イオは光の中、急速に方向感覚が失われてゆくのを感じた。
風に揺られる木の葉のように、不安定に体が、心が揺さぶられる。
やがて、時間の感覚までもあやふやになり、意識までもブツブツと途切れ始めた。
けだるい朝に、あと5分だけを繰り返して二度寝、三度寝をするときのようだ。
「う、くうぅっ……!?」
短く呻いた瞬間、イオを闇が襲った。
本格的に気を失ってしまったのだ。
テレポート酔いと呼ばれる、よくある現象である。
数秒だったのか、数時間だったのか。
起きるまで理解できないほど、深い眠りを断ち切ったのは、リリアの声だ。
「イオ君。イオ君。そろそろ、目を覚ましてもいいんじゃないか」
「はっ……あ、ええっ……?」
イオは、背筋を震わせながら、意識を取り戻した。
リリアの声は、ベンチで話していたときとは全然違う。
甘く、引きずり込まれるような魅力であふれていたのだ。
そんな声が耳元で聞こえては、イオが背筋を震わせるのも無理はない。
「ここ、どこ……それに、声、近っ……!?」
寝起きの気だるさが吹き飛ぶほどの驚きが、イオを貫く。
高そうな家具の並ぶ部屋の中、ふかふかのベッドの上で寝転んでいたからだ。
それも、リリアと寄り添うかたちで、二人とも全裸……ではなかった。
イオのちんぽだけが、リリアの手と小さな布切れで包み込まれているのだ。
「おはよう。かわいい寝顔だったよ」
リリアはそう言うと、ちんぽを握る手を布越しに軽く上下させた。
しゅっ、しゅっ、と摩擦音が響き、オナニーとは比較にならない快感がイオの体を駆け巡った。
「はっ、ひぃ、なんでぇ……?」
イオの『なんで』には、様々な疑問が含まれていた。
なんでいっしょに寝ているのか、裸なのか、手コキしてくれているのか。
そして、なんで……体が、まともに動かないのか。
こんな状況、よほど変わった人間でない限り、取りうる行動は二種類しかない。
混乱して動けないか、混乱して飛びのくかだ。
イオは後者の行動を取ろうとしたが、体が全く動かなかった。
そのせいで、結果的に前者になってしまっているのだ。
「なぜ、なんて野暮なことは聞かないでおくれよ。わたしはね、君のおちんちんをかわいがってあげたいんだ。今は、それ以外のことは考えたくない」
一方のリリアは余裕たっぷりに言うと、イオのちんぽをしごき続ける。
強く握っているわけでも、激しくしごいているわけでもない。
弱く、淡いが、イオの弱い場所を知り尽くしているかのような動きで責めてくる。
しかも、イきそうになると刺激を弱めるのだ。
イオは文字通り、手のひらの上でもてあそばれていた。
「んあっ、はぁぁ……ま、まってえ……こ、この匂い、もしかして……」
イオは、弱々しく喘ぎ、くんくんと鼻を鳴らした。
つい最近、嗅いだばかりの匂いがすることに気付いたのだ。
そう、洞窟探検で受けた、麻痺性のガスである。
「すばらしい観察力だね、とても好ましいよ。イオ君」
リリアは口では褒めながら、手はちんぽの根本をきゅっと抑え込む。
まだ射精してはダメだ、許さないと、先ほどよりも強く態度で示したのだ。
「だが、いくら君でも動けないよ。入隊試験のときよりも濃度を強め、発情効果も加えて魔法を発動させたからね。常人なら嗅いだだけで射精したり、失禁するほどの濃さだというのに……君ときたら、本当にタフなんだね。すごい素質だよ」
うっとりと褒めたたえながらも、リリアの指はちんぽをいじめてゆく。
力を入れたり、緩めたりして、射精という行為を支配していることを誇示してくるのだ。
「はっ、あっ、あえっ、ま、魔法……罠じゃなくて?」
「そうだよ。高位のサキュバスが使う魔法さ。君も、一度は聞いたことがあるだろう。悪魔、天使、竜、あるいは神。そういった、人を超えるものの力を借りて戦う英雄の物語を……」
リリアの言葉に、イオは頷いた。
確かに、聞いたことはあるし、そのような本を読んだこともある。
しかし、詳しく思い出すことは無理だった。
リリアから受ける快感が、あまりに強すぎるから。
ちんぽをいじめられ、支配されていることすら、気持ちいいのだ。
これが布越しでなければ、とっくに暴発していただろう。
「……わたしが素手なら、とっくに射精していただろうね」
リリアは全てを見透かして、妖しく笑った。
イオは、心まで手のひらの上で転がされていることを実感し、強く赤面する。
「でも、許しておくれよ。手加減して、いじめてあげたかったんだ。イオ君のかわいいところを、たくさん見たかったんだ」
しゅっ、しゅっ、しゅっ、しゅっ。
リリアがちんぽの根本を拘束するのを止め、手コキを再開する。
それまでと違い、明らかに少しずつ、勢いが強くなってゆく。
完全に、射精させるための動きだ。
「ひっ、んんんっ、で、でます、だめ、それ以上すると、出ますっ」
イオはびくん、びくんと下半身を痙攣させた。
快楽によって神経が刺激された、意識に反する動きである。
ちんぽからは先走りが溢れ、先っぽを包む布地をじっとりと濡らす。
「いいよ。わたしのパンツに射精しなさい」
どびゅるるるるるるるるぅうううううううううううっ❤️
リリアの許しと、布の名前を告げる言葉に貫かれながら、イオは絶頂した。
女性の下着に出すという、少年でもわかる変態行為。
快感と背徳感と、喪失感が力を合わせて、ザーメンをちんぽから押し出してくる。
こんな射精を味わったら、今までの自分が終わってしまう。
そんな危機感が、イオの心に微かな反抗心を芽生えさせるが……
「やっ、やっ、やだああああああああっ❤」
イオの声は甘く、抵抗は口先だけだった。
その頬は涙に濡れ、泣きながら腰を浮かせて、長く、長く、射精を続けた。
びゅうっ❤びゅるるっ❤びゅうううー……っ❤
「ふふっ、イオ君。おちんちんから白いおしっこ、いっぱい出たね」
リリアは最後の一滴まで搾り取ると、ザーメンが染み込んだパンツをそっと剥ぎ取る。
ねっとりとした濃厚な糸がパンツとちんぽを未練がましく繋いでいたが、それもやがて千切れてしまった。
「おむつに漏らす赤ちゃんみたいで、とってもかわいかった……思い返すだけで、何度でもときめいてしまうよ」
「ひっ、ひっ、や、やだって……言ったのにぃ……やだってぇ」
「この程度でやだ、なんて言っていたら……次はどうなってしまうのかな」
リリアの言葉に、イオは辛うじて腕を動かし、涙を拭う。
「つ、次って……ひんっ!」
そのまま、イオは何をする気か問おうとして、また鳴かされた。
リリアの指が、さっきのザーメンを絵の具にして、イオの下腹部に紋様を描き始めたのだ。
しかも、描いた端から紋様が妖しく、ピンク色の光を放ち……どくん、どくん、と脈打つような快感を与えてくる。
どう見て、感じても、ただの落書きや遊びではない。
「そうだよ。君に淫紋を刻むんだ。わたしの肉奴隷だというサインであり、しるしさ」
リリアは当たり前のように言うと、すらすらと紋様を描き上げてゆく。
ハートマークを中心とした、かなり複雑で妖しい紋様だ。
それでも指先の動きに迷いがないのは、完全に暗記していることを示していた。
「ま、まってぇ……ぼ、ぼく、いるんです。好きなひとがいるんです。だからぁ……まってぇ」
イオは快感と恐怖に震えながら、最後の抵抗に出た。
この状況ではあまりにも儚い、人道への訴えであるが、意外にもリリアは動きを止めた。
「ほう。好きな女性か、どんな人なんだい?」
そして、リリアは問うた。
ベンチで座って話をしていたときのような声だ。
いやらしさなど、微塵も感じない。
「はっ、はっ……花屋さんの、近所の花屋さんの、お姉さん。もう、引っ越しちゃったけど……い、いつかまた、会いたいなって思って。兵士になったら、立派になったら、手紙でも出そうかなって思ってて、それで……と、とにかく、好きなんです。その人が」
イオは体は動かぬまでも、少し冷静になって話を続けた。
その言葉は、全て事実だった。
純粋な愛で、リリアを止めたかった。
心の底から、止まってほしかった。
そうでないと、これまでの自分が終わってしまう。
そんな恐怖が、イオを突き動かしていた。
「そうか。すてきだね」
リリアは、にっこりと微笑んだ。
イオは、安心と恐怖で、虚ろに笑い返した。
そして、これで止まってくれるのではと、淡い期待を抱いてしまう。
「イオ君のお姉さんへの気持ち、わたしが踏みにじってあげるよ」
だが、リリアは笑みの質をいやらしく変え、イオの期待を打ち砕いた。
そして、肉奴隷として一方的な所有契約を結ぶべく、淫紋に魔力を注ぎ込む。
さきほど、指の動きが止まったのは、イオの話が効いたのではない。
単純に、淫紋を描くのが終わっただけだ。
イオの顔が一瞬、恐怖と絶望に染め上げられる。
「おっ……おおっ❤おおおおっ❤おんおぉおおおおおおおおおぉ―――――――――っ❤❤」
どびゅるるるるるっ❤ごぶびゅるるるるぅうううっ❤
だが、それは本当に一瞬だった。
イオの顔はすぐに快感でぐずぐずに溶け、体は痙攣しながら思い切りのけ反り、ちんぽはザーメンを噴水のようにまき散らす。
「やっ❤やああっ❤やだああっ❤お姉ちゃん、おね……」
ぶびゅうううっ❤びゅうううううううっ❤
びゅるっ❤びゅるるっ❤どぴゅるるるるるるるるっ❤
イオの変化は、心にも及んだ。
花屋のお姉ちゃんとの記憶が消えたわけではない。
なのに、好意だけが、射精のたびに引き裂かれていく。
びりびりに破り捨てられ、別の好意が強制的に侵入してくる。
心が、リリアの支配と淫欲に侵されてゆく。
「おっ❤おおっ❤お❤」
やがて、イオの瞳がぐるりと白目を剥いた。
舌を突き出し、射精を続けるその体に、さらなる変化が現れる。
淫紋を中心に、肌がどんどん褐色に染まっていくのだ。
体つきや顔つきも、これまでより中性的に変貌してゆく。
やがて、イオという名の少年は、媚びたオスでありながら、媚びたメスの気配もまとう、性玩具へと変わり果てていた。
「おっ……❤あっ、おあっ……❤」
びゅるっ❤
やがて、射精を終えたイオは、のけ反った体から力を抜く。
とさりと軽い音を立て、ベッドに横たわった姿は、自らのザーメンで汚れていた。
あまりにも惨めで、いやらしい。
その姿は、肉奴隷という言葉があまりにもふさわしかった。
「イオ君。イオ君。そろそろ、目を覚ましてもいいんじゃないか」
リリアは、そんなイオに最初と同じ、目覚めの言葉をかけた。
噴水のように吹き上がったザーメンは、リリアの体も白く汚している。
「
イオは、うれしそうに返事をした。
もはや、目は完全に覚めていた。
これまでの、人間であった自分ではない。
人である前に、リリアの奴隷である自分への目覚め。
新しい未来への一歩を踏み出したイオは、かつてない幸せに満たされていた。