※この作品はR-18です。

赤い龍と龍の巫女   作:ローランシア

26 / 36
024 親と子

バラキエルさんと連絡を取る為、俺と朱乃は控室を出てからスタジアムの出口に向かっていた

スタジアム内は悪魔用スマホが使用できないように妨害魔力が働いているため使えない

 

スタジアムの出口に向かっている途中、

自販機コーナーに設置された長椅子に座っているグレイフィア様を見つける

 

缶のミルクティーを片手に肩を落とすグレイフィア様

顔を伏せながらをブルブルと震わせうなだれていた。

どう見ても体調がよくなさそうだ

 

「あれ……?グレイフィア様……?大丈夫ですか?」

「グレイフィア様?どうかなさいました?お顔の色が優れませんわ……。ご気分でも……」

「ぁ……兵藤様……、姫島様……。ゲーム、お疲れ様でした……。はい……大丈夫です……私は……元……気……です、よ……」

 

グレイフィア様がプルプルと震えながら顔をゆっくりと上げ俺たちを見る

グレイフィア様の顔が全て見える事で、より体調が悪いという事が明白になる

 

「うわっ!?本当にどうなさったんですか!?顔が真っ青でものすごいやつれてますよ!?唇が紫に……!」

「い、イッセー君っ?救急車呼んだほうがいいんじゃない!?グレイフィア様が今にも倒れそうよっ!」

「そっ、そうだな!救急車だ!今救急車呼びますからねっ!グレイフィア様っ!」

「いっ、いえ……!大丈夫です……!本当に、大丈夫ですからっ……!

……サーゼクス様の……、……魔王の女王がこんな事で救急車で運ばれては恥ずかしすぎます……」

 

グレイフィア様がプルプルと震えながらストップのポーズをして救急車を呼ぼうとする俺たちを止める

 

……ていうか、グレイフィア様ってサーゼクス義兄さんの女王だったんだ

 

「……ですが……グレイフィア様……」

「本当に、大丈夫です……ありがとうございます、兵藤様……姫島様……」

「な、何があったんですの?グレイフィア様……」

「……今日のゲームのゲームフィールドを構築したのは私なのですが。

兵藤様の解放した魔力の圧がゲームフィールド内のオブジェクトが崩壊するほど凄かったんです……」

「それで、試合中にゲームフィールドが崩壊しないように、オブジェクトの形を保つため魔力を送り続けてまして……。

……情けないですが……ごらんの有様です……」

「ええ……」

「兵藤様を中心に出現していた力場周辺だけは形成を保つことが無理でした……」

 

あー……たしかに、魔力の影響で体育館とか天井に穴があいてたな……

 

「……イッセー君がティアマットさんに勝ったって話……、

納得していただけたみたいですね……。グレイフィア様……」

「ええ……、今日の試合で納得できました……驚きました、本当に……。

まさか、サーゼクス様の本気よりずっと強いだなんて思ってもいなくて……。

ゲームフィールドが崩壊しないように維持するだけで精いっぱいでした……。

正直に言いますと魔力維持が辛過ぎて終盤は気を失いかけてました……」

「……もうしわけありません、グレイフィア様……」

「いえ……!これは私の修行不足が悪いのです!兵藤様は何も悪くありませんよ……!

今日のゲームで自分の力の足りなさを痛感しました……。ティアマット先生の修行に今度から参加させていただくつもりです……」

「それは楽しみですわ……。魔法戦闘分野で冥界の首位争いをセラフォルー様としていたグレイフィア様が参加してくださるなんて……」

「ええ、これからよろしくお願いします。姫島様……。」

「うふふ、こちらこそよろしくお願いしますわ……」

「ところで兵藤様と姫島様はどこかお出かけになられるんですか?」

「あっ?そうだわ、父様の事忘れてたわ。グレイフィア様?

今から私の父と話し合いに行かなければいけませんので、これで失礼します……」

「失礼します、グレイフィア様……」

「あ……、兵藤様?一つお願いがあるのですが……」

「はい?なんでしょう?」

「私の事はこれからグレイフィア、と呼び捨ててください……、もちろん敬語も必要ありません。

今日の実力を見た後で様付けされると自分が情けなさすぎて辛いです……」

「あ……では「グレイフィアさん」とお呼びしていいですか、呼び捨てはさすがに難しいので……。

敬語も……一応崩すくらいで許していただけると嬉しいです……。やっぱり目上の方ですし……」

 

苦笑いでごまかしながら勘弁してもらう事にする

どう見ても年上で目上の方にタメ口の呼び捨ては世間体悪すぎるし……

リアスと朱乃なら、年が一つしか変わらないし、恋人でもあるわけだからまだまかり通るだろうけど……

しかもサーゼクス義兄さん……魔王様の女王ならなおさら敬意を払うべきだと思うし……

最低限くらいのラインで許してもらおう……。

 

 

「……ええ、それで結構です、兵藤様。……お願いします」

「……わかりました、ではこれからはそう呼ばせていただきます。グレイフィアさん」

「ええ、よろしくお願いします……」

「じゃあ、俺達これから用がありますので、これで……。お大事に……、グレイフィアさん」

「お大事になさってください、グレイフィア様……。これで失礼いたします……」

 

俺たちは二人でグレイフィアさんに軽く会釈をした後、自販機コーナーを後にする

 

「……まさか、グレイフィアさんにまで敬語と敬称外してと言われるとは……。リアスの時と全く同じだ……」

「それはそうなるわよ……。イッセー君……。ゲームであれだけの実力を見せつけたんですもの……。以前リアスも同じ事を言ってたわ……」

「そういうものなのか……」

「うふふ……、イッセー君は自覚ないんでしょうけどそれだけ凄い事をしたのよ?今日。

父様も今日の試合を見て、イッセー君の強さが理解できたと思うわ」

「うん、それは認めてもらいたいね」

「うふふ、認めるしかないわよ……、あんなすごいの見せられたら……」

「……外に出たな、朱乃のスマホ使えるようになってる?」

「え……っと、うん、使えるようになってるわ。かけてみるわ」

 

朱乃がバラキエルさんに電話をかけ始める

 

「…………あっ、もしもし?父様?……ええ、私よ。……ええ、今スタジアムの前に出てきたのだけど……」

「……え?あぁ……、……ここは南口ゲートよ。え?……ええ、わかったわ。……じゃあ、ここで待ってるわね」

「……ここでいいって?」

「ええ。車で迎えに来るそうよ。……込み入った話をするから近くのホテルに部屋をとったらしいわ……」

「そうか。じゃあ、期待してよさそうだな」

「ええ、わざわざホテルに部屋まで取るとなると……」

 

数分待つと黒塗りのベンツがスタジアム入り口前で停まる

 

「……待たせたな、二人とも。乗りなさい、ホテルまで車で行こう」

「はい、父様」

「はい!」

 

俺たちは後部座席に二人で乗り込む

バラキエルさんは運転席に乗り込むと車を走らせ始めた

 

「……」

 

一言も言葉を発せず、黙々と運転を続けるバラキエルさんの様子に俺たちも無言でい続けるしかなかった

 

10分ほど車に揺られていると

 

「ふぅ……」

 

と深く息を吐き、一泊おいてバラキエルさんが口を開く

 

「……今日のゲーム……、見事だった。二人とも……」

 

たった一言、それだけ、それだけを告げるために10分もの時間を悩み、やっと、口に出せたのだろう

車のルームミラーに移るバラキエルさんの表情がとても複雑な表情をしていた

初めての事を不安に思い、どうすればいいのかわからないという苦悩の表情に見えた

 

ああ……、この人も、リアスのお父さんと同じく悩んでる

リアスのお父さんとは全然違う理由だけど、ある一点だけは同じものを感じた

それは「娘とどうやって接すればいいのか、わからない」という事だ

 

リアスのお父さんはよかれと思って結婚の話をリアスに用意したけれど、

それが裏目に出てしまって、リアスとすれ違ってしまった

 

バラキエルさんの立場になって考えてみる……、

大切な娘に恋人……、結婚をしたいという男が現れて驚きその男を拒絶しようとした

 

今朝、試合前にバラキエルさんと話した時は、俺の事をとにかく認めない、と言った雰囲気で、

どんな男なら関係を認めるのかと聞いても「君には関係ない」と突っぱねるという形で俺の存在そのものを認めなかった

しかし拒絶するために出した条件が今日のゲームの俺の様子を見てクリアされてしまったため、俺の存在を認めるしかないのだろう

 

けれど頭では理解出来ていてもまだ心の準備が出来ておらず、

俺の存在ををどう受け入れればいいのか、

俺たちの関係をどういう風に認めればいいのか、

どんな風に娘を祝福すればいいのかわからず

バラキエルさんにとっても「初めての事」で戸惑っているんじゃないだろうか

 

だからこそ、この一言を絞り出すのに10分もの時間がかかった……

 

仮にこう仮定した場合……

今の言葉を出すのに10分かかった事も、この難しい表情も理解できるものになる……

 

「……見ていてくださったのですね、父様……」

「はい!ありがとうございます!」

「……うん」

 

サーゼクスホテル冥界駅前本店前に到着する

 

「……車を停めてくる。二人はロビーで待っていなさい……」

「はい、父様」

「はい」

 

朱乃と二人でホテルのロビーの椅子に座り、バラキエルさんを待つ

 

バラキエルさんがチェックインを済ませ、部屋の鍵を片手に俺たちの元へやって来る

 

「……待たせたな。行こうか」

「……はい」

「はい」

 

部屋に三人で入り、バラキエルさんはアタッシュケースを机に置き

 

部屋に備え付けの机の上に置いてあるルームサービスのメニューを持ち俺たちに話かける

 

「何か、頼みなさい」

「はい」

「はい、父様」

 

朱乃と二人でメニューを決める

 

「ルームサービス頼みますわ。父様は?」

「私はコーヒーをブラックで頼む」

「わかりました」

 

朱乃がルームに備え付けのルームサービス用の電話を取りかけ始める

 

「……あ、もしもし?はい。コーヒーブラック一つ日本茶二つ……はい。お願いします」

 

俺たちは部屋に用意された応接スペースに座りルームサービスが届くのを待つ

俺の横に朱乃が座り、対面にバラキエルさんが座る

 

少し待った後ルームサービスが届けられ、一口飲み物を口に運んでから話始める

 

「……朱乃」

「はい、父様」

「今日の試合、見事だった……」

「……見ていてくださったんですね、ありがとうございます。父様」

「……その、なんだ……。朱乃は……、堕天使が嫌いだと思っていたのだが……」

「……ええ。嫌いでしたわ。自分に宿る堕天使の力も、自分自身も……大嫌いでしたわ……。

鏡が見れないくらいに……」

「今日の、相手の女王と王への攻撃……あれは……雷光の力……だと思うのだが……」

「……ええ、そうですわ。彼の、イッセー君のおかげで……私は私の事を見る事が出来るようになったのです……」

「……そうか」

「彼が言ってくれたんです。半分堕天使の朱乃も俺の好きな朱乃だって……。それでやっと……、自分の事を認める事が出来たんです」

「そうか……」

「父様……。私は今まで、自分の弱さが嫌いでした。大切な人が死にそうな時に何もできなかった自分が嫌いでした。

そして、その弱さを認める事も出来ず他の誰かの何かのせいにする卑怯な自分も……」

「……朱乃」

「けれど、やっと自分の事を認める事ができたのです。それはほかでもない彼の生き様を見ていた事に他なりません」

「……やはり、兵藤君、か」

 

バラキエルさんが確認するように俺の方を向く

 

「父様。彼が、ほんの一か月ほど前までただの人間だったと言ったら……信じますか?」

「な、何?人間?ただの……人間、とは……、つまり、異能の力など何ひとつもってなかったということか……?」

「……彼は堕天使に殺されかけリアスに悪魔に転生させてもらう直前、神器に目覚めたらしいですわ」

「何、堕天使……!?いや、それよりも……、一か月前はただの人間だったという事は……」

「堕天使の件は後でお話するとして……、彼は悪魔に転生してすぐ赤龍帝ドライグに修行をつけてもらったそうです」

「そこで、赤龍帝が出てくるのか……」

「彼は赤龍帝の力で一年を一時間にする修行場で10時間修行したと言っていました……」

「っ……!一時間を一年に……!?そんな、まさか……!」

「そして、日々もっともっとと高みを目指し鍛錬を怠っていません……。そんな彼の姿を近くで見ていて、私は自分が情けなく思いました……」

「……彼の体の傷痕を見るにどれだけ過酷な修行をしていたのか、想像もつきません」

「……おわかりですよね?ただの人間の転生悪魔があそこまでの力を有すまでに必要だった血と汗、努力の価値が……」

「うむ……。まさに、血を吐く修行だっただろう……」

「そして、私はそんな彼に憧れました。分不相応にも……。

自分の境遇を呪って現実から目を逸らしてばかりいた私が……、私が前を向く事が出来たのは彼のおかげです」

 

「彼に出会わなければ、今も私は自分の嫌な事から逃げて、目をそらしてみなかった事にしていたと思います。

もちろん……。今日この場で父様とお話する事もなかったと思います……」

「……だろうな、あの頃のお前は、とにかく目の前の事を受け入れられず、何かのせいにすることで心を保っていた……」

「ええ、だからこそ。私はこの人と一緒にこれからの未来を生きていきたいです。私を支えてくれた彼を今度は私が支えたいと考えております」

「……そうか。朱乃」

「はい、父様」

「大人になったな……。以前のお前は感情に流されて話が成り立たぬ事がよくあったものだ」

「うふふ、彼に大人にしてもらったのですわ」

「何ぃ!!!!!!!!!!!!!?」

 

ギロっとバラキエルさんが俺を睨む

 

いやいやいや!

朱乃!?その言い方は誤解を生むから!

せっかくいい調子で大人としての話が出来てたのに一瞬でこの人子供に戻っちゃったじゃん!?

感情に流されてるよ!君のお父さん!

ホント君とバラキエルさんってそっくりだよ!親子だなって思うよ!

 

「あらあら、父様?いけませんわ。お話を聞いてくださっていたじゃありませんか……」

「ぬ、ぬぅ……。すまん、つい……。そういう事に至る前に私に話をしにきたのであったな……。すまなかった兵藤君」

「いえ……」

「父様。私は彼しか考えられません。

どうか、私達の交際を認めてください」

「はぁ……。わかっておる……、そんな事は……。今日のゲームを見てから腹は決めてきている」

「父様!それじゃ!」

「朱乃が選んだ男だ、私も彼を信じよう」

「……ありがとうございます。バラキエルさん」

「父様!ありがとうございます!!」

「……。兵藤君?うちの娘を守ってやってくれるかね?」

「はい。この命尽きるまで朱乃さんを護り切ってみせます。バラキエルさん」

「うん……。うちの娘をよろしく頼みます……」

「はい……!こちらこそ、これからよろしくお願いします!」

 

バラキエルさんは深々と俺に頭を下げる

俺は立ち上がり、バラキエルさんに最敬礼で頭を下げる

 

「……兵藤君、これからは「バラキエルさん」ではなく「お義父さん」と呼びなさい。

君は朱乃と結婚するのだろう?娘の夫に「バラキエルさん」と他人行儀に呼ばれていては恰好がつかんよ」

「……はい、お義父さん。これからよろしくお願いします」

言い終わり俺は椅子こ腰を下ろす

 

「…………うん。……ふう……朱乃も、そんな男を連れてくる年になったのか……。

そう、か……。……もうそんな年月が過ぎたのだな……」

 

お義父さんは天井を見上げながら遠くを見るような目でつぶやく

 

「これは……話をしておくいい機会なのかもしれん……」

 

お義父さんは静かに顔を下げ前を向き瞑目し、何かを納得させる

 

「父様?お話って?」

「……朱乃。兵藤君。今から私が話す事をよく聞きなさい」

「はい、父様」

「はい。お義父さん」

 

「今から8年前……、朱乃の母「姫島朱璃」が殺されるに至った経緯について話そうと思う」

「っ……!父、様……」

 

朱乃が息をのみ顔を強張らせ、俺の服の袖を掴む

 

「……お前もいい年だ、真実を知っておくべきだと思ってな。

そして、新しく家族になる兵藤君にも知っておいてもらいたいのだ。我が家で過去何が起こったのか」

「……わかりました‥‥…。逃げずにきちんと聞かせていただきます。父様」

「うむ。兵藤君も、心して聞いてほしい。……私達親子に起こった事を」

「……はい!」

 

朱乃が俺の袖から手を離し、自分の膝の上に起き拳を握り締め、

必死にこれからお義父さんが話す事に向き合おうとする

 

……これは見守らなきゃいけない「不安」だ。

いつもみたいに、手を握って安心させるのが必ずしもいい事じゃないと思う

何でもかんでも手を差し伸べて助けるのは「守る」とは言わないはずだ

それをわかってるから朱乃は自分から袖を離し、必死に過去と向き合おうとしてる

 

頑張れ、朱乃

 

俺も、君の、君達親子の過去に向き合うから

 

朱乃も、頑張れ

 

「……兵藤君もいる事だ。最初から話したほうがいいだろうな」

「今から約20年前の事だ。堕天使の幹部候補だった私は、危険な任務に就かされる事が多くなっていた時期で、

ある任務中に瀕死の重傷を負った。その時、私を見つけ介抱してくれたのが朱乃の母「姫島朱璃」だ」

 

「私達は出会い、お互いに好き会うまで時間はかからなかった。しかし、私は堕天使、朱璃は人間、それも五大宗家「姫島」の娘だ。

そんな二人の関係は周囲から激しく反対された。堕天使のほうもそうだ、なぜ人間と結婚しなければいけないのだ?と当時は激しく反対された」

「私たちは周囲の反対を押し切り、私達は結ばれた

二人で姫島の家でささやかな暮らしをしながら私は堕天使としての仕事を全うしていった

そんな時だ、私達夫婦に宝ができたのは、朱乃が生まれたのだ」

「……知っての通り、朱乃が持つ異能の力は「雷光」だ。私の、堕天使の力を朱乃は受けついだ」

 

「……」

「……」

 

「姫島の家は代々「火」を司る家でね、火の力を持って生まれなかった朱乃と

火の力を持つ子供を宿せなかったとして朱璃は「姫島」の家の者から酷く虐められた」

「そんな朱乃と、朱璃の安全を得るために、堕天使領で身柄を保護しようとしたのだが……時期が悪かった……」

「幹部候補だった私を疎んじ貶めようとする堕天使たちが不穏な動きを見せている時期だった」

「堕天使領で住まわせる事でより危険に晒されると思った私は、二人を連れ人間界の駒王町に居を構えた」

「朱乃と朱里を連れ出す条件として、「姫島」の目の届く範囲で居を構えるという約束を交わさされた」

「人間界ならば、天使、堕天使、悪魔……3つの勢力がひしめき合い縄張りを守っているため少しは安全だと考えたからだ」

「しばらくの間、人間界で親子三人平穏に暮らし始めた。そんな時だ、不穏な情報が入って来たのは……」

「姫島の者達が堕天使と手を組み朱乃の抹殺を企てたという情報が耳にはいった。」

「えっ!?堕天使と!?」

「……そうだ。幹部候補だった私を貶めようとする堕天使の連中が私の家族を狙ったのだ」

「姫島の家の者からすれば裏切り者の朱璃、火の力を持たぬ朱乃の抹殺ができれば家の名を守れると考えたのだろうな」

「姫島の家の者が堕天使に私達の家を襲わせたのだ……」

 

「えっ!?だ、だって!あの日家に押し入ってきた人たちは姫島の家紋の入った着物を着ていたわよ!?」

「……自分たちの罪を姫島にかぶせるために化けたのだろうな。

お前も知っているだろう?堕天使の羽根が普段は隠しておける事は……」

「あとは、朱乃、お前の知っている通りだ……」

「私が駆け付けた後押し入ってきた堕天使と激しい戦闘になった、せめて朱乃だけでも安全な場所にと思い、外に逃がした」

「朱乃は逃げる途中運悪く刺客の一人に見つかったようだが、幸運にもグレモリーさんに救っていただけたのだ」

「……そう、だったの……今まで姫島の家の人たちだとばかり……。

でも姫島の家の人たちが堕天使と結託して抹殺しようとしたという事自体は……変わらないわ」

「ああ、そうだな……。悪魔の世界で有力な名家グレモリーさんが預かってくださるのならと、私も安心できたのだ……。

朱乃の命を救ってもらった恩もあったしな……」

「……もう、こんなの聞いたらリアスに頭上がらないじゃない……。

イッセー君の取り合いしてるときに手心がはいっちゃうわ……」

「何?グレモリーさんも、兵藤君の事を……、その……好きなのか?」

「ええ、もうゾッコンよ?私と同じくらいベタ惚れなんだから」

「……兵藤君?一つ聞かせてもらえるかね?」

「はい」

「朱乃とグレモリーさん。どっちが好きなのかね?」

「私は朱乃もリアスも二人とも好きです。俺の大切な宝です」

「いや、そういう事じゃなく……。あー、すまん、言い方を変えよう。どっちが正妻かね?」

「うふふ、私よ!だって、最初にイッセー君とキスしたの私だし!」

「そ、そうか。それなら安心だ!ハハハハハ!!」

「えっと、私には他にももう一人大切な嫁さんがいます。アーシアって言うんですけど」

「アーシア……?グレモリーさんの眷属の、ビショップの子かね?……妻が三人もいるのか君は……」

「ええ、私は悪魔なので嫁さん多くてもOKなんです」

「……皆が皆「私が一番だ」と主張しますし。俺も全員等しく愛してます」

「ああ、そうだろうな……。グレモリーさんも気が強い所があるから……、

君が朱乃を一番大事にしてくれているという事がわかって安心したよ」

「……兵藤君?普段どおり朱乃と話してる時のように話してくれてかまわないよ。

あと朱乃の事も「朱乃さん」ではなく普段どおり「朱乃」と呼びなさい」

「はい、わかりました。お義父さん」

「……朱乃?」

「はい、父様」

「彼で、よいのだな?」

「もちろんですわ。私は彼しか考えられませんわ」

「他に嫁が二人もいるそうだが……、本当に彼がいいのだな?彼はお前だけを愛しているわけではないのだぞ?」

「ええ。もちろん。私ががんばって彼の一番でい続ければいい話です」

「ふっ……まさか朱乃からこんな言葉が聞ける日が来るとはな……。強くなったものだ……」

「うふふ。これも彼のおかげですわ……」

「ああ、そのようだな……。よし、話は決まったな」

「……これから、よろしくお願いします、お義父さん」

「ああ。こちらこそ、よろしく頼むよ、一誠君」

 

お義父さんはコーヒーを一口含み、深く息を吐き立ち上がる

 

「朱乃、お前に渡す物がある」

「……渡したいもの?」

「朱璃が、お前宛てに書いた手紙だ」

「っ!?母様が……、どうして……」

「……この手紙を託される時、頼まれたのだ。朱乃の人生の節目に渡してやってくれとな……」

 

お義父さんは、もってきていたアタッシュケースからクリアファイルを一枚出し

応接スペースへ戻ってくる

 

「今日は、朱乃の初のゲームの日だ。レーティングゲームのアマの世界にも大人の悪魔は多くいる。

その大人に交じりゲームに参加するという事は「戦士」として……、一人前の大人として見られるという事だろう」

 

「これは、私がお前を一人の大人として認めたという証だ。受け取りなさい」

「……はい!父様……」

 

朱乃にクリアファイルを手渡す

 

「……………」

 

朱乃が静かに手紙を開け読み始める

 

俺とお義父さんは無言で飲み物を口に運んで間を繋いでいた

 

「うっ……おか……あ……さん……」

「…………」

「……朱里は、いつもお前の寝顔を見ながらいつもお前にすまないと謝っていた……。

「火の力をもって産んであげられなくてごめんなさい」と……」

 

「違うのに……お母さんは……悪く、ないっ……のにっ……」

 

朱乃は手で口元を抑えながら、ポタポタと手紙にしずくを落とし顔を伏せる

 

「……朱乃……おいで……」

 

朱乃が俺の言葉に体を寄せ胸に顔をうずめてくる

 

「うっ……うぅぅっ!!なんで…………なんで、かなぁ……イッセー君っ……!

ごめんっ……ごめんなさいっ……!私っ……」

 

「……言ったろ、朱乃。俺が朱乃を支えるって……」

 

落ち着くまで頭を撫ででなだめていた

 

「……ありがとう、兵藤君。私では……君のように素直に甘えられないだろう……」

「いえ……朱乃は俺の大事な宝ですから」

「そうだったな……。君にとっても宝だったな……」

「はい」

 

朱乃がひとしきり泣き終えるのを待ち、

朱乃が顔を上げられ手からお義父さんがし切りなおすかのように話を始める

 

「さて……、ここからは堕天使の幹部の一人として話を聞きたい。

先ほど聞き流した、兵藤君を殺そうとした堕天使の件を聞かせてもらえるだろうか?

堕天使の幹部として、聞き逃せない内容なのでね……」

「……主に確認をとってもいいでしょうか?事が事だけに事後処理などもしたようですので」

「ああ、構わない。機密に関わる事もあるかもしれん」

「では、少し席を離れます。……電話をかけてきます」

 

俺が立ち上がろうとすると、がっつり俺の服の袖を離さない朱乃に気が付く

 

「あ、朱乃?」

「イッセー君……私を置いてどこか行っちゃうの……?」

 

さっきの手紙の余韻が残って、寂しい気持ちなんだろうな……

 

「ああ、朱乃と二人で行ってきなさい。朱乃が聞いても構わないのだろう?」

お義父さんが苦笑いをしながら言う

 

「ええ、もちろん朱乃も事情は知ってます。わかりました、行ってきます」

「うむ」

 

俺は朱乃と一緒に部屋のバスルームに入る

 

「イッセー君……」

朱乃が俺に抱きついて胸に頬ずりしながら俺の存在を確認してくる

 

「……大丈夫、俺はここにいる。どこにも行かないよ、朱乃」

「……うん。……ん……」

 

朱乃が目を閉じ、キスを求めてくる

 

「……朱乃、大好きだよ……」

「んっ……うん……、私も……大好き……イッセー君……」

 

「さ、お父さんもいるし、電話かけて戻ろう?後でたくさんしてあげるから……」

「ん……、もうちょっとだけ……」

 

朱乃が俺の腰に腕を回しギュっとしがみついてくる

朱乃が甘え終わりリアスに電話をかける

 

……もうスタジアムから出たかな……リアス

 

電話をかける

 

トゥルルルルル……トゥルルルルル……トゥルルルルル……

 

呼び出し音が鳴り始める、どうやら電話のつながる場所にいるようだ

 

「──あ、リアス?俺だけど。うん、……いやまだ話してる途中なんだけどさ、

話のなりゆきで俺が堕天使に殺されかけた経緯も説明する事になったんだ」

「うん、そう、教会の事も話さなきゃいけないと思う、流れ的に……。

あの時の事バラキエルさんにそのまま話してもいい?堕天使の幹部として話聞きたいって言ってるんだ」

「……うん、うん。わかった、バラキエルさんにそう伝えとく。話し合い終わったら電話するよ。

うん、じゃあまた後で……。ん?朱乃?今横にいるけど……わかった、そう伝えておく。うん、また後でね、リアス」

 

「OKだって。あと朱乃に伝言がある。「朱乃?頑張りなさいよ?逃げちゃダメよ?」って伝えておいてって」

「うふふ、リアスったら、肝心な所で優しいんだから……」

「ホントな、うちの主様は最高だぜ」

「うふふ、そうね……」

 

二人でお義父さんの待つ応接スペースへ戻る

 

「お待たせしました。主の許可を取ってきました」

「ああ、すまないね、わざわざ……」

「いえ。まずお義父さん……、バラキエルさんが朱乃のお父さんであるという事を信用して、話をしていいという了解を得ました」

「なので、ここで聞いた事は他言無用でお願いします。教会陣営、そして堕天使陣営と事を構える事態になりかねませんので……」

「ああ、わかった。堕天使組織「神の子を見張る者」の幹部として、他言しないと約束しよう」

「お願いします。では最初からご説明しますね」

「今から一か月ほど前まで俺は、普通の人間の、学生でした」

「ある日の夕方、学校からの帰り道である女の子に告白されます。

その女の子の告白を受けその週の日曜日デートに呼び出され、一日その女の子と過ごしました」

「そのデートの帰り際、女の子に突然光の槍で貫かれ俺は瀕死の状態になりました」

そして、死ぬ間際、瀕死の状態の俺を悪魔として転生し救ってくれたのがうちの主……リアス・グレモリーです」

「うむ……」

「悪魔に転生した俺は赤龍帝に修行を受けた後、リアスの元で悪魔の仕事、チラシ配りをこなしながら日々を過ごしていました……

そのチラシ配りの途中現在のリアスの僧侶・アーシア・アルジェントと出会います」

「俺はアーシアとその日友人になり、教会への道がわからず困っていたアーシアを教会まで案内してその日部室に戻ります」

「そこで、赤龍帝ドライグから「アーシアは、ドライグが封印される前、現役ドラゴンだった時代の妻だ」と明かされます」

「そして、ドライグがアーシアを案内した教会に堕天使が60体ほど集結していると知らせてきます」

 

「堕天使が……60体!?……それは、もしかして……レイナーレやミッテルトと含む連中ではないかね?」

「ええ、堕天使・レイナーレです。……ご存じでしたか」

「……やはりそうか。堕天使の中で特にアザゼルへ信望が厚く、狂信的なまでの献身さを見せていた者だ、レイナーレは……」

「アザゼル……と言いますと……」

「堕天使のトップ……堕天使の総督をしている男だ」

「教会に駆け付けた俺とドライグを待ち受けていたのは堕天使レイナーレを含む堕天使60人ほどでした」

「レイナーレはアーシアの神器を抜き取る秘術か何かを使い、アーシアから神器を奪いました……」

「……っ!なんとむごい……。神器は魂に同化した半身だ、それを奪えばどうなるか……!」

「ええ……。アーシアは、息を引き取りました……」

「なんと非道な……。堕天使の中でもっとも過激派と言われている連中でね……、

レイナーレ達一派は……信望するアザゼルの為に殺人もいとわないと聞いていたが……」

 

「アーシアから神器を奪ったレイナーレから、神器を取り返そうと、俺は堕天使と戦いました」

「な、何……相手は60……。……いや、そうか……。君ならば可能だろうな。今日のゲームを見る限り……」

「はい、その場の堕天使を全て殺し尽くしました」

「それで、その後リアスがアーシアを悪魔として転生させ……アーシアは悪魔として生き返りました……」

「これが、俺に起こった、堕天使との事件の全貌です」

 

「うふふ、あの時のイッセー君は凄かったわ……。中級堕天使60体を一瞬で消し飛ばすんですもの……」

「……やはり、一か月ほど前に駒王町でおこった、謎の強大な力場は……君だったか……。

任務で近くの町にいた私も感じたよ、あの魔力を」

「……気が付かれていましたか」

「……あれほどの魔力だ、気が付かないわけがないだろう。

しかし、納得したよ。あれほどの魔力が発生し、その原因を調べても何もわからないと言うのが不思議でならなかったんだ」

 

「ええ、それで、その後、教会陣営の教会に入り込んだわけですし、

堕天使を60体以上殺したわけですから大事にならぬよううちの主……。

リアス・グレモリーが事後処理を行いました」

 

「なるほどな、納得したよ……」

 

「君とアルジェントさんを殺した堕天使がまだ生きているのなら、上に報告し相談しなければいけない所なのだが……、

すでに君が処理をしてしまっているからな……。もう終わった事だという事にしよう」

 

「そうしていただけると助かります。おそらくうちの主にとってもそのほうが面倒がないと思いますので……」

「ああ、約束しよう。……堕天使の幹部として、君に、ここにはいないがアルジェントさんに謝罪をさせてもらいたい。

本当に申し訳なかった……!堕天使の、監督不行き届きだ……」

 

「いえ……、終わった事ですし……。ただ一つだけお願いがあります……。

この件で堕天使のトップ……アザゼルさんに個人的に伝言をお願いしていいですか?」

 

「……何でも言ってくれ」

 

「堕天使のトップならちゃんと仕事してください」と「赤龍帝」が言っていたとお伝えしてください。

この件に関しては上の人がちゃんと仕事をして、部下を管理していれば回避できた事だと思います」

 

「ああ!まったくその通りだ!兵藤君……本当に迷惑をかけてすまない!

……アザゼルには私からきつく言っておく……!その伝言しかと承った……!」

「はい、よろしくお願いします」

 

≪ククク!やるじゃないか!相棒!「赤龍帝」の名を脅しに使うなんてな!ハハハハハ!≫

あんな事は一回で十分だ、二度とふざけた事起こさないために釘刺しておきたくてな。

リアスや朱乃、アーシア達を守る為に「赤龍帝」の名を使わせてもらったぜ

≪ああ、構わんさ。……次ソフィアを傷つける事があれば堕天使総督を滅ぼしに行くぞ!≫

……そうならない事を祈るよ、俺の宝を二度と傷つけられたくないからな……

≪ああ、全くだ。いい迷惑だ……≫

 

「さて、話はおわりだな、私は早速この件をアザゼルに話に行かねばならん。堕天使の管理不足が露呈する大事だ。

すぐ動くつもりだ。二人は、ゲームで疲れただろう?この部屋で少し休んで行きなさい」

 

「……お気持ちはありがたいのですが、主を待たせておりまして……」

「……兵藤君……?」

 

お義父さんは俺の肩に両手を置き、俺をまっすぐ見据える

 

「……ゲームで疲れただろう?朱乃と二人でこの部屋でゆっくり「休憩」していくといい……」

 

……これってようするにそういう事だよな……?

この人今朝俺と朱乃がキスしたってだけでブチ切れてなかったっけ!?

今この部屋でこの後朱乃と事を成せと言ってるよ!?

 

お義父さんのこの行動の意味するところを考えてみると……

 

……なるほど、さっさとやる事やらせて、既成事実作らせて安心したいのか……

腹が決まったら話早すぎですよ!お義父さん!

 

ちらっと朱乃の様子を確認する

朱乃が小さく胸元でガッツポーズした後、期待に満ちた目で俺を見つめてくる

 

「あ……はい。じゃあお言葉に甘えて……この部屋で「休憩」していきます……」

「うんうん、そうしなさい。ちょうど偶然ダブルベッドの部屋だ。「二人」でゆっくり「休憩」していきなさい」

 

「はい。ありがとうございます」

 

「じゃあ、私は先に帰るから、兵藤君、朱乃を頼むよ」

「はい!任せてください!」

「朱乃、兵藤君と、頑張りなさい」

「はい!父様!」

 

言いながらバラキエルさんはアタッシュケースを取り部屋を出る

 

「……えーと、お疲れ?朱乃」

「うふふ、イッセー君もお疲れ様」

「お義父さん、最後すごく寛容っていうか好意的だったね……」

「父様は基本的にああいう人よ?今回は私がイッセー君を連れてきたから駄々をこねてたのよ」

「なるほどね。とりあえず話まとまってよかったよ」

「うふふ、イッセー君のおかげだわ……」

 

言いながら寄り添ってくる朱乃

 

 

俺は無言で朱乃の腰に手を回しベッドに連れて行った

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。