リアスとひと眠りした後、
予定時刻5分前にグレモリー本邸ロビーへオカ研全員が集合する
最初にロビー来たのは意外にも俺とリアスだった
その後すぐ木場と小猫ちゃんが来た
「おはよう、昨日はよく寝られたかしら?」
「おはようございます、部長、イッセー先輩。はい、おかげさまでゆっくり休ませていただきました」
「部長おはようございます……。イッセー君もおはよう。はい、ゆっくり休めました」
「おはよ、二人とも」
挨拶した後すぐ朱乃とアーシアがやってくる
「おはようございますわ、部長、イッセー君、木場君、子猫ちゃん……」
「おはようございますっ!みなさんっ!うっ……ううううううっ!イッセーさぁんっ」
挨拶もそこそこにアーシアが泣きながら抱きついてくる
「どっ、どうしたっ?アーシアっ?なんかあったのかっ」
「ううぅ……、イッセーさん……イッセーさん……イッセーさん…………えへへ……」
スリスリスリスリ……
アーシアが俺に抱きつき胸に顔を擦りつけ甘えてくる
「昨日の夜アーシアちゃん何度も飛び起きて、部屋を見渡してイッセー君を探してたわ……」
アーシア……そんなに寂しかったのか
「そ、そうか……。ありがとう朱乃……。アーシアと一緒に寝てもらって助かった……」
「うふふ……、どういたしまして」
「アーシア……?大丈夫だよ。俺はここにいるよ……」
アーシアの頭を撫でながらなだめる
「はいっ……えへへ……イッセーさん……」
「私ね……、今すごくアーシアが羨ましいわ……」
「あら、私なんていつもアーシアちゃんとあなたが羨ましくてたまらないわよ?リアス……」
「うぅ……、私、今日の夜一人で寝るのが不安になって来たわ……」
「うふふ、今日は私の番よ……?」
「ええ、わかってるわ……。みんなで決めたルールですもの。我慢、するわ……」
などと話しながら俺たちは合宿所へ歩き出す
荷物は昨日のうちにリアスのお家の人が合宿所である別荘へ届けてくれているらしい
三人共俺への依存がすごい事になってるよ!
これじゃうっかり怪我なんてできないぞ……
≪ククク、もっと修行をして強くなれ、という事だ。相棒≫
おう!そうだな!今日の修行も頼むぜ!ドライグ!
≪応!任せろ相棒!今日は以前頼まれた魔力察知の技と敵の強さを測る技の総仕上げだぞ!気合を入れて行くぞ!≫
お、マジか!やっとだな!これで敵が迫ってきてもすぐ対応できるな!
≪ククク……!技が仕上がれば、一つ新しい技をお前に授けてやる……≫
マジかよ!?ドライグ直伝か!心強すぎるぜ!
≪ああ、だが、修行はこれまでよりもさらに厳しいものになるが、構わないな?≫
やったぜ!もちろんだ!それが使えるようになれば今よりもっと強くなれるんだろ?
≪同格相手ならまず間違いなく相手の攻撃を無力化させる事が出来る技だ、
つまり相棒が強ければ強いほど勝利を確実なものにできる技だ……≫
な……!?相手の攻撃を無力化!?おい……それって……!≫
≪そうだ、敵の戦力をほぼ全て無力化できる技だ。魔法や魔力砲などの遠距離攻撃も修練次第で無力化可能だ≫
な……!?そ……そんなすげぇ技があるのか!
≪もちろん例外はあるがな……「パリィングスタンス」という技の修行を今日から始めるぞ≫
≪敵とまったく同じ威力の攻撃を敵の攻撃に合わせ、敵の攻撃にぶつけはじく事で、相手の攻撃を相殺して威力を0にする技だ≫
≪敵の攻撃をはじき無力化し、、攻撃をはじかれた相手は体勢を崩す、体勢が崩れた相手は無防備だ、そこに攻撃をするわけだ≫
えっ……?で、でも体勢が崩れたからって、鎧とか着てたら致命傷にはならないだろ……、無力化、ではないよな?それって……
≪ククク、それにこれは相手にダメージを与えるのが目的の技ではないさ≫
≪この技の最大の利点は敵の攻撃を無効化しながら敵の武器破壊と防具を破壊ができるという事だ
もちろんカウンターで相手の急所を狙うきっかけにも使えるがな≫
≪自覚がないのだろうが、お前の拳はこの世界の大抵の物を打ち砕ける程なのだぞ。
……例外はあるがな≫
マジかよ……俺、ちゃんと強くなってたんだな……
≪間違いなく強くはなっている、安心しろ≫
ああ……!
グッと拳を握り締める
≪ま、封印前の俺には遠く及ばんがな≫
あ、やっぱり……?
≪ハハハハ!百年や二百年修行した程度で俺を超えられるものかよ……!最低でも後一万年は修行してからだな!≫
わかった、一万年だな……?いつか追いついて、追い抜いてやるからな!
≪ククク!ああ……。楽しみだ……。もっと頑張れ相棒!≫
おう!
そんなことを話していると合宿期間を過ごす別荘に着く
別荘の中でトレーニングウェアに着替え別荘前に集合する
俺たちが集合して着替えをしている途中でティアも合流する
「さあ、修行をはじめましょうか!」
「「「「「はいっ」」」」」
≪……リアス・グレモリーよ、修行を始める前に頼みがある≫
「あら?ドライグが話しかけてくるなんてめずらしいわね?何かしら?」
≪相棒を転生させる時に神器にかけた封印を解いてやってくれんか?
相棒はもう十分に強い肉体を持っている、封印を解いたとしても俺の力を受け止められるはずだ≫
木場と小猫ちゃんの顔が真っ青になる
「……気が付いていたのね?」
≪当然だ≫
「そう……、あなたが大丈夫だと言うのなら大丈夫なんでしょう。わかったわ」
「え……ちょ……。ぶ、部長……?あの……、イッセー君って……今まで封印されてた状態なんですか……」
「……想像が追いつかなくなってきました……」
「……封印って、リアス……。イッセー君を封印なんてしてたの……?」
「イッセーを転生させる時、神器の力が凄すぎて悪魔に転生させる際イッセーの体が耐えられそうになかったのよ。
まして、イッセーは堕天使からの攻撃で瀕死の状態だったしね……。駒一つ一つに封印をしてなんとか転生させたの……」
「駒一つ封印をするのに一時間以上かかったのよ?8つ封印して転生させるのに一晩かかったわ……」
そんなことがあったのか……。
手間のかかる男でごめんよ!リアス!
「フフフ!面白い!そうでなくてはな!さすがだイッセー!やはり今代の赤龍帝は面白過すぎる!ハハハハハ!」
「でも、一度に封印を全て解除したら、さすがに体への負担が凄まじいでしょうから、2つずつ解除しましょうか」
≪ああ、それで構わない。相棒なら十分耐えられるはずだ。頃合いを見はからって残りの封印を解除していってやってくれ≫
「ええ、わかったわ」
「なんか、僕……、バトルアニメで敵に「俺はあと二回の変身を残している……」
って言われた主人公の気持ちがわかるよ……。今日解除される分をのぞいてイッセー君は三回だけど……」
「なんか、凄すぎてゾッとすらしなくなりました、私……」
「うふふ……、私の旦那様は日々前進していく人だわ……」
「はいっ!イッセーさんはがんばりやさんですっ」
「ふふふっ、本当にそうね!アーシアちゃん!」
「はいっ」
いやぁ……これは俺の努力で手に入る力じゃないし、
俺の力じゃないもので俺を褒められてもリアクションに困るよ……朱乃、アーシア……
これはドライグの力がすごいって話だからさ……
≪ふっ、まったくお前と言うやつは、珍しい奴だ……≫
……珍しい?
≪そうだ、珍しいんだ、お前は。俺は今まで様々な宿主に宿ってきた。
その宿主の中には「赤龍帝の籠手」の力を自分の力と思い違いをして力に振り回される者が多くいた≫
≪「赤龍帝の籠手」は莫大なエネルギーを生む神器だ。
その力に魅せられ、力に踊らされ……「神器を使う」ではなく「神器に使われる」者を何人も見てきた≫
≪神器は精神と肉体、共に強くなくては力を引き出せない。
神器の力を過信し、己を高める事をせず力に飲み込まれ神器の強大な力に耐えきれずに破滅する愚か者を数えきれないほど見てきた……≫
だって、事実だろ。
すごいのはドライグであって、俺じゃないからなぁ……
≪それを思い違いする者が絶えない程の力なんだ。力をなまじ使えるとな力に酔ってしまうんだ≫
修行しないで使えてたって……凄いなその人達……
その人達はきっと戦いに向いてたんだろうな……。それか戦いが好きだったとか……
≪ああ、そうだな。相棒とは比べ物にならんほど、才能に恵まれ、一時はアルビオン、いや白龍皇を圧倒するほどの力を得た者もいた。
結果、力に酔い、飲み込まれ最後には破滅したがな……≫
強くはなりたいけど、破滅は嫌だなぁ
リアスも朱乃もアーシアも絶対泣いちゃうぞ……
≪……ひとつ問おう。相棒は戦う事は好きか?嫌いか?≫
……俺は別に戦う事が好きなわけじゃない。どっちかって言うと嫌いだ
強くなるのだって、自分の大事なものを傷つけられたくないから必死になってるだけだ
≪フッ……!お前は戦いの才能が無くて逆に良かったんだと思うよ、俺は≫
≪相棒。お前は戦いの才能が無い、これまでの「赤龍帝」の誰よりも、な……。
しかし、俺は今代の赤龍帝がお前でよかったと思っている≫
……ハハハ、才能が無くてよかった、か
……全く褒められてる気がしないんだけど
≪最高の賛辞だ。……ソフィアの近くにいる者が力に溺れる者であったらと思うとゾっとするぞ、俺は≫
あぁ……、そりゃ嫌だろうな……
アーシアは優しすぎるくらい優しいから、きっと俺以上に戦いに向いてない……
俺はできる事ならアーシアを戦場にいさせたくないよ
そんな事を話しているうちに、リアスが俺に施した封印を解いてくれていた
別段何か変わったということはなく、本当に何かが封印されていたのか疑問を感じるくらい変化がない……
≪ああ、これで、相棒の修行で使える新しい技も増えたぞ≫
……どんな技が増えたんだ?
≪修行場で「影」を使えるようになったぞ≫
影……
≪影は、相棒の能力を複製して、影を作り出すという能力だ≫
俺の能力をコピー……?
≪これからは、前日の相棒を複製した影を相手に組み手ができるぞ≫
おぉ、そりゃなんかすごそうだ。回避や攻撃の修行の時にだしてもらう幻影とは違うんだな
≪幻影は相棒の動きや強さなどもっていないからな。あれは決められた動きを繰り返すだけのものだ
≪相棒の思考、戦闘パターン、癖、攻撃速度、攻撃力……あらゆる情報を複製出来るのだ≫
へぇ、そりゃ面白いな……
≪自分と戦う事で見えてくる弱点や癖もあるからな……。いい訓練になるのだ≫
なるほどな、その幻影があれば俺のダメな所がよくわかりそうだ
≪ああ、よくわかると思うぞ、応用で俺がこれまで蓄積した達人の情報を元に影を作りだす事ができる≫
いろんな達人と戦えるのはありがたい!戦闘経験が絶対的に不足してる俺にはうってつけだ
≪ああ、まずは自分の影と手合わせをして、自分の足りない所を理解し補え。
去年より今年……。昨日より今日。過去の自分より今の自分が優れていないなどあってはならん。
自分の力を知るいい目安になるだろう。……もし、影に負けたら走り込みからやり直しだからな≫
おう!過去の自分に負けてちゃ笑い話にもなんねえからな!
リアス、朱乃、アーシア、ティア達の魔法戦闘組と俺、木場、小猫ちゃんの近接戦闘組の二手に分かれて修行をすることにした
俺が修行を始めれば修行場に入ってしまうため、先に二人の修行に付き合う事になった
「じゃあ、始めようか。準備はいいよな?二人とも」
「うん。いつでも大丈夫だよ、イッセー君」
「……はいっ」
「じゃあ、まずは俺と手合わせしてみようか」
「えっ……!?イッセー君と……!?」
「……え……」
「ああ、ドライグがまず二人がどのくらいの強さなのか知りたいんだって」
≪木場、と小猫だったか……?≫
「はいっ」
「……はいっ」
≪うむ、相棒とまずは一体一で戦ってみせよ。その内容をみて修行の内容を考えようと思う≫
「あの、僕はイッセー君と同じ修行内容でお願いしたいんですが……」
≪……相棒と同じ修行だと?昨日あれしきの荷物を持った程度でへたばっていたお前が……?≫
「うっ……」
「まあまあ、ドライグ。木場にちょっとだけあれかけてみて、その様子を見てからでもいいじゃん?
木場も男だし耐えれるかもしれないしさ?」
≪ふうむ……、では、木場よ?今から負荷をかけるぞ、覚悟はいいか?≫
「負荷……?……はいっ!よろしくお願いします!」
「……っ!なっ……!?これ……っ!くっ…………!
はぁっ……!はぁっ…………!何……ですかっ……これは……っ!体が、重いっ……!」
重力がかかったのか、木場が四つん這いになりながら、重力に耐える
木場の額からボタボタと大粒の汗が流れ始める。四つん這いの状態でいる事すら辛そうだ
≪木場よ、今お前に10倍の負荷をかけた。その状態で走る事が出来るか?≫
「は……走る……っ!?こっ……、この状態でですかっ……!?」
≪そうだ、まずは走り込みからだからな≫
四つん這いの状態で木場の体がブルブルと震えだす
「……おい、木場?お前顔真っ青だぞ、大丈夫か……」
「祐斗先輩っ!?」
小猫ちゃんが心配そうな顔で駆け寄り、背中をさする
「くっ……これ、は……っ!立ち上がれない……っ……くっ……」
「ドライグ?そろそろ止めてやってくれ……限界っぽいぞ」
≪うむ≫
「っ!はぁっ……!はぁっ……!これは……きつい……ね……」
「祐斗先輩……大丈夫ですか……」
≪……だから言ったのだ……、まずは手合わせをして、その内容で修行の内容を考えると……≫
「木場も同じ男だからさ……、耐えられるんじゃないかなって思ったんだが……」
≪いや、相棒が異常なんだ。これが普通の反応だ……。普通は耐えれんよ……≫
「そうかな……。これが修行ってもんだって思ってたしなぁ。それにドライグは俺が耐えられると思ってかけたんだと思ってたし……」
≪俺はお前がすぐに音を上げると思ってたんだ、あの時……。まさかそのまま走り始めるなんて思いもしなかったぞ……≫
「そりゃもう死にたくないからな。必死にもなるさ」
「こ、こんなきつい修行を、イッセー君はしてたんですか……?」
≪相棒が修行を始めた時は……。確か10倍で10㎞を500往復させたな?≫
「ああ、そうだな。なんか懐かしいな……」
二人が顔を青ざめ、いやいやをするように顔を振っていた
「あの状態で10㎞を500往復っ!?……イッセー君。君は一体………」
「……イッセー先輩が強い理由がわかった気がします……」
「……僕もだよ、小猫ちゃん……」
「イッセー君……、君を、支えていたものはなんだい……?どうしてそこまで頑張れたんだい……?」
「……俺が堕天使にやられて、瀕死の所をリアスに命を救われたのは知ってるよな?」
「うん、それは聞いたよ、入部の時に……」
「はい……」
「入部の時にも言ったと思うけど、俺は俺の家族とリアスを守りたかった。それだけだよ」
≪相棒はいつも「リアスを守るんだ!」とそればかりだぞ。俺にボロボロにされるたびにそう言って立ち上がって来るぞ……≫
「あれっ?ちょっとドライグさん!?最近は朱乃とアーシアも守るって俺言ってるよね!?」
「ハハハ……。君は、本当に部長の事が好きだね……」
「……イッセー先輩?私は入ってないんですか?それ……」
「えっ?いやっ?もちろん小猫ちゃんも大事だよ!小猫ちゃんも俺の宝だよ!」
「……ふふっ、よかったです……」
≪さて、相棒と手合わせをしてもらおうか?≫
二人がこれから始める修行に向けて覚悟を決めた表情になる
リアスの眷属悪魔になって二週間くらいが経つ、最近わかった事がある
リアスの眷属は昔色々あって、リアスに救われた者が集まった感じだと朱乃から聞いた
朱乃も、木場も、小猫ちゃんも、そしてアーシアも……リアスに救われた
……例に漏れず俺もだ
だから、みんなリアスの為に頑張るし、必死になる
リアスの為に努力して、強くなろうとする
少々修行は厳しいかもしれないけど頑張ろうぜ!
みんなで強くなってリアスを守るんだ!
≪さて、とりあえず、修行を始める前に技量を見てみたい。相棒と手合わせをしてみろ。木場、小猫≫
「……はい!」
「はいっ……」
≪ああ、手合わせと言っても、手加減はいらんぞ、本気で、殺す気でやる事だ。
神器も使って構わん。お前の親の仇とでも思って殺す気で襲い掛かれ≫
「物騒な事を軽く言ってくれるぜ……」
≪何を言う、相棒にとってはいつもの事だろう?いつも死と隣り合わせの修行をしてるじゃないか≫
「まぁ、そうだけどさ」
「……まずは、僕から行かせてもらいます」
木場はそう言いながら、歩き出す
「一度……、君と戦ってみたかったんだ。どこまで自分が通用するのか……!」
「……お前って見た目はクールなのに結構熱いよなぁ……」
返事をしながら俺も歩き出す
「イッセー君は熱い見た目なのに、クールだよね……」
「そうか?結構感情的だと思うぜ?」
「それ、部長達に関係ある時だけだよね……」
「まあ、そうだけど……」
俺たちは向かい合い木場が神器で剣を作り出し、構える
「――――――行くよ!」
「……」
足元を構えの位置に移動させ、戦闘準備を整える
「……っ!空気が、変わったね……」
木場が持ち前のスピードを生かしジグザグに移動しながら接近してくる
一撃目の袈裟切りをかわし
瞬時に二度目の剣戟、逆袈裟を見切りかわしながら木場の後ろに回りこむ
「なっ!?」
俺は軽くポンと木場の背中を叩く
「まず、一回……」
「くっ!?」
木場が振り返った遠心力を利用し、大ぶりな横薙ぎで放ってくる
即時に反応しバックステップで回避する
「っ――――――!?早いっ!」
横なぎが振り終わった瞬間、瞬時に木場に接近しポン、と軽く胸に手を当てる
「2回……」
「……なぜ、攻撃してこないんだい?」
構えたまま木場が話しかけてくる
「修行を始める前に怪我をされちゃ困るさ」
「……ハハハ……!ちょっと、あの匙って人の気持ちがわかった気がするよ……!」
「……これが実戦なら今の十数秒の間にお前は二回死んでる……。この意味、お前ならわかるよな……?」
「……っ!くっ……!」
木場が悔しそうに剣を握り締め俯く
≪よし、それまでだ!相棒?次は小猫の相手をしてやってくれ≫
「……はい!ありがとう、イッセー君」
「わかった。お疲れ、木場」
「……はいっ……。よろしくお願いします……。……イッセー先輩?ドサクサに紛れておっぱい触らないでくださいね……?」
「あれっ!?俺小猫ちゃんにそういう風に見られてるのっ!?ショックなんだけど!」
「ふふっ、冗談ですよ……。じゃあ、いっぱいおっぱい触っていいですよ?……後で部長にいいつけますけど」
「それはダメっ!体触るのは不可抗力って事で何卒!小猫様っ!」
「ふふふっ。じゃあ……、二人だけの秘密って事で……」
小猫ちゃんが人差し指を口元にあてて「シー」のポーズをしながら可愛くウインクする
うーん!俺の後輩は可愛いな!
「ハハハ……。小猫ちゃんも明るくなったね……」
「まぁ……、イッセー先輩だったら……、別に……、いいですけど……」
「えっ?何?小猫ちゃん」
「ふふっ、なんでもないですよー。……いきますっ……」
「……」
「っ……!目つきが……変わりましたね……。戦闘状態入ると……ホント空気変わりますね……、イッセー先輩って……」
「……僕も、さっき飲まれそうになったよ……」
手合わせ開始となり、俺が戦闘状態にはいった緊張感が小猫ちゃんに伝わったようだ
小猫ちゃんがジリジリと間合いを取りながら俺の右側に回りこもうとする
「……っ、手汗が凄いです、今……。相手に接近するのがこんなに怖いの初めてです……」
「……っ……!」
真っ直ぐに走り込んできた小猫ちゃんがお手本のような綺麗なフォームで拳打を放ってくる
ワンツー ワンツー 回し蹴り……
よし、ここだ
ガッ
回し蹴りを手で受け止め足首を持って持ちあげると、小猫ちゃんが体制を崩して尻もちをついて転ぶ
ドッ
「あっ……!?」
ポン……
「はい、一回……」
小猫ちゃんの頭に手を置き、宣言する
「うぅぅ……」
小猫ちゃんが俯き悔しそうにうめき声をあげる
≪よし、そこまでだ≫
「よし、終わりだ。立てる?小猫ちゃん……」
手を差し出し、小猫ちゃんを起こす
「……はいっ……」
≪よし、ご苦労だった……。ふうむ。やはりありありと体力不足が見て取れるな……≫
「体力不足……?あの、僕は全然息なんてあがってませんでしたけど……」
「私もです……」
≪基礎体力作りが不十分だとな、無意識に体力を温存しようとする、それが動きの鈍さにつながる。
基礎体力作りをして体力の最大値を上げるのが最優先だな、やはり……≫
≪今お前たち二人の動きを見たが、はっきり言って鈍い……。このまま戦場に出れば死ぬぞお前たち……≫
「……やはり、力不足ですか」
「……頑張ります」
≪技術も修練不足なのはある。その技術を積むにしても体力は必要だ。体力の底上げを行えば修行の時間を増やす事も出来るからな≫
≪……やはり、二人とも基礎体力作りからやらねばならんな……≫
「……よろしくおねがいします!」
「お願いします……!」
≪相棒のように修行場が使えれば話は別だが、修行場は相棒以外には入る事ができないのでな≫
≪体力は日々の積み重ねによって積み上げられるものだ。
まずはこれから毎日朝夕に10㎞の走り込みを2往復しろ。まずそれで体を慣らせ。当面の目標は2往復した後息を切らしていないことだ。
休憩は10㎞走り終わった後5分取る事を許可する。それができ次第次の段階だ≫
「朝夕で合計80㎞……僕が毎朝走ってる距離の4倍だ……。はい……!わかりました!」
「はいっ……」
「あ、あの……。もしかしてイッセー君が修行する時は……、これ以上のハードな修行を毎日やってたんですか?」
≪……やってないと思うか?このドMが……≫
「ドMとかいうのやめてくれるっ!?」
≪……あのな?相棒。俺に「これから修行をさらに厳しくするぞ!」と言われて「やったぜ!」などと言うやつは世間じゃ「ドM」と言うのだぞ?≫
「……それは……ドMって言いますね……」
「間違いないですね……」
「ちょっ!それは「向上心がある」と言ってほしい!てか、俺の事そんな風に思ってたの!?ドライグ!」
≪ククク!冗談だ、相棒……!ハハハハハ!≫
「ハハハ!わかってるよ!イッセー君っ……」
「ふふふっ!もう、イッセー先輩と一緒にいたら笑ってばかりですよ、私っ……ふふふっ!」
「……たまにドライグって不意打ちでこういうネタぶっこんでくるんだよなぁ……」
四人で笑いあう
≪さて、体力作りは日ごろの鍛錬によって培うとして、だ。相棒の回避技術について学ぶのであったな?≫
「はいっ!お願いします!」
「お願いします……」
≪戦闘において特に注視すべきなのが、相手の得物、武器だ。相手がどのような武器で攻撃してきているのか、
その武器の攻撃許容範囲はどれほどなのか、これを瞬時に見極め適切な回避を行う≫
≪視野を広げて相手を含めた周りの状況を確認しながら戦え。武器を持っていたとしても、必ず武器で攻撃をしてくるとも限らん。
攻撃してきた瞬間、その攻撃が武器なのか、素手なのか、それとも魔法なのか、その攻撃を体のどの部位で繰り出してきているのかを瞬時に見極め適切な回避を行え≫
≪武器を使っての近接攻撃にも種類がいくつもある、これは流派によって微妙に違うが、大体は同じだ。木場は剣士だそうだな?これはお前のほうが詳しいだろう?≫
「はい。3年……名のある剣士の方に剣術の修行をつけてもらいました」
≪拳や蹴りと言った体術にしてもそうだ。いくつもの攻撃パターンはあるだろう?小猫よ≫
「はい……」
≪修練をすると同時に様々な戦闘スタイルの攻撃方法を学ぶ必要がある。これは各自自習をして学ぶようにな≫
≪さて、相棒頼めるか?恐らく説明しながらのほうがわかりやすかろう≫
「わかった。じゃあ、木場?俺が今からお前にゆっくり拳を繰り出す、それをかわしてくれ」
「……?う、うん。わかったよ」
俺がゆっくり拳を突き出す
すると木場が難なくかわす
「これで、いいかい?」
「ああ、それでいい。じゃあ、次はもう少し早めで繰り出すからかわしてくれ」
「うん……?」
さっきより少し早めの拳を木場に繰り出す
「────と。これでいいかい?」
さっきより少し早めに木場が回避行動をする
「ああ、それでいい。今自分がどれだけの事をしたかわかるか?」
「え、イッセー君の、拳が左から来たから右に避けたけど……」
「そうだな。それを高速化するとしたら、現状でどこまで出来ると思う?」
「え、高速化……?どこまでって……」
「わかりやすくいうとさ、現時点での木場の回避速度が8だとするだろ?」
「うん」
「自分の行動をリファインして、無駄な動きを除外して最適化していくんだ。
今8で動けているなら次は9で動けるようにする。その次は10の動きができるようにするって感じでさ」
「今のだと、拳5つ分も大きく避けただろう?」
「うん」
「それを4つ分にしたらどうかな?一つ分回避する時間が短くなって攻撃に移る時間が増えるだろう?」
「あ……、そうか……」
「あ……」
「時間にしたらほんの一瞬の話だけどさ、その一瞬が多くとれるかどうかって、結構大事なのは二人ならわかるよな?」
「仮に、拳一つ分までかわす距離を減らせたら……、大分自分の攻撃ターンが増えると思わないか?」
「……そうだね……!」
「……なるほど……」
「フィクションでよくある「敵の攻撃を紙一重で避ける」ってやつですね……。あんなのフィクションの中だけだと思ってました……」
「うん、まぁ。紙一重までギリギリだと、剣圧とかでケガしそうだから実際の戦闘ではなかなかないだろうけどね……」
「俺が木場とやった時さ?木場は俺の動きを「早い!」って言ってただろう?」
「うん、すごく早かったよ」
「実際はあの時の俺とお前の動きの速さはそんなに変わらないんだ」
「えっ!?……だってすごく早かったよ……!?」
「無駄な動きを省いてるから、次の動作に移るのを短縮してる分、早く感じただけだよ」
「……え……?だって……そんな……」
≪この修行に終わりはない。一生洗練し高めていく修行の一つだ≫
「さっき、ドライグが言ってたけど。こう攻撃したら……、この相手の攻撃が何か、
武器なのか素手なのか。攻撃のリーチはどれほどなのか……それらを瞬時に判断して最速で最短の行動をする」
「理屈は……、理解できたよ。……でも具体的にはどんな訓練方法をすればいいんだろう?」
「俺の時はドライグが専用の幻影を出してくれてたんだ」
「幻影……?」
「ドライグ?あれって外でもできる技か?」
≪ああ、今出す、少し待て≫
ブオン……!
ドライグが赤く輝く人型の幻影を作り出し木場のと小猫ちゃんの前に出現する
≪その幻影の攻撃をかわし切ってみせよ。一度当たる事に走り込み10㎞追加だ。
一時間ごとに5分停止するようにしてある、その時に休憩を取れ。
二人とも今日から回避の修行だ。それが終わったら、夕方の走り込みだぞ!≫
「はいっ!」
「はい……!」
≪相棒と修行を始める前にひとつ助言を残してやろう……。
戦いにおいて一瞬たりとも気を抜くな。自分と自分の大事なものに刃を向けた瞬間、そいつは敵だ。
女だろうが子供だろうが容赦なく殺し尽くせ≫
「……っ。それは……」
「……っ」
小猫ちゃんがドライグの言葉を聞き体を震わせる
「……木場は、苦手そうだな……」
「……そうだね。でもそれはイッセー君もじゃない?」
「……俺は俺の大事なものを傷つける敵なら、女子供でも容赦なく殺せるぞ?リアスの為に必要ならエグい拷問だってやるぞ?」
「……っ……」
「……意外でした……」
木場と小猫ちゃんが心底驚いた顔をする
「……そうでもないよ、小猫ちゃん。俺はこういう奴だ」
≪小猫よ?相棒が言っているのは戦場において当たり前のことだぞ。
……相棒やお前たちがこれから赴くのは「戦場」だ。
女だから、なんだ?傷つくのが嫌ならば戦場に出てこなければいい話だろう。
何度も言うが、自分や仲間に剣を向けた瞬間に「敵」だ。
敵は容赦なく殺し尽くせ。その甘さを持ち続ける限り仲間が危険に晒されると思え≫
大事なものが……、殺されてから後悔したんじゃ遅いんだ……
祭壇に横たわるアーシアの遺体がフラッシュバックする
グッと拳を握りこみ、そのイメージを必死にかき消す
「……っ」
「………」
二人がドライグと俺の言葉に絶句する
「……優しいイッセー先輩が……」
≪小猫、相棒は優しい奴だぞ。だがな?甘くはないのだ。
「優しい」という事と「甘い」という事を勘違いするなよ。
戦場において女子供だからと言って敵を殺すのをためらうのは甘いというのだ。それは決して優しさではない≫
ドライグのその言葉に小猫ちゃんはうつむいてしまう
「戦場で「眷属は王を守る」それが最優先の仕事だろ?リアスはただ仲良しこよしをするために俺たち「眷属悪魔」を集めたわけじゃないはずだ。
俺は仕事をするためにここにいる、それは木場も小猫ちゃんも同じだろう?」
小猫ちゃんには……、嫌われたかもしれないなぁ……
正直この考え方を全ての人から理解してもらえるとも、納得してもらえるとも、好いてもらえるとも思っちゃいない……
……俺は俺の宝を守る為なら、誰に嫌われても軽蔑されたって構わない
小猫ちゃんとも木場とも……できるなら仲良くしたいけど、な……
俺はもう自分の甘さのせいで誰かが傷つくのも、誰かが死ぬのも見たくないよ
「そうだね……。僕の、意識が甘かったみたいだ……」
「……理解、しました……」
「木場、小猫ちゃん……、覚悟、したほうがいいぜ、戦場に出る前にさ」
「……僕、よく考えてみるよ。騎士として、眷属として……、自分の在り方を……イッセー君……」
「はい……」
二人の顔つきが変わる
「さて、俺は修行してくるよ、二人も頑張ってな?」
「ああ!イッセー君も頑張って!
修行付き合ってくれてありがとう!」
「……はいっ!イッセー先輩っ頑張ってくださいっ!
修行ありがとうございましたっ……!」
いつのまにか、二人の顔つきがキリっと引き締まった顔になっていた
何か覚悟ができたみたいだな……
悪魔になって、人間だった頃の事を思い出す事がある
普通に、何事もなく平穏無事に過ごせていた日々……
俺の生まれたこの国、人間だった頃の俺の周りでは「戦い」というものは自分には関係のない事だった、
せいぜいニュースで紛争や戦争の話を聞くくらいだ
どこか遠い所で起こっている「戦争」というものがあるらしい事……、
戦いが、戦争が、殺し合いだって事は理解はしていたけれど、
それでも自分には関係ない事だって心のどこかで思ってた
知らない街で交通事故がありました。男性が何人亡くなりました
それと同レベルの無関係を感じてた
それが、堕天使の一件で俺の日常が……、平穏が奪われた……
悪魔になって、戦いってものを知って、戦場に身を置くようになって思い知らされた
今まで俺が平穏無事で生きていた世界が、どれだけ尊いものだったかを……
なぁ、ドライグ……
昔ドライグが現役ドラゴンだった頃さ……、ソフィアさんと一緒に暮らしてた頃……
天使も堕天使も悪魔もドラゴンも喧嘩しない時代があったんだろう?
俺はそんな平和な時代に憧れるよ