※この作品はR-18です。

灰色のひめしずか   作:かわいそうなのでも抜ける猫

6 / 18
番外編-ミファーの祈り

 大厄災が復活を果たした。

 丁度、ゼルダの十七歳の誕生日に。

 彼女が凍えるような知恵の泉の中で、けれど不作の修業を終えた瞬間に。

 

 空を黒く染め、大地を大きく揺らしながら現れたそれは、どう見ても異形の存在だった。それがハイラルの地下から這い出て、そのまま城を包み込む。

 そんな終末的光景を前に、五人の英傑はそれぞれの持ち場へと急行するのだが――――。

 

 

 

「……くっ……魔物!?」

 

 水の神獣、ヴァ・ルッタ。

 数ある神獣の中でも一、二を争うほどの巨躯のそれは、長い鼻と水中機動力を併せ持った古代の兵器である。かつてこれが開発された頃には、他の神獣と数多のガーディアンの力を借り、厄災ガノンに多大なダメージを与えたらしい。

 それの現代の乗り手として操作に集中していたのは、ゾーラ族の王女、ミファー。濡れた艶やかな肌を、鮮やかな朱色で満たしたゾーラの少女は、背後に感じた嫌な気配に思わず振り返った。

 

「……貴方は……何……?」

 

 背後に現れたのは、水のように淡い色でその身を染めた光の玉だった。そう、まるで古代エネルギーのような。

 しかしそれは、次第にその姿を変貌させる。

 あの淡い青色は一変、どす黒い赤色へと染まった。黒色の中に紫と赤と、ほんの少しの黄色を混ぜたかのような、そんな不気味な色。

 そのどす黒い塊を古代のパーツで補強しつつ、頭部にはガーディアンさながらの無機質な瞳を灯らせる。その上から伸びた頭髪は、荒々しい紅蓮の長髪だ。まるでゲルド族のような鮮やかな色のそれを、大きく翻させる。

 そんな、この世の者ならざるモノが、吠えた。

 

「ひゃっ……!」

 

 思わず身が竦む声に、ミファーは耳を塞いで耐えた。

 元より彼女は、寿命の長いゾーラ族の中でも特に若い部類だった。

 彼らは成人を迎える頃には、男女関係なくハイリア人の身長を軽く越える。一方のミファーは、そうではなかった。彼女が密かに想いを寄せている、リンクよりも小柄くらいだ。それは彼女が成人を迎えていない、まだ少女であることの何よりの証明となっていた。

 そんな彼女には手が余るほどの、怨念の塊。悍ましいその視線を前に、少女は慌てて武器を展開する。

 

「……貴方も……ガノンなの……?」

 

 槍を構えるものの、少女の心は靡(なび)く。

 何故なら、その赤い頭髪に見覚えがあったからだ。かつて自分が入り込んだ雷獣山で、襲われたことのあるあの魔物。それを彷彿とさせる悍ましさに、彼女の心の芯は小さく震え始めていた。

 そんなことも露知らずと、その魔物――水のカースガノンは、左腕の武器を展開させる。古代兵器特有の青い光に包まれた、されどあまりに規格外の長さの槍。それをもって、奴は周囲の水を薙ぎ払った。

 

 明確な、攻撃の意思。

 ミファーはそれを感じ取る。

 

「……っ!」

 

 怖い。

 まさか、神獣の中にまで魔物が入り込むとは思わなかった。

 それも、あのライネルのような恐ろしい魔物が来るなんて。

 

 ミファーは心の中で、そう葛藤する。

 しかし、今ここで自分が折れてしまったら、リンクはどうなるか。そう考えると、胸が締め付けられるように痛んだ。

 

 そうだ。

 私は今、リンクを支えるためにここにいるんだ。

 リンクを援護して、彼が安全に、無事でいてくれるように。

 だから、こんなところで負けてなんていられない。

 

「……負けないっ!」

 

 ミファーは、静かに闘志を燃やして。そうして、この神獣の内部を満たした水の中へと飛び込んだ。カースガノンの放った氷の塊を躱すように、背後の水に溶け込んだ。

 そのまま、加速。水中での生活に適応したゾーラ族らしく、その圧倒的な機動力をもってカースガノンを翻弄する。

 右を走ったと思えば、その瞬間に背後に回る。背後を取ったと思えば、軽々と回り込まれる。

 そうして、ミファーは飛び出した。隙だらけな奴の背中に向けて、その槍を構えながら。

 

「はああぁっ!」

 

 空中からの、連続の刺突。

 怨念でできた柔らかい肉を穿ち、固い古代の兵装を削るそのラッシュに、カースガノンは甲高い悲鳴を上げた。

 そうして横転する奴の、その目に向けて。

 ミファーは、より力を溜めた刺突を解き放つ。

 

「やあっ!」

 

 弾けるような音と共に、吹き飛ばされるガノンの体。

 小柄ながらもしなやかな筋肉をもった、彼女の全身全霊の突きだ。それを目という急所に打ち込まれては、流石の奴も堪えたのだろう。

 堪えた。堪え、怒りに身を迸らせる。

 

 再び、甲高い声。もはや怒号のようなそれと共に、カースガノンは左手の槍を振り被った。

 

「きゃっ……!」

 

 目視も厳しいくらいに速い、その刺突。

 ミファーはそれを危うく避けて、水中へと飛び込んだ。飛び込んで、再び凄まじい速度で泳ぎ始める。

 泳ぐミファーを狙うのは、あの青い切っ先だ。まるで泳ぐ魚を弓で射るかのように、カースガノンは何度も水に槍を突き刺した。

 しかし、それがミファーに当たることはない。水中での機動力は、ガノンにも捉えられないほどに速かったのだ。

 だから、ミファーは確信をもって跳び上がる。自分のスピードに、この魔物はついてこれないと。そんな、少しばかり芽吹いた自信を胸に、彼女は再び、渾身の突きを放つのだった。

 

「……えっ―――」

 

 ミファーの小さな声が漏れる。

 鈴の音のような声が、零れ落ちる。

 

 カースガノンが、薄く笑ったような気がした。

 かと思えば、跳ねたミファーを穿つように、氷の塊が生み出された。

 

 跳んで、前にしか進めないミファーに向けて放たれる、極寒の冷気。流石の彼女もそれには耐えられず、槍の構えも解いて体を守ろうとした。節々に、切り裂かれるような痛みが走る。

 

「冷たっ……!」

 

 思わず、片目を閉じてしまうけれど。

 でも、まだ大丈夫。冷気を浴びただけ。少し体が冷えただけ。私はまだまだ、戦える――――。

 

 そう言い聞かせようとした、彼女の脇腹に。閉じた片目の、その死角から。待ちわびたと言わんばかりに、ガノンの刺突が襲い掛かる。

 彼女の肌よりさらに赤い色が、神獣の床を染めた。

 

 

 

 

 

「……かはっ……」

 

 固い床にその身を伏せたミファーは、ただ小さく吐血した。

 あまりの痛みに、口内を噛んだ故の出血か。それとも、ガノンの刺突に内臓まで痛めたのか。

 いずれにせよ、彼女の体は無事ではなかった。苦しそうに、泣きそうな顔で、少女はただ体を震わせる。

 

「……っ」

 

 そんな彼女に近付く、水のカースガノン。

 左手の槍を収め、値定めでもするような顔で、ゆったりと少女に寄ってくる。

 

「いや……来ないでっ!」

 

 必死に、少女は槍を構えるけれど。

 ガノンの伸ばした怨念の触手が、その槍を絡めとった。

 

「あっ――――」

 

 彼女の小さな声は、水の音で掻き消されてしまう。

 投げ捨てられた彼女の槍が、この貯水湖に呑み込まれる音に。

 

 自分の身を守るものを失って。さらに、脇腹から込み上げる強烈な痛みに苛まれて。少女は傷口を抑えながら、ただ歯の根を打ち鳴らした。

 

「……ひっ……」

 

 不意に舌のようなものを伸ばした魔物が、ぴちゃぴちゃと床を繰り始める。

 なんと、奴は床に落ちた彼女の血を、美味しそうにすすり始めたのだった。

 そんな光景に少女がぞっとするのも束の間。

 唐突に、ガノンの触手がミファーへと絡みついた。

 

「やっ……」

 

 食べられる。

 食べられてしまう。

 そんな恐怖感が、彼女の中に駆け巡る。

 足から引き上げられて、逆さのままに持ち上げられる彼女。反転した視界の中に、裏返ったようなガノンの姿が映る。怨念が練り固まった不気味な肉と、そこから来る生々しい臭みを前に、少女はただ顔を逸らすことしかできなかった。

 

 そんな彼女の、秘部を。

 逆さになって、無理矢理外の光を浴びさせられた、その秘部を。

 カースガノンは、ねっとりとした動作で舌を這わせる。

 

「ひゃっ……何を……あっ!?」

 

 ゾーラの秘裂。愛する人の精を貰い、愛しの我が子を育てるための、少女の大切な場所。

 それにガノンは、無遠慮な様子で舌を入れた。

 まだ誰にも入られたことのないそこを、ただ直情的に。土足で踏み荒らすように、荒っぽく。

 

「あぁっ……!?」

 

 激しい痛みが、少女に走る。

 身を引き裂かれるような痛みが、彼女に悲鳴を上げさせた。

 

「あっ……ひゃあぁぁ……」

 

 遠慮も何もなく、舌は最初から彼女の深部へと到達した。

 そこにあった、誰にも入られたことのない証を軽々と突き破って、少女の中を蹂躙した。

 証が破れれば、鮮血が舞う。

 彼女の血の味を気に入ったのか、はたまた嗜虐的な心故か。奴は、彼女の破瓜の血を選んだのだった。染み出る潤いを前に、ご満悦と言わんばかりに野太い声を上げていた。

 一方で、秘部を荒く舐め回される少女。奥へと圧迫される感覚に、そして敏感な粘膜を隅々まで舐め取られる感触に、ただただ悲鳴を上げる。

 

「あっ、ああぁっ……だめっ、だめっ……そこは、そこはぁ……」

 

 ――リンクのための場所なのに。

 そんな彼女の淡い想いごと、奴は穿った。踏みにじるように、しゃぶり尽くした。

 

 ようやく出血が止まったのか。それとも、全て舐め切ったのか。

 赤い色を失い、淡い桃色だけが残った彼女の秘部に。されど愛液と自らの唾液で、どろどろになった秘部を前にして。

 カースガノンは、ただ自らの根をそそり立たせた。

 

「えっ……なに……それ……」

 

 脇腹の傷をも触手に嬲(なぶ)られて、小さな悲鳴を上げていた少女は、ただ目を丸くする。

 自分の目の前に現れた巨大な槍を前に、その焦点を震わせる。

 それも一瞬、ガノンは彼女の体を持ち上げた。逆さになっていた彼女を翻して、向かい合うように抱え直す。

 

「きゃっ……なに、なにを、何をするの……っ!」

 

 もはや恐怖で半泣きとなったミファーは、懸命に暴れようとするけれど。しかし怨念の体から伸びてきた触手に絡みつかれ、さらには強く締められて。

 抵抗も虚しく、ただ少女は圧迫感に喘ぐしかなかった。

 

「かっ……っっ……」

 

 手足を。胴を。さらには、彼女の頭から伸びた尾びれまで。

 腹の傷を舐め取りながら、体中をねぶるかのように。締め付けられて無抵抗になったミファーを、ただひたすら蹂躙して。

 そうしてひと思いに、彼女の秘部を貫いた。

 

「っ……ああぁーっっ!!」

 

 絞められてもなお、腹部を貫かれた痛みに彼女は絶叫する。

 しかしその声も、ガノンにとっては良いスパイスにしかならず、ただひたすらに奴は腰を振った。憐れな少女を、壊すかのように。

 

「ああぁっ、やめっ、やめてぇ……裂けちゃうぅ……っ!」

 

 極太のその槍は、彼女の秘部を引き裂いていく。若すぎるゾーラの姫君から、その温かな血を搾り出すかのように。自らの欲望を押し付けながら、少女の膣をただひたすらに嬲り尽くした。

 ゾーラの秘裂は、他種族に比べるとやや小さい傾向にある。成人には届かずとも少女とは言える彼女のも、ハイリア人の幼児か、それに毛が生えた程度の大きさでしかない。

 故に、その怨念の槍は、彼女にはあまりにも大きすぎた。彼女のもつ癒しの力も何も関係なく、少女の秘裂は文字通り裂けていく。血が溢れ返り、朱色の肌をさらに赤く染めた。

 

「あぁぁ! 痛いっ、痛いよぅ……っっ!」

 

 零れる鮮血は、怨念の触手が舐め取って。

 抉るように出し入れを繰り返す剛槍は、ただはちきれんばかりに膨れ上がって。

 直後、闇を押し固めたような、されど白い粘液を混ぜ込んだような。そんな不気味な液体が解き放たれる。

 それに内側から侵され、少女はただ悲鳴を上げるしかなかった。

 

「――――ッッ!!」

 

 押し殺しようもない、痛みと苦しさに悶えた声。

 ミファーの悲痛な声が、神獣の中で反響した。

 

 

 

 

 

「……はぁ、はぁっ……」

 

 下腹部から漏れる鮮血と、カースガノンが解き放った怨念の塊。それが混ざり合って独特の色をした何かが、彼女の秘部から零れ落ちている。

 あまりの痛みに言葉も発せないで、ただ静かに、彼女は自分の惨状を見つめていた。

 

 どうしてこうなったのか。

 

 これから自分はどうなるのか。

 

 リンクは、他の仲間たちはどうなってしまったのか。

 

 そんな、後悔と恐怖と羞恥の念で溢れ返って真っ白になった彼女を、カースガノンは怨念で覆い始める。

 見上げれば、黒い黒い穴が大口を開けていた。

 カースガノンの胴にできた巨大な口が、ミファーを呑み込もうと舌を伸ばしていた。

 

「……あ……」

 

 私、もうダメなんだ。

 こんなことになるんだったら、もっと早くに、リンクに自分の想いを伝えておけばよかったなぁ、なんて。

 

 少女はそんなことを思いながら、少しずつ闇の中に吸収されていく。

 怨念が身に染みていく感覚に涙を溢しながら、されど彼女は、リンクの無事を心の底から祈るのだった。

 

 私はもう、ここで終わってしまうけど。

 どうか、どうか貴方は生きて。

 生きて、この国を、救ってあげてね――――。

 

 そんな、声にならない声が、闇の中に溶けていく。

 

 

 

 ミファーを失って、ヴァ・ルッタが慟哭のような雄叫びを上げた。

 その声は、ラネール地方中に響き渡ったという。

 彼女を慕う者たちの住むゾーラの里。それを含んだ、全域に。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。