「さて、準備出来たかしら?」
「はい」
今の私はいつもの黒いコートではなく、アルに用意された黒を基調としたドレスに身を包んでいた。
対するアルは紅色に黒い模様を入れたロングドレスを着ている。
アルの金髪と合わさって凄い綺麗だ。
「そういえば武器って持ってていいんですね」
「そりゃそうよ。人間同士ならそのルールは必要でしょうけど」
成る程武器程度で殺せる訳無いと。
「ちなみに集合は何時なんですか?」
「16時よ」
「16……?」
時計を見る。
短針は4の場所を指していた。
「ってもう始まってるじゃないですか!?」
「他の有象無象共と一緒に入ったらシオンが目立たないじゃない」
「目立たなくていいです。目立たなくていいですから!」
というか会場がどこなのかも知らない。
間に合うのこれ?
「ほら、慌てない慌てない。さ、行くわよ」
「馬車呼びますか?」
「そんな事する必要無いわよ」
そう言うとアルは懐から一つの鍵を取り出し、その鍵を宿屋の扉に向かって突き刺した。
鍵穴が無い筈だが木目がそれを呑み込み、アルが捻るとガチャリと音がした。
「はい着いた」
「魔法、ですか」
時空間歪ませるとか何をやってるのだろうか。
規格外過ぎる……。
アルについて扉をくぐる。
一瞬の浮遊感の後に私は光が降り注ぐ巨大なステージの上に立っていた。
「………………」
「呆けてないでこっち座りなさい」
「あ、はい」
気づけばそこに居た何百人もの人達から視線を受けていた。
好奇心をひしひしと感じながら、無視してアルの隣の席に座った。
なにこれスッゴい座り心地いいんだけど。
一人感動していると、隣に座るアルに向かって声が掛かった。
「随分と久しぶりのご参加だね、ミスブラド。そちらのお方は?」
「私の従者だよ」
「は、初めまして」
慌てて挨拶をする。
何か失礼があったらアルに迷惑が行きそうだし。
「成る程、では先程までの議題ですが……」
「それよりさーここに来てる教会の関係者どもに言っておきたいんだけどさー」
ご主人様ぁぁぁぁぁ!!??
普通に横から話変えたよこの人!!
「あの、ミスブラド」
「私の従者のシオンだけどさー、『魔弾』?とかの能力で研究用に欲しがってるみたいだけどさぁ」
いいのかコレと思いながら固まってると、急に肩を掴まれぐるりと視界が一回転してアルの膝の上に収まっていた。
「え、ちょっ」
「ほーらコレ見てみ」
そう言って私の首筋を皆に向ける形で晒す。
「もうこの子は私の物だから。勝手に取り返そうとか襲ってきたら戦争だからそのつもりで居なさい」
「放して下さい!恥ずかしいです!」
耳元で囁くも無視され、
「そうそうシオン、これ昨日お店で買ったのだけど似合うと思うし着けていいかしら?」
「物によります!どうせ嫌だと言っても着けそうですけど!」
「よく分かってるじゃない、これよ」
首を手の方に向けると、黒い首輪がアルの掌の上にあった。
私の首にぴったりのサイズに思える。
「……犬でも飼うんですか」
「成る程、今夜は犬プレイがしたいのね」
「なんでそうなるんですか!?」
小声でぎゃあぎゃあ騒ぎ始めた私達に遠くの席から声が掛かった。
「何だ貴様その言い方は!その餓鬼は我々が拾った孤児だ!検査で能力があると分かったからわざわざ汚ならしい餓鬼を拾ってやったんだ!それを横から奪って自分の物だと!調子に乗るのもいい加減にしろ!」
その声に辺りがしん、と静まり返った。
その静寂の中、一人の男がこちらに歩きながら話し掛けてきた。
「ルキウス司教の暴言はすまない、詫びよう。しかし、此方の言い分も聞いて欲しい」
私達の椅子の前まで歩いてくる。
その男は教会の護衛の騎士でマークというらしい。
アルの返答も聞く事無く男はつらつらと言葉を続けた。
「君は今まで見た事の無い吸血鬼だが、この集会に出るのは初めてかな?ここは人間と化け物がお互いに手を取り合う為のものだ。そちらの少女を渡してくれたら貴女には手を出さないと誓おう。どうかな?」
手を取り合うといいつつその提案はアルを見下したものだった。
「ノー、と言ったら?」
「残念だが君を滅ぼす必要がある。その少女の能力は希少だ。吸血鬼の玩具で終わらせるのは勿体無さすぎるからね」
滅ぼせると本気で思っているのだろうか。もしそうなら実力差も分からない馬鹿だ。
……吸血鬼の玩具扱いなのは否定しないけど。
そんな愚かな人間にため息を吐きつつアルが話し始めた。
「貴様に私が倒せるとでも?」
「フフっ随分と思い上がってるみたいだね。そりゃそうさ、どんな化け物も弱点はある。それに吸血鬼は弱点も多い劣等種じゃないか」
「……ほう」
「君達の事を憐れんで滅ぼさないでいてやってるんだ。少しは譲歩して欲しいね」
静まり返った会場で、アルが口を開いた。
「成る程……残念だ。人間の質は200年でここまで劣化するのか」
「何を……」
私はさっきからずっと震えていた。
この殺気に気付かないとかどうかしてるんじゃないの?
「黙れ、もはや貴様には一秒たりとも生存を許さん」
次の瞬間、マークという男の形をしていた物は体内の血液を全て杭のように心臓から噴き出して絶命した。
会場がどよめく。
そんな中、
「流石ブラドだ!!」
「ここ最近お行儀良すぎて退屈だったからな!せいせいしたぜ!」
「久しぶりに見たけど凄いな!『串刺し公』は!!勝てる気しねぇw」
何人かはこの状況を面白がっているようだった。
あれが特S級の人達なのだろうか。
アルの殺気が収まり、私の身体の震えが引いてきた所でアルから囁かれた。
「あそこの……さっき私に怒鳴った司教居るでしょ。あの男、『魔弾』で殺しちゃいなさい」
「……了解」
ドレスにこっそり仕舞ってきたM19を取り出して銃口を向ける。
それに気付いた護衛の人達が司教を守るべく取り囲んだ。
「無駄だよ」
引き金を引く。
鳴り響く銃声。
護衛の人達の隙間を縫って、私の『魔弾』が司教の頭蓋を撃ち抜いた。
「うん、やるじゃない。今手持ちの弾丸は?」
「残り23発です」
「全弾撃っちゃいなさい」
その後、私のリボルバーによってその日この集会に参加していた教会の人達は全滅したのであった。
えっちなのは次回