この作品は、Team Salvato制作のビジュアルノベルゲーム、『Doki Doki Literature Club!(ドキドキ文芸部!)』を題材とした二次創作作品です。
この作品はお子様や精神を乱されやすい方には向いておりません。
『Doki Doki Literature Club!』本編とは一切関係はありません。
また、一部描写・設定が改変されています。
以上にご理解頂ける方のみ、ご覧くださいませ。
「――ナツキ」
太陽が水平線の彼方へと徐々に沈んで行くなか、俺はその名前を呼ぶ。
雲の合間から差し込む黄昏の淡い光に照らされた砂浜。
俺の数歩先を、迫る漣をぴょんぴょん避けながら歩く少女は、呼びかけに立ち止まり、その華奢な身体をくねらせ、振り返る。
「どうしたのよ、改まって」
「いや……その」
緊張で胸が張り裂けそうになる。呼吸が上手く出来ない。
――落ち着け。たった一言だ。
それを告げる為だけに、俺は今此処にいる。
「あんたのそういう煮え切らないとこ、嫌いよ」
「うっ……悪かったよ」
「早くしてよね。女の子を、待たせる気?」
後ろ手に手を組みながら、彼女――ナツキはこちらに身体を向ける。
彼女のその美しい姿に、俺は自分の目を疑う。
ナツキはいつものような強気な表情ではなく、本当に、柔らかな、柔らかな笑顔でこちらを見ていた。
漣が足を浸していくのを気にする様子もなく、ナツキはただ、俺の言葉を待っている。
その姿を見て、俺はやっと踏ん切りをつけた。
俺は――
「俺は……ナツキ、お前の事が……好きだ」
俺の想いを、直球に告げる。
本当は昨晩もっと色々カッコよさげな言い回しを、様々な恋愛アニメを周回しながら考えてはいたのだが。
どれもこれも、頭から煙が出そうになるくらいクサい言い回ししか浮かばなかったので、結局率直に告白しようという結論に至ったのだった。
さっき、ナツキに煮え切らないところが嫌いだと言われたのもあった。
ナツキは黙っている。
黄昏の光を遮っていた雲が晴れ、射し込んできた光によって彼女の顔はよく見えない。
俺は彼女の顔を覗き込むように、ナツキに近付いて行こうとする。
「ナツキ……?」
「馬鹿っ……!!」
ナツキは目に大粒の涙を浮かべながら、こちらに走ってきて、俺に身体を預けてくる。
思わず、俺は彼女の小さな身体を抱き締める。
「どうしてっ……! どうしてもっと早く言ってくれなかったの!!」
俺の服の裾を強く握り締めながら、ナツキは嗚咽交じりに言う。
「どうしてって……」
「もっと早く言ってくれれば、こんなに長い間苦しむ必要なんてなかったのに!! サヨリに罪悪感なんか持たずに、あんたを心の底から好きになれたのに!!」
そう言ってナツキは、涙でぐしゃぐしゃになった顔を俺の胸にうずめる。
俺は何も言えずに、彼女が泣き止むまでただ抱き締め続けるしかなかった。
しばらくの間、辺りは静寂に包まれ、そこには波の音と彼女の嗚咽だけが響く。
数刻の時が経ち、ナツキの様子が落ち着いた頃、俺はもう一度、彼女の名を呼ぶ。
「ナツキ」
彼女は呼びかけに応え、顔を上げて泣き腫らした目を向ける。
俺は彼女の瞳に残る涙の粒を、親指で優しく拭い取ってから――
ナツキに、キスをした。
Doki Doki Summer Days!