※この作品はR-18です。

赤い龍と龍の巫女   作:ローランシア

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ex02 ソーナと婚約騒動 その②

ゲーム当日

 

シトリーコロシアム前 朝9時

 

 

 

「ここね?ソーナ?」

「ええ、ここで、10時からよ」

「……いよいよでですね。会長」

「頑張って勝ちましょう!」

「……やばい、緊張してきたかも……」

「由良、まだ始まってもいないんだぞ……」

「……巡は緊張してないの?」

「一週間という短い期間はいえ、我々は出来る事をやってきた。

早く修行の成果を試したいという気持ちの方が強いな……」

「はぁ……。あんたの鋼メンタルどうなってんの……。あたしゃ胃が痛いよ」

「まあ、グレモリー眷属と戦うわけじゃないし!ねっ!大丈夫っ!」

「……それもそうか。兵藤と戦うわけじゃないって思ったらなんか気が楽になった!」

 

由良に俺そんなに恐ろしい存在って思われちゃったの!?

ヤバい。

学校ですれ違う時に挨拶して、無視されたら俺傷ついちゃうぞ!

 

「……」

 

ソーナの手がブルブルと震え、心なしか肩も震えている

 

「ソーナ……?」

 

リアスがソーナの様子に気が付き、後ろからそっと肩を抱き話しかける

 

「大丈夫よ。ティアマット先生に修行つけてもらったじゃない?」

「……リアス」

「ねっ?きっと今日の試合勝てるわよ。「怖いゲームが始まる」って考えるんじゃなくて、

本番は「今までやってきたことのお披露目会」だって思えばいいの」

 

「うん……。そう、ね。そうよね……!みんなで頑張って修行したんですもの!大丈夫よね!」

「会長、大丈夫です。私が……、いえ、我々が会長まで回させませんよ」

「椿姫……。心強いわ。本当に」

 

「じゃあ、私達控室に向かうわ、リアス?ありがとう……見ていてね?」

「ええ!ゲーム頑張ってね!ソーナ」

 

ソーナ会長とシトリー眷属達を見送り俺たちは観客席に向かった

 

ソーナ視点

 

私たちはリアス達と別れた後コロシアムロビーに入った

 

「いよう?逃げずに来たのか?ソーナ」

ロビーに入り、ゲームの手続きを行っていた時だった

脇の通路から5~6人の悪魔たちがゾロゾロとやって来る

 

「っ!グラシャラボラス……!」

「おいおい、そんな怖い顔するなよ。俺は今日の試合が終わればお前の婚約者なんだぜ?

今日のゲームが終わったらお前の処女をもらう男にそれはねえだろう?」

「……残念ね?そんな事にはならないわ」

「ハッハー……!?威勢がいいなあ!?おい!?

今夜ベッドの上でその偉そうなツラ屈服させてヒィヒィ泣かせてやるよ!ハハハハハ!」

「……下品」

「……会長になんて事を!」

「会長?この男が?」

「……ゼファードル・グラシャラボラス。グラシャラボラス家の時期党首候補よ……」

「初めましてだな?ソーナの眷属達……。俺はゼファードル・グラシャラボラスってんだ。

今日のゲームよろしく頼むぜ!」

「……ソーナ・シトリーです。今日のゲームよろしくお願いします。グラシャラボラス。グラシャラボラス眷属の皆さん」

 

「……!」

「っ……!」

「……やな感じ」

「……シトリー眷属、女王・真羅椿姫です。今日はよろしくお願いします。グラシャラボラス様。グラシャラボラス眷属の皆さん」

「……」

 

副会長だけが挨拶し、他の眷属達は挨拶もせずゼファードルを睨みつけていた

 

「おいおい、ソーナ……?お前は自分の眷属にどんな教育してるんだ?

上級悪魔の俺が挨拶をしてるのに挨拶してるのは女王だけかよ?」

 

「……みんな?ご挨拶して?」

 

「……シトリー眷属の兵士・仁村留流子、です。よろしくお願いします」

 

苦い顔をしながらしぶしぶ眷属達が挨拶を始める

 

「……ギリっ……!……シトリー眷属、騎士の巡巴柄です。よろしくお願いします……」

 

歯ぎしりをしながら悔しさを噛み殺しながら言葉を出す巡

 

「……くそ……!シトリー眷属。由良翼紗……です。よろしく」

 

小さく悪態をつき、あくまで事務的に挨拶を済ませようとする由良

 

その二人の態度が勘に障ったのか。ゼファードルが眉を細める

 

「おいおい、シトリー眷属の連中は満足に挨拶もできねえのかよ?

マジでどんな教育してんだ?あぁ!?ソーナ……!?」

 

「……申し訳ないわ。私の力不足よ……」

 

ぎゅっと拳を握り締め、悔しさに耐えながら頭を下げる

 

「っ!?会長……!?」

「ケッ!これだから転生悪魔はよぉ!品がねえよなぁ!!」

 

「「「「「ハハハハハ!!!」」」」」

 

大声で嘲笑しながら私達を笑う、ゼファードルの眷属達

 

「くっ……」

 

その時……

 

留流子が一歩前に出た

 

「あの、失礼な態度をとってしまい申し訳ありませんでした!

ゲーム前でみんな緊張してるんだと思います……!」

 

留流子が言いながら、頭を下げる

「……仁村……!?」

「仁村……」

 

「へぇ……?ちったぁ利口なのもいるじゃねえか?

気に入ったぜ?お前……。どーよ?俺のところに来ねえか?可愛がってやるぜ?」

 

ゼファードルが舐めるように留流子の胸を凝視しながら言う

 

「やめて。グラシャラボラス。この子は私の大事な眷属よ」

「ハっ……!そうかい……。そりゃ残念……。だがな?ソーナよぉ?

眷属の躾はもっとしっかりしたほうがいいんじゃねえのか?

さっきから嫌~な目で俺を睨んでやがるぞ?お前の眷属……」

 

「っ!」

そのゼファードルの言葉に我慢の限界に達し、我慢していた言葉が口から飛び出す

 

「……それはお互い様じゃないかしら?あなたの眷属も私に挨拶してないわよ?

あなたの眷属もどうかと思うわ……」

「あぁん!?なんつった!?てめぇ!?」

「ふっ……!あなたって小さい人ね……。可哀想だわ」

「てっ!てめぇ……!!?」

「……みんな、控室へ行きましょう。グラシャラボラス……?後はゲームの内容で語るわ。

私の眷属達がどれほど素晴らしい子達なのかわからせてあげるわ」

 

「言ったなぁ!?ゲーム覚悟しておけよ!?ソーナァ!?」

「はいはい。吠えてなさいな……。あ、名前で呼ばないでもらえるかしら?

あなたに名前で呼ばれるのとても不快だわ」

「チッ……!おい!行くぞ!?」

 

「「「「「ハッ」」」」」

 

「か、会長……?大丈夫ですか?」

「……何がかしら?」

「何がって……、会長があんな啖呵切るなんて想像もしませんでしたよ……」

「正直、驚きました……」

「こ、怖くなかったんですか?会長……」

「さすがに私も予想外でした。会長」

「ふふふっ……!何言ってるの?あなた達……?怖い?

私があの男を……?面白い冗談だわ……」

 

「「「「「え……」」」」」

 

「私達はこの一週間、誰を相手にしてきたの?何をしてきたの?」

 

 

「「「「「……あ……」」」」」

 

「私達魔法戦闘組は、五大龍王のティアマットさんと紅髪の滅殺姫、雷の巫女を相手にしてきたのよ?

怖いわけがないじゃない。

それは近接戦闘組のあなた達だってそうでしょう?

あなた達の修行を見てくれていたのは誰かしら?「二天龍」の「ア・ドライグ・ゴッホ」と今代の「赤龍帝」の兵藤君よ?

一週間という短い間とは言え、あの五人と私達は向き合ってきたのよ?怖いはずないじゃない」

 

その言葉にシトリー眷属全員が顔を上げハッとした表情になる

 

「そっ!そうですね!たった一週間弱とは言え私達も修行頑張ってきたんですし!大丈夫ですよね!」

 

「当たり前でしょう。留流子?兵藤君に今日のゲームでいい所を見せるのでしょう?」

「はいっ!」

「そ、そうですよね!兵藤と比べたら全然プレッシャーなんて感じないし!勝てますよね!」

「今日のゲーム……、勝ちましょう!会長!」

「ええ、もちろんよ。椿姫」

「はいっ!」

 

このやりとりの後ゲーム開始のブザーが鳴り響いた

 

 

「ただいまより、シトリー眷属対ゼファードル眷属の模擬戦を開始いたします!

第一試合出場の悪魔の方はゲームフィールドへお入りください!」

 

ゲームフィールド上部の電光掲示板に両チームの順番が表示される

 

「……あちらも似たような事を考えてきたようね。相手チームの先鋒……グラシャラボラス眷属の女王よ」

「これは……、気が抜けませんね。

しかし、これで白星を挙げる事が出来れば、大きな一歩となるでしょうね……」

「ええ。それはまちがいないわ。女王はチームにとって重要なポジションですもの、勝つ事が出来れば精神的にも揺さぶりをかけられるはずよ」

「それじゃ、負けるわけにはいきませんね……!是が非でも勝って見せます……!」

「頼りにしてるわ。椿姫」

「はいっ!行ってきます!」

 

椿姫視点

 

「先鋒・シトリー眷属・女王、神羅椿姫選手! 先鋒グラシャラボラス眷属・女王、ヴァルグロ選手!ゲームフィールド中央へ!」

 

選手控え室から転送魔法陣に入り、ゲームフィールド中央へ移動する

 

身長が3M近くはあろうかという大男、その厳つい風体と、

ボディビルダーを連想するかのような鍛えられた筋肉

おおよそ、女王というより、戦車向きであろう体躯をした男と向かい合う

 

「……先ほどはどうも。よろしくお願いします」

「……あんたも運がねえな?いきなり俺と当たるなんてよ!ハハハハハ」

「はぁ……」

 

……相手の煽り文句など聞くに足りない戯言と捨て置けばいい。

今私がすべき事は相手を観察しどういう相手なのか

いち早く理解し一つでも多くの対処法を考え出す事……!

 

……確かに、体は大きい、体もがっちりしている。腕は私の腰ほどもある太さだ

単純な力比べでは私に勝ち目はないだろう。

 

……私が先鋒でこの男に当たる事になったのは幸運であろう

単純な力比べになると、近接戦闘を主とする瑠々子や翼紗、巴柄では分が悪い……

なおさらこの試合は負けるわけにはいかなくなった

 

だけど……

私の神器と、ティアマットさんに教わった魔法技術を駆使すればそれほど難しい相手じゃない

 

この男が単純に見た目通りの近接戦闘を主に使うとしてだが……

 

「おーっと!ゲーム開始前から激しい睨み合いが展開されてます!」

 

「おい?姉ちゃん?なんとか言ったらどうだ?俺の体見てビビッちまったか?ハハハハハ!」

 

「……」

 

じっと相手を見据え事細かに観察する、一つでも多くの情報を得なければ

 

「チッ……!愛嬌のねえ女だなぁ!?」

 

「それでは!ゲーム開始のカウントを始めます!」

 

「10……9……8……7……6……5……4……3……2……1……始めてください!」

 

「オラァっ!?行くぜぇっ!」

 

ヴァルグロが巨体で突っ込んでくる

その巨体のためか、動き自体はそこまで早くはない。

 

 

次は攻撃方法を探ろう

この男がなぜ「女王」なのか

 

普通に考えれば、この男に与えるべき駒は戦車なはずだ

それが、なぜか「女王」の駒を与えられている……

 

女王はすべての基本能力を高める、腕力、体力、魔力、速度……あらゆる基礎能力を引き上げる駒だ

その「女王」の駒を与えているという事は、魔力か魔法、あるいは神器に関わる何かの能力を持っている可能性が高いとみていいだろう

 

 

軽く後ろに飛びながら自分の神器「追憶の鏡(ミラー・アリス)」を展開する。

……相手の様子を見るために神器の能力で3体の魔物を召喚する

私の神器追憶の鏡(ミラー・アリス)は贄とする魔力量によって様々な魔物を召喚できる神器だ

召喚された魔物は私の魔力で生を受けこの世に顕現できるため、服従している

 

五大宗家「神羅」の家にいた頃は、この能力を持て余し、制御できず、幽閉されるにまで至った神器であったが、

会長の眷属として悪魔の活動と生徒会の活動をこなしながら修練を重ね、召喚した魔物を使役するまでになった

 

 

雷の魔物……鵺

猿の顔、狸の胴体、虎の手足を持ち、尾は蛇。

 

雷を纏いながら異空間より出現する三匹の鵺達

 

「なっ!?なんだよ、こりゃあ!?」

 

召喚された魔物に動揺するヴァルグロ

 

「手加減はしないわ。あなたは強そうだものね?」

 

私のように神器も、戦闘スタイルも後衛向きの者にとっては、敵の直接的な攻撃が脅威だ

だからこそ、この神器「追憶の鏡(ミラー・アリス)」の魔物召喚が役に立つ

ティアマット先生が教えてくださって言葉を頭に浮かべる

 

「よいか?お前達。魔法職は等しく近接戦闘に弱い、というより相性がすこぶる悪い。それはドラゴンである私であってもそうだ」

「こちらが相手の行動を指定し、そう行動するしかないように仕向け本命の魔法を直撃させる」

 

「各自、いかに相手の動きを止め、魔法を直撃させられる状況を作るかを考えろ。

学べ、試せ、そして工夫しろ。これは魔法職にとって永遠に考え続けなければならない課題だ」

 

 

「頼んだわよ!あなた達っ!」

 

3匹の鵺たちに指示を出し、さらにバックステップで大きく離れ、距離を取りながら魔法の詠唱を始める

 

「「「ルオオオオオオォォォン……!!」」」

3匹の鵺たちが私の出した指示に咆哮を上げ応える

 

「伝説の雷獣「鵺」か!面白れぇもん呼び出すじゃねえか。

だがな!?術者であるお前自身が消えりゃこいつらも消えるはずだよなぁ!?」

 

鵺の包囲を突破しヴァルグロが私に向けて全速力で突っ込んでくる

 

「ガウッ……!?」

 

鵺の一匹がヴァルグロに追いつく、すぐさま二匹目が足に噛みつく

 

「っ……!?このクソ犬ども!?離しやがれっ!」

 

一番遠くにいた三匹目の鵺が、ヴァルグロの背後から首に飛び掛かり噛みつこうとした瞬間

ヴァルグロが振り返り、腕に噛みついていた鵺ごとカウンターで飛び掛かってきた鵺を殴り倒す

 

……おかしい、今のはタイミングが良すぎる……

まるで見えていたかのように見事なタイミングで、

飛び掛かってくる鵺の顔面にカウンターで拳打を入れ鵺を吹き飛ばすヴァルグロ

 

「……へぇ、予想外だわ。視えるなんて正直予想外だったわ」

「ハ……!当たり前だ。これでも俺はグラシャラボラス様の「女王」張ってんだ。これくらい見えないでどうすんだよ」

「そうみたいね。正直見直したわ、あなたの事」

「そうかい、ならついでにこれでも喰らって……!逝っとけやぁ!?」

 

ヴァルグロが私に向かってゲームフィールドの床に拳を叩きつけ、衝撃波を起こす

ヴァルグロの放った衝撃波は床材を破砕しながら一直線に突き進んでくる

 

「っ……!」

 

巻き上げられながら迫ってくる衝撃波をかわす為、上空に飛んだ次の瞬間────────

 

 

ヴァルグロの顔が目の前に現れる。

 

「っ!?」

 

私はそのまま殴りつけられゲームフィールドの床に叩きつけられる

 

ガッ……!

 

ダンッ……!

 

「くっ!?……カハッ……!」

 

 

ああ、なるほど

この男は戦い慣れている、少なくとも今の私よりはずっと──────

 

 

「まだまだいくぜぇ!?」

 

すぐさま起き上がろうとするが、今の受けた攻撃のダメージが残っており、よろけながら体を起こす

一気に距離を詰め拳による乱打を放ってくる

 

すぐさま腕に防御結界を展開させ、ヴァルグロの拳打をガードするが、

体格差のある相手の拳打を受け続けるには辛い

 

「オラオラオラオラぁ!?どうしたどうしたぁ!?」

 

一撃一撃が重く、防御結界を集中して張っていなければ一気に持っていかれるのは明白……

けれど、このまま防御に徹していてもいずれ防御結界は破られこの重い拳打をこの身に受ける事になってしまうだろう

 

 

「ガウッ……!!」

 

ヴァルグロの足に鵺の一匹が噛みついた後残りの二匹ももう片方の足に噛みつく。

鵺たちに噛みつかれた後ヴァルグロが一瞬動きを止める

 

なるほど……やっぱりね……

 

これなら……!

 

 

ヴァルグロが一瞬動きを止め怯んだ隙を見逃さず魔法の詠唱を始める

下級魔法の「アンカー」の詠唱を即座に終わらせヴァルグロの足の甲に打ち込む

一本のアンカーを打ち込んだ後、連続で2本目3本目の「アンカー」の詠唱を終わらせ、

合計5本のアンカーを足を貫通させ床に打ち込みヴァルグロを床に縫い付ける

 

下級魔法「アンカー」は魔法の中でも最弱の威力だが、最も詠唱速度が短い魔法の一つだ

 

「ケッ!こんなチャチな手品で俺の動きを止められるかよ!」

 

ずちゃっ!

嫌な音を立てながらヴァルグロはアンカーに縫い付けられている足を無造作に引き抜く

 

「お~ぉ、痛ぇ痛ぇ!すげぇことやってくれんじゃねえか!ハハハハハ!」

 

ヴァルグロはアンカーから足を引き抜き大量に血が足から吹き出していて、

足には激痛が走っているはずなのに楽しげに笑うその様子は異常者そのものだった

 

魔法職にとってもっとも苦手なタイプと言えるだろう

魔法を打ち込もうが、何をしようが足を止めず、真っ直ぐ自分に向かって攻撃を仕掛けようとする相手……

いや……、むしろ体格差があるぶん、純粋な近接戦闘職のほうがより不利だろう

後の巴柄や瑠々子たちは近接を主に使う悪魔達だ。この男はここで止めなくてはならない

 

「大した精神力ね?痛くないの?」

「あぁ?痛ぇって言ってるだろ。この程度の痛みじゃ俺は満足しねえんだよ!」

 

言いながら再び衝撃波を飛ばしてくる

先ほどと同じ戦法だろうか。飛ばして叩き落すつもりだろうか

それなら……

 

即座に水平に移動し衝撃波の直線上から離れる、回避した位置に私の体の倍はあろうかという巨大な炎の塊が迫ってきていた

 

「なっ!?」

 

炎の直撃を受け吹き飛ばされ、ゲームフィールドの壁に激突する

 

「っ……!カハッ……!?」

 

防御結界をあらかじめ自分にかけてはいたが服が破れボロボロになり、胸や太ももが露出した状態になる

 

「ストラーイク!狙い通り!ハハハハハ!」

 

「くっ……!?今、のは……!」

炎の塊の直撃を受け、よろけながらなんとか立ち上がる

 

これか……!この男が「女王」である理由は……!

 

「クッ……!ハハハハハ!そのツラだ!そのツラを見たかったんだ!

「こいつは脳筋だ」なんてそんな手前勝手なレッテルを張りたがる奴に全力の火の玉をぶつけてやった時のツラが最高なんだ!ハハハハハ!」

 

焼かれた体がジンジンと火傷の痛みを吹き出しはじめ、ねっとりとした嫌な汗が私の首筋をつたう

炎の塊が直撃した肩口は体の皮が炎の熱で裂傷し、血が止まらない

 

「はぁっ……!はぁっ……!」

 

今の炎のダメージと出血によりだいぶ体力を消耗したらしい。

息があがってきていた

 

「俺は女をいたぶる趣味はねえ……!一気に決めさせてもらうぜぇっ!」

「……っ!?」

その言葉と同時に突撃し、拳打を打ち込んでくる

 

まだ先ほどのダメージが残っていた為、防御結界の魔法陣を展開するるが十分な結界を張れなかった

 

「オラオラオラァ!?割れろ!割れろ!割れろ!割れろぉ!!?」

 

お構いなしに拳打の連打を叩き込んでくる

前方に展開していた防御結果にの魔法陣にヒビが入りだす……

 

「……っ!?」

「オラァッ!?」

 

バァンッ!!!!

 

ヴァルグロが渾身の力で拳を振り抜き、私の展開していた防御結界を割る

 

二ィっと一瞬顔を歓喜の表情に染め、ヴァルグロが渾身の力で私の腹部に拳打を打ち込む

 

「ぐっ……カハッ!?」

ヴァルグロの拳打により宙に体が浮く

血反吐を吐きながら殴り飛ばされ床に叩きつけられる

 

その瞬間……

 

三匹の鵺たちがヴァルグロの脚や腹、首に噛みつく

 

「っ!邪魔なんだよっ!このクソ犬がああああああっ!?」

 

噛みつかれた鵺を必死に振りほどこうとする隙に立ち上がらなければ……!

 

痛烈な一撃を腹部にもらい全身がブルブルと震えだし、先ほどの炎の魔法による出血も手伝い頭がクラクラしてくる

脚がガクガクと震え、立ち上がる事すら困難なほどのダメージを受けた

叩きつけられたとき頭をうったのか、頭から血も出て来ているようだ

 

 

まだ、だ……

これで負けるわけにはいかない……!

私は、会長の……ソーナ・シトリー様の「女王」……

 

負けるわけにはいかない……!

 

 

「はぁーーーーーっはぁーーーーっ!……クチュクチュ……ペッ……ふぅ……」

 

口の中の血を吐き出し、すっきりさせるだけで、だいぶ気分が落ち着いてくる

 

「今度は、こっちの番ですよ……!押さえててね!?鵺!」

 

再びアンカーをヴァルグロの足や脚、腹に可能な限り連続で打ち込む

先ほど打ち込んだ本数の3倍のアンカーを打ち込むと、

さすがにアンカーから抜け出す事は難しいようで、ヴァレグロはうまく体を引き抜けずにいた……

 

「くっ!この……!」

「今よ!鵺!鎖で動きを止めて!」

 

私の号令で鵺がヴァレグロに噛みついた箇所から、鵺の口を繋ぐ雷の魔力の鎖を出現させる

 

「なっ!?なんだ、こりゃあ!!!」

 

鵺は自分が噛んだ相手と自分を繋げる「雷の鎖」で相手を縛り付ける事が出来る

鵺がヴァルグロを噛んだのは合計8回……

 

「いくら巨体で、剛力自慢でも……

アンカー15本、雷獣「鵺」の「雷の鎖」8本はふりほどけないみたいね……?」

 

鵺を召喚した直後に詠唱を始めていた魔法はすでに詠唱は完了していた……

多重詠唱は通常詠唱のように呪文を唱えながら展開する魔法に比べて、詠唱速度は長くなるというデメリットも存在するが

多重詠唱の最たるメリットは頭の中で魔法の詠唱を構築するため「敵の攻撃を受けても詠唱を止める事がない」という点だ

 

「て、めえ……最初から、自分が囮になるつもりでわざと攻撃をくらっていやがったな……!」

 

「……召喚された魔物は術者が倒されてしまえば消える。

だから、魔物を召喚する者と戦う時は、召喚者である本体に集中して狙うのはセオリーよね。

だから逆にその「セオリー」を利用させてもらったわ……」

「……っ!俺は見事にハメられたって事か……!」

 

誰しも、攻撃が相手に当たった直後は気が緩むものだ「当たった!自分の攻撃は効いているはずだ」と……

なぜ鵺たちが私が攻撃された直後にしか攻撃をしなかったか、

そこに気づかれていれば負けていたかもしれない

 

「そういう事ね。……これで終わりにしましょう!!」

 

 

「夜の眷属達よ……!罪を隠し贖いから逃げた愚者に罰を与えよ!」

 

「贖いの夜!」

(アグリー・ナイト!)

 

ティアマットさんから教わった無属性魔法の中で最上位に位置する魔法

 

「アグリーナイト」

漆黒の門を出現させそこに棲む夜の眷属達の手で強制的な拷問を与え続け、標的を死に至らしめる魔法

空間から伸びる腕の速度は緩慢としているため、標的の動きを完全に止めるか、

腕が標的を捕まえられるほど行動速度を遅らせる必要がある

 

ヴァレグロの背後に巨大な漆黒の門が出現し、

その扉の奥の闇の空間から骨の巨大な手が6本出現しヴァレグロの体を掴み漆黒の空間へ引きずり込もうとする

打ち込まれたアンカーを無理やり引き離そうとヴァレグロの体から血が噴き出す

 

「グアッ!?こ、こりゃあ……!?やべぇ……!グッ!?ガアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

グチャッ!ミチミチミチミチッッ……!グチュッ…………!

ヴァレグロの体が引っ張られる際に、肉が裂け分裂する嫌な音がゲームフィールドに響く

 

無理矢理アンカーから引きはがされ血まみれになりながら

空間に引きずり込まれる寸前

 

「鵺!もう鎖はいいわ!消しなさい!あなた達も空間に飲まれるわよ!」

 

私の命令で即座に鵺たちが鎖を解除する……

 

ヴァレグロが黒の空間に引きずり込まれ、漆黒の門が閉じる

 

ボキッ……!バキッ!!ゴッ……!ヌチャッ!

 

骨をへし折るような音や肉を引きちぎるような音に交じり、

ヴァレグロの絶叫が漆黒の空間から僅かに聞こえてくる

 

6分後……

漆黒の空間から腕が再び姿を現し、ゴミを捨てるかのように投げ捨てられるヴァレグロだった肉塊

ヴァレグロの体が絞った雑巾のように捻じ曲げられ、全身の骨が折られ両の腕と脚は引きちぎられ、漆黒の空間に置き去りになったようだ

ヴァレグロの体は体中を捻じ曲げられ、体中の血液が搾り取られ、巨大な体躯が見る影もなく小さくなっていた

 

その直後漆黒の空間は閉じ元のフィールドに姿を戻す

 

 

その無残な姿を数秒晒した後ヴァレグロの体がリタイアの光に包まれ消える

 

「第一試合、シトリー眷属・「女王」神羅椿姫!勝利!」

 

 

 

「……あなたは強かったわ。私が今まで戦った中で5番目にね」

 

 

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