※この作品はR-18です。

ウサギさんチーム、電マ中!   作:光森 千影

11 / 16
プラウダ高校にて

 プラウダ高校の戦車道隊長室。

 ”地吹雪の”カチューシャ隊長が、”ブリザードの”ノンナ副隊長、及び”謎のロシア人留学生”クラーラからの報告を受けていた。

 カチューシャは二人の説明を受けながらざっと資料に目を通し、僅かに口角を上げる。

 

「まぁまぁね、前月比15パーセント増。年度で見ても計画通りよ」

「ありがとうございます。同志カチューシャ」

「特に育毛剤『ハエールX』の伸びが目立つわ。クラーラ、説明を」

「畏まりましたカチューシャ様。この『育毛剤』は、一部の戦車道関係者でその効果が話題となり、ネットや口コミで人気が拡がっていったものと思われます。

 ……尤も、ネットの拡散には我が校の情報科も一枚噛んではいますが」

「……最近覚えたとは思えないほど流暢な日本語ね。クラーラ」

「お褒めにあずかり光栄です。これもプラウダ式高速学習術の賜物ですね」

「その学習術も通販で売れば大儲けだわ! ……ところで、なんでおじさんじゃなくて、戦車道女子に育毛剤が必要なのかしら」

 

 そこまで分析していなかったクラーラの視線が泳ぎ、となりで直立不動の姿勢を取るノンナに助けを求める。

 戸惑いを隠せない青い瞳をなだめるように、黒髪の美少女は静かに口を開いた。

 

「戦車道は実弾を扱う武芸であり、極度の緊張と状況判断の連続に晒されます。

 まして隊長格ともなれば、自軍敵軍の戦力分析、作戦研究、および練習や実戦で多くのストレスを背負うのです。

 世の中の戦車道女子は同志カチューシャほど優秀ではないので、円形脱毛症に悩まされる者も多いのですよ」

「分かったわ、クラーラは引き上げていいわよ」

「До свидания.」

 

 ――クラーラが部屋を出ていくと、隊長室にはカチューシャとノンナだけになった。

 カチューシャは小さな顔をきょろきょろ動かして、分厚い隊長室のドアと、窓ガラスが全部しまっていることを確かめてから、小声で眼前のノンナに話しかけた。

 

「(ノンナ、『ハエールX』って、髪の毛以外にも効果があるの?)」

「はて、何のことでしょうカチューシャ」

「(……だから、頭以外に塗っても生えるのかどうか聞きたいのよっ!)」

「飲み薬ですから塗るものではありません」

「ノンナっ! あのっ!」

 

 カチューシャがうなじまで赤く染めながら、テーブルによじのぼってノンナの耳元に口を近づける。

 ふむ、ふむとひそひそ話を聞いていたノンナが、0.1秒だけ物凄い笑みを浮かべてから……カチューシャに諭すように、優しく話しかけた。

 

「それは無理ですね。……別に他人に見せるものではないのですから、宜しいではないですか」

「お風呂で恥ずかしいの……。ノンナやクラーラどころか、ニーナやアリーナにも生えてるのに私だけツル……生えてないのは我慢できないわっ!」

「生えたものが抜けたわけではないですよ。何事も自然が一番です。そのままのカチューシャでいてください」

「えっと……開発中の『フイフイマリュートカX』はどうなのよ!?」

「あれも同じです。髪の毛以外には効果がありません」

「ムキー!!」

 

 テーブルの資料の上でイヤイヤジタバタをするカチューシャを、とりあえず最近買ったHTC U12+に録画しながら、ノンナは本当の効果を……当分はカチューシャに教えないでおくことにした。

 と同時に、”育毛剤”を飲むのは自分とカチューシャ、どちらがいいかを想像し――鼻血が出そうになったので、頭の中で素数をかぞえはじめた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。