由良翼紗 視点
あの頃……
小学校の二年生の頃……
子供の頃から自分が他人と違っているとうすうす感じていた
しっかりと認識し気が付いたのは
それは他の同じ年の頃の子供より力があり、体力的にも優れているとか、そんな些細な事がきっかけだった
それだけなら、少々元気すぎな子供だというだけで済んだ
妖怪、悪霊、悪魔に堕天使、天使に精霊……
人ならざるモノなら何でもござれで見る事も波長が合えば話す事もできた
そうして人ならざる存在が見えるだけで、優越感に浸り少し得意にさえなっていたと思う
自分は何か選ばれた戦士か何かなのだと思っていた
あの日までは、それでもただの人間のつもりだった……
特異な体質だという事にさえ気が付かなければ……
そろそろ冬の足音が聞こえだす季節、
近所の子供たちと神社で遊んでいた夕方にそれは起こった
夕刻になり友達達と一緒に神社の階段を降りきり、
最初の交差点で別れる時の事だった
先ほど「さよなら・バイバイ・また明日」などと別れの挨拶を交わし、
同じ方向へ帰ろうとする友達と並んで話始め家路に着こうとした時だった
「うわあっ!?」
後ろから友達の叫び声にも似た悲鳴が聞こえ
「また悪ふざけをして驚かそうとしているんだ」と思いつつも振り返ると……
友達の後ろに巨大な黒い穴が出来ており、
穴から覗かせる青白い女の顔が見えていた
「ニタァ」と薄気味の悪い笑みをこぼしながら友達を見下ろしていた
女の腕と思わしき巨大な腕が友達の腕を掴んでいた
私の目はその異形の化け物にくぎ付けになり
背筋に冷たい冷や水でも流れたかのように、背筋をピンと立ててしまった
「何?いきなり大声出して……。帰らないの?」
あの巨大な異形の姿が見えていない為か、私の気も知らず非常に呑気なセリフを言い放つ隣にいる友人
ダメだ……!ダメだ!……アレに関わっちゃダメだ……!
今まで見てきたどの異形よりも「危険だ」と「関わるな」と本能にも似た直感が知らせてきた
出来るだけ、見えないことにしようとその化け物から目を逸らそうとする
「う、あ……た、助けて……」
私と同じく恐ろしさでちぢみ上がっている友人が、
必死に搾り出した助けを求める言葉にピクっと体を揺らし反応してしまう
「……っ!」
早く!早く逃げて!
そう友達に言いたかった……。そして一刻も早くこの場を逃げ去りたかった
けれど……、縮上がる心が足を竦ませ一歩たりとも動けずにいた
私は勇気を出しほんの少しだけ、視線を友達の方に向けると……
目の前に化け物の女の顔があった
十数秒ほどだろうか、化け物と目を合わせ続けていた
何故かわからないが、目を逸らせば見えているという事がバレる直感していた
じっと私の目をその薄気味悪い目で見つめ、女の口が開く
「おまえ、見えてるだろ」
その言葉にゾクっと身を震わせ、わけがわからなくなりその場から走りだした
家に逃げ帰るとすぐ様布団をかぶって恐ろしさに耐えた
その次の日……
学校に行くとあの女の化け物に捕まっていた男の子が、
行方知れずになっていると担任の先生から知らされる
あの女の化け物だ!あの女の化け物があの子を連れて行ったんだ!
その日のうちに私は昨日起こった事を話すと、話を聞いた両親は私を遠くの街の神社へ連れて行った
正直驚いた、こんな事話しても信じてもらえないと思っていたからだ
するとその神社の神主は私の話を聞くなり「うちの神社で預かりたい」と申し出た
両親は少しでも私が普通の子供として生活ができるならと神社へ預ける事にした
そして、私はその後神社へ預けられる事となり、様々な儀式や病院での検査を受けながらわかった事がある
私は特異な能力を持っている事がわかった
体内の水分を使い水力発電を行い電気を作り出す事
私は神社で世話になっている期間に、色々な祭事や儀式……退魔の技など様々な事を教え込まれた
そうして何年かが過ぎた……ある日……私の両親が変死体で見つかった
何か恐ろしいものでも見たかのような表情のまま、家のリビングで息絶えているのが発見された
通夜の夜、自宅で一夜を過ごす事になった
まだ両親が死んだという事の意味が理解できずにいた私は一人で風呂に入り布団に入った
その夜は寝苦しく、なかなか寝付けなかった。
夜中に目が覚めてしまい目を開けると、あの日の夕方見た女の化け物が私の部屋の天井に張り付き私を睨んでいた
声も上げられず、凝視しているとその女の化け物が口を開く
「おまえ、見えてるだろ」
あの日と同じ言葉を聞いた瞬間、
私はあの日感じた恐怖を思い出し裸足のまま家を飛び出した
神社!
神社に行かないと……!
神主様!助けて!
息を切らしながらろくに街頭もない真夜中の田舎道を裸足のまま走った
頭が混乱し、自分がどこを走っているかもわからないまま、当てもなくただ走った
足をもつれさせ派手に転ぼうが関係なかった
ただ、必死で真夜中の道を走った
長い坂を登った先に神社が見えていた
あの日、友達達と遊んだ神社の近くに来ている事がわかった
神社の神主様に助けてもらおう!
そう思った私は坂を上り始めた
神社の周りには街頭はほとんどなく、足元を照らす光は月の光と星の光だけが頼りだった
その時……!
「待て……!」
後ろからあの女の化け物の声がして振り返ると20Mほどの後方にあの女の化け物が迫ってきていた
その姿を見た時駆け出し神社の坂を全力で走り始める
だが所詮は子供の足だ
足をもつれさせ転び、転んだ時の痛みでなかなか立ち上がれず、
どんどん後ろから女の化け物が距離を詰め近寄ってくる
ついに私は女の化け物に追いつかれ、すぐ後ろからその青白く巨大な手を伸ばしてきた
「ああ、もうダメだ」と思った
「誰か助けて!」
そんな事を叫んだと思う
その時────────────
その女の腕が両断される
「ぐぎゃああああ!!!?何者だ……!?」
「……退魔士・巡巴柄だ!」
「退魔士……!?忌々しい祓霊師の一族がぁ!その童と一緒に引きずり込んでくれるわ」
「この辺りで「神隠し」を行ってる奴はお前だな……!?私が討滅してやる!!」
その人は月と星の光を背景に颯爽と現れ、あの恐ろしい女の化け物をあっという間に倒してしまった
その姿はまるで漫画やアニメのヒーローのようだった
「えっ……」
「大丈夫か?君……」
「えっ……あっ?ありがとうっ!」
「……っ!怪我してるな。家はどこだ?家まで送ろう」
「……家はあるけど……お父さんも、お母さんもいない……」
「なぜだ?」
「わかんない……「お母さんたちはもういない」っておじさんたちに言われた……」
「……そうか。なら私の世話になっている寺がこの近くだ。一緒に行って手当をしてもらおう」
「う、うん……つっ!?」
転んだ時擦りむいた怪我が今になって痛み出す
「怪我が痛むか。よし、私におぶされ」
「え……いいの?」
「怪我人が気を使わなくていい。ほら?背中におぶされ」
「う、うん……」
その言葉に従い恐る恐る背中におぶさると、ひょいと立ち上がる
月と星の光を灯りに巡は歩き出す
「ねえ……。なんで私を助けてくれたの?」
「私は退魔士だ。化け物に襲われて困っている人がいたら助けるのが役目だ」
「たいまし……」
「そうだ、退魔士だ。だからいつでもどこでも化け物に襲われている人がいれば助けるし、守る。それが退魔士だ」
「かっこいい……」
「……ふふ、そうか?」
「うん!かっこいい!」
「そうか。そう言ってもらえると嬉しいな」
「ねえ!私もたいましになれるかな!?」
「う、うーん……。退魔士は家が持つ役目だから……どうかな」
「……なれないの?たいまし」
「退魔士でなくても異形を討滅する事はできるさ。ただし……強かったらな」
「強かったら……」
「ああ、退魔士にはなれないかもしれないが、強ければ化け物から人を守る事はできる」
「わかった!私がんばる!がんばって強くなる!」
「……そうか。頑張ればきっとなれるさ」
「うん!それで強くなって巡を助けるの!」
「ははは、そりゃ心強いな!よし、じゃあ私も君に負けないように強くなって君を守ろう」
「うん!私絶対強くなって助けてあげるからね!」
「ああ、二人で強くなろう……!」
「うんっ!」
私はこの日初めて誓いというものを立てた
巡のように強くなって異形に苦しめられる人を守れる人になろうと───────
観客室
などと綺麗な思い出に浸りながら、
怒り狂う会長のお説教を死んだ魚のような目で聞き流していた
「聞いているのですか!?翼紗!思い切りやっていいとは言いましたが、
試合終了後に観客席を吹き飛ばすとは何事ですか!」
「うぅ……、すみません……。ついカッとなって……」
「ついカっとなった!?カッとし過ぎです!
コロシアムの修理費はあなたのお給料から天引きしますからね!?翼紗!」
「そ、そんなぁ!?会長ぉ!?」
「大丈夫、無理のない程度の金額を引くから。……大体千年くらいのローンよ」
「せ、千年のローンって!そんなご無体な!?」
「戦いの最中に誤って穴を開けたのなら仕方ないと諦めもつけられますが、
試合終了後あの観客席への砲撃は完全に蛇足です!見なさい!?あの有様を!」
「うぅ……。ひょ、兵藤ぉ……」
「……由良、ソーナのお説教をちゃんと聞いたほうがいいぞ……」
「そんなぁ……、うぅ……」
「兵藤君に甘えないの!もう!いつからそんな甘えた子になったんですか!あなたは!」
「会長。昔から由良の性根は甘えたですよ?」
まったく収まる気配が見えない
ヤバい、会長が本気で怒ってる……どうしよう
……巡!?巡は私を守ってくれるんだよな!?今こそその時だぞ!!
視線で巡に助けを求めると目を泳がせて逸らされ絶望する
くっ……孤立無援か!
「ま、まぁまぁ、ソーナ……?由良は次も試合出るんだしそれくらいで……」
「う……、ひょ、兵藤君……!」
兵藤……!
やっぱり私が見込んだ男だ!最高だ!愛してる!
「し、しかしですね!兵藤君!?アレを見てください!あの惨状!」
「……あぁ……、……うん、そうだね。……ソーナが、怒るのは理解できるよ?うん……」
「私の気持ちわかってくれますか!兵藤君!」
「うん……。わかるよ、ソーナ……」
「でしょう!?さすが兵藤君だわ!よくわかってるわ!」
兵藤!?ダメだって!?押し切られてるって!?
パリィングスタンスの見せ場だぞ!
会長の攻撃を無効化してくれ!
「……由良?まだ試合は出られるくらい体力残ってるんだよな?」
「えっ?ああ!大丈夫だ!次も出られる!」
「……ソーナ?由良はきっと次の試合もいい結果を出してくれるはずだしさ?
お説教はゲーム終わってからがいいんじゃないか?
ほら、やっぱ試合前に怒られるとテンションがさ……」
「……ふむ、なるほど。確かに兵藤君の意見には一理ありますね……。
わかりました。兵藤君に免じてお説教は後にします
……後で生徒会室のミーティングルームに来るのよ?翼紗……」
ウッソだろ!?これで終わりじゃないの!?
何が「免じて」なんですか!何も免じてませんよね!?会長!
ほぼインターバルタイム中言い続けてまだ言い足りませんか!
「それにしても、さっきの試合凄かったな、由良。
まさかあんな隠し玉を持っていたなんて思わなかったぜ……」
「え、あっ?ああ!あれか。
……電気を放出する事は体にかかる負担が大きすぎてな。
会長の許可がないと使う事自体を普段は禁止されてるんだ」
「なるほど……」
「由良は昔はぐれ悪魔討伐の時にあの力を使いすぎて死にかけた事があってな。
それから会長に禁止されてるんだ」
「あ……!あの時は巡だって大怪我するまで戦い続けてたじゃないか!」
「……そうだったか?」
「そうだよ!それで二人で仲良く入院したんじゃないか」
「ふっ、懐かしいな。由良が脱走するたびに私がどこに行ったのか問い詰められたものだ」
「ベッドの上で一日中いるなんて、拷問以外の何物でもないだろ……」
「ま、それは同意だが」
「なるほどな、修行中の手合わせじゃ使えなかったわけだ」
「発電を自分で行うために体への負担が増える。
仮にいつでも使えるとしてもだ、修行中の手合わせじゃ使えないさ」
「……修行中にぶっ倒れる未来しか見えない、か」
「そういう事だ。修行について行くだけでぶっ倒れてた有様なのにとても使えないよ」
「ハハハ……。修行か……。私たち合宿当初は食べた飯をほとんど吐いてたな……」
「思い出させないでよ。巡さん。ようやくちょっと忘れかけてたんだから……」
「私はこの一週間の合宿を生涯忘れんと思うぞ……」
「私もだ……。目を閉じると思いだす……。
幻影の攻撃に当たるたびドライグ先生が「走り込み10キロ追加だ!」って怒鳴るんだ……。
うっ……ぐすっ……走り終わって帰ってきて疲れ切ってるのに回避訓練の続きだって……うぅ……」
「由良……言葉に出すなよ。思い出しちゃうだろ……」
「うぅ……ごめん……ぐすっ……うぅ……」
「トラウマとして残っちゃった!?」
「由良さんが泣いてる……!?衝撃映像ですね、これ……」
「兵藤君?そんなに厳しい修行だったの……?」
「……いや?ドライグ的にはかなり緩いほうだと思うよ」
「兵藤……。興味本位で聞くんだが、兵藤の時はどんな修行してたんだ?」
「それは今みんながやってるような回避訓練と基礎訓練以外って事か?」
「そうだ」
「んー……それ以外なら……まず、崖から突き落とされて……」
「……崖から突き落とされる!?」
「それで谷底にいる俺にドライグが千倍の重力かけて「そこから上がって来い」って言われたりとか……」
「え、ちょ……」
「千倍の重力かけた状態で素手でドライグと殴り合いしたりとか……」
「え……!?赤龍帝と素手で殴り合い……!?」
「百倍の重力かけてドライグが出してくれる俺のコピーを100体同時に相手にするとか?」
「ああ、あと、それの応用で過去の達人たちのコピーと手合わせしたりとかかな……。
なあ?それくらいだよな?ドライグ」
≪そうだな。今は相棒はパリィングスタンスを完全に習得するために実戦形式が主だな≫
「谷底って……兵藤君……」
「は……ははは……。赤龍帝と素手で殴りあい……?」
「兵藤……よく五体満足でいられるな……」
「慣れだよ、慣れ」
「慣れって言っちゃったこの人……」
「慣れる前に死にそう……」
「で、でもさ!?……修行前よりだいぶ体力に余裕を感じるようになったよ!修行の成果だよねっ、これ」
「あっ、ああ!わかるぞ仁村。私たちはこの一週間で成長している。それは間違いない……」
≪実感が出たようだな?基礎体力がいかに大切なのか≫
「「はいっ」」
≪ゲームが終わっても日々の走り込みは続けろよ?鍛錬を一日怠ると三日は後退したと思え≫
「「「はいっ」」」
ビーーーーーーーーーッ!!
「ただいまを持ちましてインターバルタイムを終了いたします
第六試合に出場される方はゲームフィールド転送魔法陣へお入りください」
「じゃあ、行ってきます。会長」
「ええ、無理はしないでね?翼紗」
「由良。期待してるぞ」
「がんばってね!由良っち!!」
「ああ、任せてくれ!」
転送魔法陣に入り転送される
シューン……
ゲームフィールド中央へ向かう細い通路を歩き出す
……さっきの試合で電気を扱う体力は僅かしか残ってない……
だが、この試合も勝たないとな……!
正直試合前の状態としてはだいぶ悪いだろう、相手は万全の体調で来るだろうし
それでも兵藤と戦うわけじゃないというだけで大分気が楽だ
細い通路を抜けるとジャングルを思わせる密林だった
中央に向かうとすでにグラシャラボラス眷属が待ち構えていた
銀髪の長髪をなびかせすらりとした身長で、プロポーションも抜群の銀髪美女だった
「お、来たなぁ?私はグラシャラボラス眷属・兵士のイリーシャ・カルス。よろしくぅ」
「シトリー眷属・由良翼紗だ。よろしく」
「いやー、凄かったよー!あんたのさっきの砲撃と啖呵!ハハハハ!あれには度肝を抜かれたよ!」
「……意外だな?またさっきの奴みたいにキレ気味なのかと思ってた」
「大丈夫大丈夫、いけ好かない奴だったし。むしろスカっとしたくらいよ!」
「そうか。そう言ってもらえると助かるよ。……グラシャラボラスにもあんたみたいなのがいるんだな」
「いやいや……、そりゃこっちのセリフだよ。
まさかお上品なシトリー眷属にあんな豪快な事するのがいるなんて思いもしなかったよ!
余りに男前すぎてびっくりだよ!」
「そりゃどうも」
「グラシャラボラス眷属・兵士イリーシャ・カルス対シトリー眷属・由良翼紗戦を開始いたします!」
「それでは!第六試合……開始カウント始めます……!
10……9……8……7……6……5……4……3……2……1……始めてください!」
「さって、ショータイムと行きますか!」
イリーシャがサブマシンガンらしき神器を出現させ連続で撃ってくる
「先に言っておくよ!リタイアは早めにしたほうがいいよ!?」
パパパパパパパ…………!!
イリーシャが魔力の弾を打ち出すマシンガンを乱射し始める
「っ!?おいおい!サブマシンガンの神器とかありかよ!?」
転がるように避けつつ距離を詰めるが詰めた距離分イリーシャも離れる
「ほらほら!?さっきの技は使わないのぉ?勝っちゃうよぉ!?」
「ふっ……。悪いが、「こいつには勝てない」と思ったのはたった一人だけでね!」
「じゃあ、二人目になるのかな、私は!」
「……どうかな!」
イリーシャが後方に飛びさらに距離を空け。今度は大型の重火器を出現させる
「ほうらぁ、今度はグレネードランチャーだ!燃えろぉ!」
グレネードランチャーから放たれたグレネードが私の前方に二つ、右側に一つ落ち爆発する
爆発したグレネードが激しい炎をあげながら炎上する
「くっ!テルミットか!?」
「……へぇ?詳しいね?なんかやってた!?」
「FPSのゲームをちょっとね!」
後方に飛び着地するとそこにロケットランチャーが猛スピードで迫ってくる
「マジかよ……!今度はロケラン!?くっ……!」
寸前で飛びのき直撃を避けるが、爆発に巻き込まれ肩と脚から出血する
「あたしの神器はねえ。「火器創造」(ウェポンメーカー)て名前でさ?
火器、重火器……手にもってトリガーがあるものなら何でも作れるのさ!」
「面白い!なら近接で仕留めるだけだ!」
「近寄らせないって!」
瞬時に銃を変化させ撃ってくるイリーシャ
木に隠れてやり過ごそうとするが徐々に回り込まれつつある
先ほどロケットランチャーで受けた傷口を手早くハンカチで縛り止血をする
兵藤とまでは行かなくてもせめて木場くらい動きが早ければ接近しやすいんだが……!
しばらく回避を続けながら様子をうかがっていると……
「……ねえ?なんであの技使わないの?あのジェイル・ザードをぶっ飛ばしたやつ……」
木に隠れたため攻撃をやめイリーシャが話し出す
「……ぶっちゃけるとさ?さっきの砲撃でほとんど雷を使う力使っちゃったんだよね」
「フッ……!はははははははっ!?何!?あんた!?
あんな啖呵切るために温存しなきゃいけない力使っちゃったの!?
馬鹿だ!こいつ本物の馬鹿だー!あはははははっ!!」
イリーシャが指を指しながらケタケタと笑い出す
「まあ、そういう事だな……!」
「くっ、ふっ……!もう、ホント馬鹿ね!あんたって……!でも、サイコーだわ……!くくくっ……」
「うん、さっきも主にこっぴどく怒られてたところだ」
「っ……くくっ……!そりゃ、怒られるわ……!あんな事したんだもの!ふふふっ!
もぉ……、私を笑い死にさせる気なの!?
もう、ホントお腹痛いからやめてよ!笑い死んでリタイアとか嫌なんだからねっ!」
「必要な事だったしな!しかたない!なんとかするさ!」
「必要って……!あのっ、あのっ……くくっ!
あの一発撃たなかったら色々できてたんでしょーっ?」
「うん、まあ。そうだな……。色々な手が考え付いたかもしれない」
「サイコー!もう!ホントイカスわ!あんたって!
ふふふふっ!……でも!手加減なんてしないわよ!」
「ふっ!そんなもの必要ないさ。それでも私は勝つからな……!」
「ふふふっ!あんたがそんな不利な状態でどう戦うのか楽しみだわっ!」
さて、と言ったものの、どうしたものか……
私は近接攻撃を主体とした戦車
相手は兵士とは言え神器の遠距離攻撃で弾幕を敷いてくる
近寄る事さえ難しい状況だ
今だって顔を出せばすぐさまハチの巣だろう……!
「ふふふっ、それでも諦めないのね?
もうホントにあんたに惚れちゃいそうよ!由良翼紗!」
「フッ。悪いがあたしは好きな男がいるんでな!残念だが諦めてくれ!」
「あら!そりゃ残念!妬けちゃうわ!」
イリーシャが横へ飛び私が隠れている側面へ回り込みながら、
今度はアサルトライフルを出現させ撃ってくる
バババババ!
チュチュチュチュチュンッ……!!!
隠れている木がどんどん削れていく
相手の対面になるように木に回り込み攻撃をかわすが長くはもたないだろう
しかし、うかつに飛び出せば格好の的だ……!
先ほどのロケットランチャーの爆発の時に受けた傷の痛みがだんだんと気になりだす
傷口が熱くなりジンジンと痛みが大きくなってきている……!
ひたすらアサルトライフルを打ち続けるイリーシャをカバーに入りながら観察する
ちっ……!
これでは回避行動もまともにできるかわからんな……!
早めに勝負を決めなくては……!
ん?これは、どういう事だ?
……もしかして……!
……!
そういえば……確か、会長が……あれって……
この考えが当たっていれば!上手くいけば隙を作れるはずだ……!
ただ、出来たとして、一足飛びで相手の懐に近寄って倒さなければいけない……!
それができるか……?
この傷で……
「ほぅらぁ?早くでておいでよ!」
イリーシャが今度はミサイルランチャーを出現させ四本のミサイルを発射してくる
「っ!?」
ミサイルの発射音を聞き反射的に前方へ跳び、直撃を避ける
私が隠れていた木や木の周辺に無造作に着弾し爆発する
「くっ……!」
直撃した木の破片が飛び散った際太ももを貫くように刺さる
「があっ……!?くっ……」
激痛が足に走る
いや……、迷っている暇はない!今は判断する段階だ!
今このタイミングを逃せば徐々に体力を奪われて反撃の手すら封じられる!
この思い付きが、正解であろうがなかろうがやるしかない!
体内で水力発電を行い策の準備をはじめる
体力が残っているうちに勝負を決めないと負ける!
体力が続く限り、準備が整うまではもう一発も喰らうわけにいかん!
ここからは回避に専念だ!相手の武器は基本「銃」だ
銃は弾丸を射線上を飛ばすもの……
だから射線を外し続けるために動いて回避し準備を整えなければ……!
「グッ……!?……つぅ~~っ」
さっき刺さった木の破片が動くたびに激痛を走らせる
これ抜いたら抜いたで血がふきだして反撃どころじゃなくなるな……!
ギリッ……
出血と痛みで頭がぼーっとして来ていた
これは……分が悪い賭けかもしれんな……!
準備を始めてから
逃げ、回避し、隠れながら目的の場所を目指し始めて10分程が過ぎようとしていた
「ねえ!?そろそろ観念したらー!?もう出来る事もないでしょう!
私あんたの事好きだしさぁ、一思いに一気に決めてあげるよ!?」
「ハハハ、ずいぶん気に入ってくれたようで何よりだ……。
けど、負けるとこわーい主様にさらに怒られそうでな……!」
「ふふふっ!お説教の時間延長されちゃう?」
「かなり伸びるだろうなぁ……」
……よし!準備は整った!
あとは場所だ!
まだ、ここじゃない!
なんとかあそこまで行かないと……!
血が止まらず、段々と足の感覚もなくなってくる
痺れる足をひきずりながらカバーに入れる場所を移動し目的の位置を目指す
一番気を付けなければいけないのはカバーからカバーへ移動する時だ……
エイムされない程度の速度で移動しなければいけない……!
……ここだ……よし……!ここで、使う!
目的場所付近につきカバーに隠れながらそれがあるかどうかを確認する
……っ!よし……!よし!よし!よしっ……!
ある……!このフィールドにもちゃんとアレも再現されてる!!
ゲームフィールドだから確信も持てず不安だったがちゃんと再現されている!
あとは……!集める!
能力を使って罠の準備を整える!
静かに、迅速に……!
集めはじめたら、次は移動だ……
出来るだけ罠の近くに誘導して……!!
「ねー!いい加減しつこいよぉ!?いい加減諦めなって!」
少し苛立ちを見せながら、イリーシャがツカツカと歩いてくる
「諦めたら何を言われるかわからないんでね……!」
「でも攻撃もなんにもできないでしょー?さっきから逃げてばっかりだし!」
「そんな危ない物持ってる相手に近寄れるか!」
「あははっ!そりゃそうだ!あたしだって立場が逆ならそう思うよ!」
……よし!そこだ!
そこがゲームフィールド中央付近だ!
「……電磁石って、知ってるか?」
「電磁石……?確か中学の理科の授業で習った覚えがあるけど……って!?何コレ!?」
ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ!!!!!!!!!!
凄まじいスピードで土の中の砂鉄がイリーシャの持つ銃へ吸い付き、一瞬で黒い塊と化す
「へへ……危ない賭けだったけど、うまくいったな……。
その神器で作られる武器が本物そっくりの鉄製じゃなかったら……負けてたよ!」
言いながらイリーシャに接近し、ボディを入れ屈んだ所へフックを入れ殴り倒す
「ぐっ!?がっ!!?」
倒れこんだイリーシャの周辺を能力で強制的に電磁化させ
周辺に集めておいた砂鉄で黒い山を作り出し動きを封じる
「くっ!?重い……!!動けないっ……!?」
「……やっぱり、当たりか。その神器で作り出した武器って装填されてる弾を使い切るまで次の武器出せないだろ?」
「……なんで気づいたの……?よくわかったわね……」
「遮蔽物があって、カバーに入ってる相手にずっとアサルト打ちっぱなしだったじゃん?
その行動が「制圧射撃」だという事も考えられたけど、
相手が遮蔽物に隠れてるならグレネードランチャーを撃ち込んだほうが遮蔽物越しにもダメージを与えやすいし、
遮蔽物からも叩き出せるよね。
だから、撃ちたくても撃てないんじゃないかって仮定した。
もしかしたら装填されてる弾を使い切るまでは他の武器に変更できないんじゃないかって。ね」
「……それ間違ってたらどうするつもりだったの?」
「うん、だからそこは賭けだった」
「ふっ!あはははっ!本当に最高ね!あなたって!」
ポケットから瓶を二つ取り出す、
「……これが何かわかるか?イリーシャ」
イリーシャに話しかけながら作業を始める
手早く両方のビンを開け、片方の瓶に一方の中身を入れる、
一旦蓋を閉めよく振って中身を混ぜる
「それ、は……」
「よし、混ぜ終わった。……これはアルミニウム粉末と酸化鉄を混ぜたものだ」
混ぜ終わったビンをイリーシャに魅せながら言う
「……アルミニウム……に酸化鉄?」
「なぁ……?「酸化還元反応」って知ってるか……?」
「酸化……?何……?」
砂鉄の山で身動きを取れなくされたイリーシャの上に、
ビンの中身を満遍なくふりかける
サラサラサラ……
ゲームフィールド端まで飛びのいて距離を取る
「アルミニウム粉末と酸化鉄の粉末を混ぜたものに着火すると……」
パチンと指を鳴らし、アルミニウム粉末と酸化鉄を混ぜたものに魔力で着火する
「約3000度の熱量を持った激しい炎が発生するんだよ……!」
火花が散った瞬間粉末が激しく燃え始め
ジュワアアアアア!!!!ジャッ!ジュッ……!
シャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
派手な音を出しながら火花をまき散らす巨大な火柱が立つ
「ひゃああああああああ!!!!!?いやっ!?いやあああああああああああ!!!!?
燃える!?私の手が!体が溶けるぅぅぅぅァァァァァ!!!!ウビャア”ア”ア”ア”ア”ア”ッァー!!」
火柱の根本で微妙にのたうち回りながら絶叫し絶命するイリーシャ
「グっ……!グラシャラボラス眷属!イリーシャ・カルス戦闘不能!!」
ふう、うまくいって良かった……
もし見かけだけのゲームフィールドならアウトだった……
ちゃんと土の中とかも本物再現されててよかった……
テルミットが燃え尽きるまで待ち、完全に火が消えた事を確認すると黒いシミが出来ていた
「シッ……シトリー眷属・由良翼紗勝利っ!!」
「戦場ではいい奴から死んでいく……嫌な世の中だ……」
自分の勝利を告げるアナウンスを聞いた後、私は転送魔法陣へ足を向けた