灰色のひめしずか 作:かわいそうなのでも抜ける猫
「うっ……うぅ~~っ!!」
宵闇色の肉の中で、少女に痛みに悶える声が響いていた。
触手に腕を肩まで巻き付かれ、上半身を持ち上げられて。さらに、太ももに絡んだものもその足を引き上げて。
そうして宙に吊るされたゼルダは、例えようもない痛みを前に、ただ顔を歪ませる。玉のように膨らんだ腹の痛みに、どうしようもなく涙を溢した。
「中で……っ、動いて、る……っ」
膨らんだ腹の柔肌は、その下に何かがいることを示唆するかのように脈打っていた。まるで芋虫が這い回るかのように、一部分が膨らんでは、それが柔らかな軌跡を描いていく。
その様子が、ますます彼女の心を蝕んだ。絶望に満たした瞳を、眩い涙で潤わせる。
いよいよ、その時がきた。そう言わんが如く、ガノンは触手の動きを止める。彼女をしゃぶるのも、中に液を注ぐこともやめ、ゆっくりとその動きを鈍らせた。
彼女の中から、我が子が生まれるのを心待ちにするかのように。ただひたすら、その時を待つ。
故に、ゼルダは他のことに気を紛らわせることもできず、ただ自分のお腹と向き合うしかなかった。自分の意思とは無関係に脈動するそれに、ただ恐怖するしかなかった。
「……っ!!」
痛い。はち切れそうなくらいに、お腹が痛い。
そんな感覚が、彼女の全身を覆い尽くす。張ったお腹の痛みが、そのまま脳へと届いていく。
当然、彼女には出産はおろか、妊娠の経験すらなかった。自分には縁のないものだろうと、深く調べることもなかった。
ただ漠然と、苦しいけど素敵なものなのだろうと思い描いていて。
それが現実では、見知らぬ男どころか、人でもなんでもないものに孕まされることになるなんて、誰が予想しただろうか。
「こんな、こんなの……ありえないっ……のに……」
同種でなければ、子は為せない。
そう思い込んでいた彼女の心を、軽々と
ガノンから放たれた、あまりにも大きすぎる精子。それに満たされた彼女の子宮は、あろうことか奴との受精を果たしたのだった。
それが何故かは分からない。ただ、厄災ガノンという常識の範疇に留まらない、強大な魔力をもった存在を前にすれば――そんなこと、至極どうでもいい疑問なのかもしれない。
彼女の中にいるのは、化け物だ。
普通の赤子では、ないのだ。
「……あ"っ……!!」
どくんと、腹が跳ねた。
いよいよと言わんばかりに、腹の中の何かが跳ね回る。その度に引き裂かれるような痛みが走り、少女はぽろぽろと涙を溢した。
「うごっ……いちゃ、ダメ……」
俺を出せ、俺を出せ。
ここはどこだ。出口はどこだ。
そう言うかのように、腹の中の何かが暴れ狂う。これが陣痛の痛みなのかと、少女は半ば他人事のようにそう思いながら、されど不意に走る痛みに絶叫した。
「あがっ、うっ……あ"あ"あああぁぁぁぁッ!!」
出口を見つけたそれが、ずるりと口を抉じ開ける。貫かれる痛みが走ったのも束の間、今度はそれが膣壁を押し上げる感覚に彼女は支配された。
「あ"っ……!」
しわくちゃにした彼女の顔が、整った顔を折り畳んだ彼女の口から、濁音混じりの悲鳴が響いて。
そうかと思えば、それは彼女の秘裂から顔を出した。溢れ出る羊水と共に、それが現れた。
「……う、そ……」
虚ろな目で見つめる彼女。その視線の先で脈打つ、小さな影。
それはまるで、あの触手のようだった。いや、あの触手よりもさらに芋虫然とした、何か。紫色に染まったそれが、卵白のような粘ついた粘液を撒き散らしながら、母に甘えるかのようにゼルダに絡みついていく。
凹凸の激しいその出で立ちは、腸管というよりはまさに芋虫だ。成人男性の、腕ほどの太さと長さ。そう言っていいほどの大きさのそれが、どろどろと少女の体を汚していく。頭頂部についたガノン特有の真っ黒な瞳が母の顔を見て、小さく鳴いた。
「こんな……こんなの……」
首に絡みついて、ゼルダの頬を舐め回す赤子。その赤子の腹の先から、一本の線が伸びる。それはそのまま、少女の秘裂へと繋がっていた。
その
「うっ……!」
だが、産んだというのに腹の疼きは収まらない。膨れ上がった腹も、さらにはその下で蠢く何かも、一向に収まらない。
「うそ……一匹じゃ、ないの……?」
そんな彼女の声に反応したかのように、子宮口が痛む。張り裂けそうなお腹の痛みをも上回るほどの、出産の痛み。それが産道を通して、ゼルダへと襲い掛かった。
「あ"あぁっ!!」
ハイリア人の赤子とは違い、その粘ついた体液があるからだろうか。触手の赤子は膣壁を押し広げるものの、詰まることなく飛び出てくる。その感覚は、性交後に一物を引き抜かれるような、そんな感覚に近いようだった。
とにもかくにも、二匹目だ。されど、お腹の脈動はまだ収まらなかった。
「まっ……まだ――――う"っ!?」
ぞっとするゼルダにもおかまいなく、赤子は彼女の口に飛び込んだ。
小さいながらも口を開き、彼女の舌を啜り始める。それはまるで、体液を欲してやまないガノンの触手のようだった。幼くとも、その性質は変わらないのだろう。
口が塞がれても、そんなことは関係ない。そう言わんが如く、三匹目の出産が始まって。
少女は声も出せずに、ただひたすら蹂躙された。
それから、一体どれほどの時間が経っただろうか。
彼女の周りには、七、八匹ほどの小さな影があった。そのどれもが細い管を彼女と繋いでおり、それはみんな彼女の秘裂から伸びていた。
そんな、彼女の秘裂の向こうでは。最後の一匹が、懸命に外へ出ようともがいている。
「あ……あ、あっ……」
連続する出産に疲れ切った彼女は、もはや抵抗する気力もないようだった。
両手足を体を支える触手に投げ出して、ただ大きく呼吸をしている。
体中は、あの赤子たちのとろりとろりとした透明な体液で汚されて。まるで卵白の海にでも沈められたかのような、そんな出で立ちだった。
そんな母親の体を、赤子は激しく啜っている。
栄養に満ちた体液は、もちろん母乳なのだろう。現に、四匹ほどがそれに夢中になって、周りも介さずにしゃぶりついていた。乳首を噛んで、されど母乳の搾り方も分からず、ただ懸命に吸い上げているのだ。大きく引っ張られる彼女の乳房は優美に伸びて、柔らかい波を打ち立てた。
両の胸を貪られる一方で、そこから追いやられてしまったものは他の汁を吸っている。口内に潜り込んで唾液を吸い取るもの。脇に絡んで汗を舐め上げるもの。へそへと狙いを定めて、潜ろうとするものもあった。
そんな中で、とうとう最後の一匹が出口を発見する。
「うっ……」
子宮口を抉じ開けられる痛みに、彼女は小さく呻くけれど。もう絶叫はできず、ただ僅かにその身を痙攣させた。
それでも、赤子は止まらない。産道をその体液で広げ、滑るように前へと進む。その度に彼女の脳へと強い刺激が届いて、彼女の焦点はいよいよ合わなくなり始めた。
「あぁっ……」
太い触手に持ち上げられた彼女は、その指先をぴんと立てる。どうしようもなく、体中のざわめきを抑えられず、ただの全身を緊張させた。
そんな、強く張った足先を。絡んだ触手が持ち上げて、徐々に徐々に、彼女の腰を浮かべようとする。
「な……なに、する……の……?」
体が地面と平行になり、どころか下半身がより上げられて。
天地がひっくり返ったのに驚いて、赤子は悲鳴を上げる。上げながら、母の体に纏わりついてその身を保った。母乳を吸うことで一杯になっている子らは、乳首を吸い上げる力でその体勢を維持する。それによって胸の先端により一層大きな刺激が走り、少女は喉奥を引き攣らせた。
が、それも一瞬。花びらの中央から飛び出た最後の赤子に、そしてその出産の痛みに。ゼルダは、体をエビ反りにさせる。
「っあ"あッ!?」
飛び出たのも束の間、それは何を思ったのか彼女の肛門へと潜り込んだ。入る場所を間違えたのか。それとも、さらなる温もりを求めたのだろうか。
肛門を、そして腸すらも押し広げられる感覚に、少女は悲鳴を上げる。まるで予想していなかった刺激に全身が跳ね、ただひたすらに悶絶した。
「っ……んっ……あぁっ……」
それでも絶叫はできなくて。ただ哀しそうに、彼女は瞳に涙を湛えるのだった。
秘裂から、十本近くの管が飛び出ている。
へその緒であるそれには、当然赤子と繋がっていて。
その赤子は今、母親の栄養を吸い取りながら、その渇きを癒している。
宝石のような涙を掬い上げるもの。
とろとろの唾液を吸いとっていくもの。
温かな母乳を搾り上げるもの。
全身から噴き出る汗を舐めとるもの。
耐えられず漏れた尿を口に流すもの。
花びらを滴らせる愛液に、その身を浸すもの。
自ら腸の奥へと潜り込んで、奥に詰まった排泄物を頬張るもの。
どの赤子も、母の栄養をがつがつと口にしていた。何日も何も食べれなかった狼のように、恥も外聞も何も考えず、ただひたすらにゼルダを貪っている。
その想像を絶する感覚に、彼女は静かに嘆いた。
「私が、産んっ……だの、は……何……?」
異形のそれが、遠慮もなしに少女を襲う。異形であっても親子であるはずなのに、そんなことは関係ないと言わんばかりに、少女の心を蝕んでいく。
自分が、ガノンの子どもを産んだ。
信じたくない。
信じられない。
こんな悍ましい肉塊を、自分が産んだなんて。
そんな思いに満たされて、ゼルダはいよいよ何も考えられなくなる。
心に入った罅が、さらに大きく広がり始めた。もう無理かもしれない、なんて。そんな思いが、少しずつ膨らんでいく。
しかし、彼女の絶望は、そんなものでは終わらなかった。
「……え……?」
一本、触手がせり出してくる。
赤子ではない。ガノンの肉壁から伸びたものだ。成体らしい、大きさも太さも赤子より一回り大きなそれが、ゼルダの秘部の前に躍り出る。次いで、その大口を開けた。
「なにっ……なにするの……」
開けた口で一通り鳴き声のようなものを上げてから――――それは、彼女の膣の中に潜り込む。
「あっ……!?」
出産の時よりもさらに押し広げられる感覚に、体中が悲鳴を上げた。赤子と彼女を繋ぐ管も押し退けて、触手はとうとう子宮口まで入り込む。
その小さな隙間に、触手は口の先を入れて。かと思えば、無理矢理口を開いて彼女の子宮を抉じ開けた。
「ひぎっ……!!」
再び襲い掛かってくる局部の痛みに、彼女が歯を食いしばっている間に。それはとうとう、彼女の聖域への侵入を果たしたのだった。少女の僅かな力みもまるでおかまいなしに、猪突猛進な勢いで、奥へと滑り込んでいく。
抉じ開けられた痛みはもちろんのこと、内部を弄られる不快感も尋常ではなかった。少女は何もできず、ただただ悲鳴を上げる。
「あっ……あぁっ……!」
そこから伝わってくる感覚は、どこか感じたことがあるような。痛みに溺れ、号泣する彼女だったが、そんな既視感のようなものを頭の隅で感じ取った。
「あっ、やぁっ……こ、これ……これ、って……」
そうだ。
これは、腸に潜られて排泄物を貪られるような、あの感覚に近いんだ。
なんて、彼女が思ったのも束の間。
ぷつりと、赤子を繋いでいたへその緒が切れた。十本近くあったそれらが、ずるりと零れ落ちる。ついで、ゆっくりと秘部から触手が顔を出すのだが――――。
その口周りは、鮮血で満ちていた。
「……あ……」
出産を終えた後には、後産というものが待っている。
赤子のために形作られた胎盤や臍帯などの組織は、産んだからといってそのまま消える訳ではない。まだ子宮や膣に残っているために、それらを排出しなければならないのだ。それが後産というものであるが――。
それをこの触手は、貪った。彼女の中の残骸を、ぺろりと呑み込んだのだった。
あえて綺麗に掃除をしたのは何故か?
我が子を産んでくれた母体に、敬意を示すためか?
せめてもの労いとして、後始末を名乗り出たのか?
否。
「……ひっ……!?」
再びそそり立ったのは、今彼女の体に纏わりつく赤子らを孕ませた、あの剛直。
あの跳ね回るほど活きが良い精液を吐き出した、大きすぎる生殖器だった。
「あ、あぁ……やだっ、いやです……っ!」
少女の顔が引き攣った。
あんなに苦しい性交を経て、あんなに痛かった出産を今し方終えたというのに。
待っていたのは、『次』だったのだ。
「今、今産んだばかりっなのに……いやぁ……」
再び触手が、彼女を雁字搦めにして。無くなった体力を必死に振り絞って抵抗する彼女を、嘲笑うかのように抑え込んで。
破瓜さながらの、鋭い痛み。それと共に押し付けられる、怨念の悍ましい欲望。
少女の断末魔のような悲鳴が、この