奢侈淫逸のジュリエット 作: 提 督
☆シャルトリュー
「君、自分が何したのか分かってるわよねぇ…?」
声が少し震えていた。
それは怒り故の震えだと分かるまでに少し時間がかかった。
それだけ頭に血が上っているのだろう。
「ま、待ってくれ、」
「待つ?何を?
君が浮気相手に果てるのを?
それとも、言い訳があるとでも?
私は盗聴器で最初から聞いていたのよ?」
「……いや……いい。
オレが言い訳できることはない。」
「違うゾ!!
これは…これは蓮季が、……
そもそもあんたには関係ないでしょ!!」
「関係ないわけないでしょ!私はペルちゃんの!!
ペルちゃんの…」
何なのだろう。
私は、ペルちゃんの。
「ともかく明日、ペルちゃんと別れなさい。
犬塚…それぐらいのケジメはある男でしょ?
すんなり別れるならペルちゃんには黙っててあげる。」
「……あぁ。ありがとう。」
「勘違いしないで、ペルちゃんがショックを受けるからよ。」
その後は何もしゃべらなかった。
無言で証拠の写真が入ったカメラを抱えて帰った。
二人と目を合わすことすらしなかった。
普段の私ならば、『自暴自棄になった犬塚が自分の性癖を言いふらすかもしれない』
『何とかして先手を打たなければならない。』
そんなことを考えたかもしれない。
でも、今は疲れていた。
そうして怒りに身を任せてどこをどう歩いたのかも知らずに自室に帰った。
「もぉ、こんなに遅くにどこ行ってたの?
急に飛び出していくから心配したんだよシャルちゃん!」
今はただ、ペルちゃんが毒牙から守られたことだけを喜ぶことにしよう。
そう思った。
☆蓮季
「犬塚…蓮季は……っ…蓮季は…」
とめどなく涙があふれてくる。
犬塚に謝らなければいけないのに。
例え謝って許されるようなことではないにしても、謝りたいのに涙と嗚咽がそれを邪魔する。
どうすればいいのだろう。
蓮季はいったいどうすればいいのか。
分からなくなっていたかった。
もし、分かってしまったら。
僅かにでも犬塚とペルシアの破局を喜んでいる自分がいるかもしれない。
これに付け込んで犬塚を狙う自分がいるかもしれない。
冷静に考えたくなどなかった。
「蓮季…すまねぇ。
今日は帰って欲しい。」
「………………わかったゾ。」
部屋のドアを閉める音は冷たく響いた。
☆露壬雄
「…オレと別れて欲しい。」
翌日の夜遅く、
オレ達以外には誰もいない噴水で
数か月前オレ達が誓った場所でオレはペルシアと会った。
「……つまり、私は遊びだったのね。」
「それは違う!!!
オレはペルシアを本気で愛していたさ。
でも、その……
ちょっと事情があって…」
「その事情を乗り越えていこうって言ったのは犬塚じゃないの?」
「それは…確かにそうなんだが…」
「それとも私より蓮季さんのほうが良くなった?
あんなにがっついていたものね。」
「いや、あ、アレはそういうのじゃ…っえ?」
なんでそれを…
まさかシャルが全部ばらして…
「ふふっ、なんてね。」
「は?」
「私ね、昨日の夜全部知っちゃったのよ。
ペルちゃんの秘密。」
「それって、隠し部屋の…」
「えぇ、そうよ。
まったく、あの子ったら昔から隠し事するのが下手なんだから。
あ、その時見たのは私の盗撮写真だけよ。
でも昨日の夜に何があったのか見るために昼休みに戻ったら1枚だけ写真が増えてたわ。
何よりも衝撃的な写真が。」
「あれは、その、オレが蓮季を信用して、それでペルシアとのことを全部話しちまって…」
「知ってる。
シャルちゃんがね。全部日記に書いててくれたの。
だから、犬塚が致し方なくやったことなのは知ってるわ。」
「日記?」
「えぇ、犬塚が隠し部屋を見つけてからの犬塚の観察日記。」
「あいつ、そんなものを作ってたのか…」
「でも良かったわ。
そのおかげで犬塚をミンチにしないですんだわ。」
「……確かに仕方ない状況ではあった。
でもだからと言ってオレのしたことが許されるとは思ってねぇ。」
「当たり前でしょ!!!
どんな理由があったとしても好きな人が他の女の胸を舐めてるのよ!?
辛いし悲しいし憎いし嫌だし酷い最低バカむっつりスケベ!!」
「………すまねぇ。」
「だから……ね。
犬塚も………
……私に怒っていいんだよ。」
「え? 何言って…」
「私はこれからこの状況を変えるために行動するわ。」
「待て、ペルシアがシャルの秘密を知っているとばれたら
シャルを止めるものが無くなっちまう。」
「そこまで含めて上手くやるわ。
貴方と約束したでしょ? "世界を変える"って
だったら友達の気持ち一つ変えられずにどうするのよ。」
ペルシアははにかんだ。
とても悲しげに。
「だから…ね。
犬塚は私を恨んでいい、憎んでいい、憐れんでいい。
その代わり、私のわがままを1つ聞いて欲しいの。
私がすることの全部、見ていて欲しいの。」
☆シャルトリュー
夢を見ていた。
なんともない普通の夢だ。
ただペルちゃんと私が遊んでいるだけの夢。
そこには邪魔者はいない夢。
私とペルちゃんが友達として過ごしている夢。
だが、ふと重苦しさを覚えた。
それを機会に意識が覚醒していく。
「シャルちゃん。」
呼ばれた気がした。
「シャルちゃん?」
紛れもないペルちゃんの声だった。
「どう…したの、こんな夜遅くに…」
徐々にぼやけていた視界が線を結び始める。
同時にそれは驚愕と、少し遅れて興奮を呼び起こした。
「シャルちゃん…イケないこと、しましょう?」
はだけた寝間着を纏い、私に馬乗りになったペルちゃんが言った。
このシリーズで初めて感想もらえて感動しています。
頑張ってこのペースで書いていきますね。
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次回:第4幕 ジュリエット×シャルトリュー 後編