とりあえず指摘されたとこについてはざっくりとした答えだけ書いときます。
マーレとのチョメチョメは? →無しです。
なんで二十二世紀に生きてた人間が魔法先生ネタを? →これは某焼き鳥先生のことではなく、二十ニ世紀の漫画『ゼロから始まる魔法先生に転生した件についてアートオンライン』という作品に出てくるロリババアのことです。いやー、こんな細かい設定まで練ってるってバレちゃったわー。言うつもりなかったのになー、バレちゃったわー
ロリペド成分薄くない? → このロリコンどもめ!
──目を見張るほどに巨大な満月。その怪しくも美しい、昏い輝きに照らされる少女が一人。月下の元、宿屋の屋根の上で黄昏れているのは数百年を生きる吸血鬼。誰も彼もが夢見に沈むこの時間も、彼女にとっては毎夜毎夜に訪れる孤独な時間だ。
いつも身に着けている仮面やマントも外し、自身の年齢や外見の偽装を解く──ともすれば吸血鬼として追い立てられる危険性すら孕んでいる行為を、彼女は偶の息抜きとしていた。どのみちこんな深夜に出歩く人間などそうおらず、いたとしても彼女に気付く可能性はごく僅かだ。
加えて、遠目からでは吸血鬼と人間の僅かな差異など見抜ける筈もない。高位の神官が夜な夜なアンデッドを探している──などという有り得ない事態を警戒するほど、イビルアイは小心ではなかった。
「…はぁ」
「どうしたの?」
「──へっ? どぁっ!?」
物憂げにため息を吐く彼女の横に、いつのまにか鎮座していたレズ忍者──ティア。レベルに差はあれど、隠形に関してはその差もひっくり返る。動転して屋根から転げ落ちそうになるイビルアイを抱きとめ、ティアは胸いっぱいに少女臭を吸い込んだ。
「うーん……これは悩みを抱えている匂い」
「どんな匂いだそれは。別に悩んでいるわけじゃないさ。ただ、なんというか……『愛』という奴に関して考えていただけだ」
「…お年頃?」
「誰が思春期だ! というか、お前の何倍生きていると思ってるんだ。そうじゃなくてだな……なんだ、その……例えばお前とエイだが、セッ……あ、アレをしている時はどういう感じなんだ? 別に恋人という訳ではないんだろう? お前はお前で行きずりの女と関係を持つ時もあるし、アイツもアイツで他に相手がいるようだし……お前らの
「(完全に思春期)エイに何か言われた?」
「いや……私に対してというよりは、自分の考えを口に出しただけだろうな。私が勝手に気にしているだけだ」
「エイは普通じゃないし、私の生い立ちも普通じゃない。イビルアイの人生も普通じゃないから……あんまり他人を参考にしないほうがいい。それでも答えが知りたいのなら──」
「…知りたいのなら?」
「私がベッドの中で教えてあげっ、ぐふぅっ!!」
「なぜお前らはやることなすこと同じなんだ…」
屋根の上で器用にルパンダイブをきめたティアであったが、腹部に掌打をくらい崩れ落ちる。そのまま緩やかにゴロゴロと転がり続け、屋根から放り出され──隣の建物の壁を蹴り、元の位置に戻った。アダマンタイト冒険者の身体能力を持ってすれば造作もないアクロバットである。
呆れたように肩を竦めるイビルアイ。そんな彼女に性懲りもなく近付き、キスを迫るティアであったが──その表情は至極真面目くさったものであり、イビルアイはいったいどうしたのかと訝しむ。迫る顔は唇を通り過ぎ、そして耳元で囁かれた言葉は──警告であった。『囲まれている』と。
「…っ!」
その言葉を耳にした瞬間、素早く仮面を付けマントを羽織るイビルアイ。『蒼の薔薇』は闇組織に煙たがられているチームではあるが、しかし今このタイミングで誰かしらに襲われる理由があるとすれば、彼女が吸血鬼であるという一点に尽きるだろう。
あまりに油断しすぎたと、イビルアイは自責の念にかられる。現状ティアと一緒にいることを考えれば、下手をするとチームメンバーをも不味い事態に巻き込みかねない。どう言い訳をしたものかと、襲撃者の様子を窺う。そんな彼女の前に暗がりから身を現したのは──見目麗しい三人のメイドであった。
「ビンゴっす! アイテムかなんかで隠しちゃったっすけど、アンデッドの気配ビンビンさせてたっすよユリ姉!」
「遠目でしたけどぉ、ちらっと牙も見えましたぁ」
「あなたは目が良いものね、エントマ。それにしても探し始めて三日目で見つかるなんて……運がいいわ」
「夜な夜な探し回った苦労も報われたっす!」
三方向から迫る、それぞれが方向性の違った美しさを持つ三人。声量は普通だと言うのに、まるで近くで会話をしているようなやり取りが違和感を醸し出していた。そして常人ではありえない身体能力で、イビルアイ達が乗っている屋根へと跳び移る。
煙突の上に陣取り、軽やかに笑う褐色のメイド──ルプスレギナ・ベータ
メガネをクイっと持ち上げ、上品さを漂わす夜会巻きのメイド──ユリ・アルファ
甘ったるい声とは裏腹に、人形のように表情が動かない小さなメイド──エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ
街中に現れたアンデッドを退治しにきた──というには少々有り得ない出で立ちに、イビルアイは怪訝な表情を作る。しかし三人の言動からは、既に自分の正体が割れていることが窺えた。彼女はため息を吐きながら、無駄だと思いつつも弁明を図る。
「…確かに私は吸血鬼だ。だが人を襲うことなどないし、悪行に手を染めてもいない」
「私は人間だけど、今の言葉は確かだと保証する。むしろ正義のために行動することの方がよっぽど多い」
自身の立場も顧みず、擁護の言葉を口にするティア。そんな彼女に対し、イビルアイは嬉しさと心苦しさが綯い交ぜになった表情を浮かべ──しかし諦観を覚えてもいた。『自分は悪い吸血鬼ではない』と、そんな言葉が届くと考えるほど彼女は人間の善性を信じていない。というより、そんな人間は異常だとすら考えていた。
アンデッドは人間に敵する者。それが常識であり、そもそもとして事実である。イビルアイのような吸血鬼こそが例外中の例外であり、まずもって考慮に値するべき存在ではないのだ。見つけ次第問答無用に滅すべき存在……それがアンデッド。
そんな化物が正義を訴えたところで、信用されることなど有り得ない。しかし届くと思っていなかった言葉に対する返答は──彼女にとってあまりにも予想外であった。
「知ってるっすよー。
「ボクより高レベル……正義の吸血鬼……正体を隠している……うん、間違いないね」
「じゃあぁ、さっそくですけどぉ……選んでくださいなぁ~」
「…は?」
逃げる素振りがないのを見て取った三人のメイドは、包囲を解き、トコトコと歩いて二人の前に並び立つ。その立ち居振る舞いはメイドとして完璧な所作であり、その立ち姿はまるで芸術品の如き美しさ。しかしそれがどういった意味を持つのか理解できず、イビルアイは呆けた声を零す。
「ほらほら、よりどりみどりっすよ? 清楚系淑女なユリ姉、可愛い系ロリっ娘のエンちゃん……なんなら私でもいいっす」
「いや、意味がわからないんだが」
「またまたー。シャルティア様を
ルプスレギナのメイド服は修道服を模した衣装である。しかし前者の用途にしても後者の用途にしても、本来は有り得ない扇情的な意匠が随所に凝らされている。胸を強調するコルセットもその一つであるが、なにより視線を惹くのはスカートの切れ目──腰まで伸びたスリットだろう。
膝上まで伸びるオーバーニーソックスにより、肌の露出こそ十数センチではあるが、ちらちらと見える小麦色の太腿は男にとって目の毒でしかない。ルプスレギナはそんなスリットを自らの手で
下着こそギリギリ見えていないが、その大部分がさらけ出された太腿は、むしろ全てが見えている状態よりも性欲を掻き立てる。傾城傾国とすら言える美しさも相まって、たとえその気がない女性ですら魅了しかねない危うさだ。
「いや、だから──私を誘惑する意味が理解できないと言っているんだ! というか私にそっちの気はない!」
「隠しても無駄っす! 女の子の尻穴が大好きな変態吸血鬼ということは調べがついてるっす!」
「どこの調査!? 人違いにも程があるわ!」
「王都を拠点にして、この世界においては伝説級の強さを持ち、正体を隠しながら正義を執行する吸血鬼……そんな存在が他にもいるっすか?」
「え……いや、まぁそれは流石に私以外いないと思うが…」
「ほらほらっす!」
「いや、ほらと言われても…」
数百年ものの処女だというのに、女好きの変態扱いをされている。そんな意味不明な状況に
「な、な、なんだその目は!? なんでそんな目で見るんだ!」
「女の子が好きだったのなら……私がいたのに……なのに、他の女と…? それどころかあんな美女美少女に求められて──こんなに酷い裏切りはない」
「私はお前に裏切られた気分だよ!」
「少しこっちにも寄越すべきそうすべき」
「ええい、勝手にしろ! とにかく私には関係ない……というかお前らも! 仮に私がそんな変態だったとしてだ。だからといって
「もちろん目的はあるっすよ!」
「ボク達が先に貴女を絶頂に至らせたなら──」
「オチンチンを生やす指輪……戦利品として所望いたしますわぁ」
「わかった。お前たち頭がおかしいんだな?」
真剣に何を宣うかと思えば『チンチンを生やす指輪をくれ』である。イビルアイでなくとも、相手を“キ
「…これのこと?」
「なんで持ってんの!?」
「やっぱり! 今は愛人に持たせてたんすね!」
「ああ、もうどこから突っ込めばいいんだ…」
「ふわぁ、どこから突っ込むかなんてぇ……えっちぃ」
「ならお前らはびっちだよ! もうなんなんだ本当に……誰か助けてくれぇ…」
女性相手にはタチが基本のティアが『生やす指輪』を欲しがらない筈もなく、彼女がエイにねだって手に入れたのは当然の帰結だ。そもそもエイのアイテムは基本的に無限であるため、彼が惜しむこともない。女の子が女の子に対し腰を振る姿は、それはそれで興奮するものである──というのがエイの言であった。
「くぅぅ……とにかく、お前らが何か勘違いしてるのは間違いないんだ! 私達には何も関係ない! ──逃げるぞティア!」
「ここは私にまかせて、先に行って」
「わかった!」
「…即答は酷い」
死亡フラグ満載のセリフでこの場に残る宣言をしたティアに、イビルアイは振り返ることもなくシュバっと逃げ出した。本来の彼女であれば、危険を推して残る仲間を見捨てたりはしない。しかし今この場での『危険』は、命ではなく貞操である。そもそも喜んで残っていそうなティアのために、自らを危険に晒すこともないだろう。
「待てっす──っと!」
「あの娘を追いたいのなら、まずは私を倒してから」
「…どうするっすか? ユリ姉」
「うーん……指輪を持ってるのはその娘みたいだし、無理して追わなくてもいいんじゃないかな。それに、あの娘と違ってあんまり強い感じがしないとは言え──」
「忍者の格好が酔狂じゃないならぁ、少なくともレベル七十近くはある計算ですぅ。邪魔されると厄介ですわぁ」
「それもそっすね。なら忍者のお嬢ちゃん──」
「ティア」
「じゃあティーちゃんっすね。勝負の方法はさっき言った通りでいいっすか?」
「モチのロン」
「良い返事っす。んじゃ、どこかいい場所は…」
「近くに昨日潰した八本指の違法娼館があるよ。建物はまだそのままじゃないかな」
ユリの言葉に全員が頷き、屋根の上から軽やかに飛び降りる。夜の
「…八本指を潰したと言っていたけど、本当?」
「まだ完全には潰れていないけどね。でも時間の問題だよ」
「ふっふっふっ、なんと言っても私らは──」
「正義の組織ぃ~」
「ナザリック! だからね。覚えておいてくれると助かるよ」
「ナザリック……最近噂になってる、あの?」
「おっ、どんな感じっすか? まだ浸透はしてないって聞いてたっすけど」
弱きを助け強きを挫く者達──それが王都で最近噂になっている謎の集団への評価である。小さいものであれば失せ物探し、大きいものであれば暴漢の鎮圧など、様々な場面に現れては問題を解決していくヒーロー。まだまだ知らない者の方が多いとはいえ、それも時間の問題だろう。情報通のティアであれば、当然のごとく既知だ。
善行をなしては『ナザリックのものです』と言って去っていく者達。『消防署の方から来たものです』ばりに胡散臭いが、とはいえ騒動が自作自演という訳でもなく、見返りを求めることもないのだ。職業柄疑い深いティアであっても、ある程度は好意的に見ていたほどである。
「──『超速おじいちゃん』」
「…? どういうことっすか?」
「一番よく見かける“ナザリック”の人……執事姿のお爺さん。強くて渋くて優しくて──ものすごく速い。街の東で火事があれば駆けつけて、西で強盗が起きても駆けつける。目にも映らない速度で良いことをしていく老人……付いたあだ名が『超速おじいちゃん』。そう聞いた」
「そ、そっすか……ぶふっ、くく、くひっ…! ちょ、超速セバス様……うひひっ…」
「わ、笑っちゃダメよルプス──ふふっ」
「んふっ、んんっ……さすがセバス様ですわぁ」
残像を残して走り回るセバスを想像し、三人のメイドは笑いを堪える。直属の上司であるが故に、その姿が容易に想像でき──だからこそ可笑さもひとしおなのだろう。お腹を押さえながら笑いこけるルプスレギナ、真面目な表情を保とうとしながらも口元をひくつかせるユリ、可愛らしく両手で口を押さえるエントマ。そんな姿であっても三者三様に美しく、ティアはこの後に訪れるであろう素敵な時間に思いを馳せた。
「──ここだよ。入り口はその棚の横の隠し扉」
ユリの案内に従い、地下へ続く隠し通路を進んでいく一行。いくつもある部屋に微かに残った
適当な部屋を選んだ彼女達は我が物顔で侵入し、四人を乗せてもなお余裕のあるベッドへ各々座り、あるいは寝転んだ。数瞬、なんとも言えない『間』が空いたのは、これまで一貫して余裕のある態度を崩さなかったメイド達が、ほんの僅かに緊張の糸を張ったからだろう。
ユリ、ルプスレギナ、エントマ。『生やす指輪』を手に入れるために選ばれたこの面子は、当然のことながら処女である。首なし騎士、人狼、蜘蛛人と──人間のような貞操観念こそ持ち合わせてはいないものの、まったく何も感じないということはない。感覚としてはルプスレギナがある程度人間に近い感性を持ち、エントマがもっともかけ離れているといったところだろう。
そもそも指輪を手に入れたいというならば、一度勝利を収めているソリュシャンがもっとも適当な人選であった。しかし彼女はアルベドとシャルティアの正妻戦争において後者の派閥だ。任務が正式なものであればともかく、実際にはかなり私的な感情が入り混じっている現状において、彼女がアルベドへの協力を拒否したのは当然とも言える。
ナーベラルはアルベド派閥ではあるものの、冒険者として既に名が売れているため運用に適さない。シズはナザリックのセキュリティ上の観点から外出が禁じられているため、同行が叶わなかったのだ。
「…ルールはどうする? 人数は……三対一?」
「…ユリ姉」
「うん、わかってる。ティアさん……だったよね。始める前に一つお願いがあるんだ」
ソリュシャンのような反則技を持ち合わせていない彼女達は、そも大した性技など覚えていない。シャルティアを下した百戦錬磨の相手に、いったいどう立ち向かうべきか。
彼女達が最初に考えたのは、『ハンデを貰う』という身も蓋もないものであった。しかしシャルティアからの情報──正しくはソリュシャンから伝え聞いた情報だが──では、充分に交渉の余地があると判断したのだ。
むしろハンデを引き出す、その部分から戦いが始まっていると考えた。このチームのリーダーであるユリは、見た目に反して無鉄砲な戦い方を好み、まずは殴ってから考えようという脳筋気質である。今回も『とりあえずヤってみよう』という、あまりに杜撰な計画を立てたお馬鹿なリーダーだ。
そんな彼女に苦言を呈したのは、ナザリックでも相当な慎重派であるエントマだ。シャルティアを超える超ビッチ相手に、処女三人が無策で挑むほど愚かしいことはないと、滾々と説いたのだ。ナザリック以外の者など大したことはないと傲慢に振る舞う者が多いNPCの中で、彼女はしっかり相手との戦力差を見極める頭脳派なのだ。
妹から丁寧に諭されたユリは己を恥じ、いくつかの案を素直に聞き入れた。まずはハンデを引き出すためのテクニック──女として最高クラスの美貌を利用した『誘惑』を。
プレアデスの中でもっとも丈の長いスカート──その裾を両手でつまみ上げ、
「ボク達……まだ処女だから、ハンデが欲しいの…」
「──っ………ぅ…」
「…へっ?」
「はわっ…?」
清楚な真面目系美女が魅せつける、ギャップ萌えの極地とでも言うような行動、そして言動。これで堕ちない女好きなどいないと、エントマは太鼓判を押した。そして練習通り完璧に演じきったユリの誘惑に──ティアの心臓は停止した。
「し、ししっ、心臓が止まってるっす! だ、誰か回復魔法を──!」
「ボ、ボボ、ボクのせいなの!? 回復──ってあなたの専門でしょう! ルプス!」
「そうだったっす!」
「お姉さま方ぁ、落ち着いてぇ~」
悪事を固く禁じられている彼女達にとって、殺人はもっとも忌避すべきものだ。まさか魅了(物理)しただけで死亡するとはこれっぽっちも思っておらず、混乱が三人を包む。そして懸命な回復によりなんとか息を吹き返したティアは、少しだけレベルが下がっていた。
「ふぅ……死ぬかと思った」
「いや、死んでたっすから」
「えっとぉ……それでぇ、ハンデは受けていただけますかぁ?」
「わかった。どうせならこれも一時的に貸し出す」
「指輪……いいんすか? まだハンデの内容も聞いてないのに」
「問題ない」
死亡騒動の後、ハンデの内容を確認して頷くティア。条件としてはまず、一人あたり十分間“攻め”の猶予を貰うこと──そして計三十分を耐え抜いた後にティアの反撃が許されること。それまではされるがままだ。そして三人のメイド達は三回まで絶頂しても敗北にはならない。
その二つを勝負に織り込んでほしいという願いを、ティアは問題ないと受けた。あまりにも不利な勝負な上、そもそも『処女』とはいまいちハンデになっていないのだ。女性の絶頂とは男性ほど容易に導けるものではない。男性が物理的な刺激で勃起、射精しやすいのに対し、女性は快感も絶頂も精神的な部分の比重が大きい。
女性の“開発”とはその優位性を逆転させる行為であり、精神的な快感と肉体的な快感を何度も結びつけ、最終的に肉体の反応を精神に及ばせる可逆的な行いなのだ。要はパブロフの犬と似たものだろう。
故に未経験の女性を絶頂に導くというのは非常に難しい。それどころか、そこに愛情がなければ難易度は余計に跳ね上がるだろう。そんな不利な勝負をティアが受けたのは──もちろん勝算があるからだ。当然、指輪を貸し出したのもその一環である。
「じゃあエントマ、お願いね」
「はいぃ、ユリ姉様ぁ」
「──ちょっと待つっす!」
そしてユリ達もユリ達で勝算はあった。それはエントマへ頼り切りの、姉としては不甲斐ない計画ではあったが──上手く行けば貞操を散らせることなく勝負が決する、何よりも望ましい作戦だ。
いくつか保険はかけているものの、できれば最初の十分で勝負が決まって欲しい。そんな願いを込めながらエントマへ声をかけるユリであったが、ルプスレギナから待ったの声がかかる。その理由は姉としての意地と、指輪への興味であった。
妹へ任せっきりにする申し訳なさと、不可思議なマジックアイテムへの興味。ついでに言うと『ナザリックの方針転換』で少し溜まりがちな鬱憤の解放だ。ルプスレギナにとって人間とは玩具であり、虐めて楽しむものである。
とはいえ至高の存在にそれを否定されたならば、従う以外の選択肢はない。しかし悪性を持って生まれた彼女からすれば、口には出さずともストレスが溜まるのはどうしようもない。
しかし今であれば──プレイの一環ということで嗜虐心を満足させることができると、そう思い至ったのだ。わざわざ貸し出してきたもので屈服させることができれば、尚更にその滑稽さを嗤えると。
「コレ……試してみるっす。エンちゃんの出番はないっすよ!」
「ちょっと、ルプス? 本気で言ってるの?」
「私はぁ、二番目でもいいですけどぉ…」
「どのみちエンちゃんが無理だったら厳しいっすからね。まずは姉から様子見するのが、年長者の義務っす」
「じゃ、じゃあボクが…」
「妹のお願いを聞くのが姉の務めっすよ?」
「──もう。ならルプス……頑張って」
屁理屈をこねる妹に苦笑しながら、ベッド横の椅子に座り込むユリ。エントマも同様に続き、ベッドの上にはルプスレギナとティアだけが取り残された。そしてその状況に──ティアは内心でガッツポーズを取った。それは彼女にとって、もっとも与しにくいと感じたメイドがルプスレギナだったからだ。
それが──
「うぉぉ……ほんとに生えたっす」
「……」
「そんじゃ……うひひ、精々いい声で泣き喚くっす…!」
処女であり、そして今は
そう……問題があるとすれば、むしろルプスレギナの方だろう。性的な知識をあまり持ち合わせず、そして勿論のこと陰茎が生えたことなど一度もない彼女。男性器が女性を喘がせるモノとの認識はあったが──逆もまた然りであると失念していたのだ。
「ん……挿入った──……っ…!? う、ぁ…!」
「ん。もっと奥まで」
「あ、ちょ、待っ──!」
ティアの膣内の半分ほどまで挿入したルプスレギナは、その未知の快感に思わず腰を引いた。しかし網にかかった獲物を逃す筈もなく、ティアは両足で器用に彼女の腰を掴み、自身の奥まで引き
「あっ、やっ……は──!」
「…まず一発」
女でありながら女を味わうという未知の領域。ルプスレギナは腰の根本についた尻尾をピンと立たせ、次の瞬間には果てていた。ティアは既に足の力を抜いていたが、それでもメイドは自ら腰を押し付ける。もっと奥に入りたいと、もっと注ぎ込みたいとでも言うように。
ティアはそんな彼女の背を優しく撫で、抱きしめる。ビクンビクンと体を震わせ、長い射精の快感に酔いしれるルプスレギナの顔を優しく引き寄せ、キスをする。帽子がずれ犬耳が露わになり、尻尾も見えてしまってはいるが──ティアは気にも止めず唇を貪り続けた。
女性のオーガズムで得られる快感は実に男性の数十倍と言われるが、そもそも快感の質そのものが違うのだ。頭痛と肩こりを比べるような、そんな頓珍漢な比較である。故に女性が射精の快感を知ると癖になり、男性が女性のオーガズムを知れば中毒にもなる。
それが予想できていたティアは、鍛えた舌技でルプスレギナの口内を蹂躙し尽くした。求めあうように唾液を交換し、ふいに尖った犬歯がティアの舌を傷つけ、二人の口内に血の味が交じる。しかしそれすらも興奮材料となったのか、膣内で柔らかくなっていた陰茎が再び硬さを取り戻していく。
「はぁっ、ん、ちゅ──んむっ」
「…はぷ、んっ……腰を、ね。乱暴に振って……おちんちんを出し入れしたら──すごく気持ち良いよ」
「はっ、ふ、ぅ…! うぁっ…!」
唇を貪り合い、唾液の橋がかかり──ティアはルプスレギナの耳元でそっと囁いた。その肉棒は雌穴を乱暴に突くものだと……ゴシゴシと擦れば、さらなる快感を得られるのだと。欲望で湯だった頭にするりと入り込んだその言葉は、即座に腰の動きへと変換された。
ルプスレギナが激しく腰を動かす度に、褐色の艶めかしい胸がぷるんと揺れる。乱暴に覆いかぶさられたティアは、それをしゃぶるように口に含んだ。女性の扱いには手慣れている彼女だ。転がすように舌を動かし、性感帯を煽る。元より名器を生まれ持ったティアは、加えて暗殺技術の一環として伽にも長けていた。秘所を擦り続ける陰茎を器用に締め付け、射精を促す。
二度目の射精は、最初の挿入から五分後のことだった。荒い息を吐きながら叩きつけるように腰を打ちつけ、既に許容量を超えた膣へ精液を注ぎ込むルプスレギナ。射精に伴いピンと張った足が柔らかさを取り戻し、ようやく腰を引いた時──ティアの割れ目から噴水のように白い液体が溢れ出す。
「はっ、は──あ、しょうら……勝負らっひゃ……っす…」
「…お掃除してあげる」
「んぅっ──ひ、あぅ…!」
愛液と精液で汚れた陰茎を、躊躇うことなく口に含むティア。弱いところを熟知しているように、舌が艶かしく動き回る。十数秒も経った頃、ルプスレギナの股ぐらには再度立派な剛直がそびえ立っていた。
「…だ、だめっす…! そっちからひゃっ、な、にゃにもしないって、やく、そく…」
「……」
残された時間は後一分ほどだ。できればそれまでに一人脱落させておきたいと考えたティアは、口淫を拒否する──口だけだが──ルプスレギナに従い、厚ぼったい唇を陰茎全体に這わせながら、名残惜しそうに引き抜いた。
びくりと身を震わせながら、切なそうにその様子を見ているルプスレギナ。本音は、数センチ先のすぼまった唇へ『自身』を突き入れたいのだろう。存分に出し入れしたいのだろう。しかし僅かに残った理性がそれを拒否しているのだ。
──そんな彼女を愛おしそうに眺めつつ、ティアは最後の一押しを決行する。拳を握って情欲に耐えるルプスレギナの前に跪き、瞳を潤ませ、蕩けた表情で口を開けた。覗き見える舌が淫らに動き、陰茎の表面から数ミリを這う。確かに触れてはいないため、ルール的にはセーフであったが──しかしラストストローには充分過ぎた。
口元からよだれを垂らし、理性が消え去ったルプスレギナの剛直が、ティアの口内を乱暴に犯す。十数回ほどのピストンの最後、肉棒は完全に喉奥へ飲み込まれ──壊れた蛇口のように精液を吐き出した。
「ふーっ! ふーっ! …はぅ、はふぅ……気持ちいいっす…!」
「んっ、じゅるっ、はむっ……ぷはっ……これで三回。私の勝ち」
「──へっ? あっ…」
「ごちそうさま」
「あー……うー……お粗末様っす! ──ぎゃんっ!?」
「ル・プ・ス?」
「あだだっ! い、いやその……だって気持ちよかったんすもん……そうだ、
拳骨を二度も落とされたルプスレギナは、涙目でベッドの上から退散した。『ティアをイかせられなかった』だけならばユリもこれほどに怒りはしなかったのだろうが、結果としては『負けようがないはずの十分間』での敗北だ。駄犬の躾としては大変に適当であった。
「次はどっち?」
「では僭越ながらぁ、
「ばっちこい」
褐色元気娘の後は、可愛いロリ娘かと鼻息を荒くするティア。とはいえ本当に楽しめるのは二十分後だ。まずはあちらの責めを堪えなければならないと、興奮を鎮める。
先程の醜態を見て再度指輪を使用する馬鹿はいないだろう。つまりあと二回戦は攻め手がなく、ただ耐え抜くのみだ。しかし幼子に己をどうにかするテクニックなどないだろうと、彼女はさして脅威を覚えていなかった。
そんな彼女の前に立ったエントマのスカートから零れ落ちたのは……うぞうぞと動く、男性器を模したナニカだった。有り体に言えば、どこかの聖杯戦争に出てきそうなタイプの虫である。
「……」
「ではぁ、いきますねぇ」
「…それは、なに?」
「淫虫ですぅ」
「…認めるのは『道具』まで。自分以外の生命体を入れたら、一対三ですらなくなる」
「大丈夫ぅ。私の体を構成する一体として連れてきてるからぁ。人狼のルプス姉様も大丈夫だったんだからぁ、蜘蛛人だって差別なんか……しないでしょうぅ?」
「………わかった」
──瞬間、ボタリボタリと粘性を含んだ音が何度も響いた。
それはエントマのスカートから追加された、十数匹の淫虫の音。獲物の秘所へ向かう虫達の這った後には、強力な媚薬成分が含まれた体液が滲んでいる。それでもティアは歯を食いしばりながら──雄々しく吠えた。
「淫虫なんかに絶対負けないっ!」
■
うーん、いまどこかで誰かが即堕ち二コマをキメた気がする……気のせいかな? まあ世界には喜びも溢れてるし悲しみも溢れてるし、即堕ちだって溢れてる。きっとその内の一つが変な電波を伝って僕に流れ込んできたとかだろう。今はそんなことより、蕩けた顔でチンポを舐めるレイナースちゃんに集中すべきだ。
「んぅ、じゅる、ちゅ……んぐっ!? んぶっ、んっ、んっ──はぁ、あっ…」
「ふぅ……なんかめっちゃ上手くなってないかい? もしかして良い人でもできた? それなら無理にこういうことしなくても大丈夫だけど。人から奪うのはあんまり好きじゃないし」
「はふぅ……あ、い、いえ。またエイ様が伺われた時のために、その……張り型で練習などを…」
マジで? えらい好かれようだな……確かに呪いは治したが、だからといってそこまで夢中になるほどじゃない気もするけど。あれかな、女性は初めての人が特別になるってやつなのかな。まぁ男も男でそんな感情がないとは言えないけどさ。
「竜王国での武勇、帝国にも轟いておりますわ。フールーダ様でも治し得なかった私の呪い……それを解呪してくださった時点で、絶大な力をお持ちであると理解はしていました──それでもまだ過小な評価だったのですね」
「ああ、なるほどそういう……ふーん…? 王国じゃ大した噂にもなってなかったってのに、帝国は耳が早いな」
「ふふっ。王国より情報が遅い国家があるとは思えませんが」
「そりゃあ間違いだ。なんだかんだ大きいだけあって、それなりの力はあるよ、あの国。たださ、手に入れた情報を上に報告しない貴族が沢山いるってだけの話さ」
呆れたような、納得したような顔で頷くレイナースちゃん。唇が唾液やら精液やらでぬらぬらとしていて、非常にエロティックである。しかしなるほど、竜王国への援助はドラウの穴以外に思惑はなかったが、意外と色んなところでプラスに働いているようだ。直接あってなくとも好感度が上がってるとか、中々素晴らしいね。そしてレイナースちゃんも意外と現金である。
「…さて、それで用件はなんだい? 僕にできることならなんでも聞くよ。なんたってレイナースちゃんの頼みだしね」
「まぁ…! ふふ、ありがとうございます。では早速ですが──数時間前、この皇城へ襲撃者が現れ……そして私達は為す術もなく制圧されました。初めは彼女達が乗っていたドラゴンこそが脅威だと考えていましたが、問題はそれどころの話ではなく……たった一つの魔法で私達は敗れたのです」
「…へえ。ちなみにどんな容姿だったんだい?」
「二人の幼いダークエルフ……おそらくは双子でしょう。帝国で盛んに取引されている『エルフ奴隷の売買』をやめ、即刻奴隷を解放せよと要求していました。どちらが正しいかと言えば──ええ、あちらに正義はあると思いますが」
「なるほど、なるほど」
胡散臭っ! 絶対エルフの奴隷解放とか興味ないだろあの双子。まぁ八本指への襲撃と同じく、善行の一環としてやってるんだろうな。
それで? レイナースちゃんは僕に何を望むんだい? 死者はいない、怪我人もほんの少しってんなら、あちら側としても穏便に済まそうとはしてるんだろうし……奴隷云々に関しては君も肯定してるっぽいけど。
…ああ、一応の保険ってことか。確かにあちら側がそれ以上の横暴を通そうとしてきた時、抑止力があると無いじゃ大違いだ。
うーん……どうしたもんかな。『自分以外の別人』としてナザリックへ接するならともかく、『運営』としてはあまり近付きたくない……というより会話をしたくないんだよな。まあでもレイナースちゃんの頼みだし、仕方ないか。
「オーケー。じゃあ案内してくれるかい?」
「はい! 今は皇帝陛下と交渉をしている最中ですわ……おそらく割り込んでも問題はないかと」
「『皇帝の選択肢を増やす』ってことね」
そういやフールーダお爺ちゃんはなにをしてるんだろう? 部屋の中に入ったら、マーレちゃんのおみ足をペロペロしてたなんてことになったらどうしよう。え? ああ、交渉そっちのけになりそうだから四騎士の三人が見張ってるのか。まぁその気になれば障害にもならなさそうだけど……取り敢えずまだ理性は保ってるのね。
さてさて、部屋の前についたが──もちろん見張りが何人もいる。通ろうとするレイナースちゃんを止めようと奮闘しているが、実力的にも権力的にも難しいようで、ちょっと涙目になっている彼らが少し哀れである。がんばえー、みはきゅあー……あ、諦めた。
「失礼いたします、皇帝陛下」
「…誰も入るなと命じておいた筈だが。四騎士の地位にこだわる必要もなくなって、従順さも失ったか? ──答えろレイナース」
「そのようなことは。先程申し上げた『どうにかする術』がこちらの御方──ウン=エイ様でございますわ。あとは陛下次第かと」
「──やあジル! 久しぶり! 元気だったかい?」
とりま、一発からかってみよう。しかしなんともまあ、イケメンである。今の僕なら負けていないが、アバターじゃなければ横に並びたくないレベルだ。さあさあ、どう出るのかな? ──ってジル君が反応する前にアウラちゃんとマーレちゃんが片膝をついた。なにごと?
「ウン=エイ様。あたしはギルド『アインズ・ウール・ゴウン』所属、階層守護者『アウラ・ベラ・フィオーラ』と申します」
「お、同じく……『マーレ・ベロ・フィオーレ』です」
「我が主、至高の御方がお会いしたいと申しております。どうか我等が拠点『ナザリック』へ招待させていただけませんか?」
…! 片膝をついたマーレちゃんのスカートの奥が見えそう……もうちょい視線を下げれば──って何を考えてるんだ僕は。あの奥には穴じゃなくて棒があるのみだ。どれだけ可愛くとも男の娘はホモって武蔵さんも言ってたじゃないか……ってそうでもなくて、だ。どう答えたものか……などと逡巡していたら、先にジル君が言葉を発した。
「やあ、エイ。こちらこそ久しぶりじゃないか……君も元気だったかい?」
「うぇっ……し、知り合いだったの…? や、やば…」
「ど、どうしようお姉ちゃん…」
おおぅ……機を見るに敏。こちらの冗談に乗っかって友人の振りをするジル君。あわよくばそのまま友人にしてしまおうと言った魂胆だろうか。クレマンティーヌとは役者が違うなぁ。
実力を傘にきて交渉していた二人が狼狽えるのを、横目で楽しそうに見てる。性格悪そう。けどなぁ……将来ハゲるかもしれないとなれば、僕は彼に優しくせざるを得ない。だって可哀相だし。
「元気も元気、大元気さ。この前アルシェちゃんが虐められたって聞いたけど、僕は全然気にしてないぜ」
「ふむ……フルト家の娘と知り合いだったのか。今は魔法省で仕事をしていた筈だな。わかった、便宜を図っておこう」
「サンキュー、ジル」
「なに、気にするなエイ」
どこまでこの茶番は続けるべきなのだろうか? まあ実は友人じゃないよって二人に暴露しても、それはそれでユーモアな感じに持ってくんだろう。まったく、できる男は違うぜ。ただしハゲ(可能性)である。この一言だけで許せちゃうんだから、実はハゲってすごいんじゃないか?
「さて、と……アウラちゃんにマーレちゃん」
「はっ、はい!」
「悪いけど招待は断らせてもらうよ。モモンガさん……今はアインズさんだっけ? そう、あの人が僕に会えば絶対に聞くことが一つある。僕は『運営』としてそれに答える義務があるけれど、それをアインズさんの耳に入れるのは時期尚早だと思うんだよね。それがどっちにとっても無難……じゃないかな、うん」
「…? あの、アインズ様のことをご存知なんですか?」
「そりゃあ有名人だしね。ところで、アウラちゃん達は僕のことをどう聞いてるんだい?」
「え、えっと……『ユグドラシル』を創造した神様だと聞いています……僕達にとっての至高の御方のようなものだと」
「ふぅん…? そりゃまた過分な評価を──いや、違うか」
とにかくナザリックのシモベ達って他者を侮りまくりのアナドリストが多いからな。そうでも言っとかないと、どんな無礼を働くか解らない……的な考えでギルマスが盛りまくったんだろう。どちらかと言うとナーベラルちゃんやらアルベドちゃんへの牽制や対策なのだろうが、アウラちゃん達はみごと鵜呑みにしてしまったと。
「あ、あの……アインズ様が聞きたいことって…」
「んー……君らに言うのも大概なんだけどなぁ。でも会った以上は──……うん、じゃあこうしようか。一つ質問をするから、その答えによって僕も言うかどうか決めるよ。ただ、どっちにしてもギルマスへ『それ』を報告するのは禁じるけど。どうする?」
顔を見合わせて迷っている二人。正直シリアスな雰囲気は大嫌いなんだけど、こればっかりはなぁ。僕が名詞として『ウン=エイ』を名乗っているのは、多少なりとも『運営』であり続けたいと思っているからだ。
だからこそ、プレイヤーであるあのギルマスが『Question』を提示したならば、『Answer』を返す義務がある。いわゆる、運営への『Q&A』だ。まぁGMコールを無視してるあたり、非常に無責任な義務感だけども。
「…質問を先に聞いてもいいですか?」
「オーケー。『アウラ・ベラ・フィオーラ』『マーレ・ベロ・フィオーレ』……君達はギルドマスターである『アインズ・ウール・ゴウン』と、創造主である『ぶくぶく茶釜』──どちらがより大切だい?」
「なっ──!」
「…っ!」
揃って体をビクリと震わせる双子ちゃん。まあ意地が悪い質問だということは理解しているんだが、いかんせん先にこっちを聞いとかないと別の問題が起きちゃうし。ぶっちゃけると、NPCは創造主を優先するんじゃないかとは思ってるんだけど──さて、いったいどっちなのかな。
「な、なんでそんなこと…っ!」
「質問に対する質問はマナー違反だぜ」
「…こ、このっ…! だいたいなんでぶくぶく茶釜様のことを──」
「お、お姉ちゃん!」
「あっ、うぐ…! し、失礼、しました」
「別にその辺りは気にしなくていいけど。普段通りでお好きにどうぞ。そもそもギルマスが言ってる僕の人物像も、かなり誇張されてるしね。プロジェクト初期から居た訳でもないし、『創った』んじゃなくて『管理してた』が正しいかな? ──そう、絶対の神様なんかじゃあない。もしそうなら、ユグドラシルはまだ存続してる」
「…?」
僕が紛れ込んだところで、十二年という寿命はなにも変化がなかった。手を抜いていたわけでもないし、なんなら睡眠時間を馬鹿みたいに削ってまでイベントを計画したことだってあった。それでも結局、僕たちが無能だったせいでサービス終了となったのは、疑いようのない事実である。神様なんて言われたら逆に貶されてるのかと勘ぐっちゃうね。
「──対等さ。僕達は世界の法則を管理して、プレイヤーに提供してた。でもそれは上位者からの施しじゃなくて、プレイヤー側から対価を頂いて……それで僕達の生活も成り立ってた。僕達がいなきゃ彼等は存在できなかったけど、彼等がいなきゃ僕達も存続できなかった。だから……
「…じゃあ聞くけど! さっきの質問はなんなのよ!」
「そこに関しちゃ言う必要を感じないね。ギルマスを選んでも、茶釜様……んんっ、ぶくぶく茶釜を選んでも、それは君らが選んだことだ。どっちが悪いってこともないさ」
「いま『様』って言わなかった?」
「言ってないけど」
「言ったわよ」
「言ってない」
「言った!」
「言った!」
「言ってない!」
「言ったって言ってるじゃないか!」
「言ってないわよ! …ん? あれ?」
「じゃあ問題ないな、うん。さっさと質問に答えなよ、アウラ・ベラ・フィオーラ」
危ない危ない。ぶくぶく茶釜様こと『風海久美(※エロゲ声優名)』様のファンだったってことは知られないようにしなければ──いやまあバレたところで大した支障はないが、なんかちょっとね。というか結構な有名声優だし、運営の中にも数人ほどファンはいた。ロリ声ばっかり務めるもんだから、僕にとっても大変お世話になった人物である。
「う、うぅ…」
「…あぅ…」
「別に悩む必要はないんじゃないか? 本音で言やいい。そもそも正解なんてないし、僕がどっちの答えでどう答えるかを君達は知らないわけで。わざわざ『君達にとっての不正解』を暴露するほど悪趣味でもないし。さ、返答は?」
散々悩みぬいた彼女達は──最終的にギルマスを選んだ。正直とても意外だったけれど、『遠くの親戚より近くの他人』みたいな感覚なのかな? まぁ茶釜様がいればまた違う答えになりそうな、揺蕩う感情ではありそうだ。単純にギルマスを選んだ方が聞きたいことを聞けるという思惑もあったのかもしれない。別に嘘をつくなとは言ってないし、見知らぬ僕に本音を吐露する必要性もないしね。
「──そうかい。なら……大丈夫かな」
「…っ!」
「…ギルマスのことは大切かい?」
「あ、当たり前でしょ? そんなの聞かれるまでもないわよ」
「自分がどれだけ傷ついても、ショックを受けても、ご主人様を優先できる?」
「で、できます……それが僕達の存在理由ですから」
「──そう。なら運営として断言させてもらう。ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』メンバー……『至高の四十一人』は、ギルドマスター『モモンガ』を除いて誰も居ない。これからこの世界に来ることもない──未来永劫、君達が創造主と再会することは叶わない」
──ギルマスが必ず僕に問い掛けてくるであろう質問。けれど、きっと耳にしたくはない真実。
あー……やっぱ泣くよね。正直こういうことを伝えるのは、アルベドちゃんやデミデミ……最悪パンドラ辺りが適当だろうし、精神年齢も幼気な彼女達に伝えるべきではなかったような気もする。とはいえNPC達で共有すべきことでもあると思うし……あー、こういうしがらみが嫌だからリアルと決別したってのに、結局ついてまわるのか。自分以外の他人と接する以上、当然っちゃ当然なんかね。
「…なんで僕がこれを伝えるかわかる? それと“時期尚早”って言った意味も──なぁ、泣くなよ二人共。泣いたって何も解決しないし、僕がこれから言うことを実践しないとギルマスまで消えちゃうぜ」
「…!」
「…っ!」
「今あのギルマスが支配者として君臨してる理由は──まぁ君達のためだ。正しく言うなら、君達を創った仲間を想うからこそ、かな。仲間への執着が彼の原動力と言ってもいい。だからこそ、もう二度と会えないと知った時どうなるかは僕にもわからない」
自暴自棄になるのか、それともNPC達への責任感が勝つのか……どっちにしても、生きる気力がだだ下がるのは確かだろう。それがアンデッドになって変容した精神にどんな変化をもたらすのか、僕にだってわからない。
「だから君達が頑張らなきゃいけないわけだ」
「どういう、こと…?」
「メンバーによっては十年以上も付き合ってきて、育くまれた友情。それを今度は君らが育てろってことさ。ギルマスにとって君達こそが、
「そ、そんなの…!」
「できるわけがないって? 親への不義理から? それとも主人への不敬から? そんなのどっちも君らの言い訳だろ。状況を知れば、ギルメン達は間違いなくそれを君達に望む」
「…っ、なんであんたにそんなこと…!」
「『運営』だからだよ。それ以上に──まぁ、『アインズ・ウール・ゴウン』のファンだからってのもある」
…さて、これ以上言うことはない。後はもうNPC次第ってとこだろうし、最低限の義理は果たしたと言える。そもそも絶対に言う必要があったって訳でもないんだよね。アルベドちゃんやらシャルティアちゃんが妻の座を狙っている以上、何十年後かには『NPCとギルメンの価値』が逆転してる可能性は大いにあるし。
「…あ。ジル、レイナースちゃん、さっきの問答は他言無用で頼むね」
「ああ、わかっているとも。というより、そもそも何のことを言っているのかまったく理解できなかったからな」
「まあそうだよね……それじゃ、後は……というか僕なにしに来たんだっけ? …ああ、エルフの奴隷云々だっけか」
正直なとこ、目の前で酷い目にあってたりしない限りはそこまで気にしないけどね。救おうとすれば大抵はできちゃうからこそ、線引きは必要だ。関係ない人間を気にしてたらキリがないし、それを冷酷だとも思わない。
倫理だの人権だのと宣う人達も、貯金や給料をはたいてまで後進国へ支援したりしないよね。自分が質素な暮らしをすることで、遠い国の貧しい子どもたちが救われると知っていても、そこまではしない。人間なんてそんなもんだと思うし、それでいいとも思う。
「ま、若干僕のせいでもあるみたいだし……それ関係で掛かる費用は僕が払うよ。概算が出たら教えてくれる?」
「…いいのか? かなりの金額になるが」
「気にしないでくれよ。これから君に待ち受ける過酷な
「──それは神からの警告と受け取るべきか?」
「うん。いずれ髪から警告が出ると思うよ。兆しを忘れずにね……人はそれを、いつも気付かない“ふり”をする。勘違いだと信じるんだ──予兆は必ずあるのに。“鏡は嘘をつかない”。ジル、君にこの言葉を送るよ」
「…肝に命じよう」
肝じゃなくて頭皮に命じておくべきだと思うけど……まあいいか。双子ちゃんたちは──まだ俯いたままか。うーん……なんか罪悪感。仕方ない、今の彼女たちに効くかはわからんが、茶釜様グッズでもくれてやろう。ついでに動画でも見せたげようかな? ピンクの肉棒がうねうねと戦闘してるとこって……元気出るのかな。
「アウラちゃん、マーレちゃん。ちょっとこっちにおいでー」
「な、なによ…」
「は、はい…」
懐からピンクの肉棒を模したぬいぐるみを取り出し、二人に一つずつ渡す。実に卑猥だ。目を輝かせた幼女達がピンクの肉棒を大事そうに抱きしめているのは、なんとも言えないエロさがある。ジルとレイナースちゃんがドン引いているが、これが彼女達の創造主なんだから仕方ないだろう。
その後は『ナザリック大侵攻』の動画を全員で鑑賞し、僕はその間アウラちゃんを膝上に乗せ、尻の感触を堪能した。常軌を逸した戦闘風景にジルが唸り、レイナースちゃんが乾いた笑いを零していたのがちょっと面白かった。まぁ期待した通りの反応だけども。
茶釜様のタンクとしての活躍っぷりや、公式チートと言われたギルマスの虐殺コンボを見て大興奮の双子ちゃんたち。まあ元気が出たようでよかった……ちょいちょいお触りできて、僕の息子も元気になったが。
──ん? 誰だ? この反応は……カルカちゃんがお呼びのようだ。はて、約束の日はもう少し先だった筈だけど……まあいいや。褐色ロリエルフのお尻でいきり勃ったチンポを、ロイヤルマンコで鎮めてもらうとするか。
じゃあね、双子ちゃん達。さっきの事はちゃんと皆に伝えて、全員がギルマス
えらい長くなった上にいまいち面白く書けた気がしないな…
次はたぶん、頭からっぽで読めるエロメイン回になると思います。