灰色のひめしずか 作:かわいそうなのでも抜ける猫
大厄災が復活を果たした。
丁度、ゼルダの十七歳の誕生日に。
彼女が凍えるような知恵の泉の中で、けれど不作の修業を終えた瞬間に。
空を黒く染め、大地を大きく揺らしながら現れたそれは、どう見ても異形の存在だった。それがハイラルの地下から這い出て、そのまま城を包み込む。
そんな終末的光景を前に、五人の英傑はそれぞれの持ち場へと急行するのだが――――。
「……くっ……魔物!?」
水の神獣、ヴァ・ルッタ。
数ある神獣の中でも一、二を争うほどの巨躯のそれは、長い鼻と水中機動力を併せ持った古代の兵器である。かつてこれが開発された頃には、他の神獣と数多のガーディアンの力を借り、厄災ガノンに多大なダメージを与えたらしい。
それの現代の乗り手として操作に集中していたのは、ゾーラ族の王女、ミファー。濡れた艶やかな肌を、鮮やかな朱色で満たしたゾーラの少女は、背後に感じた嫌な気配に思わず振り返った。
「……貴方は……何……?」
背後に現れたのは、水のように淡い色でその身を染めた光の玉だった。そう、まるで古代エネルギーのような。
しかしそれは、次第にその姿を変貌させる。
あの淡い青色は一変、どす黒い赤色へと染まった。黒色の中に紫と赤と、ほんの少しの黄色を混ぜたかのような、そんな不気味な色。
そのどす黒い塊を古代のパーツで補強しつつ、頭部にはガーディアンさながらの無機質な瞳を灯らせる。その上から伸びた頭髪は、荒々しい紅蓮の長髪だ。まるでゲルド族のような鮮やかな色のそれを、大きく翻させる。
そんな、この世の者ならざるモノが、吠えた。
「ひゃっ……!」
思わず身が竦む声に、ミファーは耳を塞いで耐えた。
元より彼女は、寿命の長いゾーラ族の中でも特に若い部類だった。
彼らは成人を迎える頃には、男女関係なくハイリア人の身長を軽く越える。一方のミファーは、そうではなかった。彼女が密かに想いを寄せている、リンクよりも小柄くらいだ。それは彼女が成人を迎えていない、まだ少女であることの何よりの証明となっていた。
そんな彼女には手が余るほどの、怨念の塊。悍ましいその視線を前に、少女は慌てて武器を展開する。
「……貴方も……ガノンなの……?」
槍を構えるものの、少女の心は
何故なら、その赤い頭髪に見覚えがあったからだ。かつて自分が入り込んだ雷獣山で、襲われたことのあるあの魔物。それを彷彿とさせる悍ましさに、彼女の心の芯は小さく震え始めていた。
そんなことも露知らずと、その魔物――水のカースガノンは、左腕の武器を展開させる。古代兵器特有の青い光に包まれた、されどあまりに規格外の長さの槍。それをもって、奴は周囲の水を薙ぎ払った。
明確な、攻撃の意思。
ミファーはそれを感じ取る。
「……っ!」
怖い。
まさか、神獣の中にまで魔物が入り込むとは思わなかった。
それも、あのライネルのような恐ろしい魔物が来るなんて。
ミファーは心の中で、そう葛藤する。
しかし、今ここで自分が折れてしまったら、リンクはどうなるか。そう考えると、胸が締め付けられるように痛んだ。
そうだ。
私は今、リンクを支えるためにここにいるんだ。
リンクを援護して、彼が安全に、無事でいてくれるように。
だから、こんなところで負けてなんていられない。
「……負けないっ!」
ミファーは、静かに闘志を燃やして。そうして、この神獣の内部を満たした水の中へと飛び込んだ。カースガノンの放った氷の塊を躱すように、背後の水に溶け込んだ。
そのまま、加速。水中での生活に適応したゾーラ族らしく、その圧倒的な機動力をもってカースガノンを翻弄する。
右を走ったと思えば、その瞬間に背後に回る。背後を取ったと思えば、軽々と回り込まれる。
そうして、ミファーは飛び出した。隙だらけな奴の背中に向けて、その槍を構えながら。
「はああぁっ!」
空中からの、連続の刺突。
怨念でできた柔らかい肉を穿ち、固い古代の兵装を削るそのラッシュに、カースガノンは甲高い悲鳴を上げた。
そうして横転する奴の、その目に向けて。
ミファーは、より力を溜めた刺突を解き放つ。
「やあっ!」
弾けるような音と共に、吹き飛ばされるガノンの体。
小柄ながらもしなやかな筋肉をもった、彼女の全身全霊の突きだ。それを目という急所に打ち込まれては、流石の奴も堪えたのだろう。
堪えた。堪え、怒りに身を迸らせる。
再び、甲高い声。もはや怒号のようなそれと共に、カースガノンは左手の槍を振り被った。
「きゃっ……!」
目視も厳しいくらいに速い、その刺突。
ミファーはそれを危うく避けて、水中へと飛び込んだ。飛び込んで、再び凄まじい速度で泳ぎ始める。
泳ぐミファーを狙うのは、あの青い切っ先だ。まるで泳ぐ魚を弓で射るかのように、カースガノンは何度も水に槍を突き刺した。
しかし、それがミファーに当たることはない。水中での機動力は、ガノンにも捉えられないほどに速かったのだ。
だから、ミファーは確信をもって跳び上がる。自分のスピードに、この魔物はついてこれないと。そんな、少しばかり芽吹いた自信を胸に、彼女は再び、渾身の突きを放つのだった。
「……えっ―――」
ミファーの小さな声が漏れる。
鈴の音のような声が、零れ落ちる。
カースガノンが、薄く笑ったような気がした。
かと思えば、跳ねたミファーを穿つように、氷の塊が生み出された。
跳んで、前にしか進めないミファーに向けて放たれる、極寒の冷気。流石の彼女もそれには耐えられず、槍の構えも解いて体を守ろうとした。節々に、切り裂かれるような痛みが走る。
「冷たっ……!」
思わず、片目を閉じてしまうけれど。
でも、まだ大丈夫。冷気を浴びただけ。少し体が冷えただけ。私はまだまだ、戦える――――。
そう言い聞かせようとした、彼女の脇腹に。閉じた片目の、その死角から。待ちわびたと言わんばかりに、ガノンの刺突が襲い掛かる。
彼女の肌よりさらに赤い色が、神獣の床を染めた。
「……かはっ……」
固い床にその身を伏せたミファーは、ただ小さく吐血した。
あまりの痛みに、口内を噛んだ故の出血か。それとも、ガノンの刺突に内臓まで痛めたのか。
いずれにせよ、彼女の体は無事ではなかった。苦しそうに、泣きそうな顔で、少女はただ体を震わせる。
「……っ」
そんな彼女に近付く、水のカースガノン。
左手の槍を収め、値定めでもするような顔で、ゆったりと少女に寄ってくる。
「いや……来ないでっ!」
必死に、少女は槍を構えるけれど。
ガノンの伸ばした怨念の触手が、その槍を絡めとった。
「あっ――――」
彼女の小さな声は、水の音で掻き消されてしまう。
投げ捨てられた彼女の槍が、この貯水湖に呑み込まれる音に。
自分の身を守るものを失って。さらに、脇腹から込み上げる強烈な痛みに苛まれて。少女は傷口を抑えながら、ただ歯の根を打ち鳴らした。
「……ひっ……」
不意に舌のようなものを伸ばした魔物が、ぴちゃぴちゃと床を繰り始める。
なんと、奴は床に落ちた彼女の血を、美味しそうにすすり始めたのだった。
そんな光景に少女がぞっとするのも束の間。
唐突に、ガノンの触手がミファーへと絡みついた。
「やっ……」
食べられる。
食べられてしまう。
そんな恐怖感が、彼女の中に駆け巡る。
足から引き上げられて、逆さのままに持ち上げられる彼女。反転した視界の中に、裏返ったようなガノンの姿が映る。怨念が練り固まった不気味な肉と、そこから来る生々しい臭みを前に、少女はただ顔を逸らすことしかできなかった。
そんな彼女の、秘部を。
逆さになって、無理矢理外の光を浴びさせられた、その秘部を。
カースガノンは、ねっとりとした動作で舌を這わせる。
「ひゃっ……何を……あっ!?」
ゾーラの秘裂。愛する人の精を貰い、愛しの我が子を育てるための、少女の大切な場所。
それにガノンは、無遠慮な様子で舌を入れた。
まだ誰にも入られたことのないそこを、ただ直情的に。土足で踏み荒らすように、荒っぽく。
「あぁっ……!?」
激しい痛みが、少女に走る。
身を引き裂かれるような痛みが、彼女に悲鳴を上げさせた。
「あっ……ひゃあぁぁ……」
遠慮も何もなく、舌は最初から彼女の深部へと到達した。
そこにあった、誰にも入られたことのない証を軽々と突き破って、少女の中を蹂躙した。
証が破れれば、鮮血が舞う。
彼女の血の味を気に入ったのか、はたまた嗜虐的な心故か。奴は、彼女の破瓜の血を選んだのだった。染み出る潤いを前に、ご満悦と言わんばかりに野太い声を上げていた。
一方で、秘部を荒く舐め回される少女。奥へと圧迫される感覚に、そして敏感な粘膜を隅々まで舐め取られる感触に、ただただ悲鳴を上げる。
「あっ、ああぁっ……だめっ、だめっ……そこは、そこはぁ……」
――リンクのための場所なのに。
そんな彼女の淡い想いごと、奴は穿った。踏みにじるように、しゃぶり尽くした。
ようやく出血が止まったのか。それとも、全て舐め切ったのか。
赤い色を失い、淡い桃色だけが残った彼女の秘部に。されど愛液と自らの唾液で、どろどろになった秘部を前にして。
カースガノンは、ただ自らの根をそそり立たせた。
「えっ……なに……それ……」
脇腹の傷をも触手に
自分の目の前に現れた巨大な槍を前に、その焦点を震わせる。
それも一瞬、ガノンは彼女の体を持ち上げた。逆さになっていた彼女を翻して、向かい合うように抱え直す。
「きゃっ……なに、なにを、何をするの……っ!」
もはや恐怖で半泣きとなったミファーは、懸命に暴れようとするけれど。しかし怨念の体から伸びてきた触手に絡みつかれ、さらには強く締められて。
抵抗も虚しく、ただ少女は圧迫感に喘ぐしかなかった。
「かっ……っっ……」
手足を。胴を。さらには、彼女の頭から伸びた尾びれまで。
腹の傷を舐め取りながら、体中をねぶるかのように。締め付けられて無抵抗になったミファーを、ただひたすら蹂躙して。
そうしてひと思いに、彼女の秘部を貫いた。
「っ……ああぁーっっ!!」
絞められてもなお、腹部を貫かれた痛みに彼女は絶叫する。
しかしその声も、ガノンにとっては良いスパイスにしかならず、ただひたすらに奴は腰を振った。憐れな少女を、壊すかのように。
「ああぁっ、やめっ、やめてぇ……裂けちゃうぅ……っ!」
極太のその槍は、彼女の秘部を引き裂いていく。若すぎるゾーラの姫君から、その温かな血を搾り出すかのように。自らの欲望を押し付けながら、少女の膣をただひたすらに嬲り尽くした。
ゾーラの秘裂は、他種族に比べるとやや小さい傾向にある。成人には届かずとも少女とは言える彼女のも、ハイリア人の幼児か、それに毛が生えた程度の大きさでしかない。
故に、その怨念の槍は、彼女にはあまりにも大きすぎた。彼女のもつ癒しの力も何も関係なく、少女の秘裂は文字通り裂けていく。血が溢れ返り、朱色の肌をさらに赤く染めた。
「あぁぁ! 痛いっ、痛いよぅ……っっ!」
零れる鮮血は、怨念の触手が舐め取って。
抉るように出し入れを繰り返す剛槍は、ただはちきれんばかりに膨れ上がって。
直後、闇を押し固めたような、されど白い粘液を混ぜ込んだような。そんな不気味な液体が解き放たれる。
それに内側から侵され、少女はただ悲鳴を上げるしかなかった。
「――――ッッ!!」
押し殺しようもない、痛みと苦しさに悶えた声。
ミファーの悲痛な声が、神獣の中で反響した。
「……はぁ、はぁっ……」
下腹部から漏れる鮮血と、カースガノンが解き放った怨念の塊。それが混ざり合って独特の色をした何かが、彼女の秘部から零れ落ちている。
あまりの痛みに言葉も発せないで、ただ静かに、彼女は自分の惨状を見つめていた。
どうしてこうなったのか。
これから自分はどうなるのか。
リンクは、他の仲間たちはどうなってしまったのか。
そんな、後悔と恐怖と羞恥の念で溢れ返って真っ白になった彼女を、カースガノンは怨念で覆い始める。
見上げれば、黒い黒い穴が大口を開けていた。
カースガノンの胴にできた巨大な口が、ミファーを呑み込もうと舌を伸ばしていた。
「……あ……」
私、もうダメなんだ。
こんなことになるんだったら、もっと早くに、リンクに自分の想いを伝えておけばよかったなぁ、なんて。
少女はそんなことを思いながら、少しずつ闇の中に吸収されていく。
怨念が身に染みていく感覚に涙を溢しながら、されど彼女は、リンクの無事を心の底から祈るのだった。
私はもう、ここで終わってしまうけど。
どうか、どうか貴方は生きて。
生きて、この国を、救ってあげてね――――。
そんな、声にならない声が、闇の中に溶けていく。
ミファーを失って、ヴァ・ルッタが慟哭のような雄叫びを上げた。
その声は、ラネール地方中に響き渡ったという。
彼女を慕う者たちの住むゾーラの里。それを含んだ、全域に。