誠也が住むマンションの部屋の中で、万里花は歪嶋に汚されてしまった衣服が洗濯乾燥されるのを無言で待ち続けていた。
「橘、そんな人形みたいに固まってないでもっとリラックスして良いんだぞ」
「は、はい。ですが……先程の事がどうしても頭から離れなくて」
「強姦されかかったんだから仕方ないさ。取り敢えず風呂の用意が済んだから入っても良いぞ」
そう言って誠也は立ち上がると、部屋のカーテンを閉めて玄関に向かって歩き出した。
「あ、あのっ、私はその」
「心配しなくても覗きなんてしねえよ。適当に外で時間を潰すから風呂から出たら電話しな。それで落ち着いて服が渇いてたら着替えて家に帰っても良いからさ」
扉が閉まり一人きりになった事で万里花は不安に襲われるが、暫くすると万里花の携帯電話が鳴り出した。
「も、もしもし?」
「やっぱりまだ入って無かったのか。不安だったら携帯を通話状態にしたままにするか?」
「い、いえ、それは流石に……ではお心遣いに甘えさせて頂きます」
例え部屋に居なくても誠也が自分の身を案じてくれていると改めて理解し、万里花は歪嶋の体液で異臭を発する身体を綺麗にしようと浴室へ向かった。
この時もし数分浴室に向かうタイミングが遅れていたならば、万里花は玄関のドアが開いた音を確認出来たのかもしれない。
「ふぅ……どうして私はこんな事をしてるのでしょう」
一人住まいのマンションにしては広めの浴室で万里花は湯船に浸かりながら、今日の出来事を振り返りつつ痣が出来てしまった自らの胸に手を添える。
「あの時、もしチーフが来てくれなかったら……ですがどうしてあの男はあの場所に居たのでしょうか?」
冷静さをある程度取り戻した万里花は、歪嶋が何故狙いすました様に自分を襲う事が出来たのか疑問を生じていた。
「お店は暫く営業停止中ですし……あの時間に私があの場所に居る事を知ってたのは」
その時突然浴室内の灯りが全て消えてしまい、万里花は驚きのあまり悲鳴を上げた。
「キャアアッ!?な、なんとよ?まさか停電?」
まだ夜中でも無いにも関わらず手探りで無ければ何も把握出来ない暗さに、万里花の思考は再びパニックに陥ってしまう。
「お、落ち着かないと。停電ならブレーカーを調べれば済む話ですわ」
滑って転ばない様に浴室に膝を付き這う様に扉に向かう万里花だったが、その時浴室の外から聞こえて来た声に、入浴して温まった筈の背筋が背筋が凍りついた。
「チクショウ、万里花ちゃんは、どこだ?絶対に、諦めない、からな」
(そ、そんな……こ、こんな所までどうやって?)
二度と聞きたくないと思っていた男の声に、万里花は自分の居場所が知られない様にと身を丸めて震えた。
まるで継ぎ接ぎした様な台詞を吐く男が懐中電灯らしき灯りと共に浴室の扉の前にまで近付くと、万里花は今この場に居ない誠也に心の底から助けを求めた。
(ち、チーフ、誠也さん。どうか私を助けて下さい)
その祈りが通じたのか男は浴室までは入っては来なかったが、暗い浴室の床の上で万里花は部屋を乱暴に荒らし回る音に脅えて身体を震わせ続ける事しか出来ないのであった。
「只今っと、ん?なんでこんなに暗いんだ?ブレーカーでも落ちたか」
(こ、この声は……誠也さん?)
浴室に灯りが戻ると同時に万里花は浴室を飛び出すと、自分が今裸体だという事も忘れて誠也に抱き着き泣き出した。
「ど、どうしたんだ橘?ていうかこの部屋を荒らしたのは誰なんだ」
「あ、あの男です!!歪嶋がこの部屋まで追いかけて来たんです!!」
万里花は嗚咽しながら自分が体験した恐怖を伝えると、誠也は優しく万里花の身体を抱きしめて落ち着かせるように背中をさすった。
「事情は分かった。済まなかったな。怖い思いしただろ?」
「は、はい。もしあのまま見つかってたら私は……」
すると万里花はようやく自分が裸体で抱き着いている事に気付くと、恥ずかしさのあまり誠也から離れようとする。
「あ、あの、誠也さん。私は、」
「分かってる。落ち着くまで抱きしめてやるから気にするな」
自分から抱き着いていながら離れろとは言い辛いのか、万里花は善意から背中をさすり続ける誠也の手を拒めずにいると、段々と体の芯から何かが込み上げてくる感覚を感じてしまう。
「ンッ、うぁ、誠也さん、あの、そろそろ」
誠也の手つきは段々と繊細になっていき、掌で背中全体をさする動きから指先でまるで何かを探る様に万里花の背中を這い回した。
だが、それでも万里花は不快に感じるどころか逆に体をビクつかせ、もどかしい気持ち良さに思わず声を発してしまう。
「せ、誠也さん。ほ、本当にもう十分ですわ。だからもう私から離れて……」
「ん?ああ、スマンスマン。だが今離れると橘の裸が見えるんだが良いのか?」
紅潮した顔で構いませんと言ってしまう万里花を離すどころか逆に強く抱きしめると、戸惑う万里花の唇をキスで塞ぎベッドに押し倒した。
「むぶぅ!?せ、誠也さ、んちゅ、うぐぅ」
「橘ぁ、流石にもうこれ以上は我慢出来ないって」
豹変した誠也はキスをしながら万里花の胸を鷲掴みにして揉みだした。
だがその手つきは歪嶋の様に力任せではなく、荒々しさと繊細さを兼ね備えた女の身体を悦ばせる事に熟知したかの様に万里花の性的興奮を高めていく。
「やっ、ダメぇ、アンッ、誠也さん、どうしてこんな事をぉ」
「言ったろ?もう我慢出来ないって。俺だって男だから橘みたいな美少女に裸で抱き着かれたらこうなっちまうさ」
万里花への愛撫を続けながら誠也は自らの衣服を脱ぎだすと、歪嶋とは比較にならない程大きく威圧感すら覚えてしまう男根が万里花の目に飛び込んで来た。
「なあ橘……いや万里花、お前の中にコイツを挿れさせてくれ」
「そ、そんなっ!?駄目っ、それだけは許してっ、ひぎぃ!!」
万里花の願いは受け入れられる筈も無く、誠也の男根は万里花の処女を奪い取った。
その衝撃に万里花は身体を仰け反らせて悲鳴の様な嬌声を発して痙攣する。
「カハっ、私の、私の初めてが、楽様ぁ」
「またその彼氏未満の男の名前か。今は俺の事だけ見て感じればいいんだよ」
万里花の涙を舐め取った誠也はゆっくりと腰を前後させ、自らの存在を万里花の身体の内と外から覚え込ませる様に挿入と愛撫を続けた。
「アッ、アッ、アンッ、くぅん、ひゃああぁん」
「イクぞ!!中に出すからな万里花ぁ!!」
誠也の叫びと共に射精された精液の熱さを感じながら、万里花は楽への罪悪感と誠也への怒りよりも激しく強烈な快楽に心を奪われて意識を失ってしまった。
「まさかこんなに上手くいくとは思わなかったな」
気力と体力が尽きてベッドの上で安らかに寝息を立てる万里花の裸体と純潔喪失の証の紅い血の跡を録画しながら、誠也は自分が企てた計画がここまで上手くいった事に愉悦を隠しきれず笑みを浮かべる。
「ま、俺は間違えてクビにした歪嶋宛に橘との研修の時間と場所を誤送信しただけだから、お前を襲ったのは歪嶋本人の意思には違いないけどな」
誠也は解説する様に独り言を言いながら万里花の胸に手を添えると、改めてゆっくりと堪能する様に揉み始めた。
「もっとも、お前に欲情してた歪嶋が橘との密会情報を手に入れたら、暴走する可能性を予測出来なかったと言えば嘘にはなるがな」
ベッドの側の引き出しからかつて歪嶋を解雇する為、ストーカー行為の証拠として録音していたボイスレコーダーを取り出すと、誠也はそこに録音されていた音声を全て削除し再び引き出しに仕舞いこむ。
「……鬼畜、下種、こんな手の込んだ茶番に騙された自分が恥ずかしいですわ」
「茶番とは心外だな。それよりまた汚れた事だし風呂に入り直すか?」
今度は俺と一緒にと耳元で呟く誠也に万里花は無言で頷くと、程なくして浴室から万里花の喘ぎ声が漏れ出すのだった。
強引な展開ですが一応完結させるべく続きを書きました