※この作品はR-18です。

灰色のひめしずか   作:かわいそうなのでも抜ける猫

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05-降誕

「うっ……うぅ~~っ!!」

 

 宵闇色の肉の中で、少女に痛みに悶える声が響いていた。

 触手に腕を肩まで巻き付かれ、上半身を持ち上げられて。さらに、太ももに絡んだものもその足を引き上げて。

 そうして宙に吊るされたゼルダは、例えようもない痛みを前に、ただ顔を歪ませる。玉のように膨らんだ腹の痛みに、どうしようもなく涙を溢した。

 

「中で……っ、動いて、る……っ」

 

 膨らんだ腹の柔肌は、その下に何かがいることを示唆するかのように脈打っていた。まるで芋虫が這い回るかのように、一部分が膨らんでは、それが柔らかな軌跡を描いていく。

 その様子が、ますます彼女の心を蝕んだ。絶望に満たした瞳を、眩い涙で潤わせる。

 

 いよいよ、その時がきた。そう言わんが如く、ガノンは触手の動きを止める。彼女をしゃぶるのも、中に液を注ぐこともやめ、ゆっくりとその動きを鈍らせた。

 彼女の中から、我が子が生まれるのを心待ちにするかのように。ただひたすら、その時を待つ。

 故に、ゼルダは他のことに気を紛らわせることもできず、ただ自分のお腹と向き合うしかなかった。自分の意思とは無関係に脈動するそれに、ただ恐怖するしかなかった。

 

「……っ!!」

 

 痛い。はち切れそうなくらいに、お腹が痛い。

 そんな感覚が、彼女の全身を覆い尽くす。張ったお腹の痛みが、そのまま脳へと届いていく。

 当然、彼女には出産はおろか、妊娠の経験すらなかった。自分には縁のないものだろうと、深く調べることもなかった。

 ただ漠然と、苦しいけど素敵なものなのだろうと思い描いていて。

 それが現実では、見知らぬ男どころか、人でもなんでもないものに孕まされることになるなんて、誰が予想しただろうか。

 

「こんな、こんなの……ありえないっ……のに……」

 

 同種でなければ、子は為せない。

 そう思い込んでいた彼女の心を、軽々と嬲(なぶ)るこの胎動。

 ガノンから放たれた、あまりにも大きすぎる精子。それに満たされた彼女の子宮は、あろうことか奴との受精を果たしたのだった。

 それが何故かは分からない。ただ、厄災ガノンという常識の範疇に留まらない、強大な魔力をもった存在を前にすれば――そんなこと、至極どうでもいい疑問なのかもしれない。

 彼女の中にいるのは、化け物だ。

 普通の赤子では、ないのだ。

 

「……あ"っ……!!」

 

 どくんと、腹が跳ねた。

 いよいよと言わんばかりに、腹の中の何かが跳ね回る。その度に引き裂かれるような痛みが走り、少女はぽろぽろと涙を溢した。

 

「うごっ……いちゃ、ダメ……」

 

 俺を出せ、俺を出せ。

 ここはどこだ。出口はどこだ。

 

 そう言うかのように、腹の中の何かが暴れ狂う。これが陣痛の痛みなのかと、少女は半ば他人事のようにそう思いながら、されど不意に走る痛みに絶叫した。

 

「あがっ、うっ……あ"あ"あああぁぁぁぁッ!!」

 

 出口を見つけたそれが、ずるりと口を抉じ開ける。貫かれる痛みが走ったのも束の間、今度はそれが膣壁を押し上げる感覚に彼女は支配された。

 

「あ"っ……!」

 

 しわくちゃにした彼女の顔が、整った顔を折り畳んだ彼女の口から、濁音混じりの悲鳴が響いて。

 そうかと思えば、それは彼女の秘裂から顔を出した。溢れ出る羊水と共に、それが現れた。

 

「……う、そ……」

 

 虚ろな目で見つめる彼女。その視線の先で脈打つ、小さな影。

 それはまるで、あの触手のようだった。いや、あの触手よりもさらに芋虫然とした、何か。紫色に染まったそれが、卵白のような粘ついた粘液を撒き散らしながら、母に甘えるかのようにゼルダに絡みついていく。

 凹凸の激しいその出で立ちは、腸管というよりはまさに芋虫だ。成人男性の、腕ほどの太さと長さ。そう言っていいほどの大きさのそれが、どろどろと少女の体を汚していく。頭頂部についたガノン特有の真っ黒な瞳が母の顔を見て、小さく鳴いた。

 

「こんな……こんなの……」

 

 首に絡みついて、ゼルダの頬を舐め回す赤子。その赤子の腹の先から、一本の線が伸びる。それはそのまま、少女の秘裂へと繋がっていた。

 そのへその緒(・・・・)が、芋虫のようなそれがゼルダから産まれてきたことの、何よりの証明となっていた。

 

「うっ……!」

 

 だが、産んだというのに腹の疼きは収まらない。膨れ上がった腹も、さらにはその下で蠢く何かも、一向に収まらない。

 

「うそ……一匹じゃ、ないの……?」

 

 そんな彼女の声に反応したかのように、子宮口が痛む。張り裂けそうなお腹の痛みをも上回るほどの、出産の痛み。それが産道を通して、ゼルダへと襲い掛かった。

 

「あ"あぁっ!!」

 

 ハイリア人の赤子とは違い、その粘ついた体液があるからだろうか。触手の赤子は膣壁を押し広げるものの、詰まることなく飛び出てくる。その感覚は、性交後に一物を引き抜かれるような、そんな感覚に近いようだった。

 とにもかくにも、二匹目だ。されど、お腹の脈動はまだ収まらなかった。

 

「まっ……まだ――――う"っ!?」

 

 ぞっとするゼルダにもおかまいなく、赤子は彼女の口に飛び込んだ。

 小さいながらも口を開き、彼女の舌を啜り始める。それはまるで、体液を欲してやまないガノンの触手のようだった。幼くとも、その性質は変わらないのだろう。

 口が塞がれても、そんなことは関係ない。そう言わんが如く、三匹目の出産が始まって。

 少女は声も出せずに、ただひたすら蹂躙された。

 

 

 

 

 

 それから、一体どれほどの時間が経っただろうか。

 彼女の周りには、七、八匹ほどの小さな影があった。そのどれもが細い管を彼女と繋いでおり、それはみんな彼女の秘裂から伸びていた。

 そんな、彼女の秘裂の向こうでは。最後の一匹が、懸命に外へ出ようともがいている。

 

「あ……あ、あっ……」

 

 連続する出産に疲れ切った彼女は、もはや抵抗する気力もないようだった。

 両手足を体を支える触手に投げ出して、ただ大きく呼吸をしている。

 体中は、あの赤子たちのとろりとろりとした透明な体液で汚されて。まるで卵白の海にでも沈められたかのような、そんな出で立ちだった。

 そんな母親の体を、赤子は激しく啜っている。

 栄養に満ちた体液は、もちろん母乳なのだろう。現に、四匹ほどがそれに夢中になって、周りも介さずにしゃぶりついていた。乳首を噛んで、されど母乳の搾り方も分からず、ただ懸命に吸い上げているのだ。大きく引っ張られる彼女の乳房は優美に伸びて、柔らかい波を打ち立てた。

 両の胸を貪られる一方で、そこから追いやられてしまったものは他の汁を吸っている。口内に潜り込んで唾液を吸い取るもの。脇に絡んで汗を舐め上げるもの。へそへと狙いを定めて、潜ろうとするものもあった。

 

 そんな中で、とうとう最後の一匹が出口を発見する。

 

「うっ……」

 

 子宮口を抉じ開けられる痛みに、彼女は小さく呻くけれど。もう絶叫はできず、ただ僅かにその身を痙攣させた。

 それでも、赤子は止まらない。産道をその体液で広げ、滑るように前へと進む。その度に彼女の脳へと強い刺激が届いて、彼女の焦点はいよいよ合わなくなり始めた。

 

「あぁっ……」

 

 太い触手に持ち上げられた彼女は、その指先をぴんと立てる。どうしようもなく、体中のざわめきを抑えられず、ただの全身を緊張させた。

 そんな、強く張った足先を。絡んだ触手が持ち上げて、徐々に徐々に、彼女の腰を浮かべようとする。

 

「な……なに、する……の……?」

 

 体が地面と平行になり、どころか下半身がより上げられて。

 天地がひっくり返ったのに驚いて、赤子は悲鳴を上げる。上げながら、母の体に纏わりついてその身を保った。母乳を吸うことで一杯になっている子らは、乳首を吸い上げる力でその体勢を維持する。それによって胸の先端により一層大きな刺激が走り、少女は喉奥を引き攣らせた。

 が、それも一瞬。花びらの中央から飛び出た最後の赤子に、そしてその出産の痛みに。ゼルダは、体をエビ反りにさせる。

 

「っあ"あッ!?」

 

 飛び出たのも束の間、それは何を思ったのか彼女の肛門へと潜り込んだ。入る場所を間違えたのか。それとも、さらなる温もりを求めたのだろうか。

 肛門を、そして腸すらも押し広げられる感覚に、少女は悲鳴を上げる。まるで予想していなかった刺激に全身が跳ね、ただひたすらに悶絶した。

 

「っ……んっ……あぁっ……」

 

 それでも絶叫はできなくて。ただ哀しそうに、彼女は瞳に涙を湛えるのだった。

 

 

 

 秘裂から、十本近くの管が飛び出ている。

 へその緒であるそれには、当然赤子と繋がっていて。

 その赤子は今、母親の栄養を吸い取りながら、その渇きを癒している。

 

 宝石のような涙を掬い上げるもの。

 とろとろの唾液を吸いとっていくもの。

 温かな母乳を搾り上げるもの。

 全身から噴き出る汗を舐めとるもの。

 耐えられず漏れた尿を口に流すもの。

 花びらを滴らせる愛液に、その身を浸すもの。

 自ら腸の奥へと潜り込んで、奥に詰まった排泄物を頬張るもの。

 

 どの赤子も、母の栄養をがつがつと口にしていた。何日も何も食べれなかった狼のように、恥も外聞も何も考えず、ただひたすらにゼルダを貪っている。

 その想像を絶する感覚に、彼女は静かに嘆いた。

 

「私が、産んっ……だの、は……何……?」

 

 異形のそれが、遠慮もなしに少女を襲う。異形であっても親子であるはずなのに、そんなことは関係ないと言わんばかりに、少女の心を蝕んでいく。

 

 自分が、ガノンの子どもを産んだ。

 信じたくない。

 信じられない。

 こんな悍ましい肉塊を、自分が産んだなんて。

 

 そんな思いに満たされて、ゼルダはいよいよ何も考えられなくなる。

 心に入った罅が、さらに大きく広がり始めた。もう無理かもしれない、なんて。そんな思いが、少しずつ膨らんでいく。

 

 

 

 しかし、彼女の絶望は、そんなものでは終わらなかった。

 

「……え……?」

 

 一本、触手がせり出してくる。

 赤子ではない。ガノンの肉壁から伸びたものだ。成体らしい、大きさも太さも赤子より一回り大きなそれが、ゼルダの秘部の前に躍り出る。次いで、その大口を開けた。

 

「なにっ……なにするの……」

 

 開けた口で一通り鳴き声のようなものを上げてから――――それは、彼女の膣の中に潜り込む。

 

「あっ……!?」

 

 出産の時よりもさらに押し広げられる感覚に、体中が悲鳴を上げた。赤子と彼女を繋ぐ管も押し退けて、触手はとうとう子宮口まで入り込む。

 その小さな隙間に、触手は口の先を入れて。かと思えば、無理矢理口を開いて彼女の子宮を抉じ開けた。

 

「ひぎっ……!!」

 

 再び襲い掛かってくる局部の痛みに、彼女が歯を食いしばっている間に。それはとうとう、彼女の聖域への侵入を果たしたのだった。少女の僅かな力みもまるでおかまいなしに、猪突猛進な勢いで、奥へと滑り込んでいく。

 抉じ開けられた痛みはもちろんのこと、内部を弄られる不快感も尋常ではなかった。少女は何もできず、ただただ悲鳴を上げる。

 

「あっ……あぁっ……!」

 

 そこから伝わってくる感覚は、どこか感じたことがあるような。痛みに溺れ、号泣する彼女だったが、そんな既視感のようなものを頭の隅で感じ取った。

 

「あっ、やぁっ……こ、これ……これ、って……」

 

 そうだ。

 これは、腸に潜られて排泄物を貪られるような、あの感覚に近いんだ。

 なんて、彼女が思ったのも束の間。

 ぷつりと、赤子を繋いでいたへその緒が切れた。十本近くあったそれらが、ずるりと零れ落ちる。ついで、ゆっくりと秘部から触手が顔を出すのだが――――。

 その口周りは、鮮血で満ちていた。

 

「……あ……」

 

 出産を終えた後には、後産というものが待っている。

 赤子のために形作られた胎盤や臍帯などの組織は、産んだからといってそのまま消える訳ではない。まだ子宮や膣に残っているために、それらを排出しなければならないのだ。それが後産というものであるが――。

 それをこの触手は、貪った。彼女の中の残骸を、ぺろりと呑み込んだのだった。

 

 あえて綺麗に掃除をしたのは何故か?

 我が子を産んでくれた母体に、敬意を示すためか?

 せめてもの労いとして、後始末を名乗り出たのか?

 

 否。

 

「……ひっ……!?」

 

 再びそそり立ったのは、今彼女の体に纏わりつく赤子らを孕ませた、あの剛直。

 あの跳ね回るほど活きが良い精液を吐き出した、大きすぎる生殖器だった。

 

「あ、あぁ……やだっ、いやです……っ!」

 

 少女の顔が引き攣った。

 あんなに苦しい性交を経て、あんなに痛かった出産を今し方終えたというのに。

 待っていたのは、『次』だったのだ。

 

「今、今産んだばかりっなのに……いやぁ……」

 

 再び触手が、彼女を雁字搦めにして。無くなった体力を必死に振り絞って抵抗する彼女を、嘲笑うかのように抑え込んで。

 

 

 

 破瓜さながらの、鋭い痛み。それと共に押し付けられる、怨念の悍ましい欲望。

 少女の断末魔のような悲鳴が、この墟城(きょじょう)に鳴り響いていた。

 

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