトを交代しながら慣れない哨戒をしていた上に件のトラヤヌス作戦での負傷による欠員が出ている今これは重要な役割だった。
「…こちらニーナ…定時報告の時間です…異常ありません……」
とはいえ今は平和な夜の空が広がっている。その日は特にネウロイの出現もなく、帰投時刻まで銃を使うことはなかった。顔を出し始めた朝日に目を細めながら基地へと引き返す。
「……ふあ…ぁ」
慣れているとはいえニーナもまだ幼い年頃。長い夜間哨戒を終えたあとは大きな欠伸がこぼれてしまう。ストライカーユニットを片し、格納庫を出ようとすると人の姿が見えた気がした。
「………?」
「あ……ニーナさん、お疲れ様です」
眠い目をごしごしと擦り、レンズ越しに見たそれは気のせいなどではなく、まだ寝間着姿のルチアナだった。違う環境での初めての夜間哨戒で消耗していないか心配に思ってわざわざ早起きしてきたのだろう。少し眠たげだが、ニーナを迎え入れる表情はとても穏やかだ。
「ルチアナ、さん…?」
「どうでしたか?夜間哨戒、何か変わったこととか…」
「いえ…へいき、です…いつもと変わらない…」
「そう、それはよかったです。じゃあそろそろお休みしましょうか」
「…ん……」
ふらふらとおぼつかない足取りで廊下を歩いていく。鳥のさえずりと窓から差し込む光が一日の始まりを告げるが、ニーナにとっては逆でそれが一日の終わりの合図だった。身体がそう覚えてしまっているのか、あるいは疲れたところに見知った顔が現れて安堵したのか眠気はどんどん増していって。
「……うう……ん」
「に、ニーナさん?」
自室の前までたどり着いてドアを開けるなりその場で寝始めそうな勢いで壁にもたれかかるニーナ。元々部屋まで見送るだけのつもりだったルチアナもこれには驚き、慌てて身体を起こす。
「ニーナさん、ニーナさんっ」
「んん〜……」
「ちゃんとベッドで休まないと!ほら、着替えもしなきゃ…」
「…………」
と言っているうちにニーナからの応答はなくなる。一応着替えなければいけないということは理解しているのか、上着のボタンを外そうとしているが目も開けていなければ上手くいくはずもない。それを見兼ねたルチアナは困ったふうな笑顔を浮かべながらひとつひとつ、丁寧にボタンを外していく。
「ニーナさん、両手を上げて」
「…ん……」
ここまで来るともはや反射だ。上着に続いてシャツも脱がし、飾り気のない下着だけにしてから寝間着を着せる…つもりだったが。
「あっ、あぁ……ニーナさん…」
「…むにゃ……」
そのままベッドに倒れ込んで小さく身体を丸めてしまうニーナ。こうなってしまうと先ほどまでのように言うことも聞いてくれず、諦めてせめて風邪だけは引かないようブランケットをかけてやることしかできなかった。
「…ゆっくり休んでくださいね」
掛けたままの眼鏡をそっと外してヘッドボードに置き、脱いだ服を持ってクローゼットに向かう。そこを開けてハンガーに掛けて部屋をあとにする…つもりだったが、なんとなく中を見ていると気にかかることがあった。クローゼットに収められていたのは今手に持っている上着と替えのシャツ、ズボン、そして寝間着だけ。年頃の娘であれば可愛らしい私服の一つや二つ持っていてもおかしくはないのだがニーナはそうではなかったらしい。ベッドの上で丸くなりながら寝息を立てる彼女の境遇を思い、部屋を出た後もルチアナは何やら考え込んでいるようだった。
それからしばらくの月日が流れ、赤ズボン隊らのおかげもあってかニーナはすぐに部隊に馴染むことができた。隊員たちとそれなりに親交を深めた彼女のそばには大抵誰かが、特にルチアナが一緒に居ることが多かった。面倒見の良い性格で、一人では何かと私生活の危ういニーナを放っておけないのか毎日世話を焼いていたし、ニーナも一度は迷惑をかけていないか訊ねたことはあったが「私が好きでしていることなので気にしないでください」と快い態度であったため甘えさせてもらうことにした。
「…おはよう、ございます……」
キッチンへと顔を出すニーナ。おはようとは言ったが今は昼を少し過ぎたくらいだ。生活サイクルの違うナイトウィッチである彼女にとってはこの時間が一日の始まりであることは当たり前だが、先にいたルチアナはそれを心配して声をかける。
「あ、ニーナさん。起きてて大丈夫なんですか?」
「今日は…夜勤のシフトではないので、たまには…」
ルチアナの言う、起きてて大丈夫なのかは睡眠時間のことではなく部屋の外に出ることも意味していた。光に敏感な目を持つニーナは日中ほとんど部屋から出ることはできず、食事なども夕方になってから摂るか部屋まで持ってきてもらうかをするのが大半だった。だがこの日は外を見れば空は厚い雲に覆われていて日光は遮られていた。曇りか雨の日にこうして積極的に皆の集まる方に行こうとするようになったのは、彼女の心境の変化もあるのだろう。
「……お昼の準備ですか?」
「ええ、皆さんお腹を空かせていて早く食べさせろーって。ニーナさんも食堂で待っててくださいね」
こう言われたが、並べられた食材を見ると一人ではまだまだ時間がかかりそうだ。普段世話になっている分の恩返しをここぞとばかりに、眼鏡を掛け直しながら少しだけ踵を浮かせて主張する。
「……いえ…私も手伝わせてください…」
「え?でも…」
「料理の心得なら…多少はあるので……」
常日頃から口数の多い方でなく、また頼りなさげに垂れた目が今は輝いて見える。本人がやりたいと言っているのならと申し出を受け入れたルチアナはとりあえず誰でも出来そうなじゃがいもの皮むきをお願いした。
「……………」
「……………」
山積みのじゃがいもを前に、思った通り黙々と手を動かしているニーナ。少し体を傾けて手元を覗いてみると、ピーラーではなく果物ナイフで皮を剥くその手際は「多少」などで済まされないほどに速く、丁寧だった。
「……? な、なんでしょう…?」
「あ、いえ…ずいぶん慣れてるみたいだったので…すごく上手じゃないですか」
「そ、そう……ですか?ありがとう、ございます…」
ニーナはほんのりと頬を染める。明らかに熟練の手捌きだが、披露する機会もなくまた周りに褒めてくれる人も居なかったのだろう。その境遇を思うと少しだけ憐れむような、寂しい気持ちになってしまう。
「わっ…! る、ルチアナさん…?」
そんな彼女を慰めようと、あるいは労おうと、小さく揺れる頭にぽんと手を乗せる。ニーナは驚いたようだったが特に逃げる素振りも見せず、不思議そうな視線を向けていた。
「あ、あの……」
「…ふふ、なんでもありません」
と言いながら乗せられた手はくしゃくしゃと髪を撫でる。親元を離れて久しいニーナは若干戸惑った様子ながらも子猫のように目を細めて受け入れていた。
「ん……」
「…さて、作業に戻りましょうか」
「あ……はい…」
離れていく手を名残惜しそうに見つめるニーナ。表情にこそほとんど変化はないが、ルチアナもこのあたりのトーンの違いは読み取れるようにまでなっている。
「あ…そうだ、ニーナさん」
「なんでしょう…?」
「あとで、お渡ししたいものがあるんです。お昼が済んだら部屋で待っていてくださいね」
「……? はい、分かりました…」
渡したいものとはなんだろう。と気になりつつも、とりあえずその場は手を動かすことだけに集中して、一緒に刻んだ野菜でフジッリを入れたミネストローネを、余ったトマトでカプレーゼをこしらえて食堂でお腹を空かせた仲間たちと昼食の時間とした。
その後、部屋に戻ったニーナはルチアナを待っていた。手にはパンくずを乗せて、使い魔のカラスに餌を差し出しているところだ。
「…セーラ、お食べ…」
本来ウィッチとして使い魔を丸ごと具現化させるのはあまりよろしくないことなのだが、これまで友達と呼べる人物が居なかったニーナにとって使い魔であるセーラは大切なスキンシップの相手で、それはこの部隊に馴染んだ今も変わることはない時間のようだ。
「……ふふ…」
嘴を突き出してかっかっと手のひらからパンくずを食べるセーラを見て、その愛らしさに目を細める。ズキンガラスは一般的なカラスに比べて体長が小さく、羽毛の色も白と黒に分かれていてどちらかと言えば可愛らしいという印象が強い。ロマーニャでもカラスをペットとして飼うのは色々と申請なんかが必要で面倒なのだが、それらをすっ飛ばしてこうした主従関係に至れるのもウィッチの特権だろうか。
そうしているうちにノック音が響く。返事をすると、ルチアナは入ってくるなり部屋にカラスが居るのを見て少し驚いたようだった。
「その子は…?」
「あ……えと、使い魔の…セーラ、です…」
「まあ、ふふふ。ニーナさんに似て可愛らしい」
セーラを両手に乗せて見せると、口元を隠してお茶目に笑うルチアナ。対するニーナは唐突に褒められたことに顔を真っ赤にして俯いている。
「あっ、あの…さっき言ってた、渡したいものって……」
「ああ。こちらです」
後ろ手に隠していた何かを見せるルチアナ。それはハンガーにかけられている、紺色を基調としたワンポイントの白リボンがあしらわれた可愛らしいワンピースだった。
「服…ですか?」
「ええ、ニーナさんに似合うと思って」
「……わ、私が着る…んですか…!?」
これには少なからずニーナの表情も声色も驚きを隠せずにいた。まさか自分があんな年頃の女の子が着るような洒落た服を渡されると思っていなかったからだ。だが、すぐにネガティブな思考が邪魔をしてくる。
「で、でも……どうせ私には、似合わないと思います……こんな、地味で、根暗で、引っ込みがちな私じゃ……ま、マルチナさんに渡してあげた方が…」
そういう言葉は、すらすらと出てくる。自分が嫌いな自分なのにいつまで経っても変わらない。が、それでもルチアナは穏やかな笑みを浮かべながらニーナを諭す。
「そう言わずに。きっと似合いますよ?ニーナさんに似合うように色々考えたんですから」
「え……」
その言葉を聞いて、目の前の服はルチアナが自作したものだと気付く。自分のために作ってくれたもの。それを頭ごなしに否定するなんてそれこそ嫌いな自分が増えるだけだ。と、頭の中のネガティブを吹き飛ばして、少しでも前向きになってみようと奮起する。
「……じゃ、あ……着て、みても……いいですか…?」
「はい、もちろん!」
ワンピースを受け取るなり、服を脱ぎ始めるニーナにぎょっとしたルチアナだったが当の本人は事も無げにしている。いくら同性とはいえ目の前で着替えることに誰しも多少の恥じらいはあると思っていたが、ニーナはまだそういった面での意識はほとんどないようだった。とはいえ彼女もまだ14歳という歳若さ、飾り気のない簡素な下着に包まれた肢体は女性らしい起伏も少なく、まだまだ幼気な少女であることを実感させてくれる。
「…………?」
「あ……こ、こほん…」
ついじっと見つめてしまうルチアナだが、ニーナは不思議そうに疑問を浮かべた目で見つめ返す。なんの疑いも知らないような純真な視線になんとなく罪悪感を覚え、ルチアナはらしくない咳払いを零す。そしてしばらく後ろを向いていると、小さく消え入るような声が上がった。
「あ、あの……どう、ですか……?」
振り返れば、見違えるようなニーナがいた。
不安そうにワンピースの裾を掴みながら、おずおずと視線を向けてくる。ほとんどが紺色で占めるそれは思った以上に彼女の鮮やかな黒髪とマッチしていて、地味よりも儚げな雰囲気を醸し出していた。
「う、わあー…!ニーナさん、とても似合ってます!」
これには服を渡した本人であるルチアナも胸の前で手を固く結び、喜びを隠せないようだった。自作の服がここまで似合っていればその喜びもひとしおだろう。
「ぇ、あ……に、似合ってます、か…?」
思わず言われたことをそのままリピートするニーナ。今までこうして着飾ることで褒められた経験がないだけに動揺も大きい。
「はい、とっても可愛らしいですよ!」
「か…か、かわ……っ……」
ずっとコンプレックスだった根暗な自分が、自分で見て分かるほどに生まれ変わることができている。その上こうして素直に賞賛を投げかけてくれる人がいるという幸福がオーバーして、自分でもよく分からないくらいに顔が熱くなって。つい横髪を引っ掴んで覆うように縮こまってしまう。
「に、ニーナさん?」
「ご……ごめん、なさ……」
キャパを超えた幸福に言葉を紡ぐことすら難しい。が、口下手なりに一生懸命お礼を伝えたい。
「わ、たし……そんな、可愛い、だなんて…言われたこと、なくって……で、でもっ…ルチアナさんのくれた服で、そう言ってくれるの、は……すごく、嬉しくて……」
髪と手で隠れた隙間から覗いてくるつぶらな両の瞳。弱々しく輝くそれはルチアナの庇護欲を刺激して止まず、一直線にハートを撃ち抜く。
「ひゃ、うっ…!?」
気付けば彼女の腕の中に抱かれていて、目の前にある豊満な感触に顔が埋められる。思わず二の腕のあたりを握るがその温もりは心地よくてそれ以上どうこうする気は起きなかった。
「自信を持ってください…あなたはこんなにも可愛らしい女の子ですよ、ふふ…」
愛おしげに後頭部を撫でられる感触。その優しい手付きはどこまでも安寧をもたらしてくれて、またどこか懐かしいような柔らかな匂いが心を落ち着かせてくれて。その言葉に耳を傾けながら小さく頷いていた。
それからニーナとルチアナの距離が縮まるのにそう長い時間は必要としなかった。普段は仲睦まじくキッチンに二人で立ち、大抵の時間をニーナの部屋で過ごすようになって。度々ルチアナの作った洋服を着ては可愛い可愛いと、時々入り交じるフェルナンディアとマルチナにも蝶よ花よと愛でられ、ニーナも表情を明るくすることが多くなった。
「ど、どう、ですか…?似合いますか…?」
「はあぁー…!可愛い!可愛いですよ!」
「むぐぅ…」
渡された服を着たニーナがルチアナに抱き締められるのはもはや定番と化していた。顔に胸を埋められて息苦しいが嫌に思うことはなく、フェルナンディアとマルチナも微笑ましくそれを眺めている。
「もうラブラブじゃない」
「お熱いなぁ」
「そ、そんな、ラブラブだなんて…」
茶化す二人に、照れ隠しのように否定するルチアナ。が、二人は次のターゲットをニーナに移す。
「ニーナはどうなのよ?」
「私、ですか…?えと、はい……ルチアナさんのことは好き、です…」
彼女もまた照れくさそうに笑みをこぼす。その「好き」は友人や家族に向ける親愛の意味だろうが、どちらにせよ素直に向けられる好意は嬉しいものでルチアナもより抱き締める力を強める。
「はぁ、そう言ってもらえると嬉しいですねぇ…」
「る、ルチアナさん…ちょっと苦しい、です…」
「あっ…ご、ごめんなさい」
と言いながらもすぐに頬擦りに切り替えるルチアナ。よほど嬉しいのかスキンシップをやめるつもりはないらしい。そんなバカップルのような二人を見て、フェルナンディアとマルチナは呆れたように顔を見合わせるのだった。
そんなある日のこと。この日は部屋にニーナとルチアナの二人だけだった。持ってきた服を着るといういつもの流れだったが、実際に着てみて鏡の前に立つと違和感を覚える。寝間着だと言われた服だが、やけに生地が薄い。羽衣のような手触りは確かに心地良いが、色素の薄い肌に形のいい臍から純白のズボンまでが下に透けて見えている。今までは少女趣味の可愛らしいファッションばかりだったがこういったアダルトな雰囲気の服をもらうのは初めてだ。
「あ、あの……ルチアナさん、これ……」
「ふふ……綺麗ですよ…」
いつの間にか隣に寄り添っていたルチアナはどこか熱っぽい視線で言葉をかけてくる。今までとは違う褒め言葉にニーナも胸の奥の高鳴りを隠せない。どうしてここまでドキドキするのか、戸惑いの正体が自分でも理解できなかった。
「でも、その……まだ、私には早いんじゃ…」
「いいえ?そんなことはありませんよ…?」
「わっ…」
普段なら正面から抱き着いてくるものを、この時は後ろから抱きすくめられる。そのまま緩く後方に引かれ、ルチアナがベッドに腰を下ろすのと一緒にニーナもその膝の上に座る形になる。頭上を見上げてみると、ほんのりと朱みがかった頬と、奥底に何かを秘めたような熱い視線のルチアナと目が合う。
「ニーナさん…」
「ぇ、あ…」
どくん、と弾む心臓。背中からはルチアナの鼓動も伝わってくる。この状況に胸を高鳴らせているのはお互いにそうらしい。どこか異質で、でも嫌ではない、むしろ長続きしてほしいと思える特別な雰囲気に飲まれている。そのせいか、徐々に身体を撫でる手付きになっている手のひらが触れている部分が熱く感じられる。
「…ひゃ…!?」
胸の先端をくすぐるように掠める指。触れられることは予見していたはずなのに、その刺激は想像よりもずっと、ずっと大きくて思わず声を漏らしてしまう。
「痛かった、ですか?」
「…………」
驚きのあまり言葉が出なくて、ふるふると首を横に振る。そう、痛みではない。痛みではない別のなにか。ニーナにはそのなにかが分からない。ただ、触れられた場所が甘い疼きを覚え、尖りを見せているのに好奇心を沸き立たせていた。
「もし痛かったりしたら言ってくださいね…」
後ろから囁かれる優しい声に恐怖心が薄らいでいく。片方の腕は細い胴を抱き締めたまま、空いた右手が再び胸元へと伸びる。まだまだ発展途上の、僅かな膨らみしかないそこがガラス細工を扱うように慎重な手付きで押し上げられる。
「ん…んんっ…」
くすぐったいような、もどかしいような奇妙な感覚。しかし触れられた部分はじんわりと熱を持ち、ゆるい痺れを生んでいて拒絶することなど何もなかった。
「ふぁ……そ、そこ……」
しなやかな指先が、緩慢な手付きながらも今度は掠めるだけでなく確実に頂きに触れる。それもただタッチするだけでなく、捏ねるような動作で撫で回していく。くにくにと弄ばれる先端に走るのは言いようのない感覚。自分の意思とは関係なく、刺激に肩が跳ねる。ルチアナは自身の腕の中で小さく動作を繰り返すニーナを見て愛おしさすら覚えていた。
「あっ……ぁ…ん、ぅ…」
ニーナの手は、胸を包むルチアナの手に重ねられている。しかしそれ以上のことはせず、抵抗というよりは未知の感覚への不安を和らげるために無意識にしている行動らしい。それを見兼ねたのか、ルチアナが静寂を打ち破る。
「ニーナさん…どうですか…?気持ちいい、ですか…?」
「んっ、あ……きもち…いい……?」
そう言われると、勝手に体が動いてしまうのも納得できる気がした。自分は今気持ちいいという感覚に耽っている。
「私たち、今…えっちなことをしてるんですよ…」
「ぇ……」
思わずかあっと顔が熱くなる。頭がぼうっとするような、どこか自分が遠くなるような不思議な感覚ではあったがろくな知識もなく何をされているのか、自分の身に何が起きているのか、その答え合わせをされてしまって、より一層胸の高鳴りが強くなる。だが、やはり嫌ではない。むしろその先を体感してみたくなるほどの尽きない好奇心。
「ニーナさんは気持ちよく、なっているんです……その証拠に、ほら」
「ひゃんっ!?」
自分でも驚くくらいに飛び出た大きな悲鳴。一瞬、どこを触られたのか知覚できなかったが強く残った、ぴりぴりとした甘い痺れの場所を目で追う。そこは薄い絹のような生地越しにその白さを強調するズボンで、触れられた部分はしっとりとした湿り気を帯びていた。
「女のコは気持ち良くなるとここが濡れてくるんです…今、ニーナさんもえっちなことに興奮しているからこうして濡れているんですよ…」
無垢な少女が知る、大人の女としての悦び。自分が大人の階段を登ろうとしているのに恐怖がないわけではない。だがルチアナになら身を委ねてもいいという無二の信頼がそこにはあった。
「わ、私……どう、すればいいか…わからなく、て……」
不安げに見上げるニーナを、慈愛の表情で見つめ返すルチアナ。友情を超えた親愛の情があることは明白だ。
「ルチアナ…さん……おしえて、ください……」
「……はい」
ひときわ強く、ぎゅうと抱き締められる。それだけでほぅ、と小さく落ち着いた吐息が零れる。
「怖かったら、掴んでても大丈夫ですからね…」
こくこくと頷き、自身を抱くように回された腕の先へ視線を集中する。再び胸へのささやかな愛撫が始まり、性感に慣らすように刺激が与えられる。
「は……ぁ、んん…!」
衣服の上からでもその形を主張するほどに可愛らしく尖った蕾。せいぜい指先で弄る程度だったそれは責め手を変え、摘んではくりくりと転がしたり、爪の先でピンと弾いたりと休む間を与えず次々に嬲ってくる。初めは少し変な感覚に陥るくらいにしか思っていなかった部分も、ルチアナの指に翻弄されるうちにだんだんと甘い快感を覚えるようになっていく。
「ひゃ、あぁっ…!」
それは胸だけでなく、下腹部に与えられる刺激もそうだった。すでにズボンの中に差し入れられた指が露に濡れた入口をなぞり、くちくちと厭らしい水音を立てて弄んでいる。その度に背筋を駆け抜ける、今までにない未知の感覚。
「はぁ……ニーナさん……ニーナさん……」
幼気な少女が自身の与える刺激で、自身の腕の中でびくびくと悶え、快楽に染まった甲高く蕩けた声で喘ぐ様はこれ以上ない愉悦を覚えさせる。
「んっ、う、ルチアナ、さんっ…!」
指先を滑らせ、踊らせる度に穢れを知らない華奢な身体が淫靡に跳ねるという背徳感。名を呼ばれ、添えられた手にきゅっと力が込められるのがたまらなく愛おしい。このまま襲ってしまいたい衝動を必死に抑えながら彼女を頂点に導くべく愛撫の手を激しくしていく。
「あ、やっ、な、なにっ…きちゃう、きちゃうっ…!」
「いいんですよ、そのまま、気持ち良くなってっ…!」
己の中からこみ上げてくる絶頂という感覚に恐怖が宿り、髪を振り乱して喘ぐニーナ。だがルチアナの言葉にぎゅっと目を瞑り、それに身を委ねてーーーそして、頭の中が真っ白に溶けていく。そう、ニーナは初めて達したのだった。声にならない声でうなり、体を縮めてがくがくと震えて。その強すぎる感覚に数秒間歓喜するように打ち震えていたが、すぐに弛緩したようにぐったりとするとルチアナの胸に背を預けて肩で息をし始める。
「はぁ……はぁ……んっ、はぁ……」
「ふふ……よくがんばりましたね…」
そんなニーナを労うように撫でるルチアナ。そしてその甘い雰囲気の中、呼吸が整い出した頃。その手は頬に添えられ、後ろを向かせて。
「んっ…」
「ん、んんっ…!?」
小さく開いた唇にそっと口付けをされる。性に疎いとはいえニーナもその行為の意味を知らないはずはなく、驚きにくぐもった声を漏らす。だがルチアナに愛でられるのなら、キスをするのがこれだけ幸福になれるのならと嫌がる素振りも見せず、すぐに受け入れる。
「んぅ……ん……」
初めてするキスの感触にうっとりと目を細めながら甘えたように身を寄せてくるニーナ。袖を掴んでいた手に触れると、たどたどしく指を絡めてくる仕草があまりにも愛らしく、しばらく唇を重ねたまま甘いひと時を堪能するのだった。
後日、ニーナの部屋にはどこから仕入れたのか勘繰りたくなるようなビデオカメラが設置されていた。ベッドの前に置かれた高級品とその後ろに陣取るルチアナに幾分か困惑を隠せないニーナだが、そこは言わないのが暗黙の了解と思うことにした。
「あの……ルチアナさん、これから何を……?」
ニーナがもじもじと落ち着かなそうにしているのも無理はない。なぜなら彼女が身にまとっているのは以前渡された透けている寝間着だからだ。それも前は胸当てがあったが今回は取り払われていて、ズボン以外にほとんど何も身に着けていないような状態になっている。いくら性に疎いとはいえ、先日のルチアナとの行為でそういった場所を見せるのは恥ずかしいことだという意識が芽生え始めていた。
「ふふ、これからニーナさんに質問をしていきますね。それに答えてください」
「は、はい…?」
普段と変わらない穏やかな表情で続けるルチアナに、困惑しながらも一応了承の返事をする。
「では、まず…お名前から聞かせてください」
「に…ニーナ・シェルヴィーノ……」
ニーナは質問の意味が分からず、おどおどとした様子だったがルチアナはゆっくりと受け答えを進めていく。
「ニーナ。素敵な名前ですね、ふふふ…確か、意味は『美しい』でしたね」
「あ……はい、お母さんから聞いたことがあります……」
「今のニーナさんにぴったりですよ」
口上手な物言いに思わず頬を染める。あまり人に褒められた経験がない故か、ニーナはこうストレートな賛辞だけでも大きく心を突き動かされる方だった。
「身長と体重はどれくらいですか?」
「身長が……150cm、体重は……確か…41kg、です…」
「まあ、ずいぶんほっそりしてますね」
「そう……でしょうか…?」
ニーナは年齢の割には身長も体重も少し足りない方だ。特に体重はルチアナが魔法力なしでも持ち上げられるほどに軽い。少し心配になるくらいの肉付きのなさだが、本人はあまり気にしていないらしい。
「次は階級と所属をお願いします」
「か、階級は少尉……所属は…ロマーニャ空軍第1夜間戦闘……あれ…?」
「どうしました?」
カメラに向かって話す口が止まる。それは緊張というより素のニーナの姿だ。
「え、と……前にロマーニャ空軍にも…ナイトウィッチ部隊が出来るから、って転属の辞令をもらったはずなんですけど……」
「はい」
「その…人員が集まらなくて、結局流れた覚えが……でも、うぅん…元の部隊に戻った…よう、な……う〜ん……」
夜勤が多いニーナにとって昼間の記憶はほとんど曖昧だ。それが軍人として重要なものだとしても記憶に薄いし、夢か現か分からないことが多く、こうして混乱しているのだ。それを見兼ねたルチアナは困り笑顔でフォローを出す。
「ま、まあまあ。今は第504統合戦闘航空団所属、ということで」
「ん……わかりました…」
「えーと、次は…」
手元にあるメモを見ているようだ。生真面目だがどこか抜けっぽいところがルチアナらしく、少しニーナの緊張も解れてきている。
「歳はいくつですか?」
「14歳、です…」
「この部隊だと最年少ですね。年上ばかりですが、怖かったりしませんか?」
「あ、あのっ……最初は、怖かった、ですけど……みんな、いい人たちばかりで…部屋にも来てくれる、ので、えへ……」
口下手なりに想いを告げるのが微笑ましく、ルチアナもにこやかな表情を浮かべる。引っ込み思案なニーナを疎んじることなく気さくに接してくれて、部隊に馴染むことができた嬉しさがありありと表れていた。
「趣味はどんなものがありますか?」
「趣味……なんでもいい、んですよね…」
「ええ、どうぞ」
「趣味とは言わないのかもしれません、けど……夜間哨戒に出た時、他のナイトウィッチの方とお話するのが楽しみです……」
ナイトウィッチ同士での交信を利用したコミュニティ。初めは参加をためらっていたが、自分と似たような人が集まっていると聞き、勇気を出して交信してみたら多くの人と仲良くなれたらしく、最近では手紙も書き始めているようだ。
「ふふ、お友達が増えるのはいいことですよね。では得意なことはあったりしますか?」
「得意……えっと、料理は少しできる、と思います……」
「少し…?」
ルチアナの疑問も当然だ。キッチンに立った時のニーナの手際は肉野菜魚どれを取っても他の追随を許さないほどに素早く、また味も両立できている。本人の自信のなさとは裏腹に料理の腕は得意中の得意と言っても過言ではないだろう。
「最近は、さっき言ったナイトウィッチのコミュニティで教えてもらったオラーシャ料理を練習してみています……」
「あ、もしかしてこの間出たロールキャベツがそうですか?」
「はい…あれはガルブツィーといって、普通のロールキャベツとは少し違うんです…」
「なるほど、道理で…」
ニーナが自分から話題を繋げるのは珍しいことだ。これも人付き合いを重ねて己の内をさらけ出すことを覚えた心境の変化なのだろう。
「じゃあ次は将来の夢を……」
〜〜〜
そんなこんなで質問の受け答えは続き、しばらく時間が経った頃。ルチアナが移動し、ニーナの隣、ベッドのふちに腰掛けてきた。そこで彼女のまとう雰囲気が変化するのを感じ取り、ニーナは息を飲む。
「では、次の質問をしますね」
「は、い…」
「お風呂ではどこから洗いますか?」
なんでもないような質問だが、ルチアナの視線は熱を孕んでいて、瞳の奥に輝く妖しい光があの時の雰囲気を醸し出している。
「に……二の腕から、です……」
「なるほど、ここを……」
「っ……」
上げた腕に指が触れ、そこから下ろすようになぞられる。こそばゆい感覚に反射的に身を震わせると耳元で囁くように微かな笑い声が上がった。
「次はどこを?」
「う、腕、を…洗って、反対側……から、胸に……んっ…」
口にした場所をゆっくりと順番にフェザータッチでなぞるしなやかな指。まるで自分から誘導しているかのようで、気持ち良くなろうとしている錯覚すら覚える。
「る、ルチアナ、さん……そこ、はっ…」
「ふふ、ちゃんと最後まで教えてください?答えになりませんよ?」
ルチアナの指は股座へ潜り込み、大事な部分へと伸ばされようとしている。カメラの前、撮影されているという状況にニーナの羞恥が煽られていく。
「さ……最後、は…そこ、を……」
「そうですね…ここは入念に洗わないといけませんよね…」
「んんんっ…!」
自分から申告した部分、幼い秘裂をすりすりと撫でられる。身体中へのフェザータッチですでに感覚が鋭敏になっているのか、明確に性感だと分かるものがそこに走った。
「自分でこういうことをしたり、とかは?」
「え……こ、こういうこと…って……」
「ふふ、一人でエッチするかどうか、ですよ」
「んあっ…!」
ズボンの中へ侵入した指が、湿り気を帯びつつある入口をわざとらしくなぞる。こういった行為が恥ずかしいことだとはすでに認知している。それが羞恥となり、ニーナの答えを渋らせる。
「や……そん、な……は、恥ずかし…ぃんっ…!」
「教えてください?ほら、私しか聞いていませんから…ね……」
「ひ、あっ…!んんぅ…!」
唆すように甘い快楽が昇り詰める。しかしそれは達するにはほど遠く、もっと欲しければ素直に求めよと言わんばかりに緩く責め立ててくる。そのもどかしい感覚に耐え切れなくなったのか、ニーナは消え入るような声でアンサーを出した。
「た……た、たま…に……」
「なるほど…いつ頃から、ですか?」
口を開いてみれば自分でも驚くくらいにすらすらと言葉が出てくる。聞かれたことに対する拒絶の意思がまるで浮かばない。
「…は…初めて、ルチアナさんに……して、もらった時から……」
「ふぅん……どんなことを思い浮かべながらとかはありますか?」
「………」
少し言い淀んだが、すぐに口を開く。
「……い、今と同じ…」
「はい?」
「その……こう、して…ルチアナさん、に……触られてるのを……想像しながら……」
甘えるようにそっと重ねられる手。控えめながらも、しっかりと好意を向けてくる潤んだ瞳にルチアナの胸が撃ち抜かれる。内心では嫌々付き合っているだの無知につけ込んで淫らな行為を働いているだの心配事は多々あったが、それらを払拭するような、期待に満ちた眼差しを向けられている。
「そうすると、こんなふうになるんですね?」
「………っ……」
ニーナの目の前に差し出された五本の指には白く糸を引く粘液と、興奮の証である淫気が絡んでいた。こうして自分の痴態を見せられると、カメラに収められているという事実もあってより羞恥と期待が湧き上がる。ルチアナの言葉を肯定したのか小さく頷き、生唾を飲む。そして頬に添えられた手で彼女の方に向かされると、間近に妖艶に微笑む表情があって思わず心臓が高鳴った。
「じゃあ、これで最後……キスは好き、ですか?」
「ぇ……」
どくん、と鼓動が脈打つ。口同士でのキスに特別な意味があることは知っている。それが同性であろうとノーカウントや遊びでするようなことでないことも。以前、ルチアナにされたことを思い出すと体の底から熱が湧いて胸が響く音がうるさくなって、顔全体が熱くなる。その特別を嫌だと感じない、という感情が意味することはひとつなのだが、ニーナにはまだそれへの理解や実感が追いついていなかった。
「前にしたの、覚えてますか?」
「…お…覚えて、ます…」
忘れられるわけがない。幼き日に親にした愛情を示すためのそれとはわけが違う。強烈に記憶に焼き付いたファーストキスはとても柔らかくて、甘くて、温かかった。
「…で、でも……好き、かは……まだ、分かりません……」
「…………」
「だ………だか、ら……」
不快などと思うことは一切なかった。だからこそもう一度あの感触を求めたい。味わいたい。唇を許してもいいと思える相手に愛されていたいと心からの想いだった。
「また……して、ほしい……です…」
数秒、見つめ合ったまま時間が呼吸を止める。先に動いたのはルチアナの方だった。目を閉じて唇を近付ける。それを真似て、ニーナも目を閉じて不器用に唇を尖らせて。
「…んっ」
「…んっ…!」
それが重なると同時に小さく吐息を洩らす。しっとりと濡れた肉厚の唇。柔らかく包むようにどこまでも吸い付いてくるその感触はルチアナ自身の慈愛に触れているかのようだ。互いの体温と鼓動の音が伝わり、文字通りひとつになっているのを実感させる。が、肺に酸素がなくなる寸前で二人は離れた。
「……っは…」
「……はぁ…どう、ですか…?」
「…………」
どこか不安げに問うルチアナに、言葉ではなく眼で答えるニーナ。それを受けて、再び目の前の唇を啄む。
「んっ…んんっ……」
「んっ……はぁ……ニーナ、さん……」
「んぅ………ルチアナ……さん…」
永遠に続いて欲しいとさえ思う時間。しかしそれは生きるための煩わしい呼吸によって断ち切られて、だからこそ永遠を紡ぎ合わせるために愛しい名を呼び合い、口付けを交わし続ける。カメラが回っていることなど忘れてしまったかのように情熱的に求め合う二人。示し合わせたように指先を絡め、固く繋ぎ、早鐘を打つ胸をくっつけて。何もかもが混ざって境界が曖昧になって、ひとつになる感覚。ルチアナは辛抱堪らないといった様相で、間近で囁く。
「はぁっ……ニーナさん、今度は…大人のキスを…教えますねっ…」
「え…お、大人って……?んむっ…」
再び唇が重ねられるところまでは同じだった。だが次の瞬間にはニーナは眼を見開いて驚きを露わにしていた。
「ん…んん〜〜っ…!?」
「んっ、ふぅ……れろ……」
咥内に侵入してくる生暖かい侵略者。その滑る感触にぞくぞくと背筋に電撃めいた何かが走る。口の中を舐め回されるという、今までに体験したことのない未知の感覚。しかし慌てた素振りも見せない、ルチアナの優しいそれにだんだんと落ち着きを取り戻し、されるがまましばらくその感触に浸る余裕が生まれる。
「ちゅっ……んん…っ…はむっ……ん、ふぅ…」
気付けば握り締められていた手はいつの間にか離れ、首元へと回されていてしっかりと抱かれている。舌先を挨拶のようにつんつんとつつかれ、身を委ねると味わうようにそれが絡め取られる。唇だけでなく咥内を優しく蹂躙する舌がルチアナに愛され、支配されているという背徳をくれる。舌先で掻き混ぜる唾液が厭らしい水音を響かせるくらいに求められているという実感がニーナをこの淫靡な行為に耽らせた。
「ぷあっ……はぁ……はぁ……」
「ふぁ……ニーナさん、舌を出してみてください…」
「こ……こう、ですか…?」
「ええ、そのまま……んむっ」
「んんんっ…!?」
おそるおそる、といったふうに小さく差し出した舌。それを咥えられ、ルチアナの咥内に引き込まれ、強く吸い上げられる。初めて経験する巧みなキスにたまらず全身が弛緩し、されるがままになってしまう。ちゅうちゅうと愛おしげに啄まれる中でさらにその舌先がねっとりと絡められて。たどたどしくもそれに合わせた動きをするとルチアナの眼は細められ、確かな愉悦を露わにした。そして二人が長く求め合った後。舌技によって翻弄され続けたニーナは荒い息を吐き、どこかとろんとした目のまま間近のルチアナを見つめている。
「ぷはぁ……ニーナさん……」
「ふぁ…い……」
「キス……好きですか?」
「…ん……」
その問いには、再び口付けることで答えた。そうするとルチアナはくすりと微笑み、お返しにまた唇を寄せる。
「もう…可愛くてたまりません……」
「んぅ……」
唇を重ねたまま、今度は身体をまさぐられる。頂点に至る前におあずけを食らった身体は与えられる刺激に歓喜するようにびくびくと跳ねる。すでに興奮の証で染みになったズボンは意味を成さなくなっていた。そこへ侵入した指は割れ目より深くを目指し、幼い膣穴を掻き分けていく。
「んふぁぁっ…!あ、んんっ…!」
口内に響くくぐもった声すら呑み込んでいるかのようだ。甘い快楽に反射的に身を縮めて内股になり、挿し入れた指が強く圧迫される。しかしその窮屈な膣肉をごしごしと擦り上げてやれば悦びに収縮を繰り返すのが伝わった。抱いた小さな身体の反応は止まず、絶頂が近いのは目に見えている。そこで仕上げと言わんばかりに、親指で秘芯を弾く。
「ひゃうっ!?あ、ぁ、あっ、ああぁ…!!」
がくん、がくんと強く肩を跳ねさせるのも構わずに、弾く。弾く。執拗に弾いて秘部と慎ましい起伏を愛でる指先を踊らせて、舌先を吸い上げて。
「イっ、ひぐ……ーーーーっ……♡」
あまりに強烈な絶頂。頭が真白で染め上げられ、弓なりに反れた全身が多幸感に満ちた痙攣に震える。声にならない声で限界まで絞り出した呼吸をかろうじて紡ぎ、意識を繋ぎ止める。
「は、あぁっ…んっ、く………はっ……ぁ…」
余韻に残り続ける倦怠感。指の先すら動かすことが億劫で、それでいて心地良くて浸っていたいと思う不思議な感覚。汗で張り付いた前髪を払われると、薄く開いていた目は朧気にルチアナを見つめた。
「ふふ……ニーナさん、とっても可愛いです……」
「…………」
いまだ荒い息は整わず、言葉を紡ぐ余裕が無い。が、余裕が無いのはルチアナも同じで。抱かれていた身体がベッドに寝かされるとズボンを下ろされ、そして脚を抱えられて開かれる。顔を覗かせる薄ピンクの肉は艶めかしくヒクつき、雄を欲していた。
「さあ、ニーナさん…これからが本番ですよ…」
顔の横に手を付き、覆い被さるルチアナがその雄を持つ。いつの間にか脱いでいた下腹部に聳え立つそれはまさに逸物と呼ぶに相応しく、張り詰めて怒張している。なぜ女にないはずのものがそこにあるのか、などと考える余裕すらなかった。ただひとつ明確なのは拒絶の意思など欠片もなくて、ルチアナにならどうされてもいいという圧倒的な親愛があること。ぴたり、とあてがわれたそれに大きく大きく息を漏らし、ゆっくりと己の中を押し開いてくる感覚にぞくぞくと駆け抜ける電撃。
「はーっ……はーっ……んっ、くぅ…!」
「はぁ……全部、入りました…♡」
こつん、と奥に到達した瞬間、無意識に身体が悦び跳ねる。下腹部を戒める圧迫感。熱さすら感じるモノを自分がきつく咥え込んでいる感覚もはっきりと知覚できる。強く意識しすぎると何もしていないというのにお互いに果てることすら出来てしまいそうだ。
「動き……ます、ねっ……」
「んっ…!んんぅっ…!!」
ゆっくりと腰を引くと反りの深いかえしの部分が容赦なく膣肉を擦り、また押し進められると太く逞しい幹が幼い肉筒全体を擦り上げ、奥へと粘膜を絡めたキスをしてくる。下腹部から突き抜けてくる快感だけでこうも全身に力が入らなくなるものとは思いもしなかった。しかしそれはまだまだ序の口で、だんだんとそれはペースを上げ、脳を痺れさせてくる。
「ニーナさんっ♡私たちっ、今っ、エッチしてるんですよっ♡」
「えっ、えっあぁっあ♡えっち、です、かっ…♡」
「ほらっ、こうしてひとつになって♡愛し合ってるんですよ、私たちっ♡」
無垢な少女を穢し、自らの色で染め上げる背徳。手を伸ばせば縋るように指先を絡めてしっかりと離さない様がこの上なく愛おしい。羞恥に染まり赤らんだ頬に、ずんずんと突き上げられる快楽に蕩けた表情。あどけなかったはずのそれはすっかり雌のそれへと変わり、もっともっととねだるように肉茎を締め上げてくる。
「カメラの前でっ♡もっと、たくさん愛し合いましょう♡」
「んあっ♡はっ、ふぁいっ♡ルチアナさんっ♡」
「ニーナさんっ♡ニーナさんっ♡」
名前を呼ぶ度、レンズの奥の瞳が切なげに揺れる。強く求められているということがニーナの身体を悦ばせる。録画されているというのにそんなこともお構いなしになるほど髪を振り乱して喘ぎ、交わる快楽を貪っている。またルチアナの方も、腕の中にある少女の淫蕩な様に昂りが最高潮を迎え、精を吐き出さんと抽挿運動を早めていた。
「はぁっ、はぁっ、ニーナさんっ…好きです、好きっ♡大好きっ♡」
「わ、私もぉ♡好きぃっ♡ルチアナさぁん♡んむぅ♡」
交わされるチープな愛の言葉だったが二人には他にないほど幸福で、たまらず唇に吸い付くルチアナ。そしてそのまま体格差で押さえつけるかのように体重を乗せ、腕に力を込めながら。
「んぐっ、ううぅぅーーーっ♡♡♡」
膣肉が激しく収縮を繰り返すのと同時に、濃い白濁を注ぎ込んでいく。それは一度や二度の脈動では終わらず、ニーナが知覚できただけでも六回ほどは打ち震えて熱い精を放っていた。その量は繋がったままの秘裂から溢れて流れ出てくるほどだ。それを勿体ないと思ったのか、あるいは残りまで注ごうとしているのか。いまだ絶頂の余韻に震える膣奥へ亀頭を擦り付けるようにごりごりと腰を揺らしていく。
「んっ、んっん…♡あむ……ちゅっ…♡」
「はぁ…♡んっ、ふぁ……れろっ…♡」
熱烈なキスを交わし続ける二人。その睦まじさたるや、間に入る者すらなさそうなくらいで、ロマーニャ人の情熱的な側面がありありと現れていた。そして、やがて離れる頃にはルチアナのモノは再び活力を取り戻して硬さを帯び始める。
「んあっ…!ルチアナ…さん…?」
しかしルチアナは一旦それを引き抜くと自分は仰向けに寝転がり、天を仰ぐ肉棒の前へニーナを跨らせた。そして不思議そうな表情を浮かべているニーナの華奢な腰を抱いて告げる。
「今度はニーナさんから動いてみてください」
「わ、私が……ですか…?」
「ええ。自分で挿れてみて、自分で気持ち良くなっていいんですよ…♡」
「…………」
自分で挿れる、というのはとてつもなく恥ずかしいことだと感じた。ちら、と横を見れば物言わず自らの痴態を映し続けているカメラ。それを分かっていながら自分から羞恥を見せ付ける行為をするなど、想像するだけで顔から火が出そうになる。だがあの与えられた快楽を自分で貪り、そしてルチアナも悦ばせられるのなら。そう思うと悪い気はせず、むしろーーーと思った時にはすでに無意識に足を立て、手で支え、腰を浮かせて先ほども掻き回された幼気な秘裂をいきり立った剛直へと密着させていた。
「んっ……ん、あぁっ…!」
腰を下ろしていくに連れて、熱い存在感からぞくぞくと甘い刺激が昇ってくる。自分から快楽に浸るようにゆっくりと息を吐きながら手を付く様を見てルチアナは恍惚の表情を浮かべている。やがてこつん、という感触と共に肉棒が最奥へと到達し、そこで一旦動きが止まる。
「はぁ……はぁ……ぜんぶ……はいり、ました……」
こうしてじっとしていると、より己の中にあるモノが鋭敏に感じられる。狭い膣穴を埋めるほどの大きさや形、ひとつになって溶けてしまいそうなくらいの熱。もどかしいばかりの疼きを鎮めたくて、胎動を始めた本能が自然に体を浮かせる。
「んっ、んっ…!はっ、ぁ…!」
ルチアナの腹に手を付き、腰を浮かせ、また叩き付けるように沈めて。か細い嬌声と、肉と肉がぶつかり合う音が響く。自分から貪り、突き抜ける快感に身体を震わせながらもその上下運動は止まらない。奥へ槍先が衝突する度、ずんずんと全身に打ち付けるような重い快楽が響いていく。
「ふふ……ここなんてどうですか?」
不意に腰を掴んでくるルチアナ。そして、彼女がおもむろに腰を前後に揺らすと同時に。
「……ッ!?〜〜〜〜っっ♡♡♡」
あまりに強烈な快楽に目を見開き、掠れた声で叫ぶニーナ。今抉られたのは秘芯の裏側、女の泣き所。びくん、とひときわ大きく肩を跳ねさせた彼女はぐったりとしたようにうなだれ、荒い息を吐く。数秒そうしていたかと思うと、今度は髪をかき上げながらその部分に当てるように自ら腰を揺らし始めた。
「ふぁ……ぁ、ん……あっ、ぁ…きもち…いっ…♡」
腰の上でゆらゆらと踊る小さな肢体。しかしその瞳は妖艶に染まり、肌を伝う雫のような汗で濡れた身体は光沢を生み、少女から女のものへと遂げさせていた。ぐりぐりと、先ほど与えられた刺激を自分で探るように膣壁を押し当てる。とろとろの蜜に塗れ、みっちりと咥え込んだ入口が前後にグラインドする様はこれ以上なく扇情的だ。感じる部分にかえしを引っ掛けて悦楽に浸っているのだろう。ニーナも喉を反らし、涎を口の端から垂らしたまま一心不乱に腰を踊らせている。
「あ、あ、あ……!い、イくっ…♡ん、んんんーーーっ……!!」
そして身体を縮めてびくん、びくんと痙攣すると同時に中までが激しく収縮し、雄をきつく締め上げる。思わず暴発しそうになるそれを、歯を食いしばって堪えることでなんとか直前で止めることができた。
「はっ……はっ……すご、いぃ……♡」
自分で達することが出来た恍惚に浸るニーナ。それを見たルチアナは体を起こすと、一旦男根を引き抜いて仕上げと言わんばかりにニーナの脚を後ろから抱き上げる。
「ふあっ……る、ルチアナさん…?」
「今度はこうしてみましょうか♡」
魔法力を行使すればニーナほどの軽さなら易々と持ち上げられる。そのまま向かった先はカメラの前だった。そこでぐいっと脚を開かれ、レンズの前にはひくひくと雄を求めて脈動するピンク色の柔肉が広げられる。
「やっ…!?あ、ぁ…!ルチアナさ、こ、これっ…!」
「ふふっ…バッチリ映ってますよ?ニーナさんの恥ずかしいところ…」
「ひ、やぁ…!やだっ、下ろしてぇ…!」
カメラの前で恥ずかしい部分を広げられる恥辱。耳まで真っ赤になったニーナは声を大にして懇願するが、そんな姿に嗜虐心をそそられたルチアナはさらに責め立てる。
「ほらっ、こうして繋がってるところ、もっ…!」
「きゃうぅっ!?」
膕に入れられた手の力が弱まり、当てがわれた先端が一気に奥へ突き抜ける。重い一撃が入り、たまらず透明な液が噴き出した。それを厭うことすらせず、肉と肉が交わる様を存分に映し出すようにピストンが始まる。
「あっ、あぁっ!やだ、やぁ♡これダメっ、はずかしいのやだぁっ♡」
「可愛いっ、可愛いですよルチアナさんっ♡もっと一緒に気持ちよくなりましょうっ♡」
可愛い、という言葉がトリガーになっているかのように全身が悦びに打ち震える。中が収縮を繰り返しているのがはっきりと知覚できる。恥ずかしいところを撮られているのに、もっとも体重がかかる姿勢でずんずんと突き上げられる最奥は蕩けるくらいの快楽で支配されて。何がなんだか分からない羞恥に顔を覆い、ぶんぶんと首を振ることしかできないニーナ。
「んぁ♡はっ、あ、ダメっまた、またイくっ♡またきちゃううっ♡」
「私もイきますっ♡一緒にイきましょうっ、ねっ♡」
「あ、あっあっああぁぁーーーーー♡♡♡」
そこから逃れられるはずはなく。上り詰める冒涜的なまでの快楽に思考がぐちゃぐちゃにされ、視界は明滅を繰り返し、自分の中を犯すかのようにぶちまけられる精液の感覚に何もかもが真っ白に染まる。
「ッ…………く、ぁっ……は、ぁ゛……」
喉が破れるくらいに叫んだからか、ニーナの透き通った声は掠れてすらいた。ルチアナの腕の中でぐったりと崩れ落ちる彼女は動く気力すらないようで、ベッドに寝かされた後も肩で息をしたまま虚空を見つめている。
「……ん…」
それを労うように髪を撫でるルチアナ。するとその手を包むようにして、もっとして欲しいと縋るように愛おしげに頬をすり寄せてくる。そのいじらしい様があまりにも可愛くて、たまらずにキスをすると向こうもそれに応えて舌を伸ばしてきた。
「んんっ……じゅる……はぷっ、ん……ちゅっ…」
「んっ…はむ……ちゅぷ……んん…」
愛を確かめ合うように長く求め合った二人。やがて離れた頃には再びルチアナのモノは硬度を取り戻していて、次への準備がすっかりと出来ていた。
「ニーナさん……」
こつん、と額を合わせる。ルチアナの尋常のものではない精力がまだ尽きないというのなら、求められるのならばと、ニーナもそれに応えるように。
「ルチアナさん……」
名を呼び返し、合意を示すために首の後ろへ腕を回す。そしてどちらともなく微笑むとまた口付けを交わして、情熱的なまでに絡み合っていく。二人の長い営みは今しばらく続くこととなった。
ーーーーー
ルチアナの赤シャツを羽織り、だぼだぼになった袖でコーヒーを手に持つニーナが背中から語りかける。
「あの……その、撮ったのは…どうするんですか…?」
「ああ、あれですか?あれは個人的に楽しむのに取っておくつもりですよ」
「個人的……」
そう言われ、ニーナは少し考え込む。
そしてしばらく沈黙が訪れたと思うと、ルチアナの背中に飛び付き、甘えるように体重を預けながら
「び、ビデオなんて見なくても、本物の私がいますよっ……ほらっ、いますから……ねっ……」
映像の中の自分にやきもちを妬き、リアルの自分を主張してくるニーナ。普段の控えめな彼女からは想像もできないほどの微笑ましいアピールに、ルチアナはしょうがないといったふうに小さく笑みをこぼした。
インタビューの時の夜間戦闘部隊云々は完全に捏造です
そこら辺詳しい人いたら教えてください(無知)