万里花が店内に入ると、営業停止中である所為か照明は極一部を除いて消えていた。
いつもは開けられているブラインドも全て閉じている為店内は薄暗く、普段の明るい雰囲気しか知らない万里花は自分がしてしまった事の重大さを改めて思い知らされてしまい、胸を締め付けられるような思いを感じていた。
しかし何時までも落ち込んではいられない。迷惑をかけてしまった店長やチャンスをくれた根鳥チーフの恩に報いる為にも何としても研修を成功させようと気持ちを引き締める万里花であった。
だがその時、背後から物音が聞こえたと思った瞬間に万里花の体を何者かが羽交い締めにした。
「きゃあああっ!!だ、誰ばい!?なんばしよっと!?」
昨日の酔っ払いとは比べ物にならない腕力で腕ごと体を抑え込まれ、それでも尚余裕が有るのか胸を弄る何者かに万里花は恐怖と嫌悪を露わにし、必死に振り解こうと力の限り足掻いた。
「はぁはぁはぁ……ま、万里花ちゃん久しぶりだねぇ」
「!?そ、そん声っ!?ま、まさか歪嶋っ!?」
するとその男は正解とばかりに更に激しく万里花の胸を揉みだした。
この歪嶋と言う男はかつてはこのファミレスの従業員であったのだが、万里花がこの店でバイトする様になった頃から万里花に対して花束を送りつけたり、万里花が他の男性客と会話をする事を妨害しようとするなどのストーカー的行為をする様になったので、店長と根鳥によりクビを言い渡された男であった。
そんな男が何故ここにと思う万里花であったが、歪嶋が制服の上から強引にずらしたブラジャーの隙間から万里花の意思とは関係なく固くなった乳首を服の上から摘ままれると万里花は思わず声を上げてしまう。
「やっ!!も、もうやめっ、ひゃうっ!!」
「万里花ちゃん、今良い声出したね。俺の手で気持ち良くなってくれたみたいで嬉しいよ」
耳たぶを舐め回しながら身勝手な事を言う歪嶋に遂に万里花の我慢は限界に達し、腕力で敵わないと悟ったのかわざと大きな声を出して歪嶋を罵倒する。
「な、なしてこぎゃん事ば!?冗談で済む行為じゃなかとよ!!いぎっ!?」
大声を出していれば店の外に居る誰かがきっと声を聞きつけ助けてくれるだろうと思っての行為だったが、歪嶋が黙らせようと思い力一杯万里花の胸を握ると、あまりの痛みに顔を歪ませてしまいその目には涙が浮かんでいた。
「あ、ごめんね万里花ちゃん、痛かった?でも、万里花ちゃんが悪いんだよ。こんな姿他の人に見られたくないでしょ?」
「あ、あーたにこぎゃん事され続けるよりマシたい。こ、こん卑劣漢!!」
「酷いなぁ万里花ちゃん。そんな事言うと……お仕置きしちゃうよ?」
「ぐうっ!!い、痛っ!!や、やぁ!!あぐっ!!」
再び握り潰そうとする程の力で激しく胸を揉みしだき、大声を出そうとする度にそれを続けた所為か、遂に万里花は抵抗する事を諦めてしまったのか、歪嶋の乱暴な愛撫をなすがままに受け入れ耐え忍ぶのだった。
万里花が大人しくなったのを良い事に歪嶋は更に行為をエスカレートさせていった。
上着を脱がされ歪嶋に抱きかかえる様に座らされた万里花の胸は力任せに掴まれた所為か痛々しく赤く染まっていたが、それでもお構いなしとばかりに歪島は直接手に伝わって来る万里花の胸の感触を喜び弄んでいた。
純潔は奪われてはいないものの、スカートには暴発した歪嶋の精液がこびりついており万里花は目を虚ろにさせて自らの思い人である楽に謝罪の言葉を呟いていた。
「楽様……申し訳ありません。私……私はもう……」
「まだ俺以外の男の名前を呼んでるの?仕方ないなぁ……じゃ、そろそろ万里花ちゃんのバージン貰っちゃおうかな。そうすれば他の男の事なんて口に出さなくなるだろうしね」
処女を奪う。その言葉が聞こえた瞬間なすがままだった万里花は歪嶋を突き飛ばして立ち上がろうとするが、脱げかかったスカートが邪魔となり足が縺れて倒れ込んでしまった。
「い、嫌っ!!こぎゃん奴に私の大事なぁ!!」
なんとか逃げようとする万里花だったが、這い蹲った事で下着だけとなった尻を見せつける形になってしまい、その光景に興奮した歪嶋は倒れこんだ万里花に圧し掛かると下着越しの万里花の秘所に自らの肉棒を押し付けた。
「はぁはぁ……ま、万里花ちゃんは後ろからの方が良いんだね?さ、さあ、いくよ」
「いやぁああああっ!!だ、誰かっ!!楽様!!た、助けてぇ!!」
下着越しとはいえ確実に伝わってくるその悍ましい感触に万里花は恥も外聞も無く泣き喚く。
だからと言って歪嶋が止めてくれる筈も無く、最後の砦であった下着すらも強引に剥ぎ取られた。
「ま、万里花ちゃん!!俺の初めて受け取っ、がっ!?」
もう駄目だと万里花が諦めかけたその時、何かが激しく叩きつけられた音が背後から聞こえ、振り返るとそこには何者かの足と頭から血を流して這い蹲る歪島の姿があった。
(だ、誰?ら、楽……様?)
自分を助けてくれた人物は誰なのか?思い人である楽の顔が頭に過った万里花であったが、視線を上に向けるとそこに居たのは楽とは違い、優しくしてくれた事など数える程しか無く、常に厳しい態度で自分に接してくる若干苦手だった相手の顔が目に映った。
「この屑!!そんな汚い物店の中で晒すんじゃねえ!!」
「ごふっ!!おぁ……ぉえっ……」
頭を押さえて蹲った所に脇腹を蹴り上げられ、先程の衝撃で折れてしまったモップの柄を投げつけられた歪島は床に嘔吐を撒き散らしそのまま意識を失ってしまった。
「ちっ!!臭い物撒き散らしやがって。誰が掃除すると思ってるんだ。……橘、大丈夫か?」
「ね、根鳥……チーフ?……う、うぁ……ああああああっ!!」
既に限界だった万里花は自らが裸である事を忘れて、絶望的状況を救ってくれた根鳥にしがみついて感情の赴くままに泣き続け、そんな万里花を落ち着かせようと頭を撫で続ける誠也の顔にはうっすらと笑みを浮かんでいた。
一頻り泣いた事で落ち着いたのか、ようやく万里花は自分が裸で抱き着いている事を認識して恥ずかしさから誠也から離れようとする。
だが、自身の服が見るも無残な状態である事も思い出し、どうすればいいのか分からずに動けずにいると誠也は自らの来ていた上着を脱いで万里花に差し出す。
「落ち着いたか?済まなかったな。急用が入ってここに来るのが遅れちまったんだ。その所為で橘をこんな目に遭わせて本当に申し訳ないと思ってるよ」
「い、いえ……チーフは何も悪くありませんわ。しかし……どうしてこの男はこんな所に?」
「俺に聞かれても分かる訳無いだろ?それより早く警察を呼んでこの屑を逮捕して貰わないとな」
そう言って携帯電話を取り出しそうとした誠也の腕を万里花が掴んだ。
「ま、待って下さい。ど、どうか……どうかこの事は私とチーフだけの秘密に……」
「何言ってるんだ?お前、自分の事を襲った相手の事を庇う気か?」
「そ、そうではありません!!ただ、この事が父や母……それに楽様の耳に入ってしまうと私……」
「世間体を気にしてる場合じゃないだろうが。そりゃあ多少は噂に尾ひれが付くかもしれないが、お前が歪島に強姦されかかったのは事実だろ?」
すると万里花は顔を手で覆って泣き出してしまい、嗚咽交じりの声で誠也に懇願し始めた。
「お、お願いします。な、何も無かった事にしたいんです。そうでなければ私は……」
「いや、何も無かった事にはならないだろ。大体、こいつを野放しにしたらまた襲ってくるかもしれないって事が分からない訳じゃないだろ?」
また襲われる。その言葉を聞いたとたん先程の恐怖を思い出したのか万里花は自らの体を抱きしめて震え始めた。
「だ、大丈夫か橘!?悪かったな。嫌な事を思い出させるつもりは……そ、そうだ。このままここに居るより場所を変えよう。裏の駐車場に俺の車が有るからついて来い。」
「え?で、ですが……」
「その服も洗濯しなきゃならないし。何よりここに居たらお前の気持ちが落ち着かないだろ?ほら、おぶってやるから背中に乗れ」
「へ、平気ですわ。自分の足で歩けます」
散らばった制服を集めて袋に詰め、万里花は未だ意識を失ったままの歪島に一瞬視線を向けたものの自分を呼ぶ誠也を待たせてはいけないと思い駐車場に足を進めた。
もし、この時万里花が普段通り冷静であれば先程野放しに出来ないと言った歪島をこのまま放置する事に違和感を感じていたのかもしれない……。
次回で万里花編は終了です。
※お詫び※
この度作者の認識不足で登場キャラの常識を問われる感想を頂くことになった事をここにお詫び申し上げます。