灰色のひめしずか 作:かわいそうなのでも抜ける猫
肉と肉の、弾け合うような音が響き渡る。
「あっ、あぁっ! そんなっ、そんな早くしちゃ……っ!」
その声は、いつもとは違った。
体に走る不快感と、ガノンという異質の存在に侵される嫌悪感。そして少しばかりの快楽を混ぜ合わせたような声。それがいつもの声だとすれば、今彼女――ゼルダから発せられる声はというと。
「だめっ、ダメぇ……っ! もう、もう許してっ……許してくださいぃ……っ」
振り絞るような声だった。痛みに耐えるような声だった。
そんな彼女に後ろから覆い被さり、激しく腰を振るは一匹の大柄な魔物。
黒い頭髪を、乱雑に振り回す。その髪を掻き分けて伸びる角は、弧を描いた刀剣のように勇ましい。白く、紫色の滲みに満たした体は筋肉質で、そしてどこか醜悪だった。
そこまで見れば、亜人調の魔物のようだ。だが、そうではない。奴は決して、ただの亜人などではない。
「こわっ、壊れる……っ、壊れ、って……~~っ、しまいますっ……ふあぁっ!」
まるで殴打するかのように突き上げる、彼の腰振り。少女の二の腕ほどはありそうな肉茎が、彼女の秘部を激しく痛めつける。押し切られれば少女は悲鳴を上げ、引き上げられれば膣の肉をまとめて外へ引きずり出すような。そんな、悲鳴に満ち溢れるような痛々しい動きだった。
その矛そのものも、独特な形状だ。そして何よりも独特なのは、その矛の周り。いわば、彼の下半身である。
彼の腰振りは――いや、彼の腰は、なんと馬のような形をしていたのだ。逞しい馬の下半身が、彼女を後ろから突き上げている。
「あがっ……がっ、ひぐっ……!」
わき目も振らず、少女の悲鳴にも目もくれず、その魔物は交尾を続行。子宮を壊そうとするかのような恐ろしい動きで、ひたすらに彼女を哭かせた。
太い陰茎によるそのピストンは、もはや撫でるという範疇にはない。少女の秘部を抉ると言った方が正しいだろう。動かれる度に膣の肉を引き延ばされ、奥の奥まで殴られる。それによって彼女の子宮は、弾けるやもしれなかった。
――――いや、弾けさせることが、そもそものこの魔物の目的なのかもしれないが。
「そんなっ……強く、突いちゃっ、ダメ……っ! お腹がっ、お腹がぁっ!」
半人半馬の魔物――ライネルは、彼女の悲痛な声にも構わず、なおも交尾を強行する。もはや獣の交じりと言っても過言ではないそれに、少女はただ歯を食いしばった。お腹を庇うように、ただ痛みに耐える。
揺れていた。
当然、少女の柔らかな果実は揺れる。栄養を十分に吸収して実ったそれは、突かれる度にぷるりと揺れ動いていた。右も左も、突き上げに応じてその形を変えていく。
もう一つ。少女の、膨らんだ腹が揺れていた。毬のように張れた腹が、重々しく揺れていた。
肥満か?
いや、違う。少女の中に別の命があることの、何よりの証明なのだ。
「そんなっ、そんな風に突いたら……っ、お腹っ、お腹の子が……っ!」
そこに入っているのは、ハイリア人の子どもではないけれど。
それでも、例え魔物の子であろうと、少女は庇わずにはいられなかった。いくら魔物であっても、生まれる前の赤子には罪はない。彼女はどうしてもそう考えてしまい、嫌悪し切ることができなかったのだ。如何にいつか害なるものとなるとしても、せめて今は。今だけは、と。
そんな優しい少女の心にも、ライネルはまるで
「かはっ……!」
魔物が吠えた。己の腰に走る強烈な快感に、奴は思わず吠えた。
同時に、恐ろしいまでの輸送が行なわれる。
まるで噴射だ。射精、などという生半可なものではない。もはや火山が噴火するかのように、ただただ熱いものを彼女の中に叩きつけた。彼女の体が、そのまま押し出されそうになるほどの勢いで。
「あぅっ……」
しかし魔獣は、その剛腕をもって彼女に掴みかかる。少女の体が、自らの矛から逃れないように。握り締めるが如く、その華奢な体を抑えつけた。
「あっあぁっ……あぁああぁ――――ッッ!!」
腹の奥に、火炎の大剣を突き刺されるような痛み。
それに、少女は叫ぶしかなかった。
「……あぐっ……!」
獰猛な輸送によって弛緩した彼女を次に襲うのは、強烈な腹の痛みだった。
その巨躯をもってしても、一体どこに収めていたのかと不思議になるくらいの射精を終えて、満足そうにライネルが唸った頃。
全身を白濁した色で染め、どころかできあがった白い沼に全身を浸していた少女の腹に、切り裂かれるような痛みが走る。
「あっ、あぁ……う、産まれ……っ!」
腹の中で、赤子が暴れている。
あまりの刺突に驚いたのか、中の子どもが激しく身動ぎしている。
その感覚を、ゼルダは何度も経験してきた。中に詰まった命が産まれ出ようとする動き。母の体を切り裂こうとする、道理でありながらも無情な動きを。
「あ"あ"あぁぁっ!」
少女の秘部は、どれだけ負荷がかけられても、ただ裂けないだけだ。痛みが無くなった訳じゃない。何度受胎と出産を繰り返されようと、彼女の小さな秘裂はその度に悲鳴を上げてしまう。
腹の中を弄られる感覚。無邪気で、悪意もないその動きに、少女はひたすら翻弄される。慣れる訳がなかった。悲鳴を上げるしかなかった。
「くぅ……痛いっ、いたぁいぃ……っっ、うああぁぁ……っ!!」
その感覚は、腹の中で太い蟲がいくつも這い回ってるようなものではない。
カエルや蜂に産み付けられた卵が孵り、大量の赤子に胎内を泳ぎ回られるようなものでもない。
大きな頭。太い手足。明らかに人型の何かの感触だ。複雑な作りをした何かが、少女の腹から、今目覚めようとしていた。
「あ"ぁぁっっ!! 裂けるっ、裂けちゃう……っっ」
ごりごりと彼女の体を抉じ開けて、大きなものが這い出てくる。
その大きさは、あのライネルの矛よりもさらに大きい。あの刺突以上に拡張される産道の感覚に、少女は泣き叫んだ。瞳から涙を溢れさせ、肉の床を強く握り締める。
「あ"っ、あ"ああぁぁっ!!」
痛みを何とか逃がそうとする、少女の
それでも、羊水も精液も全て零れさせる秘部の苦しみは一向にまぎれない。奥の方から何かが零れる感覚に、少女はどうしようもなく叫び続ける。
ぼたぼたぼた、と。響き渡る、激しい着水音。羊水と混ざり合って、少しばかり粘り気を失った精液が、滝のように溢れ返って。
そんな、彼女の秘部から。その音に紛れようとするかのように。
黄金色に輝く赤子が、産声を上げながら顔を出した。
「っっはうっ……!」
破くように飛び出たそれに、ゼルダは思わず乾いた悲鳴を上げる。
しかし、赤子は止まらない。痛みに耐える母にも構わず、太い手足を振り回した。その度に産道は大きく引き裂かれ、少女は悶絶するようにエビ反った。
「っ……っっ!! ~~……っっあぎっ……!!」
掻き回すように伸ばした腕が、彼女の体から突き抜ける。外気に晒されたその腕で、赤子はひたすらに奮闘。母の体を引っ掻きながら、早く解放されたいと懸命に這い出した。
ぼとり、と、それは産まれ落ちる。悍ましい魔物の赤子が、奇声を上げていた。
「――――っ……」
拡張された痛みに、少女は疲れ果てたように力を抜く。
ようやく終わった出産の痛みに、ただただほっと安堵した。何せ、蟲を産み落とすよりもさらに激しいその出産は、彼女の心身を著しく貪っていたのだから。
痛みが薄れると、彼女は自らの疲弊をようやく認識する。叫びっぱなしで、息も絶え絶えになっていたことにようやく気付く。やっと呼吸を再開した時には、肩で息を吸わなければならないほどに、彼女は疲れ果てていた。
「はぁっ、はぁーっ……っっ……はぁ、はぁ……」
そんな、少女の艶めかしい吐息を前に。
赤子は、ようやく母の存在に気付く。奇声を発しながら見渡していた首を、少女の方へと固定した。
頭部に生えた一本の角。ハイリア人の子どものような、小柄な体躯。大きな口に獣のの如き醜悪な瞳。
その姿は、まごうことなきボコブリンだ。しかし、普通のものとは何かが違った。
何が違うか。
それは一目瞭然だった。
色。
色である。全身の体色。それが、明らかに他のものと異なっている。
その身は、金一色だ。まるでゼルダの美しい髪のような。満月を落としたかのような、鮮やかな色。
黄金のボコブリン。その存在を名付けるなら、まさにそれが相応しい。
「あ……っ……」
母の匂いに、母の胸から漂う甘い香りに引き寄せられて。
ボコブリンは歩き出す。へそから伸びた緒を床に擦らせながら、彼女の柔らかな乳房に向けて歩き出す。
そのまま、吸引。腹を空かせた子どもらしく、母の胸へと飛び込んで、そのまま激しくその乳房にしゃぶりついた。
「あんっ……」
疲れのあまり抵抗もできないゼルダだが、ボコブリンはそんなこともおかまいなしだ。
ただ、取り憑かれたように舌を暴れさせる。柔肌に這わせ、弾力に富んだ突起を弄り、そこから母乳を絞り出させて。吸い上げて、乳の噴き出る小さな穴を舐め尽くし、側面をもくりくりと舐め回しながら、必死に彼女を啜り続けた。
「ふあっ……ひゃっ、はうっ……」
その度に少女は甘い息を吐く。抵抗もできずに、敏感になった体を好きにされ、荒々しい快感の波に打ち寄せられるのだ。少女はただ、我が子にされるがままに喘いでしまう。
母乳を飲めば飲むほど、ボコブリンはその身の輝きをより一層際立たせた。節々が光り、頭角はより鋭利に伸びて。少しずつ、立派なボコブリンらしい風貌へと急成長し始める。
そのまま、少女と魔物は異種の親子ながらであっても。慈愛に満ちた、生命の営みを行い続ける――――なんてことはなかった。
「あ……や、や……だ……っ……」
半ば呆然としたゼルダの視界に、それが映る。
母の乳をしゃぶりながら膨らませた小振りな肉棒が、母の柔肌へと擦られる光景。
今し方産んだばかりの子どもが、自分に向けて性交を迫ろうとするその姿が。
それを、ライネルは投げ飛ばした。
ぶちっ、なんて音を立てて、親子を繋いでいた緒が引き千切れる。そのあまりにも急な乱入に、誰も彼もが反応し損ねた。
出産の一部始終を、大人しく見守っていたライネルだ。だが、いい加減耐えられなくなったのだろうか。その逞しい腕をもってボコブリンを掴み、肉壁に向けて叩き付けたのだった。
「……っ!」
その一撃で気を絶したボコブリンに代わり、再びライネルがゼルダに跨ろうとする。俺の番だと言わんばかりに、その脈打つ肉棒を露わにした。
少女はただ、恐怖する。
後産も何も終えていないのに、再び挿入される男根に。
自らを奪い合うように、魔物たちが性交を迫ってくることに。
ゼルダは、リンクの目覚ましい活躍を見ていた。
自身の力をもって彼に語り掛けるに留まらず、彼が次々と神獣を解放していっていることも知っていた。
それ故に、彼らは産まれ始めた。今ゼルダを侵しているライネルと同様の、白銀と呼ばれる魔物たち。よりガノンの魔力を吸収した、強き力をもった魔物たち。
蟲から変異した彼らは、ゼルダを求める。彼女に性交を強要する。
彼らがゼルダに落とした種は、少女のもつ女神の力を十分に吸い取った。あの眩しい魔力を啜り、そうして生まれたのが黄金の魔物たちだ。先程産まれたボコブリンのように、彼女の髪のような色を輝かせる魔物たちだ。
彼らは、ガノンの魔力と女神の力を色濃く飲んだ、最強格の魔物である。リンクを仕留めようとより強い脈動をし始めたガノンの、欲求の表れそのものだった。
繭が震え、その肉が暴れ、ガノンは力強く吠える。それが意味するのは、ガノンの力の昂ぶりか。それとも、少しずつ吸い出されたゼルダの力が枯渇しつつあることか――――。
今日もまた、ゼルダは赤子を産み落とす。
蟲の出産の合間に、金の赤子を産み落とす。
そうして貯まった肉は、浮かばれない魔物の魂と結びついて。満月の夜に、一斉に解き放たれて。金の魔物もまた、次から次へと世界に送られていく。今日もまた、数多の命が植え付けられていく。
ブラッディ・ムーンに復活する魔物たち。
それを造作なく薙ぎ払っていくリンク。
それが、みなゼルダの腹から産まれてきた子らであるという事実を。彼は考えることもなく、ただその首を断ち切るのだった。