※この作品はR-18です。

赤い龍と龍の巫女   作:ローランシア

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ex02 ソーナと婚約騒動 その⑤

巡視点

 

第三試合を終え、インターバルタイムの為選手控室に戻る

 

「お疲れ様、巴柄。よくやってくれたわ……!」

「ありがとうございます。会長」

「みんな?巴柄に飲み物とタオルを」

「「はいっ」」

「お疲れ様、巡。やったね」

「巡さんおめでとう!すごかったぁー!一発で決めちゃうんだもん!」

 

仁村と由良から賞賛の言葉をもらいながらスポーツドリンクとタオルを受け取る

 

タオルで汗を拭くスポーツドリンクを煽る

 

「巡さん……、やっぱりだいぶ疲れているようですね……」

「無理もないわ……。訓練ではない初めての実戦で、あれだけの強敵を相手にしていたんだもの……」

「やっぱり実戦で真剣を持った相手をするのとは違いますからね……。私も思い知らされました」

 

「ああ」

「試合、お疲れ」

「ああ、二度目だぞ」

「何度でも言うさ。それくらい見事な試合だった」

「ふふっ、そうか。だが、本当にすごいのは……」

 

チラっと兵藤に目をやる

 

「……うん。そうだね。でも、あたしは巡も十分凄いと思うよ」

「そうだよ!巡さん!あの凄腕剣士に勝ったんだから!自信持って行こ!」

「……自信か、ふっ……我々はこの一週間で何度自信を打ち砕かれたかわからんな……」

「……ああ。木っ端微塵に打ち砕かれたな……。ハハハ……」

「あああっ!?だめだって!修行思い出してブルー入っちゃ!」

 

「……横座るぞ?巡」

「私もっ」

「ああ」

由良と仁村が両脇に座る

 

次のゲームフィールド上部に設置された電光掲示板に、次の試合の対戦カードが表示される

「グラシャラボラス眷属・ジェイル・ザード」と表示されていた

シトリー眷属側はまだ出場申請をしていないため表示されていない

 

「次の試合は……、ジェイル・マッド……グラシャラボラスは戦車を出してきたか」

「見る限り近接職ばかりだな。グラシャラボラスは……」

「……筋肉質な体つきだから近接職というのは早計というものですよ?巡さん。

一試合目のグラシャラボラスの女王も魔法を使ってきましたし、油断は禁物です」

「……そういえばそうですね。気を付けておきます」

「それに魔法のような現象を起こす神器をもっているかもしれない……」

「そうだな。用心するに越した事はないな」

「巡。いい試合だった。おめでとう」

「あっ……、ああ!兵藤、見てくれてたか!」

「もちろん、ちゃんと見てたさ」

「……君の助言のおかげだ……。兵藤」

「……努力して、考えて悩んで、試して、結果を出したのは巡だろ。

あの久我に勝てたのは巡の実力だよ」

「そ……、そう、かな……!」

「そーだよ!巡さん!ねっ?兵藤君!巡さん凄かったよね!」

「ああ。見事な作戦勝ちだった」

「ほらっ?兵藤君が言うんだから間違いないって!巡さん!」

「すまんな、兵藤。巡はどうも妙な所で自信を持てない所があるんだ」

「いや、いいよ。俺も巡の気持ちはわかるし……」

「えっ……!?兵藤も、自信がないなんてあるのか……?」

「俺、自信なんてないよ?いつも不安ばかりだ」

「……すげー意外だ……」

「兵藤君くらい強くても……そうなんだ」

「……」

 

兵藤、今は……その気持ちが少しわかるよ

 

「……巴柄?体調はどうですか?出られそうですか」

「はいっ。まだ体力は残ってます!……相手を倒し切れるかは……不明ですが、

疲弊させるくらいは出来ると思います!」

「無理はしないでね?まだ翼紗や瑠々子もいるのですから……」

「はい!今日は会長の大切な初のゲーム、全力をもって事に当たりたいと思います!」

「ああ!そうだな!巡!今日の試合!絶対勝つぞ!」

「そうだねっ!何が何でも勝たないと!!」

 

ビーーーーーーーーっ!!

 

「ただいまを持ちましてインターバルタイムを終了いたします。

第四試合に出られる方はゲームフィールド転送魔法陣にお入りください」

 

「……もう時間か。行ってくる!」

「……頑張ってくださいね。巡さん」

「無理はしたらだめですよ?巴柄」

「頑張って!巡さん!」

「次も期待してるからな!巡!」

「兵藤……?」

「ん?なんだ?」

「次の試合も、見ててくれ……!」

「ああ、ちゃんと見てるよ。期待してるぜ」

「……ああ!任せてくれ!」

 

ゲームフィールド転送魔法陣に入る

 

シューン……

 

 

ゲームフィールドに入ると何もない円形の武闘台へ続く道が開けていた

 

武闘台中央へ向かうとすでにグラシャラボラス眷属が待ち構えていた

 

「……グラシャラボラス眷属・戦車のジェイル・ザードだ!!」

「シトリー眷属・騎士の巡巴柄だ。よろしく頼む」

「久我を……よくもやってくれたなぁ!!!?」

「フン……!負けた事への私怨か?恥ずかしい奴だな!」

「……なんだと!貴様……」

「我々も女王を久我に傷つけられている……!お互い様だ!!」

 

「第四試合……開始カウント始めます……!

10……9……8……7……6……5……4……3……2……1……始めてください!」

 

「いいだろう!もう言葉は無用だ!後は勝負で語ろうではないか!シトリーの騎士よ!!」

「フッ!いい台詞が吐けるじゃないか……!見直したぞ!」

 

試合開始と同時にお互いに後方へ飛び相手と距離を取る

 

「ぬっ!おおおおおおおおおお!!!!!」

 

ジェイル・ザードの体が……変色していく!?

いや……これは……!まるで全身泥の色だ……!

 

「ククク!もう貴様に勝ち目はなくなったぞ!シトリーの騎士!」

「まだ一合も打ち合わぬうちに勝利宣言か?気が早すぎだ……!」

 

遅い!

 

ゆったりとした動きでゆらゆらと近づくジェイル・ザードに全力で接近し、最速で最短の居合抜きで斬りつける

 

居合抜きで切りつけジェイルザードの体が真っ二つに分断される

 

勝った……!

そう思った次の瞬間──────

 

後ろから背中を殴り飛ばされゲームフィールドに叩きつけられる

 

ダンッ!!

 

「カハッ……!?……なっ!?」

 

「クっ!ハハハハ!俺の神器の能力でな?体を泥に変化させることができるんだよ……!」

 

「な……!くっ!」

すぐさま起き上がり体勢を整えるが先ほど喰らった一撃のダメージが残っていて若干足が震える

 

「つまり!物理攻撃は無効だぁ!!」

 

接近し攻撃を放ってくるが

 

こいつの動き自体は兵藤はもちろんだが、木場も搭城も、そして久我も!

今まで私が手合わせした中では動きは最も遅い!

 

だが、攻撃が聞かないとなると……、

再び久我のように回避を続けて相手のスタミナを削り切るしかない!

 

「おおっと?久我のように避け続けて持久戦に持ち込むつもりか?そうはいくかよ!」

 

攻撃を止めジェイル・ザードが腕の神器を天に掲げる

 

「汚泥沼王!こいつを泥の監獄に引きずり込め!「泥の監獄」(マッドジェイル)!!」

 

ジェイル・ザードの腕からおびただしい程の泥が沸き出す

ジェイル・ザードの腕から流れ出る泥はゲームフィールドを凄まじい速度で埋め尽くし、私の膝までつく

 

あっという間にジェイル・ザードの泥で埋まったゲームフィールドは、泥の沼と化す

 

「っ!?こ、これは……!?」

 

泥が膝まで浸かり思うように動けない……!

 

「ククク!これで思うように動けまい?あとはなぶり殺すだけだ!!」

 

ゲームフィールド中にジェイルザードの泥で埋め尽くされ逃げる場などない……!

 

「久我の仇だ、このまま殴り倒してやりたいところだが……!

俺は用心深い!貴様の攻撃可能な範囲になぞ入らんぞ!喰らえ!!」

 

ドロドロに変化をした腕をこちらに向け、

バスケットボール程の大きさの泥の塊を発射してくる

 

「くっ……!?」

 

避けようと体を動かすが足が泥に埋まり、ほとんど動けないため腹に直撃を受ける

 

「ぐふっ……!!?」

 

「ハハハハハ!!!何発目でリタイアするのか楽しみだ!!!!!!!!」

 

ジェイル・ザードは泥のボールを連打で放ってくる

 

顔や脚、腹、胸、腕……あらゆる体の部位に当ててくる

 

「くっ……」

 

 

何か、手がないか……!?

 

くそ……クソっ!!!

 

「ぶっ……!……くっ……!!」

 

顔面に直撃し頭がクラクラしてくる

 

「俺の前では素早い動きも!自慢の剣術も!全て無意味だ……!ハハハハハ!!!」

 

おかしい……もうすでに倒れていてもおかしくない程のダメージを負っているはずなのに……

 

……っ!?

 

この泥……!

 

この泥で……私が倒れないように支えているのか……!!!!

 

「ククク!今頃気が付いたのか?そうだ!お前は倒れる事も出来んままリタイアするのだ!

その涼しい顔が何発目で泣き出すかな!?」

 

これは……まずい……な……!!

 

「巡さんっ……!!!?」

「巡ぃっ!!!!!」

「巴柄ぇぇっ!?」

「くっ、巡さん……!なんて非道な……!」

 

「ほぅれ!18発目だぁ!!下手に避けると余計に傷が増えるぞ!!ハハハハハ!!!」

 

「げぼぉっ!?」

吐血交じりの嘔吐が泥の上に撒き散らされる

 

「おいおい、人の体の上にゲロを吐くとは……、シトリー眷属は躾ができてないようだ、な!」

 

「ガハっ……!!!」

 

……一太刀……!

一太刀だけでも!

 

三人称視点

 

「あいつ……!楽しんでる!わざと外していたぶってるんだ!

今の最初から肩を狙ってましたよ!?」

「あの、野郎……!!!!」

 

「ハハハハハ!!!サンドバッグの才能があるんじゃないか!?おい、シトリーの騎士よ!?」

 

「見てられないわ……!私……、審判に抗議してきます!巴柄のリタイアを……」

「か、会長!?」

「会長……!」

 

「……ソーナ」

「えっ?兵藤君」

 

一誠がソーナの手を掴みその動きを止める

 

「……君は俺の事を友人だと言ってくれた。だから……君の、そして巡の一人の友人として言わせてくれ……」

「え……」

「見てやってくれ、巡を……。あんなに頑張っているんだ。

リタイアは自分の申請でもできるのに、……君の為に痛みを耐えてるんだ。

巡は何か、きっと考えがあって耐えてるんだと思う……」

 

「……!」

「巡は俺みたいに馬鹿じゃない。

きっと俺が考えもつかない事を思いついたから、粘ってるんだと思うんだ」

「……そうですね。きっと、巴柄には巴柄の考えが……策があると信じます。」

 

巡視点

 

「29発目ぇ!!!」

 

ふふふ……まったく……無様な姿だ

 

日々の走り込みで得たスタミナ……

回避訓練で行った回避力

兵藤や赤龍帝から受けた教え……

木場と競い合いながら積み上げてきた剣術の技……

 

修行をし積み上げた物が……すべて否定された気分だ……

 

あれほど、諦めないと思っていた心が、今揺れ始めている

リタイアをして楽になりたいと……思ってしまった……

ああ……、一瞬思ってしまったよ……兵藤

 

「今諦めたら「リタイアしてしまえば楽になれる」と──────

 

……いや。ダメだな

それじゃ、会長に、副会長に、仁村に、由良に、花戒に……

そして、本来関係のない兵藤や、グレモリー眷属の皆さんに申し訳が立たない……!!!!!

 

何を、揺れる事がある……

兵藤が言っていただろう

 

「諦めるな」と──────

 

 

私は回避訓練が苦手だった

修行の回避訓練中に体力が尽き、ぜいぜいと息を切らし尻もちをつきながら、

「もうダメだ、私には回避の才能がゼロなんじゃないか」と泣き言を漏らした事がある

 

「才能がゼロなんて最高にいいじゃん」

 

私はその彼の言葉に

 

「なぜだ?」

兵藤はふざけているのか?思って少し強めについ聞き返した

 

自分が出来るから、私の事を馬鹿にしているのかとすら思った

今考えると恥ずかしい限りだが……その時はそう思った

 

「才能が無いって事は、これから良くなるしかないんだろ?」

 

あぁ……、「これだ」と思った

私と兵藤の決定的な差はこれだと……

 

……一つ、策は見いだせた……

そして、私にそれが出来るのか、こちらの挑発に……乗ってくれるのか……

ものすごく分の悪い賭けをしようとしているのはわかっている

そしてその攻撃は相手に有効なダメージを与えられるのか……

 

だが、もう目がかすんできている私が出来る事といえばこれしかない……!

 

物理攻撃無効など……剣士にとって最悪の相手だ

そしてこの動きを止められた状態で、棒立ちのまま自分の攻撃範囲外から遠距離攻撃で狙い打ちをされる

 

体中に痣ができ、皮が裂け血が噴き出し血が止まらない

意識があるのが不思議なくらいだ……

 

はっきり言って最悪の状況だ

その最悪の状況で……こんな手を思いつくのだからな……

 

フフフ……、恨むぞ兵藤……

どうやら私はマゾの気に目覚めたらしいぞ、責任取れよ?

もう私はお前の嫁になるしかないぞ……!!

 

観客席を見上げる

次は……由良だったな

 

由良……!今から私がバトンを渡すぞ!受け取れ!

 

「本当にしぶてぇなぁ!?ほうれ!68発目ぇ!!!」

 

「っ!カハッ……!」

 

「も、もうやめて……くれ……一思いに……やってくれ……」

 

頼む!乗ってきてくれ……!

 

「クッ!!クハハハハ!やぁっと弱音吐きやがった!」

 

「も、もう、無理だ……」

「そうそう、そうやって最初から素直になっとけば痛い思いせずに済んだんだよ!!

どうれ、最後くらいは俺の生身の拳で決めてやる!!

久我の仇だ!お前は俺の生身の拳で殴りたかったんだ!!!」

 

ジェイルザードが泥を自分の体に吸収させ泥を消す

 

私を支えていた泥がなくなり倒れこみそうになりながら剣を杖のようにして立つ

 

「じっとしてろよ?今楽にしてやるからなぁ!?俺の拳で吹っ飛ばしてやる!!!」

 

のしのしとジェイルザードが歩いてくる

 

激しい攻撃を何度も受け、体力もスタミナもすでに残っていない

もう一振りも剣を振る事はできない、剣で杖代わりにしながらやっと立てている状態だ

私に残されたのは、……この悪魔になった事で得た僅かばかりの魔力だ

私には兵藤のような巨大な魔力砲を打つことはできない……

 

出来るのか……?私に……

 

「出来るさ!お前なら出来る!」

 

ふっ……!

いつも君の言葉は私に力をくれる!

 

「いいか「学ぶ」とは「まねぶ」とも言う。何事を学ぶにしてもまず真似から始まるのだ」

 

いつもティアマット先生の言葉は策を思いつかせてくれる!!

 

学ぶ事は真似る事だ……!!

 

私はいい友人と師に恵まれた……!

 

最後の悪あがきを……受け取れ!!

私は残っている全ての魔力をつぎ込みその一刀につぎ込み放つ

 

「……」

 

ジェイル・ザードの背後に「影刀」を出現させ神器が宿る右腕を切断する

 

「ぐっひゃああああああっ!!!?俺のっ!!?俺の腕ぇっ!!!!ひっ!?ひぃぃぃぃ!!!!!?」

 

腕を切り飛ばされ、血を吹き出し錯乱状態でのたうちまわるジェイル・ザード

 

見よう見まねの……「影心離心流・影刀」だ!!!

 

腕を飛ばされた事ででパニックを起こしたか……!

 

泥化を解除してくれる事が最大の賭けだったが

ボロボロの状態で情けなくトドメを刺す事を懇願した事で、油断を誘う事ができたようだ……

 

「ヒィィーーーーーーーーッ!!!!?うおおおおおおおおお!?俺の!

俺の腕ぇぇぇぇぇっ!?なんでなんでぇぇぇえ!?」

 

勝てなくても……!次につなげる一撃だ!

 

 

後は……任せたぞ!?由良ァ!?

倒れこみながら観客席に目を向け由良にバトンを渡す

 

「シトリー眷属・巡巴柄リタイア!」

そのアナウンスを最後に私の意識は遠くなっていった────────

 

 

 

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