※この作品はR-18です。

オバロリ   作:ラゼ

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申し訳ありませんが、今回はエロ無しです。

何故こんなに期間が空いたかって? マーレはアリなのか無しなのかで二ヶ月くらい悩んでたんですよ。


8話

 聖王国神官団団長『ケラルト・カストディオ』。ローブル聖王国における神殿勢力の頂点に座し、実力、知性、美貌の全てを持って生まれた傑物である。

 

 その若さに対し、四位階までを行使できる稀有な神官である──というのが公称されている評価だが、実際には五位階にすら到達している英雄の領域に立つ者であった。

 

 姉である『レメディオス・カストディオ』も聖騎士として頂点に立つ者であり、姉妹揃って神に愛された存在と言えるだろう。欠点らしい欠点と言えば、姉のレメディオスが母親の胎内に置き忘れてきた『知性』というものの存在くらいだろうか。

 

 とはいえその分、妹であるケラルトが余すことなくさらってきたため、釣り合いはとれているのかもしれない。脳筋の姉と腹黒の妹──そんな麗しの姉妹である。とはいえ大抵の苦労は妹の方が背負うため、賢すぎると言うのも考えものかもしれない。

 

 そんな知恵者であるケラルトは、上司であり友人でもあるカルカの変化に目ざとく気がついていた。清廉潔白の化身のような聖王女が、時折見せる『女』の顔。

 

 王として繁忙を極め、偶に訪れる余暇は友人付き合い……すなわち自分たちとの交流に使っているというのに、いったいどこにそんな余裕があるのだろうかと、ケラルトは首を捻る。身分に違いはあれど、友人として親交の深い自分たちにさえ何も話さない事実は、彼女にとって少々不満であった。

 

 ついでに言えば、抜け駆けをされたという感情もあるのかもしれない。妙な噂を立てられている仲間同士だというのに、相談もなしというのはたまったものではないだろう。加えて、単純に国の重鎮としての憂いもある。なにしろ『女王』だ。簡単に『恋人ができました』で終わる筈もない。

 

 身分は見合っているのか、貴族や組織との折衝に支障はないのか、その他にも多岐に渡る問題がある。権力というのは、持てば持つほど自由が少なくなるのだ。

 

 その最たるものが婚姻関係であり、王族が自由恋愛を謳歌できるのはお話の中だけだ。場合によっては苦言を呈することも視野に入れなければ──ケラルトがそう考えるのは当然の成り行きと言えるだろう。

 

「……」

「ど、どうしたの? ケラルト。今日はなんだか機嫌が悪いようだけど」

「…カルカ様。私達になにか言うことはありませんか?」

「む? どういうことだケラルト」

「姉様。最近のカルカ様の様子……明らかに変化があるでしょう? いったいどこにそんな暇があるのかは解りませんが、明らかに男の匂いがします」

「な、なんのことかしら。貴女も今まさに言ったではないですか……私にそんな暇はありませんよ」

「そうだぞケラルト。カルカ様がそんなつまらんことにかまける訳がないだろう!」

「ぅぐっ…!」

「もうその反応が答えですね。で? いったいどこでお知り合いになったんですか? 婚期を焦りすぎて騙されていやしませんか?」

「エ、エイ様はそんな人では──あっ、いえその…」

「エイ? エイ、エイ……そんな名前の貴族は……ふむ、聞いたことがありませんね。姉様は知っていますか?」

「知らん!」

 

 ジト目でカルカに視線を向け続けるケラルト。その圧を受けて観念したのか、針のむしろに堪えられなかったのか、カルカはようやく重い口を開いた。そうして語られた、彼女のつややかな唇から紡ぎ出されるエイの人物像は──そう、誰がどう聞いても“(こじ)らせた行き遅れ”の妄想であった。

 

 (いわ)くドラゴンを歯牙にもかけぬ剣技を持つ勇者。曰く神話の魔法を使う偉大なる魔法使い。曰く『糸の一切付いていない私』を見てくれる素敵な男性。

 

 曰くイケメン。曰く優しい。その他にもアレが上手い、アレが大きい、アレがアレがアレが……と、彼女の言はイケナイ薬をキメた妄想女のそれであった。

 

「…あっ、ごめんなさいケラルト。私だけがこんなことになってしまって……でもこれで変な噂もなくなるでしょうし、きっと貴女にも素敵な出会いがあるわ!」

「カルカ様」

「はい?」

「神官を呼んできます。それと薬師も」

「ふぇっ!?」

「くっ…! なぜ、なぜこんな酷いことになるまで気付かなかったのですか私は…! 大丈夫です、カルカ様には私達が付いていますから……だからご安心ください」

「な、なにを言ってるの? 私は病気じゃありませんし──というか貴女は神官団の団長でしょう! だいたい……あっ! …嫉妬? 嫉妬なのねケラルト。それなら私は許します……天にまします神よ、どうか彼女にも大いなる幸福を…」

「黙れボケ女王」

「ボッ!?」

「あなたは仮にも聖王女なんですよ? 妄想も大概にしてください」

「誰が妄想ですか! エイ様はちゃんと実在しています!」

「カルカ様の脳内にですか?」

「むうぅぅっ…! げ・ん・じ・つ・に・です! 何を隠そう、エイ様は竜王国を救った英雄──『ウン・エイ』様なのですから!」

 

 どういった男かは口にしても、その実態や背景は頑なに口を割らなかったカルカ。しかし友人の煽りによってエイの正体を口にする。

 

 そしてその瞬間、ケラルトはニヤリと口元を歪めた。『胡散臭い』『怪しい』と言われる彼女の妖艶な美貌は、実際に中身も腹黒である。軽い演技で上司の口を割らせることなど造作もない。

 

「──なるほど、それがカルカ様ご執心の男性ですか」

「…はっ!? ケ、ケラルト……嵌めましたね!」

「素直に教えてくれそうにもなかったので。それにしても救国の英雄様と……ですか。どちらでお知り合いに? 実際のところ、そんな暇はなかったでしょう」

「う、うぅ…」

 

 王の資質という点においてカルカとケラルトのどちらに軍配が上がるかと言えば、圧倒的に後者である。そもそも王という地位にありながら清廉に過ぎ、なおかつ腹芸も不得意なカルカは、教主としての適正はあれど君主としての器には欠けるのだ。腹の探り合いでケラルトに敵う筈もなかった。

 

 じわじわと真綿で首を絞められるように、エイとの出会いや秘密の部屋の存在を暴かれていく。オナニー女王という不名誉だけは何としても守り抜いた彼女であったが、それ以外のほぼ全てを説明する羽目となった。

 

「うふふふ……そうですか、そうですか。政務をお人形に任せて男とちちくりあっていたと……そういうことですか」

「そ、それは少し悪意ある解釈じゃないかしら? ちょっとした息抜きみたいなものよ……その、あなた達に黙っていたことは悪いと思っているけれど」

「姉様はどう思いますか?」

「──ん? 話は終わったか? 難しい話はよくわからん…」

「寝てたんですか!? …はぁ。イサンドロとグスターボの苦労がよくわかります」

 

 その後もいくつかの問答があり、最終的にはエイと引き合わせるように沙汰を下されたカルカ。聖王国に名高きカストディオ姉妹──天然娘と腹黒娘。彼女たちとエイの邂逅は近いようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓──シャルティアの自室。甘い匂いの立ち込める典雅なその場所には、十数人の吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)が死屍累々と横たわっていた。その誰もが秘所を泡立たせ、口元からよだれを垂らし、恍惚の表情で倒れ伏している。

 

 ──そしてそんな場所へ、不躾に立ち入る影が一人。女性の理想像とも言える均整の取れた体に、美の体現者と評すべき麗しい(かんばせ)。頭上の双角と腰についた翼は、彼女が人間であることを否定しているが、美しさは欠片も損なわれていない。彼女こそ、このナザリックを実質的に運営統括しているNPC──『アルベド』である。

 

「…酷い有様だわ」

「ふぅ……ん、ぅ、アルベド…? なんの用でありんすか? というか部屋へ入るならなんぞありんしょう」

「部屋の前に誰もいなかったもの」

「…ああ。そう言えばそこに転がっていんすな。小間使い程度にしか使い道がないと思っていんしたが、中々どうして()()が良かったでありんす」

「少し乱れすぎじゃないの? そんな体たらくじゃ、モモンガ様のご命令を満足にこなせるとは思えないけれど──ねえ? ()()()()()()。続けざまの失態……これ以上モモンガ様を落胆させるようなら、私にも考えがあるわ。守護者への失望は配下全員への失望になりかねない……理解しているわね?」

「……」

「…イウェン、だったかしら。随分探し回っているようだけど、まさかそれにかまけて任務を疎かにしていないでしょうね。栄えあるナザリックの守護者が、外部の吸血鬼に心を奪われたなんてことは……ありえないでしょう? ねぇ──シャルティア・ブラッドフォールン」

「……」

 

 ベッドに寝そべる同僚を、アルベドは鋭い眼光で射抜く。しかしそんな凍てついた視線にも動じず、シャルティアは深くため息をついた。

 

 彼女としてもサボっているつもりはないが、しかし(やま)しい部分が皆無というわけではない。ナザリックへの忠誠を疑われた時点で、弁明のために目的は吐かなければならず──けれどその相手がアルベドという点について、複雑な心境を覚えたのだろう。

 

「…はぁー……いっとう話したくない相手でありんす…」

「…なんのこと? まさか本当に懸想(けそう)しているわけじゃないでしょうね」

「専用の愛玩具にしたいと思ってはいんすが、わらわが愛を捧げるのは唯一モモンガ様のみ。見当外れもいいところでありんす」

「ならいったい何を隠していたのかしら。もしそれがナザリックに不利益をもたらすものだったなら──」

「──モモンガ様のやや子」

 

 剣呑な雰囲気を纏わせるアルベドであったが、シャルティアの言葉を聞いた途端、ピタリと口を閉じた。金色の瞳が爬虫類のように縦に裂け、鼻息を荒くしながら裸の少女へとにじり寄る。はたから見れば完全に変態であった。

 

「くわしく!」

「さぁて……どうしんしょう。わらわのことをさんざん腐していんしたけれどぉ…?」

「うぐ……ね、ねぇ、シャルティア? 私達、同じ御方を愛する仲間でしょう?」

「…くふ。ま、意地悪はここまでにしんしょうか。そう……ぬしが言及したイウェン……あれは最高の体でありんした。零れ落ちそうな乳房に、極上の尻…! そして──雄々しい()()

「剛直…? 女の吸血鬼だと聞いていたけれど、違うの?」

「間違いなく女でありんした。わらわが最初に(まさぐ)った時も、ぷっくりとした恥丘の感触があっただけ」

「…つまり?」

「“生えた”のでありんす。不思議なことに、それまで影も形も無かった肉棒が現れ……わらわの尻穴を蹂躙し尽くしたのでありんす。乱暴に犯し、えぐり、無遠慮に射精して……はぁ、んん…」

「サカるのは後にしてくれないかしら」

「はぁ、ふぅ……んっ……そう、わらわはしかとこの眼で見んしたの。あの魔羅(まら)が──イウェンが嵌めた指輪の力によって生え、そして消えるところを…!」

「…っ! と、ということは…」

「そうでありんす。アンデッドな上、女体ですらありんすのに生えたということは!」

「そのマジックアイテムなら、モモンガ様にも効果は見込める…!」

「燦然と輝く美しき白磁の体に、雄々しく屹立する一本の肉棒…! ああ、考えただけで、はふぅ…」

「く、くふーーー!!」

 

 頬を上気させ、いかにも発情していますと主張している極上の女性たち。今の彼女達を目の前にすれば、どんな男であろうとも(いき)り立つこと間違いなしだ。そして一頻(ひとしき)り妄想に浸りきった彼女達は、それを現実にするべく語り合う。

 

「貴女の不審な行動については理解したわ。だからまずは休戦協定……正妻の座を争うのは後回しね」

「兎にも角にもモモンガ様の『ご立派』を確保してから……そういうことでありんすね。ぬしに話した意味は理解していんしょう? わらわも随分探し回りんしたが、煙の如き隠形で困っていんすの」

「ええ、姉さんに協力してもらうわ。どんな手を使ってでも──その指輪、奪い取ってくれる!」

「あ、それはダメでありんす」

「…え?」

 

 殺してでも奪い取る──そんな雰囲気を隠しもしないアルベドであったが、それを諌めるシャルティアをポカンとした表情で見つめる。そんな間抜けな守護者統括を、シャルティアはフフンと笑った。

 

「モモンガ様のお言葉を忘れんしたの? 今のナザリックは正義の組織……ぬしが言うような横暴がまかり通る筈もなし。それ以前に『ウン=エイ』『マジカル☆イウェン』、その他プレイヤーと考えられる者には危害を加えるなと厳命されていんしょう? …ま、ぬしが考えなしに行動して指輪を奪い──謹慎処分を受けている間にわらわが孕むと言うのも悪くありんせんが」

「ぐっ…! な、ならどうするのよ。譲って欲しいと言って、素直にくれる相手なの?」

「わかりんせん……が、掴みどころのない女性(にょしょう)でありんした。そう簡単にいくとは思えんせん」

 

 そんな言葉とは裏腹に、シャルティアの顔には曇りがない。それを見て取ったアルベドは、何かしらの作戦があるのだろうと看破した──そして唇を噛む。

 

 休戦協定を結び協力体制にあるとは言え、マジックアイテムを手に入れた際の貢献度が、主へ迫る優先順位に影響を及ぼすのは明らかだろう。大した戦果もなく、報酬だけをかっさらうような真似は許されない。

 

「…どうするつもりなの?」

 

 きっと教えてはくれないだろう──そんな心持ちで問いかけたアルベドであったが、返ってきた言葉は彼女の想像をさらりと超えていた。

 

「性戦でありんす」

「…は?」

「わらわは性技を競う勝負に負け、下着を奪われんした。ソリュシャンは勝ち、ヘロヘロ様の精巧な人形を手にした……ゆえに、先にあやつを吐精させれば正々堂々と権利を主張できんすの。『それを寄越せ』と!」

「そ、それは……でも、私は…」

「──モモンガ様に操を立てるのは当然。さりけれど、アルベド……ぬしはこんな言葉を知っていんすか? 『アナルはノーカン』と。そして『心の膜さえ守っとけば処女』…! そもそも『女どうしだからセーフ』と!」

「アウトよ」

「くふっ、淫魔の癖に融通の利かない女でありんす。まぁ好きにしなんし。わらわが指輪を手に入れた暁には、ちゃあんと使わせてあげんすから……に・ば・ん・め・に」

「くぅぅっ…!」

 

 嘲笑から逃げるように部屋を後にし、悔しげに体を震わせながら帰路につくアルベド。彼女の主への愛は常軌を逸しており、そこに余人が入り込む隙間など一ミリもない。極上の体の全ては、余すこと無く主へ捧げると決めているのだ。

 

 元より配下相手にレズセックスを嗜んでいたシャルティアとは違い、全ての初めてを主に捧げたい──アルベドはそんな女性である。

 

 淫魔らしく性技に自信はあれど、しかし女性とは言え行為に及ぶのは抵抗がある。けれど寵愛を真っ先に受けるためには、どうしても先手を取る必要があった。うんうんと唸りながら廊下を彷徨き、手淫か口淫ならばありだろうかと妥協し始めた頃──彼女に声をかける者が現れる。

 

 戦闘メイド『プレアデス』が一人、『ナーベラル・ガンマ』である。ナザリック配下にも派閥というものがあり、正妻の座を争うシャルティアとアルベドの関係において、ナーベラルは後者を支援する筆頭であった。その対象が見るからに苦悩していれば、声をかけるのは当然と言えるだろう。

 

「どうかされましたか? アルベド様」

「あらナーベラル……ううん、なんでもないからほっといてちょうだ──」

 

 心配げに声をかけてきた彼女に対し、素気なく通り過ぎようとしたアルベドであったが──瞬間、天啓を受けたかのように立ち止まる。そして次に振り返った時には、裂けるような笑みが口元に貼り付けられていた。

 

「ねぇ、ナーベラル。少しお願いがあるのだけれど」

「…? は、どうぞお申し付けください」

「く、くふっ…! くふふっ…」

「あ、あの…?」

 

 淫魔の嬌笑が廊下に響き渡る。ああ、プレアデスの運命や如何に──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんか良いことありそうな今日この頃。本日は『蒼の薔薇』の拠点でもある王都の宿屋にて、薬の作製に勤しんでるところだ。いくつものフラスコを並べ、怪しげな薬をコポコポと煮立たせ、まさにイカれたマッドサイエンティストといったところだろうか。

 

 宿屋には通常の何倍もの料金を払っているから文句を言われることもない。ついでにいうと、後ろから興味津々と言った風に覗いてくるイビルアイが死ぬほど可愛くて死にそう。

 

「…錬金術にも詳しいのか。これはなんの用途に使うんだ?」

「ん? ああ、この前スライムに負けちゃってさぁ。悔しいから色々と策を練ってるのさ。これもその一環」

「は? …お前がスライムに? いや、どんな化物だそれは」

 

 ちょっと前、僕の話が真実かどうか試させてもらうと戦いを挑んできたイビルアイ。結果は当たり前のものにしかならなかったけど、彼女の僕を見る目が変わったのは言うまでもない。

 

 恋心とかそんなのは無いようだけど、ちょくちょく絡んできてくれる程度には仲良くなった。どんどん実力が上がっているラキュースちゃんのこともあって、色々と気になっているんだろう。

 

「んまー、何百人ものプレイヤーを阿鼻叫喚の地獄に陥れた古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)が作ったNPCだから……君らで言うと『魔神』かな? うん、そんな存在だから僕が負けるのも仕方ない」

「なに…!? だ、大丈夫だったのか?」

「しばらく腰砕けになっちゃったけど、なんとか逃げ出すことはできたよ。今度は負けないぜ……そう、この薬があれば」

「そ、そうか……それはいったいどんな効果なんだ?」

「『性感帯が無いから無敵』なスライム……けど、人型である以上そんなことはないと思うんだよ。だからこそ──これだ! “感度を三千倍にするお薬”!」

「…スライムに脳でも溶かされたのか? それとも元々がバカなのか? ──ああ、そういえば後者だったな。すっかり忘れていた」

「酷いなイビルアイ。どう考えても画期的な新薬だろ? まぁ健常者が摂取すると空気に触れただけでイキ死ぬと思うけど」

「ええい! その薬を私に近づけるな! 変態め!」

「変態で何が悪い!」

「開き直るな!」

 

 お腹辺りに抱きつく僕を、げしげしと足蹴にするイビルアイ。あー、やわっこい。しかし実力の差は理解したというのにチョロインっぷりを発揮しないのは、やはり原作の『救出劇』が効いていたということなんだろう。まあ女の子はみんな『助け出されるお姫様』になりたいって言うしね。ただ強いってだけで惚れるほど安い女の子じゃないってことだ。

 

「ほら、さっさとしまえと言うに。というかよく考えたらお前……それはもはや超即効性の猛毒だろう。媚薬よりもタチが悪いぞ」

「まぁ希釈すれば効果は薄まるからさ。イビルアイもちょっと使ってみるかい? アンデッドだとちょっと感じにくいだろうし、たぶん百倍くらいに薄めるとちょうどいいんじゃないかな…」

「いらん! …まったく、ティアもティナもお前も…! 盛りのついた犬でもあるまいし、何が楽しいんだか…」

「……」

「な、なんだ? なんで黙るんだ」

「イビルアイはさ、愛だの恋だのを馬鹿にしてるけど……それはどういう理由で?」

「む……別に馬鹿にしてはいない。ただ……女の愛嬌や愛想は、男に守ってもらうための(こび)でしかないだろう? …だから、強くあれば必要のないものだと思っているだけだ」

「その言い方だとさ、例えば強者同士のカップルはいちゃつく必要がないってことになるけど。『甘え』と『依存』は弱者の特権ってことかい?」

「少し飛躍しすぎな気もするが、概ね間違ってはいないな。強者足らんとすれば、異性に甘える必要など一切ない」

「ふぅん…」

 

 まぁ何百年も生きてる彼女が言えば、なんとなく含蓄(がんちく)のある言葉に聞こえなくもないが……しかしこの発言は筋金入りの処女の声である。言葉とは不思議なもので、たとえまったく同じものであっても、発した人間によって印象はがらりと変化する。

 

 イケメンヤリチンが口にする『ハハッ、女なんて所詮…』という台詞。童貞キモータが口にする『ハハッ、女なんて所詮…』という台詞。もはや別物と言っていいだろう。

 

 まったく同じ文面だというのに、何もかもが悲しいほどに違う。それと同じで、イビルアイのそれも所詮は未通女の戯言だ。せめて経験してから言えってーの。処女膜から声が出ちゃってますよ、お嬢さん。

 

「高尚な人ほどさ、愛を幻想って言うよね。哲学者とか小説家とか、きっと何周も何周も考えを巡らせて……論考を重ねて、それで結論付けるんだよ。それは『本能に後付けされた付属品でしかない』って。文化が無ければ存在しない感情だからこそ、生物としては本来必要のないものだって。あるいは必要だとしても、それはより優秀な遺伝子を紡ぐための衝動でしかないって」

「…ああ、まさに道理だな」

「僕はさ、そういう気取った奴等に『んほぉぉ!!』って言わせるのが好きなんだ」

「ああ、真面目な話を期待した私が馬鹿だったよ」

「いや、真面目な話さ。だって滑稽じゃないかい? そいつらが巡らせる思考や論理的な解釈だって、文化によって後付けされたものじゃないか。彼らがなんの教育も受けていなければ、一生涯考えることすらなかった筈だぜ」

「…ふむ」

「だから彼らが論考を重ねて愛を欺瞞だと叫ぶなら、前提から否定できる。何も考えずに愛を虚構だと罵るなら、ただの考えなしの馬鹿野郎さ」

「いや……うぅむ……そうか? なにか煙に巻かれているような気がするんだが…」

「まぁその通りだからね」

「──ええい! 毎度毎度からかいおって! 目上の人間を敬うことを知らんのか貴様は!」

「ぷっ…! ヴァンパイアジョークかな? どこにも人間なんて見当たらないけど」

「お、おまっ…! そういうところだぞ! すっ、すす、すごくデリケートな部分だろ!? そこは! 超えちゃいけないライン考えろよ!」

「うん? でもさ、自分が大して気にしてないところを気遣われると、逆に嫌じゃないかい? 君は()()()()()()()()、とっくの昔に乗り越えてるように見えるけど」

「…まぁ、そうだが。でもお前、もうちょっと配慮してもいいだろうに…」

「そうかい? じゃあイイコイイコでもしてあげよう」

「いらんわ!」

 

 暴れるイビルアイを押さえつけ、後ろから抱きすくめる。まだまだ恋愛感情は育っていないが、まあ偶にはゆっくりでもいいだろう。ティアちゃんもよく彼女をクンカクンカしてるし、軽いスキンシップのようなものだ。多少意識してくれるだけでも悪くない。

 

「…どう?」

「ええい! は・な・せ……──うん? 何がだ?」

「いや、盛る理由を聞いてたからさ。結局なにを求めてるかってんなら……温もりってやつかな? 他人の肌って気持ちいいんだよね。だからどうかなって」

「…ふん。ならお前が私に求めるものは何もないな……なにせこんな体だ。冷たくて仕方ないだろう?」

「どれどれ、あそこも冷たいのかなっと…」

「そういうとこだっつってんだろがぁぁ!!」

「ぐふぅっ!!」

 

 うーん、どんどん遠慮がなくなってきてるな。実に良い傾向だ。なにせ自分と対等か、それ以上に強い奴となんてそうそう出会えない彼女だ。いくら蒼の薔薇のメンバーが仲間だとはいえ、突出した強さからくる疎外感はついて回る。その点、僕に対しては全力で殴ろうが魔法をぶっ放そうが問題なしだ。そういう存在は貴重だろう。

 

「──ま、これから長い付き合いになるんだし……遠慮のいらない相手はすごく貴重だと思うんだよ。僕は君にそういう存在でいてほしいし、君にとっての僕もそうでありたい。これも一つの愛だぜ」

「…! …そうか。お前は私と同じで、永劫の時を生きる者なんだな」

 

 えぇ…? ラキュースちゃんの病気でも移ったのか? いきなり『永劫の時を生きる』とか草生えるんですけど。というかそんなもんは深く考えなくてもいいのさ。好きなだけ生きて、満足するまで生きて、飽きたら死ねばいい。というか不老ではあっても不死じゃないんだから、君だって永遠ってわけじゃないだろうに。

 

 ──というか『君って生きてなくね?』と言いたくて仕方ない。けど流石に三度目のボケはあれだろうか……腕の中で少しだけしんみりしてる彼女を見てると、いくら僕でも空気を読まざるを得ない。流れるような金髪を手で梳いて、少しだけ抱きしめる力を強くした。

 

「──イビルアイ」

「…なんだ?」

「君って生きてなくね?」

「うがぁぁ!!」

 

 どうどう。おお、噛み付いてきた。ついに吸血鬼の衝動を我慢しきれなくなったのだろうか。はぐはぐと腕を噛んでいるけれど、ダメージは通らない。むしろ小さい舌が偶に当たって、ちょっとばかしエロスを感じさえするな。

 

 そんな感じで一頻(ひとしき)りじゃれあった後、疲労とも満足ともつかない表情を浮かべて退室する彼女を見送った。しかしなんとも、好ましい幼女である。

 

 容姿は言うまでもなく、そして精神の成熟ぶりに反して性的な未熟さを持ち合わせたロリババア。まさに理想じゃなかろうか。

 

 某魔法先生のロリババア吸血鬼が、新作でロリババア枠を脱した今、覇権を握るのは彼女なのかもしれないな。ま、今は僕にとっても現実なこの世界で、確固たる一人として存在してるんだ。非実在性の幼女ではなく、きっちり三次元幼女である。キャラとして見るのは言語道断と言えるだろう。

 

 さっき彼女にも言った通り、長い付き合いになるんだろうし……できる限り素で接しあえる関係になりたいものだ。いつか過去の出来事も話してくれるような──そんな関係に。




ノクターンノベルズでもちょいちょいロリペドものを書いてるんですが、男の娘を出したら感想で拒否反応を示す人が割といるんですよね……私が考えているよりニッチな性癖なのだろうか。

可愛けりゃ男の娘でも女装子でもいいと思うんですけどねぇ。エロ漫画の男の娘なんて、チンポ付いてる女の子だと思うんですけど(暴論)

マーレどうしよう…
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