「……」
エルザは、ギルドまでの道を走っていた。ここまで、男達とは何人か会うことはあったが、女性達と会うことはなこった。例外として、ジュビアとだけは会っていたがそれ以外のギルドの女性達の姿が殆ど見えなかった。
「……嫌な、予感がするな」
しかし、だからといって歩みを止めることは出来ない。今自分達がやることは、ギルドに向かうことである。今、
フィオーレ王国を包んだ光。その光が止んだあとに、フィオーレ王国の土地は無茶苦茶になっており、ギルドも街中にたっていたのが切り立った崖の上に鎮座している状態になっているのである。そして、その際に全員の位置が入れ替えられ、なおかつギルドに残っている面々ですら外にはじき出されているというのが現状である。
「っ!!誰だ!!」
「流石に鋭い……しかし、それだけの事」
「……誰だ、貴様は」
走っていたエルザは、目の前にたちはだかる女性に殺気と疑問をぶつけていた。まずこのタイミングで目の前に立つというのは、アルバレス帝国の人間だという予想を立てているエルザ。
そして、その予想は当たっていた。目の前にいるのは、アイリーン・ベルセリオン……アルバレス帝国が誇るスプリガン
「くくく……エルザ、そなたは私……私は、そなた……」
意味深な発言を残すアイリーン。緋色の髪、自分と似たような紅く赤いその髪に、エルザは自分の中の気持ちを抑えきれなかった。
「……誰だと、聞いている!!」
「もう分かっているのだろう?それとも、分からぬ振りか?自分の中の気持ちが、警鐘を鳴らしておるのだろう?」
「くっ……!」
まるで見透かされたかのように、エルザはその不安をかき消すかのように剣の一撃を重くしていく。
「我が名はアイリーン・ベルセリオン……そなたの母だ」
「私の親は……家族は、妖精の尻尾だけだ!」
「ふふふ……本当に、そうなら良いな」
全てを見透かしているかのような発言に、エルザは歯を噛み締めていた。自分の不安を、全て見透かされて言葉にされている感覚は、言いようのない不快感があった。
「本当に家族だと思っておるのか?」
「何が、言いたい…!」
「いくらなんでもおかしいとは思わんかったのか?ここまで、ほとんど同じギルドどころか女性魔導士を見ていないことに」
「貴様が何かしたのか!?」
「いいや、こちらでは何もしていない……とは言えないな。部下がやった事なので、イマイチ把握していないというのが現状なものでな」
「何をしたァ!!」
エルザは、叫びながらアイリーンに切りかかろうとしていた。しかし、アイリーンはその一撃をその杖でいなしていく。そして、アイリーンはエルザに語っていく。
「簡単な話さ、我が軍の男達は捉えた捕虜の女達に性処理を強要しているのだ。無論、それに関してはそちらも行っていることだがな?」
「な、にっ……!?」
「おかしな話ではないさ、人間は戦争する時にその倫理観を極限まで低くする……人殺しをするのだから当たり前だな。
それと同じように、下がった倫理観では……『敵ならばしてもいい』で色々な横行が許されてしまう」
「っ……」
「我が軍もしていることだが……少なくとも、ギルド妖精の尻尾の男も私は見かけたな。しかも、同じ仲間であるはずの女性達を犯す要員の一人としてな……それでも、家族と呼ぶのか?」
笑みを崩さないまま、アイリーンはエルザに問掛ける。エルザは、その事実に、頭が一瞬真っ白に染まっていた。嘘だと糾弾するのは、簡単なことである。しかし、単なる精神攻撃目的のそれにしてはあまりにも自慢げである。それに、エルザ自身その不安が心の奥底にあったので、純粋に否定が出来ないのだ。
「くく……まぁ、男が女を求めるのはいつの世も同じことだ。丁度いい……そなたには、私の過去を見て
「っ!?何を━━━」
「エンチャント、メモリー」
その一言の後、エルザは自分の意識が途切れる。最後に見たのが、少し悲しそうに微笑んでいるアイリーンの姿だった。
「辞めてください!私の中には、子供が……」
「へへ、止められるかよ」
「お前よくこんなのと交わる気になるよなぁ」
「体つきだけはいいからな、目を瞑ってやりゃあ良い便器だよ」
何かに怯えるような女の声と、ゲスな男達の声が響いてきていた。その記憶は、自分視点ではあるもののエルザにはこのような記憶はなかった。恐らく、甲高い声の持ち主が自分の視点となっている人物のものなのだろうとエルザは理解した。
「つっても、この女が言うには既に貫通済みなわけだろ?」
「まぁ、確かにそれ考えりゃあ処女を犯す面倒くささはねぇか……見た目も、まだ人間を保っているしな」
どうやら、彼女は人間ではないらしい……と、思っていたところで現実世界からのアイリーンの声が響く。
『私は人間だった……しかし、過去の時代ではドラゴンと人間が争っているという場所もあった。私は、味方のドラゴンの力を借りてドラゴンの力を人間に付与させようと考えた。それが、
『私は、その力を行使して何とか戦ってこれた……が、その力には代償があった。使っていけばいくほど、自分の体がドラゴンになっていくのだ』
『私の顔に、ドラゴンの鱗が現れ始めた……その頃に、私は夫となっていた当時の国王から化け物と罵られて、地下牢に閉じ込められた』
『そこからは酷いものだった。私の体目当てに集まる男達……人間でないのだから、好きにしていいと私を酷い目に合わしていった。
ただの陵辱、2つの穴……アナルも使わされたな。一日の飯が大量の精液だった日も続いたこともあるし、鞭打ちや電流、その他拷問……と言っても三角木馬などの類だが、私はひたすらに体を弄られていった。薬を何十本打たれた日からは何をされても疼く体になってしまった』
『それは、私のエンチャントでは取り除けないものとなっていた。そして次第に私の体はドラゴンそのものとなっていった……』
淡々と語られるアイリーンの過去。語られる度にその光景が、頭の中に浮かんでは消えていった。エルザは吐き気を催していたが、気力をふりしぼる為にも吐くことはしなかった。
『そして、私は最終的にドラゴンとなった……まぁ、そこからは自分の体をなんとか人間の形に戻すことが出来た。ただ、戻せたのは形までだった……』
次に見せられたのは、味を感じることが出来ず、寒さや暑さを感じることが出来ず、ただ体が痒く痛い感覚だけをひたすらに感じているアイリーンの姿だった。
『飯を食べなくてもいい体になっていた……といっても、当時の私は人間らしい事がしたかった。故に、食べ物を買うために路銀を稼ごうとした』
『ただ、快楽だけは感じることが出来た。むしろ、それだけしか感じないように身体を作り替えた。男とも女とも、子供とも老人とも交わった。頼まれればなんでもしてやったし、何でもされてやった』
『だが、それでは満たされなかった。そんな中……ふと気づいたのだ』
『私の中には、既にお前がいた。人間だった時……夫だった王の子供を身篭っていたのだ。それが、そなただったんだよエルザ』
『私は、そなたの体に自分の人格をエンチャントしようとした。その為だけにそなたを出産した……しかし、出来なかったのだ。他人に、自分の人格はエンチャントが出来なかった』
次に映されたのは、アイリーンが1人の赤子を村に捨てるところだった。エルザは、教えられなくともその赤子が誰かわかった。自分自身だ、エルザ自身が今ここで捨てられていたのだ。
『……そこからは簡単だった。そなたを捨てて、アルバレス帝国に行った。王に言い寄って、帝国の魔法資料をひたすらに閲覧した……そして、始祖でありながら未だに不完全だった自分のエンチャント技術を更に強化させた』
記憶はそこで終わった。改めて目を開けて、エルザはアイリーンと対峙する。
「……これを見せて、どうしろと?」
「何も?ただ……今ならばエンチャントが出来ると思ってな……安心しろ、そなたの精神は消すつもりは無い。ただ、私の体に入ることにはなるがな」
「断る、私の体を譲るつもりもないしお前の体に入る気もない」
「ならば……消えろ」
余裕のあった笑みが、邪悪なものへと変貌する。杖を振りかざし、エルザに目がけてアイリーンはエンチャントを掛ける。エンチャントは、味方を支援するだけではなく、敵に攻撃も可能なのだ……アイリーン程の魔導士になれば。
「爆破追加、爆破耐性除外」
「ぐぁっ……!?」
エルザの体に小さな爆発が起こる。爆発と言っても、ほんとに小さなもので、それで付く火傷跡も日常ではよくある様な程の小さなものである。しかし、今エルザの体はこの爆発で凄まじい痛みを得ていた。声を出すことは無かったが、その痛みはただの爆発にしては
「今そなたから、爆破に対する耐性を取り除いた。一般人ですら耐えられるような代物でも、そなたにとっては激痛を得てしまうものとなっている」
「なん、だと……!?」
「私はエンチャントの始祖であり天才……このような事は児戯に等しい……未来の私の体だが、少し遊んでやろうか」
「何を……」
「痛覚除去、快楽耐性除去、感度上昇、発情追加……さて、どうなる?」
「うぐっ…!?」
エルザは、自分の体を抑えながら蹲ってしまう。自分では感じたことの無い何かが、今自分の体を駆け巡っていたのだ。
「私の、体に……何を……!」
「ん?奴隷をしていたと聞いたので、懐かしい気分にでもしてやろうかと思っていたが……どうやら、未経験のようだな。
なら、味わってみよ……初めての快楽をな」
玩具を見つけたとでも言わんばかりに、アイリーンはエルザに近づいていく。自身の大きな胸を揺らして、楽しそうに歩んでいく。
「快、楽……!?」
「安心しろ、私は女とも経験済みだからな」
顎を指で持ち上げ、アイリーンはエルザに手を伸ばす。抵抗したいが、エルザは体の不調で全くといっていいほど動けなかった。しかし、鎧が簡単に脱がせられないのか、アイリーンはここでも魔法を使う。
「……防御性能除去、素材変換……鉄を取り除いて紙を追加」
そう言った瞬間に、本当に紙のようにエルザの鎧が砕ける……否、破かれていった。まるで、本当に紙にでもなったかのように。
「……ほう?ここは、私に似て随分と豊満なのだな。戦い方はまるで正反対と言っても過言ではないが……」
「くっ……」
エルザの体を撫でて、アイリーンは舌舐めずりをする。恥ずかしさと嫌悪感、そしてまだ知らない性快楽の感覚にエルザはひたすらに戸惑っていた。
「ずいぶんと肉付きの良い身体だ……まだ生娘となると、同性愛者でもない限りは、初体験がとても特殊なものになってしまうなぁ?」
「どうでも、いい……!」
何とか拳を動かそうとするが、それで動かせた拳は空を切っていた。たとえ当たっていたとしても、赤子ですら痛みを感じるかどうか不明な程には弱い拳だった。
「くく、その抵抗もいつまで続くのやら……そのまま、私が犯してその顔を堕としてやるとしよう……」
アイリーンは微笑んだ。エルザは逆に睨んでいた。だが、その睨める余裕もエルザ自信には既にほとんど残っていないのであった。
今回は行為薄めになってしまった……猛省します。