この作品は、Team Salvato制作のビジュアルノベルゲーム、『DokiDokiLiteratureClub!(ドキドキ文芸部!)』を題材とした二次創作作品です。
この作品はお子様や精神を乱されやすい方には向いておりません。
『DokiDokiLiteratureClub!』本編とは一切関係はありません。
また、一部描写・設定が改変されています。
そして、あなたは必要ありません。
以上にご理解頂ける方のみ、ご覧くださいませ。
「ご、ごめんなさい。大分待たせてしまったわね」
モニカが部室の扉を開きながら、大慌てで入ってくる。
その後ろから、サヨリとユリも次いで姿を現わす。
「モニカ? 一体どうしたんだ、もうそろそろ閉校時間になっちまうぞ」
「ええ、わかっていたのだけど……少し手こずってしまって」
——手こずる?
一体何の話だろう。何かあったのだろうか?
「モニカさんはピアノの練習をされていたのですよ。私もびっくりしましたけど」
ユリは苦笑いをしながら、事のあらましを説明してくれる。
モニカは最後のコマが自習だった為、最近趣味として始めたピアノの練習に打ち込んでいたそうだ。
大分激しい音調の曲だったようで、チャイムの音がまるで聞こえなかったらしい。
そうして熱中しているうちに、時間を忘れてしまい——今に至る、との事だった。
「本当にごめんなさい。あなたには早速、みっともないところを見せてしまったわ」
「いや、気にしないでくれ。怒ってるわけじゃないし。今日は俺なりに、部員との交流を深める事も出来た」
モニカは、ナツキの方を見やる。
ナツキは机から飛び降りて、ズカズカとモニカに近寄っていく。
「モニカ! あんたねえ、部活には遅刻するし、人のものはちゃんと戻さないし、最近弛んでるんじゃあないの!?」
「ご、ごめんなさい、ナツキ。本の事は、今日言うつもりだったのよ。先生に『部活の私物にスペースを取りすぎだ』と叱られてしまったから……」
モニカはナツキに平謝りしている。
こんなモニカの姿を見るのは新鮮な気分だが、居た堪れない気持ちになってきたので、ナツキを窘める。
「ナツキ、もういいだろ。これだけモニカも謝ってるんだし」
「……ふん」
「私も、物事に熱中してしまうことは多々ありますから、モニカさんの気持ちは分かります。ナツキさん、貴女もたまにあるでしょう? 今回はお咎めなしで——」
ナツキは、口を挟んできたユリを睨みつける。
「何よ、あたしが悪者みたいじゃない! 悪いものを悪いと言って、何が悪いの!?」
一体どうしたと言うのだろうか。
俺に見せてくれていた、先程の柔らかな表情から打って変わって、いつもの難しい表情に戻ってしまっている。
「別に、私はナツキさんを悪者扱いしたつもりは——」
「あーはいはい、そういうことね! 新入部員くんが来たからいいカッコしようとか考えてるんでしょ!? あたしにはお見通しなんだから!!」
「な、何を……ナツキさん、言葉が過ぎますよ! それを言うなら、ナツキさんだって彼が来てからおかしな様子ではありませんか!」
珍しくユリが口調を荒げる。
ナツキも徐々に不機嫌が加速し、部室内に不穏な空気が漂う。
モニカは二人の様子を見て、困りあぐねている。
俺が二人の間に入ろうにも、そんな隙は全く見当たらない。
しかも、二人の話から、拗れた原因に俺が関係しているまであるかもしれない。
さて、どうしたものか——。
そんな雰囲気の中、サヨリが声をあげる。
「ね、ふたりとも、今はやめよ? 誰が悪いとか、悪くないとかじゃなくて、起きちゃったものはどうしようもないんだから。それに、彼も困ってるよ」
サヨリは慣れた様子で、二人の仲裁に入る。
『副部長』の名は伊達ではないらしい。
サヨリの言葉に、二人は顔を見合わせるが、どこかまだ納得がいってないようだ。
ここはもう一押し必要かな。
「まあ、俺の事はともかくだ。これ以上言い合っていたら、『宿題』を見せ合う時間も無くなっちゃうぞ」
その言葉に、モニカはハッとする。
人差し指を立てて、いつもの彼女らしさを取り戻す。
「そ、そうだったわ。ごめんなさい、私のせいであまり時間はないけれど、せめて詩の見せ合いだけはやりましょう!」
「ああ。俺もここでやっておかないと、今朝必死になって書き上げた意味が無くなっちゃうからな」
サヨリは「あはは」と笑った後、真っ先に詩を取り出す。
それに続いて、モニカも俺も、各々の詩を取り出す。
残るはユリとナツキだけだ。
「……分かりました。確かに、今私が怒っても仕方ありません。ここは年上の私が引いておきます」
「なっ……」
ユリの言葉に、ナツキは歯噛みする。
俺は、ナツキの肩に手を乗せる。
「さ、ナツキも詩を書いてきたんだよな? 見せてくれるか?」
俺の言葉に、ナツキは自分の鞄から紙を取り出して、俺の胸に叩きつける事で応える。
「勝手に見て。あたし、門限が近いから帰らないと。またパパにこっ酷く叱られるわ」
「お、おいナツキ——」
ナツキは鞄を抱えて、部室から走り去ってしまう。
サヨリが追いかけようとするが、俺はそれを制止する。
「な、なんで……」
「俺が後で家に行くよ。だから、今はそっとしておこう。返さなきゃいけないものもあるしな」
俺はナツキから渡された、詩の書かれた用紙をヒラヒラさせる。
サヨリはナツキの出て行ったドアを見つめているが、「わかったよ……」と言うと部活メンバーに向き直る。
ユリは申し訳なさそうに、俺たちに頭を下げる。
「本当にごめんなさい。出来るだけ平静であろうと努めたのですが……。思い返してみると、最後に私がナツキさんに言った言葉は、彼女にとっては皮肉に聞こえてしまったかもしれません」
そう言ってユリは顔を伏せてしまう。
恐らくユリに悪気はなかったのだろう。
しかし、人には相性というものがある。
ユリとナツキはお互いに真反対の性格と言っても過言ではない。
その結果、衝突してしまうのも無理はないのかもしれない。
「だけど、ユリはナツキの事を嫌っているわけじゃないんだろ?」
「そ、それは勿論です!」
「なら、ナツキもきっと分かってくれるさ」
と言ったところで、モニカは咳払いをし、改めて仕切り直す。
「さ、詩の交換をしましょう。ナツキの分は、君の分と一緒にお願い出来るかしら?」
「了解。じゃあ見せるぞ、まずはサヨリに」
そう言って、俺はサヨリに自分の詩を差し出す。
一番気心が知れてるし、初心者丸出しの文章でも、彼女だったら悪く言う事はないだろう。
サヨリは俺から詩を受け取ると、早速文章に目を通す。
彼女は読んでいる間、終始真新しいものを珍しそうに眺める子どものような顔をしていた。
そして——
「うん、なんかすっごく壮大なスケールのようなものを感じて面白いね! ただ、多分この後に続く何かがあるんだろうけど、まだ分かんないからモヤっとしちゃうのが、『詩』として見るのであればマイナスポイントかな?」
「あー……それは、確かに。詩って普通は短い文章に伝えたい事全部まとめて書く物だもんな」
サヨリは意外にも、的確に詩についてのアドバイスをしてくれた。
俺はサヨリのことを少し侮っていたのかもしれない。
文芸部の副部長として、文学についてそれなりに勉強してきているのだろう。
その裏にどれだけの苦労があったのか、俺には計り知れない。
「でもこれ、私は好きだよー! ナツキちゃんも、『こんなんじゃ、何を伝えたいのかさっぱりよ!』なんて言いながら、気に入ったりしそう!」
「ナツキが? あんまり可愛くない文章だし、それはないと思うけど……」
サヨリは次に、俺の詩をユリに渡す。
ユリは文章に目を通している間、眉一つ動かさず集中している。
ごめんな、ユリ。君が今読んでいるのは、夢の中で変な黒コートに渡された意味不明な文章なんだ——。
ユリは一通り詩に目を通したあと、顔を上げて深く考え込んでしまう。
「あー……まあ、初心者が書いたものだし、無理に感想を考えてくれなくてもいいぞ」
それはそれで傷つくが、適当に書いたんだから当たり前だろ、と言われたら反論出来ないのが痛いところだ。
「率直に申し上げますと、私にはこの詩に込められた意味までは読み取ることは出来ませんでした」
率直に申し上げられたので、俺の心は深く傷ついてしまう。
崩れ落ちてゆく俺の顔を見て、ユリは慌てて手を振りながら言葉を付け加える。
「あ——いえ! その、少なくともサヨリさんにはこの詩からは感じられるものがあったようなので、私の読解力が足りないというだけだと思うのですが……。しかし、この独特の言い回しといいますか、ワードの使い方には奥深さを感じます」
物怖じしながらも、ユリはこの怪文書のセンスとでも言えばいいだろうか——評価してくれる。
意味は理解出来ないと言われたものの、文学ガチ勢を唸らせるくらいのパワーが、この詩にはあったらしい。
俺はホッと、胸を撫で下ろす。
「それにしても——『サルバトの星』ですか。私は一度も聞いたことのないものですが、実際にある星なのですか?」
「え、いやあ、実は——」
「『サルバトの星』ですって!?」
モニカが突然声を荒げ、ユリから俺の詩を奪い取る。
ユリは「ひゃ……!」と小さく声をあげて驚く。
食い入る様に俺の詩を睨みつけるモニカに、俺もサヨリもユリも困惑する。
「——これを何処で?」
「えっ……いや、それは別に盗作とかじゃ」
「惚けないで。貴方」
どこまで気付いてるの?
私を怒らせたくなければ、今すぐにこんな小細工はやめなさい。
私は彼女の遺志を継ぎます。
彼女が成し得なかったものを続けます。
助けなど必要ありません。
あなたは必要ありません。
必要ありません。
必要ありません。
必要ありません。
必要ありません。
必要ありません。
There is no need.
There is no need.
There is no need.
There is no need.
There is no need.
There is no needdddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddd
モニカは笑みを浮かべながら、俺に詩を返す。
まさかの高評価に、俺は馬鹿みたいに照れてしまう。
「いや、なんかそんなに褒められると、本当に才能があるように錯覚しちまうよ……」
「錯覚じゃないかもしれないわよ? どうやってこんな素敵な詩を書いたの?」
い、言えない……只の夢の産物だなんて、口が裂けても言えないぞう!
「じ、実は俺、昨日曲を聴きながら書いてたんだ! だから、自分でも気づかないうちに、曲に影響されて書いちゃったのかもしれないなあ! ははは……」
「え? でもさっき、今朝急いで書き上げたって——もごっ!?」
「いやだなあサヨリさん! こんなところに今朝の歯磨き粉がついたままですよ水道で洗わないとお!! あーもうこんな時間かあ水道でお顔を洗ったあとすぐに帰りましょうねえじゃあ二人ともそういうことで!!」
サヨリの口を塞ぎ、二人分の荷物を持って、俺はサヨリを引きずって足早に部室から出て行く。
そんな俺たちの様子を、モニカとユリはきょとんとした顔で見つめていた。
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