木場視点
僕たちは部長がイッセー君の気配を察知し、彼の進んだ道をたどりながら、教会への道を急いでいた
教会へ向かう途中の林道で3人の堕天使がボロボロにされて死んでいるのが見つかる
「これは……」
「あらあら。まあまあ……」
「イッセー先輩ですね、間違いなく……」
「大分怒ってるみたいですね、イッセー君……」
この短時間に中級堕天使3人を一人で……、やっぱり彼自身もとんでもないな……
林を抜けた先に教会が見えている
たぶんあの教会にイッセー君も……!
「朱乃!魔法で拘束して、冥界へ送っておいて?その後は周辺の警戒していて!」
「はい、部長」
部長が走り出す
「っ!部長!」
「イッセーが……、イッセーが……!」
「急ぎましょう!」
木場視点終了
一誠視点
俺は教会の中へ飛び込み周囲の状況を確認する
「アーシア!?俺だ!イッセーだ!!アーシア!?いるなら返事してくれ!!」
「イッセー!」
「イッセー先輩っ!」
「イッセー君っ」
「大丈夫!?ケガしてない!?イッセー!」
「あれ!みんな!?」
「っ!おい、そこにいる奴!出て来いよ!」
「おやおやおーやぁ?悪魔さんのご一行じゃーないですかぁ」
「フリード・セルゼン!?教会陣営元ナンバー1剣士のエクソシスト!相当な実力者よ!みんな気を付けて!」
「っ!?なんでそんな危険な人物が!?」
「……この人、かなり強いです……。危険な感じがします……!」
「殺人を楽しむ様を危ぶまれて教会を追放された危険な相手よ!」
「いいね!いいねえ!俺様も有名になったもんだ!んー!悪魔様に名前が売れまくってるじゃーないですかっ!」
「おい、ここに女の子がいるだろ」
「女の子?ああ。アーシアちゃんかなぁ?」
「どこにいる……」
年は俺とそう変わらない少年だったが、異様な雰囲気の口調だ
「アーシアちゃんなら奥の祭壇にいるよーん!!ただーし!俺をたおせぶぁっ!!?」
叫びながら少年が剣を抜き襲い掛かってくる
「この奥だな?寝てろ……!」
言い終わる前に少年の前に瞬時に飛び込みカウンターで顔面を殴りつけ床に頭をめり込ませる
少年を床に叩きつけた衝撃でクレーターが教会中に広がり、教会に並んでいる机や椅子が衝撃波の余波で吹き飛び壁が崩れ去る
「……教会陣営のエクソシストで元ナンバー1の実力者……でしたっけ…………?」
「……そうね」
「言ったらダメかもですけど、私たち必要でした……?」
「言わないで……小猫……」
「……リアス?」
「はっ。はいっ?」
「今殴り倒したこいつ……、捕縛魔法かけて、冥界の牢屋に転送頼めるかな」
「わかったわ」
「……木場と小猫ちゃんはリアスの護衛たのめるか?リアスを守ってやってくれ!」
「わかったよ!イッセー君!」
「任せてください!イッセー先輩!」
「頼んだ!俺は先に行く!」
いいながら走り出す
なぁ、ドライグ、この奥にやたらいるな!
≪ああ、召喚し終わったのか……60体ほどの堕天使の魔力を感じるぞ≫
堕天使60匹か、完全に召喚し終わったのか……!
≪ソフィア……ソフィア……!≫
くそっ!間に合ってくれよ!アーシア!
無事でいろよ!?俺達まだ友達になったばかりなんだからな!
っ!?ドライグ
≪ああ、これは────────≫
俺たちは教会の扉を開けた
教会の祭壇その上には────すっかり生気が抜けたアーシアが横たわっていた
その祭壇の周りには堕天使の大群が待ち構えていた
「ああら?あなた……」
「アーシアっ!っ!堕天使!」
「失礼ね?私にはレイナーレって名前があるの。ちょうど今記念すべき儀式が終わって、
パーティをしようと思っていた所よ?あなたも祝ってくれていいわよ?うふふ……」
「……っ」
≪ソフィア……?ソフィア!!≫
どうした!?ドライグ!
ドライグの反応にハッとし、レイナーレに問いかける
「アーシアを……!その子に何をした!?」
「なにをそんなに怒っているのよ?この子の神器を抜き出して────」
「ほぅら?この指輪……。きれいでしょう?トワイライト・ヒーリングって言うんですって!」
「い、イッセーさん……?」
「アーシア!大丈夫だ!すぐ助けてやるからな!」
神器を……抜き出す?
ドライグ!それって……!
≪神器は魂に直結した、いわば魂の半身だ……。つまりあの娘は、ソフィアは……もうじき死ぬだろう……≫
「なっ!」
俺の前に7人ほどの堕天使が立ちふさがる
「時間がねぇんだよっ!どけよっ!!」
ドライグっ
≪おう!≫
神器を展開し一度目の力をためる
「とりあえずこれでいい!どけっ!」
腕を振り衝撃波を起こし、眼前に群れていた堕天使どもを蹴散らす
「くっ!なんだ!?こいつ!?」
ぶっ飛ばされた堕天使が上体を起こし驚愕する
「く!こいつ化け物かよ!」
後ろで残っていた魔法を撃ち込まれる
敵がブラインドになっていて、腕をかすめる
「イッセーさんっ!に……、逃げて……!」
「うるさい!ピイピイとわめくな!このゴミがっ」」
レイナーレがアーシアを殴りつける
「うっ……」
「アーシア!!レイナーレエエエ!!!」
「イッセーさん、ケガを……、逃げて……」
「大丈夫だ!これくらいなんでもない!」
レイナーレに瞬時に近寄ると、レイナーレはすぐ空中へ逃げ攻撃範囲外に逃げる
「あはははは!なぁにショック受けてるのよ!?あなた達悪魔だって、眷属にするために無理やり悪魔にしたりしてるじゃない!」
「まったく自分の事は棚上げでよく怒ったりできるものね?」
「言いたいことは、それだけか……」
「イッセーさん、私はいいですから、逃げて……」
「は?何言ってんだよ……?アーシア?」
「こんな私の事を助けてくれてありがとう……。誰も知らない国に来て、言葉も通じなくて、一人で困ってた私に話かけてくれてありがとう」
「私は。もう……」
「何言ってんだ!?あきらめるなよ!?まだまだたくさん話足りないって!今度一緒に遊びに行くって言ってただろう!?」
「そうだ!学校に俺の友達がいる!紹介するよ!スゲーバカでスケベだけどさ!いいやつらなんだ!松田と元浜!それから斎藤っていう女子がいるんだ勝気なやつだけどいいやつなんだぜ!?」
「絶対アーシアと仲良くなれると思うんだ!そんでさ!そいつらと、俺とアーシアとでさ!カラオケとかボーリング行こうぜ!ゲーセンも楽しいぞ!?あれだ日本のジャンクフードとか食べた事ないだろ!?」
「アーシアの知らない楽しい事いっぱいあるんだって!」
「ありがとう、私この国に来てよかった。イッセーさんに知り合えてよかった。イッセーさんとお友達になれてよかった……」
「ダメだ……、ダメだダメだ!目つぶっちゃダメだって!なあ!目あけろって!友達になったばっかじゃねえかよ!俺たち」
≪ソフィア……!ダメだ、俺だ!ドライグだ!また会えたのだぞ!?逝くな!生きろ!生きてくれ!頼む!目を閉じるな!≫
「ほ、ほら!ドライグだっているぞ!生きてほしいって言ってるじゃんか!」
「……私の為に泣いて……くれて、ありが……とう……」
「アーシア?あれ、おい……、アーシアって……うそだ……アーシアァァァァァ!!」
≪ソフィア…………≫
「ア…………!?」
≪至ったか……相棒≫
「あはははは!死んだぁ~?死んじゃった~~?ま、当然よねぇ?魂と直結してる神器奪っちゃってるんだし……」
「なあ、神様……頼むよ……、この子はまだこれからなんだ。これから楽しい事を知るところだったんだ……連れて行かないでくれよ!」
「なんでこんなことするんだよ……!」
「安いドラマの見過ぎだろ!こいつ!割と演技派だったけど!」
「いやぁ~攻撃するの忘れるくらい役者だったぜ!」
「結構うけたよな!アーシア~~~~だってよ!」
「ビデオショップの100円コーナーでレンタルされてそうなやっすい茶番だよな!ハハハハ!!!」
「なんでだ……!なんでだよ……!俺が悪魔だからか?俺がこの子の友達になったからか……?」
「おい、しつけーぞ!演技派!酔っちゃってんの?君ぃ!」
魔法使いが魔弾を打ち出し、俺の腕をかすめる
「あー……、聞かねえか?おい神様よ?悪魔の願いなんて聞かねえよってか……!」
「プっ、こいつ頭おかしくなっちゃったんじゃないの!?キャハハハ!!」
「うるさいな、こいつら……。なぁ、そろそろ掃除始めるか?ドライグ……、これじゃアーシアがゆっくり眠れねえや」
≪ああ、そうだな……。ソフィアのために掃除をしなければならないな≫
なんでだよ、この子は何も悪い事してないんだろう?なんでこうなるんだよ……
神器持ちだってだけで殺されるなんて理不尽すぎるだろう!
「イッセー……!?」
「イッセー君!?」
「……っ!イッセー先輩っ!?」
「……!!」
俺はブーステッドギアに力を出現させる
「なによ?ちょっと神器持ってるからって!この人数相手にやろうっていうの!?戦力差もわからないの!?アハハハ!」
「お友達死んじゃって頭おかしくなったのか!?クソガキ!」
「っ!?これは……!!イッセー!?」
「ドライグ……!!俺に力を貸してくれぇぇぇっ!!!」
≪応っ!!任せろ相棒!!≫
神器を天に掲げ吠える
紅い魔力の奔流が俺を包む
禁手化・・・・ッ
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!』
紅い光が俺を包み、一瞬で赤い鎧が装着される
俺は敵の群れに瞬時に入り込みアーシアの周りにいる群れをなぎ倒す
「なっ!?何!?何よこれ!?」
≪貴様ら……、魂ごと滅ぼし尽くすぞ……!!!≫
教会の天井は吹き飛び、壁も崩れ落ちる、
「ドライグ!!アーシアと他のみんなに結界張れるか!?広範囲攻撃はみんなを巻き込んじまう!」
≪任せろ相棒!≫
アーシアが結界に包まれる 部員みんなの体も結界に包まれたはずだ
「アーシア、少し待っててくれよ?今静かにしてやるからな……」
≪……ソフィア……、少し待っていてくれ。今部屋の掃除をする……≫
「BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB!!!!!!!!」
≪「オオオオオオオオオオオオオオオ……!!!!!」≫
俺とドライグの二匹の龍の咆哮が教会に響きわたる
腕から凄まじい勢いの赤い魔力が放出し始める
俺を中心に先ほどの部室よりもすさまじい魔力。紅い光の柱が広がり辺りを包む
「なっ!?」
「何、これ……!?」
「ひゃ!やめ……」
「あ……や……!?」
攻勢魔力の放出で、見渡す限りの敵堕天使は消え去っていた
教会は結界以外の部分を残して全て消し去られていた
堕天使の大群は消し飛びレイナーレも息も絶え絶えな状態だった
怯え切ったレイナーレがガチガチと歯を鳴らしながらこちらをうかがっている
「おい、お前だけはわざわざ手加減して生き残らせたんだ……、アーシアの神器を返せ……!」」
≪ソフィアから奪った指輪を返せ……!≫
「ひ……!あ……!こ、これで許して……」
ボロボロになり完全に戦意を失ったレイナーレから指輪を受け取る
ガクガクと足が震え、小水を垂れ流していた。それでも逃げようとあとずさりをしようとする
あまりにも無様な元彼女へは何の感情も抱かなくなっていた
指輪を受け取る
「よし……、じゃあ、お前は死ね……!!」
≪消え去れ……!!薄汚い鴉めが……!!ソフィアの仇だ!!≫
「ひっ!?ゆるし──」
掌を堕天使に向け魔力砲を打ち込み、レイナーレは一片の肉片も残さず消滅した
周辺に敵が誰もいなくなったのを確認する
木場視点
僕たちはアーシアさんを助けに行ったイッセー君の援護としてきたのだけど
そんなものは必要なかったみたいだ……
イッセー君を追いかけていると凄まじい魔力を感じた、次の瞬間僕と小猫ちゃんの体に小さな結界が張られた事に気が付く
この一件に関係する堕天使をすべて彼一人で消し去ってしまった……
中級堕天使の数は合計60体以上……普通に考えれば僕たち全員でかかっても不可能な数だ……
いや、そもそも一人で突っ込むなんて無謀はまず考えない
そんな事がもし出来たなら、それは奇跡と言っていいんじゃないだろうか?
そんな誰もが無理だと諦める困難に彼は立ち向かっていった……理不尽を打ち砕くために……
腕力 体力 知力 財力 魅力……あらゆる力が世の中にはある
「力が欲しい」と誰もが一生に一度は願うだろう
しかし、欲するだけでは力を得ることは不可能だ
力を求め努力する事を続けられる者は少ない
その力で結果を出す事が出来る者はそこからさらに少ない
その結果を出し続けられる者はそこからさらに少ない
そして、その結果を超える結果を人は「奇跡」と呼ぶ
僕は今その「奇跡」を目にしているのかもしれない
いや、彼ならばその奇跡すらさらに超える結果を出してくれる
今僕の目の前にある「赤い奇跡」はそう信じさせられる光景だった
隣をみると、小猫ちゃんが青い顔で僕を覗き込んでいた
恐らく僕も似たような顔をしているに違いない
「……終わったみたいだね……」
「小猫ちゃん……」
「なんですか?祐斗先輩」
「僕は、強くなろうと思う。彼の背中を追いかけて……」
「奇遇ですね。私も同じ事考えてました……」
「それと、もう一つ誓った事があるんだ……」
「奇遇ですね、私もですよ」
「「イッセー君(先輩)は怒らせないようにしよう」」
僕と子猫ちゃんは深く頷きあいながら心に誓う
彼の逆鱗に触れないように と……
木場視点終了
一誠視点開始
祭壇に横たわったアーシアの遺体に目を向ける
レイナーレから受け取った指輪をアーシアの指にはめる
「なぁ、ドライグ……」
≪なんだ、相棒……≫
「二天龍の力で、なんとかできないのか。ドライグはすごいドラゴンなんだろ……」
≪悔しいが、できないな。死者を復活させる術は持っていない……!≫
「……そうか。すまん……」
そんな事聞かなくたってわかってたが……
もしそんなことができるのなら、一も二もなくドライグはアーシアを生き返らせているはずだ
だが、己の中の情けなさと、悔しさがそうさせた、半分以上が八つ当たりのような問だ
ポタッポタタッ タッ……
拳を握り締め血がしたたり落ちる
クソックソックソッ……!!なんでいつも俺は一歩足りないんだ……
俺は、修行して強くなって理不尽を打ち砕きたかった……
こういう自分の周りで起こる理不尽を打ち砕いて、理不尽に誰かが死ぬのを防ぎたかった
だがどうだ?実際は全部手遅れじゃないか。
全部終わってから無様に「たら、れば、から」を繰り返す。出てくるのは言い訳の代名詞のオンパレードだ
これじゃ一緒じゃねえか、前と……!!何も変わらねえじゃねえか……!!
「はぁっ……ふぅっ……ふぅぅぅぅぅっ……」
友人を失った哀しさが、力の足りぬ自分の不甲斐なさが口から洩れる
どうして俺はいつもこうなんだ、どうして俺は肝心な所で役に立たないんだ、どうして肝心な所で抜けてるんだ
俺がもっと早くここに到着していればアーシアは死なずに済んだかもしれない
案内をしていた時に、俺がもっと周囲を気を付けていればアーシアをこの教会に近づけずに済んだかもしれない
いや、違う。それ以前にあの堕天使が街にいたことはわかっていたんだから、入部した時点で殺しに行けばよかったんだ
俺がもっといろんな事を考えて行動できていれば、アーシアは死ななかった……
俺が……
≪相棒、ソフィアは……そんな風に相棒が自分を責める事を望まないと思うぞ?≫
そうか、そうだな。元旦那だもんな、ドライグは……
ごめん……
「イッセー?」
「っ」
ダメだ、ダメだ、ダメだ
こんな顔は見せられない。リアスを、主を心配させるな
「……」
ほら、何事もなく無事敵を倒し終わったと報告する義務が残っているだろう?
振り向く前に顔を戻せ、いつもの顔にしろ
「……終わったよ、リアス。無事に全部敵は倒した」
「……っ!」
リアスが駆け寄ってきて俺を抱きしめる
「なんて顔をしてるのよっ」
「……すみませんね、不細工な顔で……」
「そういう事じゃないわよ……!」
「……ごめん……」
リアス視点 堕天使殲滅前
イッセーをおいかけ祭壇の部屋に飛び込んだ時、信じられない光景を目にした
赤い鎧に姿を変えたイッセーが敵の群れに立ち向かう姿だった
中級堕天使が……あんなに……!イッセー!?
寒気を覚えるほどの敵の大群に一人で立ち向かっていく姿だった
いや!あんな数の堕天使を相手にしたら絶対にイッセーが死んじゃう!!
いくら何でも、イッセーがいくら強くても死んでしまう!!
「イッセー……!?」
「ドライグ……!!俺に力を貸してくれぇぇぇっ!!!」
彼がそう叫んだ時、彼が赤い光に包まれ、次に姿が見えたときは赤い鎧を纏っていた
自分のすぐ近くで、理解ができないほど恐ろしいことが起こっている……
自分の体に小さな結界が張られた事に気が付く
この魔力は……イッセーの……魔力……、間違いない、
この猛々しくも温かい赤い魔力は先日はぐれ悪魔をイッセーが討伐した時に感じた魔力だ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……………!!!!!!!!!!!
何?起ころうとしているの……
世界の終わり―――――
この目の前に起こっている現象を表現するならそれが一番納得する言葉
魔王級ですら超越するであろう凄まじい力によってこの教会全体はいや、街全体が揺れ空が鳴動していた
大気が振れ、空は先ほど部室で見た時よりもずっと赤く染まっている
ビリビリと魔力の波動が心身を揺らし、情けなくも膝をつき耐えるしかなかった
吹き飛びながら崩壊していく椅子、机、壁、床材……自分以外のありとあらゆるものを破壊しながら消し飛んでいく
巨大な赤い光の柱が目の前にそびえ立つ、天を目指しどこまでも、ただ高く高く天を衝く―――――
時間にして十数秒ほどの時間がただひたすらに長く感じられた
ひたすらに感じる畏怖
言い表わせられない恐怖がそこにあった、彼が自分よりも遥かに凄まじい力を持っている事は知っていたし、理解していたつもりだった
しかし、それを遥かに上回る現象を目の当たりにし腰を抜かしていた
光がひときわ大きくなり、教会全体を赤い光に包まれる、奥にいた多数の堕天使のオーラが消えた……
一瞬で、あれほどの数の敵を倒した……?中級堕天使60体以上を……?
目の前で起こった出来事を理解できず、頭が理解しようとする事を拒否する
私は上級悪魔であり、兄に魔王を持つグレモリーの出身
日ごろから魔王やそれに近しい強さの悪魔たちの力を感じていて、慣れていたはずだった
力に対して怯える事などありはしなかった
自分に向けられたわけでもない赤い魔力がこの世のなによりも恐ろしかった
この力の波動を向けられた相手は、どのような気持ちだったのか、どれほどの恐怖を味わったのか想像できない
この力は、以前一度だけ見たことがある「本気のお兄様」と同等……。いや……もっと激しい気がする……
力のレベルが違い過ぎて、どっちが上なんて比べる事すらできない領域だった
これが赤龍帝……イッセーの力……
これが、私のために強くなってくれたイッセーの力……
そうだ……、私は何を怖がっている?
彼は私のために血を吐くような修行をしたに違いない
イッセーはつい先日まで、危険な事からは無関係の生活を送っていた「ただの人間」だ
私に命を救われた恩を返すという理由で、
私の為に10年もの間己を高め続け得てくれた力だ
そこまでしてくれる忠義の配下にそんなことを思うのは失礼だ
今はこの誇り高い戦士に賞賛を、そして自分が惚れた男は最高だと浮かれるべきだ
光が収まり、静けさが漂う礼拝堂に入り、立ち尽くしているイッセーを見つけ声をかける
全ての敵を倒したイッセーに「すごいじゃない!イッセー!」と賞賛の言葉をかけようとした時だ
振り向いた彼の顔をみて愕然とした
見たこともないような泣き笑いのような、哀しい笑顔を見せたからだ
あれほど、いろいろな表情を日々見せてくれていた彼がだ
遠くからほぼ毎日のように、一年以上も彼を見ていた私だからわかる
私に気を使って、無理にいつもの顔をしているのだと
ああ、ダメだ。こんな顔をさせてはいけない
私のイッセーにこんな顔をしていてほしくない
そう思った瞬間私は駆けだしていた
リアス視点終了
一誠視点開始
少ししてから、リアスがアーシアの遺体へ目を向ける
「…………」
「アーシア……?ほら……、指輪取り返したからな……」
アーシアの手をとり指輪をはめる
もしかしたら、とおもったけど、指輪を返したからって生き返るわけじゃないよな……
「……彼女が……?」
「うん。アーシアだ……」
「……イッセー?少し下がっててもらえる?」
「えっ」
リアスが駒をポケットから取り出す
俺はリアスの後ろに下がる
「リアス?」
「彼女を、悪魔として転生させてみるわ」
「えっ……!」
「汝、アーシア・アルジェントよ。我リアス・グレモリーの眷属となりて我に付き従え!新たなる生に歓喜し、その生を謳歌せよ!」
リアスの持つ駒がアーシアの体に吸い込まれ、アーシアの体が一瞬まばゆいほどの光を放ち胸元に光が収束する
「ん……、あ……。イッセー……さん?」
アーシア……?アーシア!
「アーシア……!?」
≪ソフィア……!?ソフィア……!≫≫
「アーシアっ!アーシア!アーシア!アーシアッ!!!生き返った!?生き返ったんだよな!?アーシア!!」
思わず抱きついて泣き出してしまう
「良かった…、良かった……!生きてる、生き返った……」
「ああ、そうだ!アーシアは生き返ったんだよ!生きてるんだよ!アーシア!」
「その子は私の眷属として生まれ変わったわ。アーシア・アルジェント。あなたは私の眷属悪魔として生まれかわったの、これから私のために生きなさい」
「はっ、はいっ!ありがとうございますっ!ありがとうございますっ!!」
「リアス!!ありがとう……!ありがとう……!……ありがとう……!」
俺は泣きながらリアスにお礼を繰り返す
≪リアスグレモリーよ、我元妻を救ってくれた事へ最大の感謝を送る……!赤龍帝の名に賭けこの恩に報いる働きを見せようぞ……!≫
「二天龍に感謝されるなんて光栄だわ……、これからもよろしくね?イッセー?ドライグ?」
「ああ、もちろん!」
≪ああ、任せてくれ……!≫
「そして、アーシア……でいいかしら?あなたもこれからよろしくね?あなたの神器トワイライトヒーリングは貴重な神器だわ。あなたのこれからの活躍に期待してるわ」
「はいっ!あの、命を救っていただいて、ありがとうございます!
「えっ……、リアス……アーシアの事知ってたの?」
「この業界じゃ有名だもの、アーシアは……」
「そうなんだ……なんにせよ、良かったな!アーシア!ありがとう、リアス!!俺!今まで以上にがんばるよ!リアスの為に!」
「ふふっ。期待してるわよ?イッセー」
「はい!あの、ところで……そのぉ……」
「うん?」
「あの、ソフィアって?たぶん私の事ですよね?それで妻って……」
「あぁ……、そっか知らないよな……、ドライグ?いいよな?」
≪まあ、少し気恥ずかしい気はするが仕方あるまいよ≫
「実は、俺の神器……、ドライグ?出てこいよ」
ジャキン……!
「これなんだけどさ、この籠手に宿っている魂ってのが、二天龍の赤龍帝、ドライグってドラゴンなんだ」
「は、はい……」
「それで、このドライグってやつの前世で、ドライグが封印される前、現役ドラゴンだった時代にアーシアとドライグは夫婦だったみたいなんだよね……」
「それで、当時のアーシアの名前はソフィアって名前らしいんだけど……」
「えええっ……!わ、私全然ドライグさんの事覚えてなくてごめんなさい!」
≪それは仕方ない事だ。今のお前はソフィアではなくアーシア・アルジェントなのだからな≫
≪ソフィア、いやアーシアよ。俺は嬉しいぞ。俺はお前ともう二度と会えないと思っていたのだ、こうして姿は違えど出会えたのだからな≫
「あっ、はい!私もうれしいです!あぁ、でもなんとなくわかったような気がします」
「わかったって?」
「今日初めてイッセーさんと会ったのに、なんだかずっと昔から知っているような懐かしい感じがしていて……」
≪魂の一部が覚えているのかもしれんな……≫
「さて。そろそろ引き上げようとおもうんだけど……、ちょっとアーシアには今回の件の事情を聞かせてもらいたいし、
安全な場所へアーシアを連れて行きたいし、冥界へ一緒に私と来てもらおうかしら」
「はっ、はいっ!」
「イッセー?」
「はいっ?」
「……こら。」
むにっ と頬を引っ張られる
「……敬語はなしだったんじゃなかったかしら……?」
「あっ!?えっと、いやわかってるよ!?リアス!」
「よろしい……いい子ね?ところでイッセー?」
「うん?何?」
両頬に手を添えられ、撫でられる
「今回相当な無茶を通させたし、相当な被害をだしたから、修復とかごまかしにも手間もかかりそうなんだけど……」
「あっ!?えっと、ごめん……、やり過ぎた感じ?俺……」
「ちょっと私を抱きしめなさい」
「えっ?そんなんでいいの?」
「ええ」
「じゃあ、失礼して……」
「いいのよ、ん……。あぁ、安らぐわぁ……。ねぇ?これは一人言なのだけどね?
腰に手を回して、髪をなでたり。頭をなでてくれたりすると、女の子って喜ぶと思うのよ?」
「こ、こう……?」
「……む~……!ぷん!」
アーシアがこっちを睨んでる……
「ア、アーシア……?」
「知りませんっ!お二人がべったりくっついてるの見ると、なんだかすごく納得いかない感じがしてイライラするだけですっ」
リアスの髪を撫でながら子供をあやす感じで甘やかす
「んっ、そうそう……、そんな感じ。いいわね、この時間は本当に癒し空間……」
「あと、髪とか頭を撫でながら、「よく頑張ったね、偉かったね」とか言ってくれたりすると効果倍増ね?」
「……よく頑張ったね……、偉いね、リアス……」
リアスの頭をなでながら囁くように言う
「……ふふっ!これでしばらく私生きていけるわ……」
朱乃視点開始
リアスに3人の堕天使の捕縛と冥界への転送を命じられ、すべての転送が終わり教会の警戒に当たりだして少し経った頃に「ソレ」は起こった
紅い強烈な光と共に巻き起こる暴力的な波動
先ほど部室で押さえつけられた時以上の波動が教会を中心として巻き起こっていた
教会までは少し距離があるというのにその波動の凄まじさは自分のところまで届いていた
「あ……ぁぁ……」
私はその強烈な波動に制圧され、身も心も掌握されていた
全身が心が震え、圧倒的な力の前に腰を抜かしその場にへたり込んでいた
世界の終わりだと、おとぎ話の破滅の王がこの街へ来たのだと言われれば納得する状況だった
大気が鳴動し、ビリビリと振動が体の芯まで伝わって来る、超大型台風のような立つ事すら困難な力が全てをなぎ倒す
空が血の色よりも濃い赤で染まり、町全体が震えている
その現象の中心が目の前にそびえ立つ巨大な赤の魔力の柱 赤く輝く巨大な柱は教会から天へ上っていた
その魔力の奔流は私の心身を揺さぶり、魔力の波動を心身にねじ込まれ完全に屈服させられていた。
私を制圧し切った相手に今何をされても何も抵抗できず、全てを受け入れるしかないだろう。
その絶対的な力で護られていたと知った時至上の喜びを得たのは事が済んでからだ
いかなる理不尽をも打ち砕くだろう絶対的な力。
自分では絶対に勝てない強者の存在を目の当たりにした日だった
「兵藤一誠」
初めて彼の名前を知ったのは彼が入学してすぐの事
リアスが面白い子がいるといい、見物がてら一年の教室へ見に行った時の事だった
そこにいたのはごく普通の男の子、少しスケベそうな表情が印象に残る。しかしそれも年相応と考えれば何も思わない
一度目の評価は「この男も他の男と同じ……、一皮むけば下品な面をさらけ出すであろう男」
最も彼の場合はその点を下手に隠そうともしていなかった分だけ好感は持てたがそれ以上の何かではない……
彼の行動が面白かったから、リアスと一緒に彼を観察して楽しんでいた……
その時はそれ以上の感情は生まれなかった
それから一年が過ぎ三年に上がったころ、彼はすっかり学園の有名人になっていた。もちろん悪い意味でだが
その頃にはすっかりリアスは彼の事が気になってしまっていて「困った弟ね」なんて苦笑いをしながら彼の話をしていたのを覚えている
それから、数日後……彼が堕天使に襲われ、リアスの眷属になったと聞かされた時は驚いた
こんな偶然もあるものだと
そして眷属になった次の日、彼は部室へやってきた
部室に来た彼は特に変わった様子もなく、普通の男子だった
噂で聞いた「スケベで覗きの常習犯で最低なセクハラ発言ばかりの問題児……」という彼の評価とかけ離れた印象
少なくとも自分が今まで観察と称し見てきた彼の姿はなかった
眷属として入部した彼はとても誠実で、噂にあるように女性の胸など一切見ない。
入部の日にはぐれ悪魔に襲われたクラスメイトを守った事もそうだ。
彼は10年もの時間をかけてその力を得たという、その点はリアスが羨ましくも思えたし、憧れもした
少なくとも彼を取り巻く噂のような印象は受けない。
二度目の評価は「誠実で自分よりはずっと強い男……」
そして今日、三度目の彼の評価が変わる
──────「宝を守る守護者であり絶対的強者」という評価に
彼の魔力の凄まじい波動に触発されて、吐く息は熱く敏感になった体は火照り、下腹部は熱くジンジンと痺れるほどの警笛を鳴らしていた
いつの間にかショーツは恥ずかしいほどグシャグシャに濡れていて、座り込んだまま絶頂したらしく地面を濡らしてしまっていた
だけどこれは仕方がない事、十数秒という短い時間ながら凄まじい波動にあてられ自分の全てを占拠され、蹂躙され続けていたのだから……
溺れるほどの情欲を感じる異性
そして自分の全てを預けても自分を守り切ってくれる確信できる男性にやっと出会えたのだから
彼の余りある魅力と価値、自分を制圧し切った力、
自分を夢中にさせる男と出会えた事に歓喜する
(しばらく、シーツを変える頻度が高くなりそうだわ……)
「リアス……」
連絡用魔法陣を展開させ主に連絡を取る
「朱乃……」
「……リアスが彼に呼び捨てで構わないと、敬語は無しでいいと言った意味が今理解できたわ……」
「……でしょう?……私もここまでだとは思わなかったけどね……」
「これを想像出来る人はいないと思うわ……」
「……でしょうね……、周囲の警戒気を付けてね」
「わかったわ」
そういい連絡用魔法陣を終了させ嘆息しながらつぶやく
「はぁ……、リアスは男の子を見る目があるわね……。悔しいからリアスには言わないけど……」
私が彼を手に入れたい。私が彼の「一番の宝」になりたい。私が宝を見つけた日だった
新しい目標を掲げながら、私はリアスたちのいる教会へ歩き出した
朱乃視点終了