灰色のひめしずか 作:かわいそうなのでも抜ける猫
01-宵闇
まるで心臓のような鼓動だった。
それはまるで、母のお腹で眠る赤子の胎動のような。されど地震のように力強い音色。
それらに満たされたその空間は、さながら月を失った夜闇のようだ。
黒の中に、赤と紫と、ほんの少しの黄色を混ぜ込んだような。そんな、悍ましい色をした夜空。
――いや、夜空ではない。
肉壁だ。
いや、肉壁と呼んでいいものなのだろうか。
「……はぁ……っ、ぅあ……」
ぐずぐずに煮込まれたような、不気味な肉塊。塵を粘土で押し固めたような、不気味な表皮。
それらに満たされた空間の中で、か細い声を上げる一人の少女の姿があった。
この
「……う……」
白い素足を這い回る、細長い影。まるで剥き出しの内臓のようなそれが、粘液をすりつけるように、彼女の足を撫で回した。
少女は、嫌悪感に露わにしながら、その形の良い眉を歪ませる。
由緒正しき王家の毛色とも言える、その金の髪。腰近くにまで伸びたその長い髪は、今やこの空間に染み渡る粘液によって汚されてしまっていた。
儀式のために用意された純白の衣装は既に一片も残っておらず、彼女の玉のような肌を露わにさせている。
その肌を這い回る、悍ましい腕。
怨念で形作られたその触手は、舐めるように彼女の肌に絡みついた。
「くっ……ガノン……っ」
ガノン。
それが、今一糸まとわぬ彼女を凌辱しようとしているものの名だ。
厄災ガノン。あのハイラル王国を滅亡に追い込んだ、古き怨念。姫のもつ封印の力を求めてやまない、欲求だけが形となった亡霊。
「私は……負け、ない……っ、リンクが……来るまで……っ!」
肉壁に咲いた黒い眼球を、少女は睨みつける。
例えどんなに穢されようとも、心だけは絶対屈しない。そんな思いを込めた瞳で、彼女――ハイラルの王女、ゼルダは睨んだ。
厄災が復活し、英傑も全滅してしまい、ただ一人残された彼女。
家族も、民も、みな犠牲になった末に、封印の力を手にした彼女。
最も慕っていた御付きの騎士が、いつか息を吹き返してやってきてくれる。
そんな希望を胸に、彼女は単身ガノンへと挑んだ。そうして、厄災の中へと取り込まれ、しかしその中から、彼女は懸命にガノンを抑えつけているのだ。
「……あっ……」
そんな彼女の想いも踏みにじるかのように、ガノンは触手を這わせ続ける。
足に絡みついていたものは次第に、まるで蛇のように彼女の体を登り始めた。そうして、彼女の柔らかな腹を艶やかに撫でる。
いや、それだけではない。
この空間から伸びた何十何百といった触手が、全て彼女を舐め回したのだ。
「あっあ……っ……いや、いやぁ……」
決意を込めた彼女の瞳に、暗い影が差す。
これまで自分がされてきたことを、体の感覚が否が応でも思い出させたのだ。
まるで舌のような触手に、舐め回される全身。
汗を舐め取られ、代わりに粘液を塗りたくられる感覚。
触手に巻き付かれ、搾り上げられる乳房。
まるで口のような形状のものに、荒々しく吸い上げられる乳首。
「くぁ……っ、あっ、だ、だめぇ……!」
想起されたそれを、ガノンもまるで読んでいたかのように。
イソギンチャクのように伸びる触手の奥から、先端に口がついたものが流れてくる。
ゼルダは、必死に抵抗した。
抵抗はするが、全身が触手に絡み取られてしまっている訳で。
ろくに動くこともできず、ただ首を横に振ることしかできなかった。
「や、やだ……やだやだ……っ」
子どものように、彼女は涙を溢すけど。
それはまるで、意味がなくて。
先端の口は、その唇を大きく開ける。そうして、彼女の薄桃色の蕾を、ぺろりと包み込んだ。
「あっ……!!」
瞬間、彼女の体に電流のようなものが走る。
腕や足といった肌とは異なる、より繊細な神経が通ったその形のよい蕾は、感覚がそれらの比ではない。そこを粘膜状の触手に絡めとられ、舐め回され、吸い上げられたとなれば。その刺激が、彼女の脳髄を沸騰させるのも、非常に容易なことだった。
「うっ……くぅ、あんっ……」
ゼルダは、喘ぐ。
眉を歪まし、瞳に涙を滲ませて。込み上げてくる感覚を吐き出すように、唾液に満ちたその口を大きく開けた。
そこへ飛び込んでくる、別の触手。
「むぐっ……!?」
舌に絡むばかりか、喉奥にまで滑り込むそれは、その身についた粘液を彼女の口内に擦り付けた。
「むうぅっ! むっ……ふぁあっ……!」
舌や頬の柔らかさを堪能しながら、喉の奥にまで入り込んで。しかし逆走したと思えば、その先端部分を念入りに彼女の舌に押し付けて。
丸みを帯びた生々しい感触に、彼女は悪寒を感じた。必死に、必死にそれから逃げようとするけれど――首はこれ以上曲がらず、その触手のピストンから逃れられない。
呼吸が出来ず、生臭い液体を撒き散らされ、甘くも苦い感覚が口いっぱいに広がっていく。吐き気を感じて押し出そうとしても、喉に滑り落ちる触手を押し返すことはできなかった。
強烈な乳房への刺激と、全身を這い回る触手の悍ましい感覚。口内に侵入された恐怖感に、彼女の頭はいっぱいになる。
それ故に、下半身に忍び寄る、一際太い影。その存在には、とても気付くことなどできなかった。
「――――っっ!!?」
突然の挿入。
合意も何も全て度外視した、無慈悲な侵入。
彼女の聖域に、穢れに満ちた一物が入り込む。
体を蹂躙するそのどれよりも太く固いそれが、無遠慮に彼女の中に入り込んだ。
「……っ……~~っっ!!」
必死に声を上げようにも、喉の奥の奥まで入り込んだ触手のせいで、彼女の声は出なかった。呼吸困難のために、言葉どころか掠れた呻きも出てこない。
頭がぼうっとして、手足にしびれのようなものを感じて。
それでも、下半身を、彼女の中を這い回るそれの感覚には、彼女は抗えなかった。
「……っ……ぉっ……ぁっ……!」
その剛直は、彼女の膣を大きく広げていく。明らかにサイズのあっていないそれに、彼女の秘部は悲鳴を上げていた。
このまま裂けてしまった方が楽なのかもしれない。しかし、封印の力で活性化された彼女の体は、そんなことを許しはしない。
ただ痛みと快感が絶妙に混ぜ合わさった感覚が、彼女の脳髄に直接、それも過剰に送り付けられていた。
ゼルダは、喉を塞がれながらも必死に叫ぶ。
「……っ! ~~っっ!!」
手足を絡めとって、髪も汚しながら、ガノンから伸びた肉の棒は、ひたすらに彼女を穿った。口も膣も全て満たしながら、望まぬ交じりを彼女に強要した。
厄災ガノンは、ハイラル王国を滅ぼそうとする怨念そのものだ。
そして、かつてトライフォースを追い求めたとある魔盗賊の、欲求そのものだ。
彼女の中に眠る封印の力。全ての欠片を揃えたその女神の力を、ガノンは求めてやまないのである。
故に、ガノンはゼルダを凌辱した。凌辱し、彼女の心を折ろうとしていた。完全に彼女の心が壊れれば、それは封印の力のコントロールを失ったことを意味する。そうして手放されたそれを手にするのは、他ならぬガノンである。
ガノンは、その力を求める。
ガノンは、ゼルダを求める。
ゼルダが、ガノンの中に取り込まれたあの日から。
ガノンは、ゼルダを侵し続けていたのだった。
「――――――――っっっ!!!」
その叫びは、絶頂によるものだったのか。
それとも、ガノンから吐き出された白濁したものへの嫌悪感か。
もはや、ゼルダにすら分からない。
全身を走り回る刺激と、酸素の薄れた脳髄。そしてほてった思考のせいで、もう何も、彼女には分からなかった。
ずるりと、口に潜っていた触手が、彼女の中から這い出てくる。
全てを吐き出して、満足したと言わんばかりに萎びたそれが全身を露わにした。
埋め尽くしていたものを失って、空虚になった彼女の口。しかし空虚にはなり切れず、零れ落ちた体液を零れさす。
フレッシュミルクなどとは比べ物にならない、白濁した液体。一瞬気を抜いた彼女に、腹から込み上げる嫌な感覚が襲い掛かった。
「……うっ――かはっ! げほっげほっ……!」
喉奥に押し出された体液。嫌な白色に満たされた生臭いそれが逆流し、ぼとぼとと彼女の口から零れ落ちる。
もはや液というより、半固体状の何かだ。ねっとりと、絡みつくように彼女の唇を汚した。
「……ひゃんっ!?」
その隙をついたかのように、膣を穿っていた触手も飛び出した。
即座に全身を抜き放ち、同時に彼女の膣壁を激しく擦り付ける。その感覚に、ゼルダは思わず仰け反った。
とはいえそんなこともまるで関係ないと言わんばかりに、彼女の膣内に注がれた液体も零れ始める。シチューのような粘度のそれは、ぼとり、ぼとりとこの怨念でできた肉壁の空間を彩っていった。
「……はぁ、はぁ……」
虚ろな目で、少女はただ喘ぐ。
やっと終わったという安心感と、いつ次がくるか分からないという恐怖感。
何とか耐えれたことに胸を撫で下ろす一方で、いつまで耐えれるのか分からないという不安がよぎる。
黒の中に、赤と紫と、ほんの少しの黄色を混ぜ込んだようなこの肉の中。それを彩る白濁色にも、彼女はまるで目を向けなかった。
――過度な凌辱が続いた結果、彼女は色彩を感じる機能を忘れてしまったのだ。
今では、全てが灰色に見える。この壁も、触手も、そして自らに注がれた粘液も。全部全部、彼女には灰色に染まって見えた。
「……リンク……リン……ク……」
力が抜けたように、彼女はがくりと首を落とす。
疲れか、安堵か、はたまた解放感か。
一時の休息に、彼女はほんの少しだけ、その心を休めるのだ。
――――これから、これが百年あまりも続くなんて、予想だにしないままに。