亡国機業との密会の翌日の午前6時、集合時間の3時間前に宗隆は目が覚めた。
「・・・。」
昨日のことを思い出す。自分に見せられた光景を思い出す。そしてスコールという女に言われたこと。
「世界を・・・支配する・・・。でも、セシリアや簪、シャルロット、ラウラは・・・」
考えてしまう、向こう側についた時にみんなと殺し合うことを。
「きっと、殺せない・・・。だけど、俺の力は・・・」
人を殺せる力、ましてやこの世界にただ一人だけの存在。これが合わさればあとは分かり切っていることで。
「っく、ううう・・・」
己の無力感に苛まれる。前世では何ともない一般人だったのだ。戦争も、紛争も何も知らない平和で豊かであった一般人だったのだ。
「知らない!知らない!戦争なんて!殺し合いなんて!!」
脳裏に浮かぶ果てしない戦争の影、ISを使い人が簡単に死ぬ。戦争が戦争を呼び、憎しみを呼び、希望なんてものはない世界。
「そんな世界、冷たいよ・・・。そんな世界にはしたくない・・・けど!けど!」
自分がこちら側にいては迎えてしまうかもしれない未来、そして向こう側に行けば大切な人と殺し合う未来。
「やだよ!やだよ!そんなの!だけど、ここに残るのは怖いよ・・・。」
恐怖にかられる。避けられない戦い。今まではまだスポーツの範囲内だと思っていたがもはや違う。兵器と兵器のぶつかり合いの殺し合い。どちら側についてもそれは避けられない。
「にげ・・・よう・・・。できるだけ遠くに!!」
宗隆は財布とスマホだけを持ってホテルを駆けだした。できるだけ遠くに逃げるために。
「宗隆さんがいない!?」
「うん!今さっき様子を見に行ったらこれが・・・」
宗隆の残した書置きを見る。
『探さないでください。さようなら』
「ま、まさか!嫁はもしかして!」
「恐らく宗隆さんのことでしょう。私たちの前から姿を消すのが一番だと勘違いなさったのですわ」
「このことはほかの人には・・・」
「言わないほうがいいですわね」
「先生にも?」
「恐らく、隠し通せるまで隠し通しましょう。」
「それじゃあ、次に宗隆を探さないと・・・」
「皆さんで手分けして探しましょう」
4人で探す地区を決めて、探すことに。そしてセシリア達4人の宗隆捜索が始まった。
午前8時、あれから走ったり歩いたりで逃げている宗隆、疲れたのかちょっとした神社にあるベンチに座っている。座っていると次第に迷いが出てくる。
「・・・・。」(ほんとに逃げる・・・?あいつらを置いて?でも逃げなきゃ俺は!)
「逃げなきゃ俺は・・・!でも!俺が逃げてもあいつらは!あいつらは!」
そう、宗隆がいようがいなかろうがあの女の組織は止まらない。むしろ宗隆がいないことを好都合とするだろう。
「でも!でも!」
殺し合いになるのは確実であり、またそこで自分が死んだらあの冷たい世界の始まり。だが自分が相手を殺せばニュータイプは殺し合いの道具としか見られなくなる。そうなればISの二の舞になってしまう。
「どうして!どうして!俺は、どうしたらいいんだ・・・。答えてよ・・・誰か・・・」
「はて?珍しい顔じゃの?」
思い悩んでいるところに一人のおじいさんがやってきて声をかけられる。
「お前さん、どこから来たんじゃ?」
「東京です」
「そうかそうか、それはまた遠いところからおいでなすったの」
「ええ、まぁ。」
「にしてお前さん、何か悩んでいるみたいじゃが?」
「そ、そう見えますか?」
「ああ、見えるぞ。お前さんの悩みは人生にかかわることじゃないか?」
「うっ!」と痛いところを突かれたようなリアクションを取る宗隆
「ほほほ、そうかそうか。若いもんだけの悩みじゃのお」
「わ、笑わないでください!これでも内容は重いんですから!!」
「それはすまんかったわい」
笑いながら謝るおじいさん、
「なんなら、わしが聞いてあげてもいいんじゃぞ?ほれ、年上のアドバイスとでも思って言ってみぃ」
「・・・。もし、もしですよ?特別な力を持ったとして、それを使えば世界を支配できる。って言われたらどうしますか?」
できるだけオブラートに包み相談する。
「世界を支配できる力かの?それはそれは難しい相談じゃのぉ・・・。ふむ、一つ言わせてもらえばなんとつまらないことじゃな」
「つまらない、とは・・・?」
「つまらんのぉ。その世界には友達はおるのか?」
「え?とも・・・だち・・・?」
「ああ、友達、友人はおらんじゃろ。世界を支配するんじゃ、何かを気軽に相談できる友人も、バカ騒ぎで盛り上がれる友人もおらん世界になるんじゃないかい?」
「友達・・・。友人・・・。」
「強いて言うなら対等な友人じゃな。対等であるから言えること、対等であるからバカ騒ぎなんかで盛り上がれる。そういうもんじゃて」
「でも、俺が行ってるのは特別な力で支配してるわけで・・・」
「これこれ、論点を変えてはいかんよ。だが、その特別な力とやらはわしからすればただの人が誰しも持っている長所のようなもんじゃよ」
「人の長所・・・」
「そう、特別な力を持っている、使えるというただの長所。それ以外はほかの人となんも変わらない。もちろん短所もな。長所や短所は使い方でどうとでもなるのじゃよ」
「使い方・・・?」
「使い方を間違えれば人を傷つけるが正しく扱えば人を守れたり、良き友人になれたりもする。お前さんの言う力って言うのはそういうもんなんじゃないのかね?」
「力を正しく・・・」
「人が持つ力は主従や優劣をつけるものではなく、むしろお互いがお互いを助けるためのものだとわしは思う」
「助ける・・・」
「ならお前さんはすべてのことが完璧にこなせるかね?」
「・・・。」
首を横に振る宗隆。
「そうじゃろ?お前さんにできてわしにはできないことがあったり、わしにはできてお前さんにはできないことがある。じゃから、お互いが持つ長所で助け合うんじゃよ」
「助け合うですか」
「そうじゃよ、助け合うからこそ人は生きていける。そのつながりがあるからこそ良き友人ができるんじゃよ。じゃから、一番大切なことは世界がどうのこうのではなくて自分の周りにどれだけ良き友人がいるか、じゃの」
「良き友人を作る」
「良き友人として多くがつながれば、おのずと世界はより良きものへ変わっていくのじゃからな」
「・・・。少し、見えてきた気がします・・・」
「そかうそかう、ならばおのずと答えにたどり着けるぞ。ではアドバイスはここまでじゃ。答えはお前さんがしっかり見つけなさい。そしてその答えに後悔せんようにな」
「はい、後悔はしないと思います」
「そうかそうか、というより今は何時じゃ?」
聞かれたのでスマホで確認、9時と表示されていた。
「9時ですけど・・・」
「それは、いかんいかん!家でばあさんが朝ご飯を作って待ってるんじゃった!」
「そ、それではここで・・・」
「お前さん、見たところ朝ご飯は食べてないじゃろ?何なら家で食べて行ってくれ」
「そんな!そんなことまで!」
「いいんじゃよ、ここからは友人のおせっかいだと思っておくれ」
「わ、わかりましたよ。では朝食をご一緒させていただきます」
「ばあさん、わるいのぉ。少しおそくなってしまって」
「いえいえ、いいんですよ。宗隆さんもお食べになって!」
「あ、ありがとうございます」
今はさっき知り合ったおじいさんの家でご飯をごちそうになっている宗隆。
「それにしても、3人で食事なんて久しぶりね」
「そうじゃの~。息子が出て行って盆と正月しか帰ってこないんじゃからの~」
「そ、そうなんですか。」
「お前さんの年齢からすればわしらの孫じゃて、ほれどんどん食べて元気になりんしゃい」
「は、はぁ・・・」
進められるがままに料理を食べる。味はとてもおいしかった。とてもあったかい味がした。
「それじゃあ、おじいちゃん。おばあちゃん。もう戻るね」
「おう、それじゃあの。また京都に来たときは家に遊びに来ておくれ」
「いつでも、いいですからね?」
「はい、また今度お邪魔します。今度は恋人たちも連れて!」
「あらあらまあまあ、それで恋人たちということは?」
「お恥ずかしいながら・・・恋人は4人です・・・」
「ははは、宗隆君も隅にはおけんのぉ!」
「それじゃあ、結婚はいつにするの?」
「け、結婚は・・・、学校を卒業してから・・・ですね・・・。」
「そうかそうか、ならわしとばあさんはそれまで元気でいきておらんとな」
「そうですね~。宗隆君の結婚式、是非見てみたいですね。」
「わしらはいつ迎えが来てもおかしくないのじゃがな!」
「いつ来てもってもうすぐじゃないですか~。」
「では、その時生きていたらお呼びしますね」
「それは助かるわい」
「お願いね」
そして、今度こそ家を出る。
「じゃあ、また今度会いに来るね。行ってきます!」
「「行ってらっしゃい」」
午前10時半、宗隆はおじいさんとおばあさんに見送られながら学園の修学旅行に戻ることに、その足は出てきた時とは逆にとても軽い足取りだった。
ほどなくして、道を歩いているとラウラにばったり出くわした。
「む!見つけたぞ、嫁よ!!」
見つけた瞬間こちらに駆け寄って来て宗隆を捕まえる。
「嫁よ!心配したのだぞ!!」
「ごめんね、ラウラ」
「それより!連絡だ、少し待っていろ!」
ラウラは手早くスマホを操作し4人に宗隆を捕まえたことを知らせた。
「それでは嫁よ、集合場所に行くぞ」
「りょ、了解・・・。ラウラ、これ外して・・・」
「ダメだ、今日の朝貴様は逃げたのだ。逃げないように手錠はそのままだ」
というわけで宗隆はラウラに連行されていく。
「宗隆さん!探しましたのよ!!」
「宗隆!心配させないでよ!!」
「宗隆!もうこのおバカ!」
「散々な言われようだな・・・」(´・ω・`)
ラウラが言う集合場所に行くと宗隆は残りの3人からとてつもないバッシングを受ける。やれ心配しただの、おバカだのいろいろ。
「それじゃあ、僕たちもはい!」
「え?なんでお前らも・・・」
「だって、こうしないとね。心配した分の罰です」
「そうですわね。これぐらいのことをして償ってくださいませんと」
残りの3人からも手錠をかけられました。そのあとは・・・
「宗隆さん、今度はあっちでしてよ?」
「宗隆、今度はこっち!」
「宗隆!これ見て!」
「嫁よ、これなんかうまそうだぞ!!」
恋人4人に振り回されました。だけど、宗隆の顔は・・・
「ちょ、ちょっと、引っ張んないでって!」
「これ、ネットで無茶苦茶おいしいって評判のところだぞ」
「ああ、これはうまい予感しかしないな・・・」
今まで見れないでいた満面の笑みだった。そして、それを見た4人は何があったのだと問いただすが・・・。
「いやね?とってもいい友達ができたんだ」
の一点張りであまりわからなかった。そして突然、宗隆は・・・
「ねえ、みんな。これからも・・・俺と一緒にいてくれる?」
「突然ですわね。ですが、もう決まっていますわ。わたくしは宗隆さんとずっと一緒に居ましてよ?宗隆さんが突き放してもついていきますから」
「私も、ずっと一緒に隣にいる。ずっと手をつなぎ続けてあげるからね」
「僕もおんなじ。ずっと一緒にいて手を握って、死んでも離してあげないから」
「何を当たり前のことを言っているのだ?お前は私の嫁だ、夫である私が嫁とずっと一緒にいることは当然だろう」
「そっか、ならいいんだ。俺も・・・みんなとずっと一緒に居たいから。」(おじいちゃん、答え見つかったよ!)
「ふふふ、おかしなことを言う宗隆さんですね」
「まぁ、いつもの宗隆に戻っていいけどね」
「いつもが一番だからね」
「嫁は嫁だ。何も変わらないだろう」
宗隆は答えを見つけた。自分だけの答えを。そしてその答えはいずれ世界を動かす答えとなる。それは以外にも近い運命なのかもしれない。