※この作品はR-18です。

あいえむっ! ―I AM…ALL OF ME…R18異伝ー   作:ヱ子駈 ヒウ

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 前の話でイキってましたが、このオリ主は本来こんな感じです。ご注意ください。


不思議でふしだらなの国の姫燐(ロラン?、本音?×姫燐)

「ぐしゅん! あ゛ぁ……ちくしょう、最悪……」

 

 姫燐が、いつの間にか自分が寝てしまっていたことに気付いたのは、冷たい格納庫の床でくしゃみをした瞬間であった。

 次に襲い掛かったのは、寒気と鼻水。よりにもよって、露出多可なISスーツで金属床に転がっていた代償だ。

 なぜISスーツのままだったかと言えば、理由は至極単純。戦闘後にそのまま作業をしていたからである。

 外部からの泥や砂ぼこりはISが護ってくれるが、内側から生じる汗などはそうもいかず、今の姫燐は汗まみれだったというのにシャワー一つ浴びていない、実に最悪な状態であった。

 髪が張り付く、身体がべた付く、ちょっと臭いがする。

 自身のカッコよさ、見栄えに拘る姫燐にとって、どれ一つとっても許容範囲を遥かにオーバーした現状は本人がグチる通り、まさしく最悪。

 更に、不運に不運は重なるものであると、こんな有様であっても姫燐は鼻水をすすりながら、身嗜みを整えるより先に、皆が居るだろう食堂を目指していた。

 

「ったく……なんで着替えがロッカーから無くなってんだよ……」

 

 出撃前に確かに使ったはずのロッカーは、なぜかもぬけの殻となっており、誰かの悪戯かと勘繰りながらも、せっかくシャワーでさっぱりした後に汚れたISスーツを纏う気にもなれず――さらに言えば結構な長時間、チームメイトの皆と顔を合わせていないことに気付いたのが理由だった。

 時空石を入れるボックスは目が覚めると無くなっており、そのまま移送されたのかと判断したが……正直に言ってしまえば、妙な胸騒ぎが姫燐の胸で燻ぶっていたのが一番の理由だ。

 

「……誰かひとりぐらい、起こしてくれたっていいだろ、普通」

 

 ボケっと端末を操作していたら、変な光に包まれたのまでは覚えている。

 おそらくそれが原因で気絶したのまでは、推測がつく。

 しかし、そこから先がどうにも腑に落ちないのだ。

 ボックスは絶対天敵の破片も入れることを前提に作られているため、下手なゴミ収集車ぐらいの大きさはある。それが無くなったということは、誰かが大がかりな設備かISを使って運送したということだ。

 そんな作業を行うのに、床で大の字で気絶している人間を放置するだろうか?

 懸念は他にもある。

 最初は鼻水がグズグズしているせいかと思っていたが、食堂への道を進めば進むほど、どうにも鼻腔がひくひくと反応してしまうのだ。

 

「誰か……変なアロマでも焚いてんのか……?」

 

 蜂蜜めいた濃密さで、喉奥まで絡めとられるような、粘りついた香り。

 もし匂いを色で表現するなら、間違いなく桃色だと断言できるような――ちょっと、変な気分になってしまいそうな空気が、なぜか通路に充満しているのだ。

 こんな匂いが学園に広がったとなれば、それこそちょっとした騒ぎになるだろうに、通路は不気味なまでにいつも通りの平素で平凡な静けさを維持している。

 気味の悪さと、得体の知れなさ。

 勝手知ったる場所なのに、何かが決定的にズレている。

 自己の存在そのものから揺さぶられるような怖気が、歩行を速めさせる。

 

「まぁ……誰かから聞けばいいだろ……誰かに」

 

 誰かに会いたい。

 本音でもいい、乱でもいい、ヴィシュヌでもいい、ロランでもいい、オニールでもファニールでもいい、クーリエでもいい、この際ベルベットでもいい、本当に誰でもいい。

 自分をこの世界に繋ぎ止めてくれるなら、誰だっていい。

 気が付けば姫燐は――一心不乱に通路を両足で蹴り飛ばしていた。

 

「はぁ……ハァ……はぁっ……っ!」

 

 食堂への扉が、視界に飛び込む。

 僅かに開いた隙間からは灯りと談笑が漏れており、確実に人の気配があった。

 

「はっ……ははっ……!」

 

 荒れた呼吸も整えず、流れ落ちた汗も拭きとらず、取っ手を掴み、力任せに開く。

 バクバクと打ち鳴らす心臓のリズムより早く眼球を動かし、見慣れた食堂を一望する。

 そして姫燐は、

 

「なんだよ……みんな、居るじゃねぇか」

 

――思わず、安堵のままに、床へとへたり込んでしまった。

 本音が食後のデザートに、大きなパフェを食べていた。

 乱はお子ちゃまみたいに野菜が少なくて肉が多い栄養の偏った料理を頼んでおり、ヴィシュヌは対照的に行き過ぎてるほど栄養バランスに気を使ったメニューに舌鼓を打っている。

 ロランは堂に入った優雅な仕草でコーヒーを飲んでおり、オニールはロランと自分が飲んでいるオレンジジュースを神妙な表情で見比べ、逆にファニールは我関せずとフレッシュな甘さを堪能していた。

 クーリエの口元に付いたソースをふき取るベルベットには、まるで子を見る慈母のような柔らかな微笑みが浮かんでいる。

 ああ、何もかも――何もかも知っている。

 特に理由がなくとも同じテーブルを囲んで、和気あいあいと共に時間を過ごす仲間たちが居る。

 悪い夢から覚めた安堵を噛み締めながら、姫燐は立ち上がると和気あいあいに歩み寄り、わざとおどけたような口調で声をあげた。

 

「オイこらお前ら! な~に隊長様を置いてけぼりにして、先に飯食ってんだよおう!」

「――――え?」

 

 それは、誰が漏らした、呟きだったか。

 ひどく懐かしくすら思えた喧騒は、一瞬で――また姫燐と世界を切り離すように、静寂へと姿を変えた。

 

「……へ? な、なんだ……よ?」

 

 見る、見られる、幾重もの無言の視線で、姫燐は貫かれる。

 

「お、おい、どうした。どうしたんだよ、みんな……」

 

 本音も、乱も、ヴィシュヌも、ロランも、オニールも、ファニールも、ベルベットも、クーリエも、誰も彼も、姫燐の狼狽に応えない。

 代わりに寄越すのは視線だけ。

 一様に目を見開き、身体を強張らせ、ただ真顔で姫燐を凝視し続ける。

 今にも泣きだしそうな顔を、抑えきれない動揺に揺れる金の瞳を、何か間違いを犯したのかと震える唇を、透明な汗を弾く首筋を、ISスーツの下から激しく自己主張を続けるたわわな胸を、体温で蒸れた両脇を、美と称えるべきラインを描くお腹を、鍛えながらも柔らかさを失っていない太ももを、そして、女性としてもっとも大切な下腹部を。

 ただ、彼女たちは、無言で眺めていた。

 

「あ……う……」

 

 なぜ――と、理由を探し当てる前に、本能が解答を叩きつけてくる。

 異物を。そう、あれは異物を見ている眼だ。

 ここに居るはずがないものを、コイツ等は見ているんだと、自己認識が受け入れてしまうその前に、この中の誰かがそれを口にしてしまうその前に、

 

「ふ、風呂……オレっ! 風呂入ってくるッ!!!」

 

 姫燐は、その場から逃げ出した。

 

                  ♡♡♡

 

 服装のせいだ。体臭のせいだ。汗だくだったせいだ。

 貸し切り状態の大浴場に浸かっているというのに、膝を折りたたんで体育座りをして、まるで母の胎内で縮こまる赤子のように、姫燐は必死に自らの震えを抑えていた。

 裸になって、芯まで温めてくれるような湯船に浮かんでも、一向に悪寒は止まらず、むしろ頭を使えば使うほど悪化していくばかりであり、

 

「あ……ははっ……そりゃそうだよな、オレ、汗だくでISスーツのまんまだったもんな……そりゃ、みんなあんな顔する……よな……?」

 

 普段の理路整然とした思考などかなぐり捨てた、都合のいい妄想に縋らなければ、本気でどうにかなってしまいそうなほど、限界ギリギリな精神状態。

 

「そうだって……戦闘終わった後から、シャワーも浴びてなかったんだからよ、オレが気付かないだけで、きっと人知を超えたとんでもない臭いでもして……た……?」

 

 戦闘後。オレが気付かない。人知を超えたとんでもない。

 とにかく並べて建てていた言い訳が、全然関係のないどこかで奇跡的に噛み合わさっていくような、今まで思いもよらなかった仮説を組み上げていく。

 

「そいやオレ、時空石を弄ってたんだよな最後……?」

 

 時空石。気絶する最後に自分が目撃したのは、アレの輝きで間違いないはずだ。

 その光を浴びて、目が覚めれば待っていたのは、同じようで決定的に違う世界。

 SFチックなサブカルチャーに明るい姫燐は、細かい理屈理論はさておいて、そういった世界を何と呼ぶのか心当たりがあった。

 

「パラレル……ワールド……?」

 

 またの名を、平行世界、平行宇宙。

 SFの世界だけでなく、現実の量子力学や宇宙論でも存在が提唱されていながらも、確たる証拠もなく、実証もされてこなかった、同じ時間が流れながらも違う歴史を歩んだ『可能性』の異世界。

 突飛すぎるが、あの光を浴びてから起きた全てに筋が通った説明ができる理論を、急速に冷静さを取り戻していく頭で吟味し始めた――その時、

 

「あ、居た居た♪ おーい、ひめりーん」

「おお、プリンセス! そこに居たのかい?」

「へっ?」

 

 耳に馴染んだ二人の声が、浴場に響き渡った。

 

「ほ、ほんちゃんに、ロラン、か……?」

 

 ひめりんに、プリンセス。

 両方とも、自分の名前に『姫』が入っているからつけられたあだ名であり、姫燐としては何度も呼ぶなと訂正していた呼び名ではあったが、今はそれが酷く懐かしく――同時に、またまた頭の中を引っ掻き回す。

 元の世界と変わらぬあだ名。ここは本当に平行世界なのか。ただ全てが偶然かみ合わなかっただけなのか。それとも平行世界でも自分は二人にこのあだ名で呼ばれているのか。

 などと、思考に耽っている内に、湯気のヴェールに隠れていた本音とロランの姿が、近づいて来るほどに露わになっていき――

 

「さっきはごめんねぇ、ひめりん」

「同じく、無礼が過ぎたよ。どうか許してくれないか」

「ぶっ!」

 

 考察が、鼻血となって全部噴き出していった。

 

「なっ!? な、なぁぁ!? なんで裸なんだよお前ら!?」

 

 こればっかりは風呂場で全裸の非を問う姫燐がトンチキであったが、こんなテンプレめいた台詞を思わず吐かざる得ないほどに、この二人の身体は、姫燐にとって刺激が強すぎたのだ。

 

「えへへ。どうしたのぉ、ひめりん……♡」

 

 少し頬を赤らめ、いつも開いてるのか閉じてるのかよく分からない瞼を、今日は薄っすらと開きながら、本音は唇へと手を当てて弧月を浮かべる。

 それだけで下手をすれば姫燐よりも大きいかもしれない乳房が腕に当たり形を変え、普段は妙な着ぐるみやダボダボな服ばかりを着ているせいで目立たない、トランジスタグラマーな体系を嫌でも意識させられる。

 

(いや……いやいやいや、それにしてもだ!?)

 

 身体だけで言ってしまえば、正直本音の体系は姫燐の好みにドストライクではある。

 後ろから覆いかぶさるように抱きしめ、その乳輪を指でなぞってやり、乳首を指でこねくり回して反応を堪能し、せがむように濡れていく股にも手を……などと言った妄想は、本音では一切したことがない。

 なんせ、姫燐と本音は幼馴染であり、家族同然の仲なのだ。

 色んな意味で汚れる前の、子供だった頃の認識や記憶をどうしても引きずってしまい、好きなのは間違いないが、恋愛対象としても、むろん性的対象からなど特に外れていたはず、だったのだが……。

 

(な、なんか今日のほんちゃん……み、妙にセクシーっつか、エロくね……?)

 

 エロい、エロいのだ。

 仕草というか、オーラというか、表情というか。

 いつもの隙あらばお菓子をパクつきながら、偶に心配になるぐらいのほほんとした笑顔を浮かべている本音とは打って変わり、身体を欲情的にしならせ、物欲しげにこちらを見やる姿は、女の艶をこれでもかと放っている。

 

(ほ、ほんちゃん! 相手ほんちゃんだって! 不味いだろそういうのは!?)

 

 舐め取るような目線で幼馴染を眺めていたと気付いた瞬間、もう直視が出来なくなり、目を逸らした先には、

 

「ふふ、本当にどうしたんだいプリンセス? 先程の本音を見る眼、まるでケダモノのようだったよ……♡」

「う、ぇ、う……!?」

 

 バスタオルすら身に纏わない、ロランの一糸まとわぬ裸体が待ち受けていた。

 多くのオペラで主役を演じ、居るという九十九人の恋人を余さず魅了してきた肢体は、自分のスタイルに割かし自信を持っている姫燐をしても、溜息を零しそうになるほど完成されて美しく、身体のライン、胸のサイズ、筋肉の付き方、肌のツヤ、どこをとっても非の打ち所がない。

 全ての女性が焦がれるような完成された肉体を持ち、甘いマスクで愛を謳うロランを、姫燐も最初こそはそれなりに意識していた。

 の、だが、『ひめりん』の由来を本音に聞いてから、なぜか勝手に人を『プリンセス』呼ばわりし始め、しかもそれを何度訂正しても止めない図々しさに辟易し、気が付けばそういった対象からは完全に外れてしまっていたのだ。

 しかし、

 

「おや……どうやら私の身体も、君のお眼鏡に適っているようだね」

「ひゃ、そ、そりゃ、だって」

「ああ、なにも侮蔑しているわけじゃない。むしろ、目を離さないで欲しいんだ……私たちから、ね」

 

 今まで聞いたこともないようなとろける声色で、ロランが右に、本音が左にと、姫燐を挟むように湯船に浸かる。

 

「なな、なんかち、近い、近すぎじゃね? おまえら」

「ううん、まだ足りないよ」

「ああ、足りないね」

 

 二人が、姫燐の両腕をそれぞれ抱き込む。

 互いの豊満な胸に押し当て、擦りつけ、なお深く、距離を詰める。

 

「もっともっと私、ひめりんと一つになりたいなぁ……♡」

「あぁ、擦りあって、絡み合って、混ざりあって、君の全てを、もっと私に感じさせてくれるかいプリンセス……♡」

「ひぃぃ!!?」

 

 ナニがしたいのか以外なにも分からない、全身に駆け抜けたゾワゾワのまま、ヘタレ根性丸出しで二人を振り解き、立ち上がって風呂場から退散しようとした膝が、

 

「ぃわぼんッ!?」

 

 込められた力と命令を無視した結果として、姫燐はバランスを崩し、思いっきり湯へと顔面から叩きつけられた。

 

「おおっと、大丈夫かい?」

「わわっ、急に動くと危ないよぉ」

「げほっ、ぷわっ、にゃ、にゃんで……!?」

 

 長湯に浸かりすぎてのぼせた――可能性を除外。

 あの程度の時間の入浴で、二人に支えて貰わなければ立ち上がることも出来ないほど、運動機能を損なうことなどありえない。

 ここまで腰が砕ければ、麻酔を打ち込まれたと言われた方がまだしっくり来るほどであり、

 

「ふむ……やはり、これはそういう事のようだね本音」

「うん……そういう事なのかなぁ」

「な、なにがだよ!? お前らさっきからなんか変だぞ! オレに分かるように話せよ! お願いだから!」

 

 立て続けに起こり過ぎた異常事態に、とうとうヒステリックに喚き散らし始めた姫燐を運びながらも本音たちは物凄く困った人を見たような神妙さで、

 

「一つ、確認したいのだが――角と羽根、尻尾は出せるかい、プリンセス?」

「…………はい?」

 

 ものすごく神妙にならざる得ない確認を、姫燐へと飛ばしてきた。

 

「……角とか、羽根とか、尻尾って、あれだろ。動物とかファンタジックなアレだよな」

「そうだねぇ、そういうアレだねぇ」

「うん、それで間違いねぇよな……つまりさ、お前らさ」

 

 認識に齟齬がないことを確認して、元の位置に座らせてもらってから、一度大きく息を吸い、

 

「揃いも揃ってアホかぁ!? からかうのもいい加減にしやがれ! 人間様にそんなもん生えてる訳がっ……」

 

 お遊びはここら辺にしろということで怒鳴り飛ばした勢いが――そのままカウンターで叩き返されてしまったかのように、喉奥に引っ込んでいく。

 

「ははは……やっぱり、君は違うんだね」

「うん、ビックリしたぁ。どう見てもひめりんなのに、淫魔じゃないんだねぇ」

 

 右を向く。左を向く。

 これから通る道路を確認するように、自分の前に立つ二人を交互に見やる。

 交互に、本音とロランから生えた角と、羽根と、尻尾を、見やる。

 

「…………え、なにこれ、ドッキリ?」

「まぁまぁ、私たちも先ほど、同じぐらい驚かされたのだから、お相子ということにして欲しい」

「先ほどって」

 

 フラッシュバックするのは、食堂での一幕。

 確かに、あの時の皆の表情は――今思えば、単純に物凄く驚いていた。というのが適切だった気がしてくる。

 

「……てことは、オレも普通にそういうの生えるの? 本来?」

「そうだよぉ、わたし達の中でも、一番尻尾とかの使い方が上手いんだから」

「で、でも食堂の時だって……現に今も、さっきまで生えてなかったじゃねぇか!?」

「まぁ、これは言ってしまえば戦闘形態、と言った感じの姿だからね。取り決めで平時は極力、展開しないようにしているのさ」

「嘘だぁ!? どうせこれだって作り物なんだろ!?」

 

 説明を受けても、まるで意味が分からない姫燐は、質の悪い冗談の皮を引っぺがしてやると、ロランの尻尾を乱暴にひっ掴んで、力任せに引っ張った。

 

 

「ッひやぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!?」

 

 

 一瞬で紅葉する頬。

 電撃が走ったように反り上がる肢体。

 絶対にロランが口にしないような――はしたない嬌声。

 

「ひぅっ、あっ……はっ! ふーっ♡ ふーっ♡ ふーっ……♡」

 

 腕で自分を抱きながら前かがみになり、内側をぐちゃぐちゃにしていくような衝撃を必死にこらえるよう、内股で息を整える今のロランの状態に――姫燐は心当たりがあった。

 

「……あ、尻尾が一番敏感だったとか、そういう……お約束?」

「ふーっ……ふっ、ふふふっ……」

「あっ、ごめっ、ろ、ロラン?」

「ふふふふふふふふふふふぅ♡」

 

 ヤバイ、絶対にヤバイ。

 文字通り、虎の尾を踏んでしまったことを、姫燐は悟る。

 

「こんなっ、こんなはしたなくイかされるだなんて屈辱、初めてだよ……流石は人間とはいえプリンセス。私の予想を、いつも一瞬で越えていくね君はぁ……♡」

 

 さっきまでの冗談交じりかつ、どこか身を案じてくれていたような態度は一瞬で消え、目の前の肉に齧り付くことしか考えない、ヤバいスイッチが入ってしまった牝の吐息が、姫燐の鼻先に吹きかかった。

 

「わ、悪かった、悪かったって! うん淫魔な、そういうのが居るのな、オレ部外者なんだな、大体わかった! オッケー! オールウェズオッケー!!!」

「いや、君はまだ、淫魔の事をよく分かっていない……だろう、本音?」

「はーい♪ 予定変更だねぇ~♡」

「ひゃぃ!? ほ、ほんちゃん!?」

 

 相槌と共に、本音は湯船で屈むと、水面に浮かぶ姫燐のご立派な上半球を、下からすくい上げた。

 本音の小さな手から零れ落ちそうなほど、自重で形を変えるつきたてのお餅のような姫燐の巨乳。

 たぷたぷなそれへと顔を近づける本音が何をしようとしているのか。問うまでもなく察しがついてしまった姫燐の、必死の説得が始まる。

 

「待った! 確かに今のはオレが悪かったけど、ここまでされる謂われはねぇよな!? なっ!?」

「うーん、そうなんだけどねぇ……」

「だろっ!? さっすがほんちゃん話が分かる大好き! 今度、ビアードママの限定シュークリームおごってやるからさ? それで交渉成立って訳でオレを助けて」

「………はぁ~」

「え?」

 

 なぜか、思いっきり失望のため息をつかれ、

 

「……あっちの私も、その程度なんだなぁ……」

「今なんて」

 

 そのまま、姫燐の乳房を口いっぱいに頬張った。

 

「ひゃううっ!?」

 

 交渉失敗の反省会を開く暇すらなく、姫燐の胸に、本音の口内に充満する熱が突き刺さる。

 

「れろぉ、ん、じゅっ、んっむっ……♡」

「ま、まって、ほんちゃん、ダメ、おっぱい舐めちゃ、だめっ……」

 

 舐め上げる、先で突く、乳輪をなぞる。

 極上の飴を味わい尽くすように、本音は舌を動かし、姫燐の胸を巧みにいじめていく。

 

「くっ……んっ、いい加減に……」

 

 僅かでも抵抗を試みようと、左手で本音の肩を掴み、引き離そうとするが、

 

「おおっと、右がお留守だよプリンセス♡ あーむっ」

「ふやぁぁぁぁ!!?」

 

 今度はロランに、空いていた右のおっぱいへと噛み付かれ、快楽に全身の力が抜けていく。

 

「ふふ、先ほどのお返しに、少し刺激的に行こうか……♡」

「いっ……は、歯でオレの乳首、コリコリすんなぁ……!」

 

 甘く労わるような本音の愛撫とは違い、少しサディスティック気味にロランは乳首を甘噛みし、軽く歯ぎしりするようにして絶え間ない刺激を与えていく。

 前門の虎、後門の狼とでも言うように、対極的な攻めが逃げ場なく姫燐の両胸を嬲りつくしていき、抵抗を試みる心も徐々に溶かされていく。

 

「はぁっ……ん、あぁ、やめ……ろっ……おっぱい、イジメんなぁ……」

「胸はあまり自分では慰めないタイプかい? あどけない生娘のような敏感さだよ」

「だ、黙りやがひんっ!」

「あぁ……酷いな。今ので私の傷ついたハートを慰めてくれるのは、プリンセスのさえずりではなく、この可愛らしく乳首が勃起し始めた乳房だけだというのかな……」

「あぁそうだよ! 感じすぎて寮だと声漏れるから、普段は弄ってねぇよ!!!」

 

 若干気持ち悪い上、腹立つ言い回しに、半ばヤケクソ気味に白状するが、

 

「へぇ~、ひめりんって感じ過ぎちゃうぐらい、おっぱい弱いんだぁ♡」

「あ。いや、ちょっ、今のうそ、なし、ブラフ……!」

 

 それが何を意味するのかを、

 

「では、まずは軽く一回……♡」

「おっぱいでイっちゃおっかぁ♡」

 

 思いっきり吸い上げられ、ガッチリと前歯で挟まれ、左右に引っ張られるという形で、姫燐は身体に教え込まされた。

 

「ふぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!?」

 

 人間相手でしか味わえない、強烈なトドメを刺され、胸だけであっさりと絶頂を迎えてしまう姫燐。二人の口が離された乳首は、もはや乳輪にまで血液が回りきり、完全にぷっくりと勃起してしまっている。

 

「い……やだぁ……♡ 胸だけで、イクなんて……変態、みたいじゃ……」

「いやいや、そこはイって貰わなければ、淫魔としては沽券に関わる問題でね」

「気持ちよかったぁ? ひめりん♡」

 

 吐いてしまえば、今までのオナニーでイク自信が無くなるほどの責めだったのだが、それを告白するほど正直な生き方はしていない。

 俯いたまま息も絶え絶えな沈黙を姫燐は保っているが、ならば仕方がないとばかりに、本音は彼女の頬に手を滑り込ませると、

 

「ひめりん……っ♡」

「んんッっ!!?」

 

 あっさり、その唇を奪った。

 情緒もへったくれもないキスだったが、侵入してきた舌は濃厚に絡みついていき、マウストゥーマウスは無論、ディープキスなど夢のまた夢でしかなかった姫燐にとっては、劇薬じみた甘い痺れをもたらしていく。

 

「んっ、むっ♡ あっ、むっ♡」

(ほ、ほんちゃんんんんっ!!?)

 

 唇を離さないまま姫燐の膝に跨ると、頬に添えていた両腕を後頭部に回し、抱き込むようにして更に更に深く姫燐を求める本音。

 互いの巨乳は押しつぶされ合い、湯を潤滑油として本音が動くたびに、乳頭を肌で擦られ続ける姫燐は悶え痙攣するしかなく、責められるがままにされてしまう。

 

(なんでぇ……? ほんちゃんが相手なのにぃ……キスだけなのにぃ……)

 

 もはや、相手が幼馴染だとか、本番でもないのにだとか、そんな細かい理屈抜きに、

 

(なんでイくの止まんないんだよぉぉぉぉぉ♡)

 

 絶頂しまくりの子宮は、故障した機械めいて、姫燐の腰をガクガクと踊らせていた。

 

「安心したまえ、プリンセス。君の反応は何らおかしなことではないよ」

 

 内心を見透かしているように、ロランは意地悪く微笑む。

 

「言っただろう、我々は淫魔だと。少々、中身が人間と違うくてね。特に体液は、普通の人間相手には毒なのさ」

 

 毒。つまり、先ほど胸を噛まれた時や、こうして交わっている唾液や、擦り付けられる汗にも。

 

「ああ、人間では決して作れないほど、とびっきり強烈な――媚毒がね♡」

 

 動いた眼球が出した問いに答えられ、ああ、だったらしょうがないかと、姫燐のどこかが認めた瞬間、

 

「んんんんぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡」

 

 ひと際、強大なオーガニズムが全身を駆け抜け、金魚のようにパクパクと口を開いていた蜜壺から潮が噴き出し、湯船の中に溶け混ざっていった。

 

「ぷはぁ……♡ ごちそうさまぁ、すっごく美味しかったよひめりぃん♪」

「イ、 イぐっ……まだっ……いぐっ♡ イってる……♡」

 

 唇を離しても、身体が離れても、余韻どころか余波で絶頂が止まらない姫燐は、本音へと身を投げ出すような形で、力なく放心していた。

 

「本音の責めはどうだったかい、プリンセス?」

「ふふふ~、舌の使い方は、わたしすっごく自信あるんだよぉ♡」

 

 感想を求められても、許容範囲を遥かにオーバーした悦楽に、意識が飛ばないようにするのが精一杯な生娘では答えることができず、

 

「では――そろそろ本番といこうか♡」

 

 末恐ろしい発言に、とにかく呆けていた自分を叩き起こすことしか出来なかった。

 

「ほ、ほんば……ん……だってぇ……?」

「そうだろう? 今までのはすべて前戯だったじゃないか、君の世界では違うのかい?」

 

 確かに姫燐の世界でも、今までの行為はいわば前戯であり、快楽を最も求めているであろうあの場所には、信じがたいことに指すら触れられていない。

 だが、ロランは、ロランの形をした淫魔は、トントンと指で子宮が眠る下腹部を叩き、

 

「プリンセスも気にならないかい? 女の子が、ココを太く硬いアレでめちゃくちゃに突きまくられた後、白くてねばつく精子ミルクを、どぴゅどぴゅ種付けされてしまうと、どうなってし・ま・う・の・か……♡」

 

 普段は口にしないような下品な表現も交え、融けてしまいそうなほどの甘さで耳元にささやいた。

 

「な、なに言って、やがる……おま、えも、女のくせにぃ……」

「ふむ、確かに女性には、君と一つになるための男性器は付いていないね」

「だねぇ~、女の子にはついてないねぇ」

「……お、おい……ま、まさか……まって……」

 

 この二人が何を言い含んでいるのか。

 この二人なら何が出来てしまうのか。

 暗に察した姫燐には、もはやこの手段しか残されていなかった。

 そう――

 

「……がい……しま……」

「んっ?」

「お願い……しま……す……」

「ひめりん?」

 

 みっともなく、恥もなく、外聞も知らず、

 

「……おっ、オレ……えぐっ……処女なんだよぉ……処女膜、破らないでぇぇ……」

 

 泣いて許しを請う、こんな手段でしか、姫燐は彼女たちに対抗する手段が残っていなかった。

 

「………………」

「………………」

「処女は……ひぐっ……大好きになった人にって……決めてるんだよぉ……」

 

 ぽろぽろと零れる涙と嗚咽。

 淫靡な悪魔二人は、そんな切なる涙を前にしても、自らの欲望に忠実に――忠実になろうとして――忠実になりたかったが、

 

「うがあああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ふああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 できるかボケェと、すべてを吐き出すように、慟哭めいた雄叫びをあげた。

 

「ああ分かった! 分かったとも!!! くそう、君は本当に卑怯だね姫燐ッ! 我々の弱点を知り尽くしているッ!!!」

「ズルいズルいズルい! ひめりんズルいッ! そういうとこ、ほんっとうにズルい!!!」

「ふぇ? え? え?」

 

 なぜここまで発狂されなくてはならないのか、愛する女の涙がどれほど凶悪な兵器になるのか、まるで分かっていないこの少女は、本当に徹頭徹尾罪作りな存在であった。

 

「本音! もうこれはアレだね! 姫燐には分かってもらうしかないね!」

「異議な~し! われわれの切なさを、ひめりんもいっぱいいっぱい味わうべきだと思いま~す!」

「よしッ! 拘束方陣展開!」

「改造方陣てんか~い!」

「なっ、えっ!? な、なんだこれ!? なんぞこれ!?」

 

 姫燐の手首足首、そして下腹部に魔法陣が浮かび上がる。

 

「安心したまえ、少し神経を増設するが、痛みは無いように意識は落とす!」

「眠ってる間に、ちゃちゃーっと終わらせちゃうから~!」

「神経!? 増設!? 改造ってなに!?」

 

 勢い任せでとんでもないことを口走り始めた本音たちの発言の数々に、安心など出来るわけがないまま、下腹部の魔法陣は輝きをどんどん増していき――

 

「い゛ッッ!!?」

 

 クリトリスが、昇り詰めるマグマのような高ぶりを感じた瞬間――姫燐の意識はプツンと、暗転した。

 




 次回、生えます。ご注意ください。
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