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バハルス帝国首都『アーウィンタール』。鮮血帝が振るう辣腕のもと、豊かな暮らしを謳歌する国民で賑わう街だ。とはいえ、数代前までは王国と同じく腐敗が横行する醜悪な都市でもあった。先代、先々代の皇帝が時間をかけて浄化を図り、今代の皇帝たる『ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス』が凄惨な粛清のもと、腐敗した貴族を一掃したが故に隆盛を誇っていると言えるだろう。
しかし都市の隅々までその威光が届くには、更に数代を要するだろう。皇帝が座すこの街であっても、暗い影はそこかしこに在る。邪教の集団や禁止されている奴隷の売買など、王国に比べれば少数ではあるが、犯罪行為というものはどうしてもなくならない。
場所によっては浮浪者や犯罪者が彷徨いている危険な所もある。アルシェの母が迷子になった挙げ句そんな場所へ辿り着いたのは、偶然でもあり必然でもあった。なにせ移動となれば馬車が基本だったような女性だ。一般庶民が使用する街道を徒歩で歩く経験など皆無に等しい。
アルシェの母は、貴族の女性というにはあまりにも天然である。そもそも貴族として没落した後も、その意味をあまり理解していなかったような人間だ。腹に一物を抱えた狸や魑魅魍魎が跋扈する貴族界隈において、フルト家に『嫁がさせられる』という時点で、彼女の凡庸ぶりも自ずと知れている。『金に困る』という概念すら、つい先日までは持ち合わせていなかったような女性だ。
家計が火の車であるというのに、アルシェに高価なブローチを買い与えるような行いがその証明だろう。彼女なりの気遣いや優しさではあるものの、場合によっては無知も罪だ。今回の騒動もそれが引き起こしたと言えるかもしれない。
浮浪者然とした身なりで、腹を空かせていそうな女性。そんな
怒りの度合いの割に暴力に訴えない不思議さはあれど、アルシェの母には人を宥めすかすスキルなど欠片もない。それどころか何に対して怒っているのかも理解しておらず、一方的な諍いは収まることがなかった。
──そんな場面に、すやすやと眠る姉妹を抱いた男が一人現れた。
「やあ、お困りですか? 危ない人に関わっちゃいけないってあれほど言ったじゃないですか」
「あら、エイさん。今どこからいらっしゃったの?」
「タレントです」
「へぇ~。すごいのねぇ」
「納得するのか……まぁいいや。それよりそこの君、何を怒って──ん? あれ、クレマンティーヌ?」
「…っ! お前っ…!」
「なんでそんなみすぼらしいカッコ…? 漆黒聖典からズーラーノーン、次は浮浪者とか斬新だぜ」
「誰が浮浪者だ!」
「今の君が浮浪者じゃなかったら、この街に浮浪者はいないってことになるな」
「うぐ…」
薄汚れたマントを纏う彼女に、いったい何があったのかと事情を聞こうとする男──エイ。しかし彼女へと話しかける直前、何者かに遠隔で監視されている事実に気付く。とはいえ自身が探知不可である以上、その対象はクレマンティーヌで間違いないだろうとも考えた。
「ふーん…? …あ、お母上様。お買い物はもう済みましたか? 済んでますね。じゃあお送りしますのでちょいと目を瞑ってどうぞ。クーデちゃんとウレイちゃんは
「あらあら、遊びつかれちゃったのね。ありがとうね、エイさん」
「いえいえ、僕も楽しかったので」
少し離れたところでアルシェの母と姉妹を転移させ、クレマンティーヌのもとへ戻るエイ。そのまま話しかけると思いきや、彼女の手を取り不思議な行動を取り始める。肩を抱いてくるくると回らせ、右手を取り上へあげる。左手も同様にし、最後は両手を取ってぶんぶんと上下させた。
頭に疑問符を浮かべつつ、されるがままのクレマンティーヌ。しかし片足を持ち上げられ、Y字バランスの体勢を作らされたところでいい加減頭にきたのか、エイの手を振り払った。
「うざい! …さっきからなんなの?」
「ん……いや、相変わらずクレマンティーヌは可愛いなって。ところでなんでそんなカッコしてるんだい? ズーラーノーンの潜伏任務かなんかかな」
「う……いや、その…」
「…?」
エイの問いに、彼女は口を噤んだ。なにせプレイヤーの存在を伝えられ、騒動を起こさないよう釘を刺されすらしたというのに、結局は醜態を晒す羽目に陥ったのだ。最悪の危機は脱したものの、おそらく監視されているであろうことは彼女も気付いている。
クレマンティーヌの視点からすれば、冒険者モモンとナーベは『正義』である。犯罪者たる己を
「…お腹減ってるのかい?」
「っ…!」
「複雑な事情がありそうだねぇ……ところで『前の話』はまだ無くなってないぜ。何かお願いごとがあるなら聞くけど」
「…なんで私なの? そもそも
「ふぅん…? 前は信じもしてなかったってのに、随分な変わりようじゃないか。となると……なるほど、プレイヤーとはもう関わった訳だ。その上でシャルティアちゃんとソリュシャンちゃんのあの行動……そんで君がこの状況ってことは──」
「…?」
「………あぁ、オーケーオーケー。だいたい理解したよ。つまりAOGのギルマスは『運営』を認識してるわけだ。八本指の
「…? 一人だけで納得されても困るんですけどー?」
「いやいや、簡単な話だよクレマトソン君」
「誰だよ」
「まず君が『運営』という存在をきちんと認識するには、それを知る誰かと接触する必要があるわけだ」
「…ふん」
どこからかシャッポを取り出し、とんびを着込みながらパイプを咥えて煙をくゆらせるエイ。さながらシャーロック・ホームズといった風体だが、異世界の人間に通じるかは甚だ疑問である。というより、クレマンティーヌが彼に向ける奇異の視線を考えれば、通じていないと断言できるだろう。
「この世界の人で僕の役割を正しく認識しているのは、現状だと蒼の薔薇にドラウくらいだね。どちらも君と接点はない……とすれば、エ・ランテルに居たプレイヤーと接触したことが窺える」
「…それで?」
「君が彼等と接触したという推測を前提にすれば、やっぱり騒動は起こそうとしたんじゃないかい? となれば彼等が容赦するとは思えないから、一度は戦闘行為に入った可能性が高いね。けれど君は今ここにいる。しかし監視はされている……この時点で監視元は『プレイヤー』か『法国』のどちらかが濃厚だ。けど騒動を起こしたなら、叡者の額冠は君の手元に無い筈だよね。いくら元漆黒聖典とはいえ、至宝を手放した君に、わざわざ巫女姫の儀式まで使って法国が監視を継続させる意味はない」
「……」
「そもそも遠隔で監視を続けることが出来る存在は限られてる。状況から考えれば、それはナザリック──つまりプレイヤーだろうさ。エ・ランテルを死の街に変えようとした君を逃し、けれど監視下に置く意味は? 可能性としては、手の内に入れて何かをさせようとしている……もしくは『やむを得ず』のどちらかだ。でも前者だとすれば、プレイヤーのバックアップを受けているとは思えない見窄らしさ。つまりプレイヤー側としても、君の解放は予定外であった可能性が高い」
「…そうだねー。ってなにさり気なく尻さわってんだ! 殺すぞ」
「まあまあ。ところでお風呂はちゃんと入ってる? その……あー……ちょっと野性的な香りがね、うん。僕は嫌いじゃないけど」
「…ぅぐっ!」
息を吸うようにクレマンティーヌのケツを触ったエイであったが、クレマンティーヌからふわりと漂ってきた匂いに眉をひそめる。先程まで甘いミルクのような幼女の匂いを味わっていただけに、その落差が気になったのだろう。ファンタジーな異世界というだけあって、人類圏の衛生観念は現代と大して変わらない。だというのに、今の彼女はあまり清潔と言えない状態であった。
「まあまあ、それは置いとこうか。それで、どこまで話したか……ああそうだ。プレイヤー側がなぜ君を解放したかってとこだ。しかるに、クレマンティーヌ。窮地に陥った君は僕を──『運営』をダシに使ったんじゃないのかい? 駄目で元々、動揺すれば儲けもの……そんな心算だったけど、彼等の困惑は想像以上だった。張子の虎もいいとこだけど、その威を上手く借りた君は晴れて逃げおおせることができた……が、監視までは振り切れなかったと。どう? 当たってる?」
「…まあね。ほんとはどっかで覗いてたんじゃないの?」
「まさか。僕は覗く暇があれば触りにいくよ。もちろんチラリズムは否定しないし、隠すことによって逆にエロくなる現象も肯定してるけど」
「馬鹿じゃないの?」
「男にエロを足すと理性が豆腐になるのさ」
呆れたようなクレマンティーヌの視線を飄々と受け流し、服装を元に戻すエイ。期待していた尊敬の目は得られなかったものの、少しばかり疑問に思っていたナザリックの行動にも説明がついたようで、満足げに頷いた。
「…で? どうするんだい。プレイヤーにどう語ったかは知らないけど、君が真実を話したとは思えないぜ。ここで一つ、嘘を本当にしておくのも手だと思うんだよね」
「その代わり一発ヤらせろって?」
「別に代価なしでもいいけど、そうなるとさっきと同じになるじゃないか。
「…はっ。なに解ったような口を聞いてんだか。それとも全知全能であらせられる“うんえい様”にはすべてお見通しなのかしらー?」
「君のことは多少知ってるけど、それは僕の能力とは関係ないかな。客観的な情報でしか知らないし、それだって法国を出てからのことくらいさ。人の内面なんて文字に起こせるほど簡単なものじゃないし、君のことは今までの会話で理解できた部分だけ──それ以上でも以下でもない。僕は君を君としてしか見てないつもりだけど」
「いきなりヤらせろとか言ってきた事実と矛盾してるんですけどー?」
「それは見た目が百パーセントだし」
「えぇ…」
クレマンティーヌの見た目と言えば、誰がどう見ても痴女である。既に『冒険者プレートの胸当て』などという悪趣味な装備はしていないが、そうでなくとも足、ヘソ、肩と、肌の面積は多い。マントで隠しているとはいえ、目の良い者であれば中身はチラチラと見える程度だ。見目も良く、彼女が強者でなければレイプ被害の格好の的だろう。
「…ま、僕は人の意思をある程度までは尊重するタイプなんでね。蒼薔薇のラキュースちゃん、AOGのギルマス、それに君と……内面が好きなタイプには配慮もするし、尽くしもするさ。誰だって好きな人には好かれたいだろ?」
「…くっ、くひゃっ…! 私の内面が好きぃ? あっは、ははっ──酔狂極まりすぎでしょ。だいたいその『ぎるます』ってのは知らないけど、蒼の薔薇のラキュースっつったら……『良い子ちゃん』で有名じゃん。どこに共通点があるってのよ」
「正統派中二病に、メンヘラ系中二病に、狂気系中二病。僕ってその手の病気の人に弱いんだよ」
「ちゅう……なに?」
「特定の精神疾患を患った人のことさ。といっても命にかかわるものじゃないし、人生を楽しむにあたってはむしろ良いものだよ。自覚すると精神ダメージが入ることもあるけど」
「ふぅん…?」
いまいち理解できないという風に首を傾げるクレマンティーヌ。無償の好意というものに胡散臭さを感じて鼻白むが、好意そのものは無償であっても、体を求められているという事実を思い出して納得する。
「というわけで、どうしても叶えたい願い事ができたら連絡してくれよ。これが連絡用のマジックアイテムで……こっちは『リング・オブ・サステナンス』。空腹と睡眠が不要になる指輪で、もう一つが『リング・オブ・クレンリネス』──常に清潔でいられるアイテムだよ」
「…一つ目はともかく、二つ目と三つ目は“施し”じゃん。言ってたことと違くない?」
「施しと贈り物は別ものだろ? 昔から惚れたもん負けって言うし、今回は君の勝ちってことで」
「…ふん。貰っとく」
「じゃあお礼にキスの一つでも…」
「死ね」
「じゃあハグの一つでも…」
「……」
期待に満ちた目で見つめてくるエイに対し少しばかり逡巡し、ほんの一瞬だけ彼に体を預けた後、クレマンティーヌは人混みに紛れて去っていく。その背を見送ったエイは、柔らかな感触の余韻を味わいつつ、宙に視線を送る。
最初にクレマンティーヌに取らせた奇怪な行動……そしてその後のやり取り。『エイ』という存在を目視以外で確認できない以上、監視相手には全て一人しか映っていない。つまり今までのやり取りは全てクレマンティーヌの一人芝居にも見える。
──『きっとキチガイ扱いされてるだろな』と含み笑いをしつつ、エイもその場を後にしたのであった。
■
──その日、アーウィンタールの皇城は揺れた。それは情報による動揺といった類のものではなく、物理的な振動だ。強大な魔法の行使による揺れ、そして地割れ。戦闘不能に陥った多数の兵士。それだけの規模にもかかわらず死人や重傷者が出なかった事実は、皇帝にとってけして喜ばしいものではなかった。
明確に感じ取れる『手加減』は、実力の差を如実に物語っている。皇帝──『ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス』は、災害を引き起こした張本人である双子のダークエルフを前に、恐れをおくびにも出さず交渉に努めようとしていた。
彼の優れた選定眼からすれば、双子のダークエルフの行動は正に子供の短慮そのものであった。問題はそれを成し遂げる実力を備えていることであり、下手な言動をして癇癪を起こされた時、帝国が滅びかねないという事実だ。
『エルフの解放』。それを訴える双子の主張は、当然と言えば当然だろう。エルフとダークエルフ……多少の違いがあるとはいえ、基本的に種族を同じくする同胞が憂き目にあっているのだ。見た目通りの子供であれば、義憤に駆られて行動を起こすことは充分に考えられる。
そう──となれば、ジルクニフが取る行動と言動は決まりきっている。子供の浅い考えがこの被害を引き起こしたというならば、利用するだけのことだ。
「なるほど……了解した。では私の権力における最大限をもって、迅速にエルフの奴隷制を廃止しよう」
「わ、わかって頂けて嬉しいです……兵士さん達のことは、すみませんでした」
「なに、数人が軽い怪我をした程度だ。威力に関しても素晴らしいものだが、その制御の緻密さには心底驚かされたよ。姉君も同じような実力をお持ちなのかな?」
「え、えっと……はい」
「ほう、敬服に値するな……さて、それはともかくだ。私の権力が届くのは帝国の領土のみ。エルフを虐げ、奴隷にしているのはあくまで法国なのだ。我々がそれを糾弾したところで、精々が『得意先を失った』程度にしか思われん」
「そうなの?」
「うむ。申し訳ないが……エルフの解放のために法国と事を構えるのは、皇帝として容認出来ん。先程言った通りのことが精一杯だ。それ以上を望むのならば、私の首を切って君達が帝国を動かすしかないな」
「そ、そこまでする気はありません」
内心で目を細めながら、ジルクニフは目の前の二人の心情を推し量る。おどおどとした
真剣ではあるが、それは帝国騎士が任務に臨む時の雰囲気……すなわち『上位者からの命令』を確信させるものであった。それは同時に、さらなる厄介事の可能性を孕んでいた。心の中でため息を吐きながら、ジルクニフは護衛たる“四騎士”の一人『レイナース』の言葉を思い出す。
──どうにか出来る心当たりが御座います。
その言葉を残し、何処かへ消えた『重爆』。正直ジルクニフにとって、彼女の言葉は半信半疑であった。既に呪いは解かれ、四騎士に在籍する必要性も薄まっていた状態だ。帝国そのものの危機に対し、逃走を選んでも不思議はない。
そもそも国を滅ぼしかねない化物に対する心当たりなど、眉唾どころの話ではない。右手に付けた指輪にそっと触れながら退室するレイナース……その姿を脳裏に浮かべ、しかしそれを振り払うジルクニフ。僅かな希望よりは、自身がこれまで拠り所にしていた話術を頼るべきだと。
ジルクニフは己に活を入れる。全身全霊、全力全開で法国に責任を擦り付けねばならない。潜在的な敵国の力が減衰し、王国と共に取り込めれば万々歳だ──と、不幸を嘆きながらも利益に腐心する彼は、やはり有能な皇帝であった。
■
とある町外れの小屋で、自慰に耽る高貴な女性──聖王国の女王『カルカ・ベサーレス』。いやぁ、ロイヤルな御人がエロ本片手にクリを弄ってるのって、中々に興奮するな。なぜ彼女がこんなことになっているかと言えば、もちろん僕の仕業……いや、気遣いかな?
王様ってとにかく大変そうだし、彼女の性格なら尚更だろうなって思うんだよ。もう即位から十年近く経つってのに、未だに南部諸侯から認められてないってのも心労の一端を担ってるんだろう。身分を超えた友人が二人いるとはいえ、何でもかんでも話し合えるってわけでもない。
だから僕は、そんな彼女の自室──代々受け継がれている王室にちょっとしたギミックを付けてみた。大儀式魔法《ラスト・ホーリーウォー/最終聖戦》の収束具となる、聖王国の国宝ともいえる王冠……それを鍵として開かれる、秘密の扉。ひょんなことからそれに気付いた女王は、恐る恐るそれを調べた。
不用意といえばそうだろうが、なんといっても王の私室だ。一番可能性が高いのは、受け継がれてきた中で失伝した隠し部屋といったところだろう。あるいは逃走経路と考えるのは当然の帰結。まさか危険なことなどないだろうと、歩みを進めた彼女が踏んだのは転移魔法陣。
驚くカルカちゃんであったが、転移した先の魔法陣をもう一度踏めば問題なく帰還できることを確認し、転移先の調査に移行した。そこには僕が用意した『息抜き』用のマジックアイテムの数々と、エロ本が所狭しと並べ立てられていたわけだ。
一番のお宝はなんと言ってもイミテ人形──要は自分をコピーできる人形──だろう。傍に置いておいた変装用のマジックアイテムと併用すれば、誰に憚ることもなく自由を満喫できるって寸法だ。
予想と違うことなく、彼女は即位してから初とすら言える休暇を満喫し始めた。僕が書きしめておいた『伝言』も効いたのだろう。代々の王様もこの部屋を利用してリフレッシュしていた……そんな風に見えるよう色々と仕込んでいたから、彼女も心置きなく使用に踏み切ったというわけだ。
最初は市井の観察、体験。解放感に酔いしれていた彼女であったが、それでも超えられない一線があった。そう、エロ体験である。ぶっちゃけて言うならば、おそらく彼女は男漁りをしたかったのだろう。それはビッチ的な意味ではなく『そろそろヤベェ』な意味で。
現代で女性が婚期に焦り始める時期は、どんどん伸びている。むしろ結婚願望自体が薄い男女が増えてきているとも言えるだろう。対してこの異世界はと言うならば、そこはやはり中世チックなファンタジー。初潮を迎えりゃ性交可、十五を超えれば適齢期、二十を過ぎれば売れ残り……そんな感じだ。
特に王侯貴族は婚礼に関して庶民よりも気が早い。二十二歳でありながら、結婚どころか婚約すらしていない彼女がどう見られているかはお察しである。それどころか、女傑三人衆が軒並み交際経験ゼロときているのだから、『もしやレズでは?』という噂も流れているほどだ。
二十二歳で処女。リアルであっても、喜ぶ男性と引く男性が半々くらいと言ったところだろうか。女性であれば九割以上が残念な目で見るだろう。この異世界であればさらに割合は酷くなる。せめて処女くらいは捨てたい──彼女がそう思うのもおかしくはない。
とはいえ、やはり軽々に喪失できるものでもない。女王の純潔というのも重要なものだ。なにより彼女はまだまだ乙女(自称)であり、『我が儘は言いません。糸の一切ついていない、私という人間を愛してくれるお婿さんを!』などと考えているような女性だ。
変装しているとはいえ、その辺の飲み屋で男を引っ掛けるような愚行には出られなかったようだ。そんな煮え切らない彼女がハマったのは、当然というべきか『自慰』である。代々の王様も
膜を破るのは怖いのか、お気に入りはクリトリスにバイブを当てての行為だ。自分を重ねて見たいタイプなのか、エロ本の内容は女王モノや王女モノが大半である。どちらかというとマゾっ気があるようで、『女王の癖にこんなに乱れやがってよ』的なものが多いようだ。しかし乙女願望が根底にあるせいか、ガチの陵辱モノは手に取らない。あくまで恋愛的な要素が前提にあり、その上で乱暴な言葉遣いをされるのが好きらしい。
どんどんどんどん性癖が暴かれていくカルカちゃん可愛い。しかし覗いてばかりじゃ意味がない。僕は彼女のオナニーを見るために舞台を作ったんじゃなく、彼女とセックスしたいがために舞台を整えたんだ。そろそろエロいことしたいよね。
彼女のために費やした労力は、実を言うとこの世界で堂々のナンバーワンだ。なにせ人の手が入っていない未開の地に、広大な地下ダンジョンを創り上げたのだ。適正レベルは二十五から三十といったところだろうか。名前は『時の迷宮』。ラキュースちゃんが喜びそうな名前だが、今回はカルカちゃんのためのダンジョンである。
──というわけでご案内っと。
「あっ、んっ、ん……っ、私、女王なのにこんな──あっ……えっ? な、なんっ…!?」
「うおっと…! トラップかな? にしては手が込みすぎてるけど」
「え、え…? な、なにが……ここはいったい…?」
右手にローターを、左手にバイブを、頭には王冠を乗せている全裸な変態女王様。陰部は濡れそぼっていて、しかし汚さは微塵も感じられない。成人しているというのに薄めなアンダーヘアは、処理しているというわけでもないのに美しく整えられている。一度も侵入されたことのない割れ目は桜の色を連想させ、幼い少女のようにピチリと閉じていた。エロい。
「とりあえず──敵じゃあないのかな? 変態ではあるようだけど」
「えっ、あっ、そのっ…! こ、これは違うんです!」
「どう違うんだい? 君がそのいやらしい器具を使っていたってのが、僕の勘違いってことかな。それとも“敵”の部分か……どっちにしても目の毒だし、これ使いなよ」
「う、うぅ……ありがとうございます」
まあローターとバイブ使ってオナニーしていたというのは事実だし、変態か否かでいえば前者だろう。背徳感に酔うためか、王冠だけは被っていたあたりが最高にイッちゃってるぜ。まあ誰が導いたかというならば僕だが、昇華させたのは紛れもなく彼女だ。エッチな女の子っていいよね。
とりあえず漆黒のマントを貸し与え、素肌に直接被せる。後で返してもらった時には、雌の匂いがこれでもかと付いていることだろう。付加価値で言えば元値の数十倍は固いな。全裸マントに王冠の女王様ってほんと変態チック。
「ど、どうも……えっと…」
「急に現れたけど、自分で転移したってわけじゃなさそうだね。事故か何かかい?」
「はい……おそらくは。転移の魔法陣が暴走したのか、元々そういう仕掛けがあったのかは解りませんが…」
「仕掛けってことはないと思うよ。此処は『転移不可』『空間系の魔法、マジックアイテム不可』領域だし。無限の背負い袋も使えないから、着替えも出せなくて申し訳ない」
「い、いえ! マントを貸して頂けただけでも充分です。それに、かなり上等な魔化を施された装備とお見受けします……見ず知らずの他人に貸し与えるようなものではないでしょう?」
「ま、その辺は気にしなくていいよ。とりあえず情報共有といこうか? 言いにくいことは言わなくていいし、僕も言いたくないことは言わないよ」
全部が僕のシナリオなんてことは口が裂けても言いませぬ。まあ現状はともかく、ここ数週間は君も随分満喫してたみたいだし、ウィンウィンってことで。さて、僕にどう伝えようとしたものか悩むカルカちゃん。まあ『私が聖王国の女王です』なんて、この状況では言いたくないだろう。下手をすれば性王国のレッテルまで貼られてしまいかねない行為だ。
「転移事故ってことなら右も左も分からない、か。じゃあ先に僕から説明しようか」
「…ええ。ありがとうございます」
「此処は南海『トバルト』にある孤島、生命無き島『クルーズ』に座す『時の迷宮』の中だよ。僕はそれを調べている最中の探検家、ってとこかな」
「…どれも聞いたことがない名前ですね」
「ま、世界は広いからね。特に脆弱な人間種が把握できてる領域なんて、それこそ全体の数%以下さ。最低限、レベル五十はないと世界を周るなんて夢のまた夢でしょ」
「レベル……ですか。それも聞いたことのない指標ですね」
「地域によってそういうのは違ってくるからね。レベルと言ったりランクと言ったり、あるいは難度と言ったり…」
「…! 難度という言葉でしたら知識にございます。確か冒険者の間で使用されていた筈…」
「ああ、じゃあ君はあっちの大陸の人間か。随分遠くに飛ばされてきたもんだ。ここは位置的に考えると──君らで言う南方の砂漠、それより更に南に下って海を渡ったところにあるんだ」
「それは──困りましたね…」
青褪めた表情で俯くカルカちゃん。まあイミテ人形は一日経過したら一度元に戻っちゃうし、その後の騒動を考えれば頭が痛いどころの話じゃないだろう。そもそも無事に戻れるかも不明だ。彼女も彼女で、人類の生存圏では強者だが──それでも不安なのだろう。僕が言った『脆弱な人間種』という言葉も効いているのかもしれない。
「その……難度で言えば、どのくらいあれば無事に大陸へ戻れるのでしょうか? 私もある程度は戦えるのですが」
「んー……百五十ってとこかな? 危なげなく戻るには、だけど。かなり無理をすれば九十台でなんとかってとこかな。君は見たところ八十前後ってとこだね。ただ後衛ってところを加味すると、生存確率五%くらいじゃないかい? ちなみにこの迷宮に出てくる魔獣の平均難度も、八十から九十くらいだよ」
「…っ! そうですか…」
ほんの少しだけ顔を歪ませるカルカちゃん。とはいえ解決策は目の前にあるし、彼女が次に出す言葉は解りきっている。それを僕は理解しているし、僕が理解していることを彼女も当然理解しているだろう。となれば後は交渉次第、という話だ。
「…とても図々しいお願いになってしまうのですが、どうか私をローブル聖王国まで送っていただけませんか? 対価は必ずお支払い致しますので、何とぞ…」
「うん、いいよ」
「──えっ? あ、あの……そのように軽々しく頷かれてよろしいのですか? あ、いえとても助かるのは事実なのですが」
「いや、そんなカッコじゃどのみち此処から出るのも無理だしね。僕が断ったら、君は全裸かついやらしい器具だけを武器に出口を目指さなきゃならないんだし……流石にね、うん」
「あぅ……あ、ありがとうございます。対価は十二分に支払うことをお約束致しますので」
「それも別にいいよ。何かが欲しけりゃ、国ごと奪えるような実力は持ってるつもりだし。どうしてもお礼がしたいってんなら……くくっ、体で払ってもらおっかな? まぁ随分と“好き者”みたいだもんな」
「ご、誤解です!」
「じゃあそれで何してたの?」
「うっ、ううっ…!」
顔真っ赤。顔真っ赤やで自分。肌が白いから余計に鮮やかで、とても美しい。流石『ローブルの至宝』と謳われるだけはある。キャラデザが若干ラナー王女様に被ってるとか思っててごめんよ。正直今すぐに襲いかかりたい気分だ。
「ところで名前を聞いてもいいかい?」
「はい。私は『カルカ・ベサーレス』と申しま──あばばっ! じゃなくてっ! カッ、カ…」
「いや、もう遅いって。ふーん……聖王国の女王様がこんな変態だったとはね。ま、その王冠を被ってる時点で薄々わかってたけど」
「こ、この件はどうかご内密に…!」
「はいはい。カルカちゃんの秘め事は漏らしませんことよ」
「ちゃ、ちゃん……ですか」
「様付けの方が良かった? ならそうするけど」
「…! い、いえ。そのままでお願いします」
「オーケー。あ、僕は『ウン=エイ』ね」
「エイさんですね……あら、どこかで聞いた覚えが──もしかして竜王国の救世主様ですか? まだ未確認の情報でしたので、信憑性に乏しいと思っていたのですが…」
「その呼び方は微妙だよねぇ……もっとカッコイイ二つ名で呼んでほしいもんだけど。まあ人物的には同じだよ。別に救うために行動したわけじゃなくて、結果的にそうなっただけだから──つまり善人じゃあないから、その辺は勘違いしないでよね!」
「は、はぁ…」
僕にツンデレのマネは無理があったか。そういえばオーバーロードに典型的なツンデレってあんまいないよな。まあ今どき流行らないのかもしれないけど。型にはまったようななツンデレって、冷静に考えると精神疾患抱えてるレベルだもんな。その点アスカってすごいよね。ほんとにそうだったし。
まあツンデレの意味も初期と後期でだいぶ違うから、一概には言えんが……おっと、今はそんな場合じゃなかった。まずはカルカちゃんの肢体を堪能せねば。そのために床をゴツゴツにしたといっても過言ではない。
「何から何まで、本当にご迷惑をおかけします…」
「いやいや。こっちも気持ち良いから気にしなくていいよ」
「…っ、あうぅ…」
全裸だったってことは、当然靴なんかも履いてない。爪先から頭の上まで、全身が玉のようなお肌のカルカちゃん。足裏といえども傷つけるわけにはいかぬと、おんぶを申し出てみた。というかそのままだと普通に怪我して動けなくなるかもしんないし、ほぼ無理やりおぶった。
両手が塞がっては危険だろうとむずがるカルカちゃん。しかし足だけで魔獣やらゴーレムやらを討伐していく僕を見て、諦観と憧憬と好意が綯い交ぜになったような表情を作っている。まあ強者がモテるのは世界共通の真理だ。ちゃん付けすることで『ありのままの私を見て欲しい』という部分も刺激できてるのかもしれない。
「出口まではどのくらいかかるのですか?」
「このペースだと一時間くらいかな。迷宮から出ればアイテムも出せるし、転移も可能になるからすぐ戻れるよ」
「そう、ですか……エイ様はとても凄いお方なのですね。国を救ったというのも頷ける話です」
「さてね。僕は好きにやってるだけだし、さっきも言ったけど結果的にそうなっただけだから。行動を評価されるだけならともかく、それで人格まで想像で固められるのはよろしくないぜ。それに──自分がそういう人間って自覚してるからこそ、カルカちゃんのことは凄いと思ってる」
「えっ?」
「女王ってのは求められる理想そのもので、即位した時点で『そうあれ』と強制される。そこに自分は存在しないし、自由はないだろ? それでもそこにいられるのは、国と国民を思ってこそだろうし……正直尊敬するよ。女王だから尊敬するんじゃなくて、君という人間そのものにね」
「あ…」
クサい。どこぞの妖精が出てきそうなくらいクサい。しかし一応本音でもある。国民という他人を思い、自分を殺すなんて僕には絶対できないからな。僕が自分を殺すとすれば、後にエロが待ち構えている時くらいだ。
しかしカルカちゃんには感動ものの言葉だったらしく、首に巻かれた腕が少し強く締まり、背中に感じる胸の圧力が増した。チンポが勃起しきりで、正直歩きづらいんですけど。気持ち良いんですけど。というわけで、都合よく出てきた休憩所のような場所で一休み。カルカちゃんをそっと下ろし、彼女と向き合う。
「ありが──…っ! あ…」
ズボンを貫きかねないほどに、屹立した肉棒。それを目にしたカルカちゃんは、一瞬だけ恥ずかしそうに目をそらしたものの……頬を染めながらチラチラと視線を彷徨わせる。自分が勃たせてしまったという自覚はあるのだろう。マントの下にある裸体をもぞもぞとさせ、心なしか太ももを擦り合わせているようにも見える。よし、もういけるかな? そもそも最初にオナニーを見られた彼女だからして、かなり抵抗感は薄まっている筈だ。
「…やっぱり“代価”貰っていいかな?」
「…っ! あ、あの、その──はい」
よっしゃ和姦成立っと。無理やりがお好みみたいだし、頷いたかどうかといった瞬間には既に、ぷるんとした桜色の唇を貪っていた。
「んむ──っ、は、ぇうっ、ん、ちゅ…」
クーデちゃんとウレイちゃんはかなり受け身だったけど、カルカちゃんは隙あらばこちらの舌を絡め取ってきそうなくらい積極的だ。ぴちゃぴちゃとした水音と、荒い息づかいだけが数分ほど響く。キスをしながら彼女の尻を両手で強く掴むと、マント越しにも解る極上の柔らかさを堪能できた。一瞬だけびくりとしたものの、逆らわず、そのまま腰を押し付けてくるカルカちゃん。
開いた部分から手を潜り込ませ、彼女が大好きなクリトリスを弄る。既に床へ滴るほどだった彼女の愛液は、秘所へ指を滑り込ませるための潤滑油として最高の役割を果たしていた。一切の抵抗なく、指が割れ目に入っていく。浅めに抜き差しを繰り返し、そのまま陰核を擦り続けると、カルカちゃんの嬌声が耳を楽しませてくれる。
「んっ! く、んきゅっ、あぅ──は、ぁっ…!」
「本当に変態な女王様だねぇ、カルカちゃん」
「い、いわない、れ、ひゃっ…!」
「イジメられるのが好きなんて、王族失格じゃないかい? それなら相応に扱うかな……ほら、舐めろよ。好きなんだろ?」
「あ、あ…」
愛液まみれの右手を、彼女の口へ乱暴に突っ込む。被虐の快感に蕩けた瞳を見てとった後、彼女の頭を掴んで股ぐらに押し付けた。聖王国でもっとも高貴な口マンコに、限界まで勃起したチンポを無理やり挿入れる。
「んぶっ、んっ、じゅぶっ、は──あぐっ!? んぐっ、ん゛っ、じゅるっ…!」
喉まで犯しているというのに、嬉しそうに舌を巻き付けてくるカルカちゃん。たぶんこれはエロ本の影響だろう。日本のHENTAI文化はほんと素晴らしいなあ。今まであんまりしてこなかったけど、彼女になら心置きなくイラマチオが出来る。
さらさらと流れるような、絹よりも上質な髪。そこに手をおいて、カルカちゃんの口へこれでもかと腰を打ち付けた。それでも吸い付いてくる唇は、まさに最高の口オナホだ。我慢できず吐精し、喉奥へと精液を流し込む。えづきが丁度いい蠕動となって、残った精液を吸い出してくる。
「よく出来ました」
「は、はい…!」
抱きしめながら頭を撫でて褒める。めちゃめちゃ嬉しそうだ。あれだねー、カルカちゃんはDV男に弱いタイプの人だね。酷いことされても、ちょっと優しくされたら依存してしまう系の娘だ。うーん、こういう娘って幸せにしてあげたくなるのが男の性だよね。
嬉しそうにチンポを舌でお掃除しつつ、期待を込めて上目遣いをしてくるカルカちゃん。完全に日本の文化に毒された彼女の雌穴に、そそりたつ肉棒をあてがう。誘われるようにぐぷりと先端を飲み込まれたため、そのままの勢いで奥まで貫いた。
「────!」
声にならない声を上げ、体をビクンと震わせるカルカちゃん。痛みのせいなのか、あるいは絶頂を迎えたのか。初めての挿入でイッたのだとしたら、やはりそっちの才能があったのだろう。遠慮なくピストンを繰り返す。
なんだろう、膣内はとろとろなのに、吸い取られるような感触だ。『ここがいい』という目立った部分はないというのに、総評としては最高の一語に尽きる。これが聖王国の女王様の穴か。ドラウの時もそうだったけど、国のトップを犯すという精神的な高揚も相まって、正直長くは保たない。
「はっ、くっ──カルカちゃん、どこに射精してほしい?」
「んっ、いっ、うぁっ──な、膣内に……あ゛っ、だひ、て、んぅっ…!」
「孕むよ? ほんとにいいの?」
「はい、はいっ──だしてっ…!」
全身で孕ませてほしいと訴えかけてくるカルカちゃん。そんなお願いをされて断れる男はいないだろう。子宮の入り口に亀頭を押し付け、今日一番に濃い精液を注ぎ込む。どくどくと肉棒が脈動する度に、膣が『もっともっと』と締まってくる。
らんらんと瞳を輝かせ、少し危ういレベルで瞳孔が開いている彼女。すぐにチンポのお掃除に取り掛かり、今度は胸で挟み始めた。
…もしかしてエロ本の行為、全部試すつもりかな? うん──今日は長い日になりそうだ。どっちが変態として上か決めようじゃないか、カルカ女王陛下殿……って感じ?