「アクセルスラッシュ!アークトップ!」
「ファイアボルト!」
ユイの突進と打ち上げの連撃がモンスターに直撃し、そこへメルの放った魔法が止めをさす。2人の息は以前と比べ、より合うようになっていた。
「す、凄い…!」
「そうだね。あれはちょっとやそっとじゃ出来ない連携だよ。あたしにも。」
少し後方でそれを見守っていた黒髪の少女と、灰色髪の褐色肌の女性が感心する。
「どう?私達の連携は。」
「凄いです!息ぴったりって感じで…!」
「ふふ、ありがとうございます。」
イヴリスの特別討伐期間の初日、ユイとメルは他のパーティーと組んでいた。
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ー2時間前ー
「さーて、どの依頼にしようかな。」
「どうせなら、強くなったのを試したいよね。」
「うん。せっかくだし。」
そう言いつつも、2人で適度に安全に受けれる依頼は少ない。自分達の今の実力を計りかねているのもあり、依頼選びに手間取ってしまっていた。
「うーん、良いの無いなー…。」
「これとかどうかな?」
「どれどれ…?推奨レベル18のダンジョンかぁ。」
ユイとメルはそれぞれレベル25、24であり十分に満たしているが、ダンジョンは4人パーティーが基準になっている。レベル以上に強くなっている2人に踏破できないことはないが、ギルドが受理してくれるかは怪しい。
「頭数が無いと受けれなさそー…。」
「だよね…。」
諦めて別の依頼に目を移そうとしたとき、後ろから声を掛けられる。
「頭数を探しているのかい?」
「え…?あー、まあ、この依頼を受けるには4人じゃないとだめかなーって。」
「あたしと連れも混ぜてくれないか?あたし達も受ける依頼に困っていてね。2人パーティー同士、手を組もうじゃないか。」
「あの、お連れの方はどちらに…。」
「ああ、悪い悪い。あそこで座ってるノノって子だよ。おっと、あたしはツギヤ。自己紹介がまだだったね。」
「私がユイでこっちがメル。うーん…でも、私達レベル25と24だからさ、結構楽勝だと思うんだよね。ホントに頭数だけあればって感じ。だから、そっちが暇になっちゃうかもしれないよ?」
「ああ、いいよいいよ。あたしはレベル38だけど、あの子は13だから。まあ、お守りみたいなことしてるわけ。あの子に経験積ませてやりたいのよ。」
「38!?」
「年の功みたいなもんだって!まだ24だけど。」
屈託の無い笑顔で女性は軽く言うが、24歳でレベル38はかなり高いほうである。
「わ、私達もお守りされちゃいそうだね…。」
「しないしない。あたしはあの子のお守りってだけだから。ダンジョンの攻略は任せるよ。」
「ま、そういうことならいっか…。すみませーん!」
ギルドの受付に依頼を持っていき、手続きを済ませる。
「ユイさん、メルさん、ツギヤさん、ノノさんですね。南西のダンジョンの依頼を受理しました。頑張ってください。」
「ありがとねー、受付のお姉さん。」
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ー現在ー
「よっし、これでこのフロアのモンスターは倒し終わったかな。」
「うん、いい感じだね。」
武器を納めながら4人が合流する。
「そろそろ休憩されますか?」
「んー、そうしようかな。ノノちゃんとかツギヤさんのことも聞きたいし。ね、メル。」
「うん。レベル差を考えたら結構珍しい組み合わせだもん。」
崩れた岩を椅子代わりにしてリラックスすると、関心はノノとツギヤに移る。当初の目的である2人の成長の確認も大体済んでいるため、気楽になっていた。
「わ、私のことなんか聞いても何も面白くないと思いますよ…?」
「ふ~ん…ツギヤさんに聞いたほうが早いかな?」
「ノノは町で1人で右往左往してて、ほっとけなくてね。悪いやつに捕まったら可哀想だから。」
「わわ、あっさり言わないでください~!」
「あっはっは!いいじゃないの!この子、結構世間知らずだからさ。2人のほうがちょっと年上だけど、友達になってくれるとありがたいよ。」
友達、という言葉につい顔を見合わせる。ユイとメルには互いを除いて友達のような親愛的な相手はいなかった。いくつかの町にそれなりの知り合いはいたが、友達と呼ぶほどではなかった。そういう相手は皆失ってしまったか、あるいは裏切られたりしてしまったから。
「え、えーと…ま、まずはお知り合いからでも…。」
黙ってしまった2人に気まずそうにノノが場を繋げる。
「ああ、ごめん!まだモンスターがいる気がしちゃって!うん、友達…友達ね。いいよ、なろう。」
慌ててユイとメルは立ち上がって手を差し出す。
「あ、ありがとうございます!よろしくお願いします!」
「友達ならそんなにかしこまらなくていいんだよ?」
「私、これが普通っていうか、なんていうか…えへへ、嬉しいです!」
昔であれば、首を縦に振るはずがなかった。特にメルが第一であったユイは。それを変えたのは2人の主となったライドであり、与えられる庇護の安心感だった。友達という存在を認める余裕が出来ていたのだ。
「あ、そうだ!ずっと気になってたんだけど、ノノちゃんの鞘すごいキレイだよね。剣見てみたいなぁ。」
「す、すみません。これ、なんかちゃんと抜けないんです…。」
「え、それじゃあ困らない?」
「抜けるときもあるんですけど…。でも、今はツギヤさんがいてくれているので、つい…。」
「これが終わったら、ちゃんと鍛冶屋行こうか。そろそろ奥に進まないかい?」
「うん、おっけー。それじゃあ、レッツゴー!」
「はい!」
勢いのままモンスターを倒しながらダンジョンを攻略していく。久しぶりの友達という存在に、自分でも驚くほどにユイは高揚していた。
「ふふ、なんかいつもより楽しそう。ちょっとノノちゃんに嫉妬しちゃうなー。」
「ええ!?なんかすみません!?」
「いいの。私は生き生きしてるユイが好きだから。」
「ほらほら、次いくよー!」
「もう、1人で進み過ぎだよユイ。いくら楽なダンジョンだからって1人は危ないんだから。」
「あまり飛ばしすぎるとボス戦で力を発揮できないぞ。」
「はぁーい。」
しぶしぶ剣を納めると3人の元へ駆けて戻ってくる。
ガゴン!!
「ひゃあ!?なんですか!?」
「床トラップ!?」
「4人集まったからだ!」
どこから現れたのか、四方からモンスターの大群が押し寄せてくる。典型的なモンスターの罠だ。
「私はこっちを!メルはそっちよろしく!ツギヤさんも今はお願い!」
「うん!」
「あいよ!」
「わわわわ…」
「アクセルスラッシュ!ターンリープ!」
「ファイアプッシュ!フレイムウォール!」
「ハードダウン!吹き飛べぇ!!」
ツギヤは大斧を軽々と振り回し、叩きつけた衝撃でモンスター達を吹き飛ばす。
「うわ、すっご…!」
「よそ見するなよ!」
「分かってるって!はあぁぁ!」
戦場を駆ける3人をただ見守ることしか今のノノには出来ない。
「剣さえ抜ければなぁ…。」
戦いの場で抜けない剣に意味はない。しかし、まだまだ駆け出しと言えるノノは他の戦う手段を持っていない。それ故にノノはそれをただ無意味に抜こうとする事しか出来なかった。
「はあ、はあ…。もう少しだね。」
「うん…。」
「気を抜くなよ!」
そのとき、突如天井が割れ、大型のカマキリ型のモンスターが現れる。ノノを守る形で展開していた3人の隙を突く位置であり、雄叫びをあげると正面にいたメルへと突進する。
「きゃああぁぁ!!」
「まずい…!」
「メル!当たれぇぇ!!」
即座にユイが剣を投げつけるも、間に合いそうにない。
「お願い、フリージア!私のお友達を守って!やあああああ!!」
それまでびくともしなかった剣、フリージアはあっさりと抜け、そのままモンスターの背後を光り輝きながら斬りつける。その一撃に悲痛な叫びを上げてモンスターの動きが鈍る。そこへユイの剣が当たり、体がグラリと揺れる。
「フレイムランス!」
その隙を見逃さなかったメルが、今度は正面から炎の槍を放って貫く。そのままモンスターは地面に倒れ動かなくなった。
「はぁ、はぁ…よかった…。」
ノノは安心して力が抜けてしまったのか、ペタンと座り込んでしまった。メルはそんなノノに近づいて手を取る。
「ありがとう、ノノちゃん。おかげで助かったよ。」
「うん、メルを守ってくれてありがとう。」
「でも、元はと言えば私のせいですから…。」
「そういうことは言わないもんだよ、ノノ。冒険者ならこういう危険は百も承知なんだから。いつか起きることなんだ。」
「うん…。それでも、今のは私のせいだもん。だから、その…ごめんなさい!私のせいで危険な目に遭わせてしまいました。」
モンスターの強襲を切り抜けた4人は、それから何も言うことはなく、笑いかけながら集まって座る。皆一安心といった表情だった。
「さっきのがここのボスだったみたいですね。」
「良かったー。お疲れ様だね。」
メルの話にほっとしたユイは、んーーっと体を伸ばす。
「…っとと、そうだ!ノノちゃんの剣について聞きたいな。抜いて見せてよ。」
「この剣は、フリージアっていうらしいんです。凄く強いんですけど、なぜか思うように抜けないんです。それでピンチになってたら世話ないですよね、あははは…。」
「町の鍛冶屋に見せても原因分かんなくてね。魔導師に見せてなんとか凄いものってことが分かっただけさ。やっぱりこういうのはもっとでかい町じゃないとダメか。」
「そうなんですか…。でも、さっきは抜けましたし、いつかちゃんと使いこなせるようになるといいですね。」
そこへ何か思いついたのか、ユイがメルに近づいて耳打ちする。
「ねね、うちなら誰か分かるんじゃないかな。リースさんとかアウズさんとか。」
「ええ!?それはだめだよユイ!きっと迷惑かけちゃうもん。それに万が一があったら…。」
「あー、まぁそうだよね…。」
「どうかしたんですか?だめとかなんとか言ってましたけど…。や、やっぱり私じゃ無理なんでしょうか…。」
「いやいやいやいや!こっちの話!ノノちゃんは自信持って良いよ!」
「そうですよ!あ、そうだ、フリージアはどこで手に入れたんですか?そういう武器を使ってる人は初めて見たんです。」
「え、えっとですね…」
ノノが話し出そうとすると、ツギヤがそれを遮る。
「ノノ、あんまりその話は簡単にしちゃだめだって言ってるだろう?」
「えぇ~~!ユイさんもメルさんも良い人だよ?」
「良い人だからって話していいもんじゃないの。これはノノのためなんだから。な?」
「は~い…。ごめんなさい、話せなくて…。」
「悪いな、まあ協力してるとはいえ
そう言いながらツギヤは小指を立ててくる。ユイとメルの関係のことを指しているのだろう。
「ま…そうだね。それじゃあ、そろそろギルドに報告に行こっか!そのあとは皆で祝勝会ってことで!」
「祝勝会…!」
「しょうがないな。ノノが乗り気なら今日は飲むか!」
「ふふ、仕方がないんだから。」
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その夜。
「あー、美味しかった。デザートも食べたし、そろそろ宿に帰ろっかな。ノノちゃんも寝ちゃってるし。」
「すぅ…すぅ…」
「宿はどこだい?あたしらはドルネドハウスだけど。」
「私達はカルマルームですね。」
「なんだ、隣か!2人さえ良ければ、明日も一緒にどう?」
「うーん、嬉しいけど、私達は明日には別のところに行く予定なんだ。ノノちゃんにも伝えておいてくれるかな。」
「そいつは残念…せっかくノノにも友達が出来たと思ったんだけどね…。分かった、伝えとくよ。また会ったらその時はよろしく。」
「はい。じゃあね、ノノちゃん。」
メルがノノの髪をそっと撫でる。宿で寝たら明日にはライドの元へ戻る身の自分達がまた会える可能性はほとんど無いだろう。悪ければ次は敵同士かもしれない。そう思うと、普通の冒険者としての時間が名残惜しかった。
「行っちゃやぁ…シノくん…」
「起きちゃったかと思った…。シノくんって彼氏とか?」
「いや、違うかな。尊敬してる人だって言ってたよ。あたしにはそれ以上は言えないね。」
「ふーん…。じゃあね、ノノちゃん。」
頭を軽くポンポンとすると2人は席を立つ。
「おつかれ~。」
「お疲れ様でした。」
「おう、おつかれさん。」
その翌朝、ノノが挨拶したいと言い出して宿に行った時には既に2人はいなかった。