幻影の魔族 作:オーク初心者
RPGもイベ来るじゃろ。そうだ、更新を後回しにすれ……『ソウルスティール!』……次ノ作者ハキットウマクヤルデショウ。
「ご機嫌ね、メイア。まあ、私もそうなんだけど……」
体力と精力を使ったリヴァイスはメイアの膝枕で熟睡中であった。既にこの体勢になってから二時間は経過しているというのに、メイアは疲れる様子を見せるどころか、BGM代わりの子守唄を飽きることなく口ずさんでいた。リヴァイスの髪を梳いてみたり、どこかあどけない寝顔を見ているだけだが、飽きることもないらしい。
真剣勝負のジャンケンによりこの権利を勝ち取ったメイアの邪魔をするわけには行かず、ナディアもメイアやリヴァイスの隣で寝そべって大人しく彼の寝顔を眺めるに留めている。やはり飽きないらしい。
「ブラッドロードさんの足、痺れないのかしら」
「血液を自在に操るのならば、痺れとかむくみとかも何とかなるのではないか?」
「ベッドの上だから、足への負担は少ないとは思うのだけど……それに、ナディアさんの癒しの魔力が適度にリィズと一緒にメイアさんに注がれているもの」
声のトーンを抑えながら、身体をほぐしてみたり、忍術の発動に問題ないか確認を進めつつ、ゆきかぜや凜子達対魔忍達は脱出への準備を進めていた。
「ところでお母さん、それは戦闘用の服装? なんか軍服っぽいというか。外套のマントも似合ってるね」
「対魔忍装束は拘束中にボロボロにされてしまったから、リィズと相談して衝撃に強い素材は生かしつつ、試作品を作ってみたの」
入室してきた時の娼婦めいた服装とは異なり、今の不知火は以前の装束に近いレオタード型のボディスーツの上に、グレーを基調とした軍服調の服装を纏っていた。なお、スカートの丈は動きの邪魔にならない程度には丈が長いものとなっている。
裏話として、不知火が身体のラインがそのまま出て肌の露出も多い対魔忍装束を着るのはリヴァイスはあまりいい気分ではなく、不知火も既に『私が肌を見せる男はあなただけ』を地で行っているため、人間界でかつて放映されていた魔法もとい魔砲少女を題材としたアニメシリーズに出てくるライバル的立ち位置のヒロインが、三作目で着ていた衣装を元に、スカート丈や色合いを調整の上ラフを起こして不知火が縫製を担当した一品だ。
……そもそもが、二人がコスプレプレイを楽しむ一環で見つけたモデル元であり、詳細は徹底的にぼかすと決めた不知火であった。母の威厳を自分から全力で投げ捨てる必要もないのだ。勘のいいゆきかぜにもうある程度見透かされて、威厳は半ば無くなっているようなものではあるが。
「縫製がお母さんって、ええ、これプロの仕事じゃないの……」
「凝り性のリィズに影響を受けて、私もちょっと本腰を入れてしまったのよね。小さい頃はゆきかぜの服を全部作るぐらいには、裁縫が趣味だったし」
「ううむ、私も最低限の家事は出来るとはいえ、不知火さんに改めてしっかりと教えを請いたいところだな……やはり、グレイ殿の身の回りのお世話はきっちりこなせるようにならなければ」
この出来栄えでどこがちょっとなのか。というか、『本腰を入れる=技術を磨き直して向上させる』の間違いではないのか。母の常識も相当におかしくなって、いや、元から天然なところはあったかと思い直す。必要に迫られない限りは細かいところを気にせず、おおらかに構えているところがあったような記憶もある。仕事や任務となると意識が切り替わるのだろう、そんな母親の一面を思い出しつつ……。
「凜子先輩。教えを請うのは後にして、とりあえずお花畑思考から離れて。全部脱出してからの話でしょ」
「うっ、そうだが。ゆきかぜ、急に辛辣になっていないか?」
「アタシだって本来こういう役回りじゃないもん。しっかりしてよ、凜子先輩」
ゆきかぜとて自分が突っ込み役や宥め役に回るとは思っていなかった。恋愛脳に陥った尊敬する先輩がここまで脳内お花畑するとは予想の斜め上過ぎる。これまで彼女には寄りかかれるような対象も、まして異性などいなかったし、誰だって甘えたいとか自分を支えて欲しいって願望はあるものだが……。
「優しくして欲しいだけなら、他の男性をお勧めするわよ、凜子ちゃん」
そんな凜子に冷水を浴びせるのはリヴァイスのパートナー陣。不知火の言葉にナディアもメイアもウンウンと頷いていた。
「セックスの時間はとても優しいし、望まないかぎり酷いこともしないけれど……自分のことは自分でが基本路線だから、普段は全然甘やかせてはくれないわよ?」
「だらしないのも嫌いだから、オンオフの切り替えはキッチリしないと怒られちゃうし。私もメイアも何度もカミナリを落とされてるの」
「最初は生意気だから殺そうってしたのに、それでも私の杜撰さは見るに堪えないから言い続けてやるって。痛い目にも合わせたけど、それでも引かなかったもの……ふふ、今では感謝してるわ」
温厚だけど怠惰は許さないというところか。パートナーにも堕落ではなく自律を求める辺り、さらに変な魔族の印象を強めたゆきかぜだが、凜子は何やら勝手に衝撃を受けたようで。
「なっ、なるほど……女として己を高め続ける意志が無ければ、グレイ殿の側に侍る資格もないと……」
いや誰もそんなこと言ってませんよと、ゆきかぜは慣れぬツッコミに疲れ、心のなかで毒を吐くに留める。やがて、リヴァイスが身を起こし、ナディアも娼婦の格好から動きやすい軽装へと着替えて、全員が出立の用意を整えた。
「空蝉の術で最大1kmは跳べるんだったね?」
「ここに囚われてから鍛錬が出来ていないことや、この人数もあるし500mを限度に考えてもらうのが確実だと思う。空中に投げ出されても大丈夫というなら、跳ぶ位置の制御はあまり必要では無くなる分、700mぐらいは問題無い筈だ」
「十分。せっかくなら空中飛行を楽しもうじゃないか。ナディア母さんとメイア姉さんは……」
「違うわよ、リィズ?」
「うん。違うよね、リィズ」
保護者から彼へのパートナーへの立ち位置を変えた二人は今の呼び方を許容せず、笑顔でリヴァイスへと強い威圧を放つ。ゆきかぜと凜子は魔界の実力者たる二人の強さの一端に触れた思いで反射的に身震いしてしまうが、当のリヴァイスはバツ悪そうに頰をかくのみ。
「まだ慣れないんだよ、ナディア、メイア。……悪かった」
「躾は最初が肝心だもの。ふふ、怒ってるわけではないわ。ね、ナディア」
「ええ。鉄は熱いうちに打て、だっけ。そんな感じだから」
つまりは茶番ということである。不知火が悠然と構えていたのは、二人の心情をある程度察していたからだ。ともあれ、魔族であるナディアやメイアは魔力での浮遊が可能であり、翼と魔力の併用が可能なリヴァイスが不知火達三人を支えるという方向に決まる。
なお、不知火は念話で浮遊の練習を兼ねることをリヴァイスと打ち合わせを同時に終えていた。
「あとは跳ぶ前にここをぶっ潰していかないとな。メイアに手を出して俺に報復されたのにまだ懲りないっていうんだから……」
「あはっ、私もきっちり落とし前をつけないとね♪」
「凜子ちゃんは空蝉の術のために体力温存ね。私とナディアさんでフォロー、でいいかしら。ゆきかぜも暴れたいでしょう?」
まず、ゆきかぜの雷遁で電気系統を破壊。次いでリヴァイスは娼館の天井まで一気に魔力で風穴をあける。後は各々で暴れて、終わったら撤退と大まかに決めて、一同は動き出したのだが……。
「あははははっ! 私とリィズの新たな門出を鮮血のシャワーで祝いなさいな!」
「うふふっ。せめてあなた達の命を吸い上げ、私の力としてあげる♪ そして得た力をまたリィズに捧げないとね……ソウルスティールっ!」
幸せへの切符を手にした魔族二人が張り切った結果、殲滅戦の様相を呈し、娼館は短時間で更地と化しつつあった。かつてはメイアや不知火を、そしてゆきかぜや凜子の心身を弄んだ連中も全員、全身から血を吹き出しながらミイラのような屍を晒している。
普段は温厚なナディアであるが、メイアに手を出した輩どもへの慈悲はない。外道な連中は自分を通じてリヴァイスの糧になれば良いぐらいの感覚であった。
「私、これ出番なくない?」
「ゆきかぜも病み上がりみたいなものだし、俺も最初に1発撃っただけだよ。お互いに余力を残したってことで。まあ、身体の治療の間にいくらでも手合わせの機会はあるさ」
それにあの無双に割り込む勇気はあるかと聞かれれば、ゆきかぜとって目に見える地雷は避けたいと考えてしまう。運良く二人組から撃ち漏れた連中を雷撃で仕留めるに留めていた。
射撃練習と思えばいいのではというリヴァイスの言葉にそう思うのが精神上も良さそうだとゆきかぜは支援射撃に徹するのであった。
そして、余計な連中が大挙して押し寄せてくる前に、リヴァイスの癒しの魔力を注がれている凛子の空蝉の術で無事脱出が終わり、一同は空中遊泳と洒落込んでいく。
「うっわぁ~! すごいっ、こんなに星空が近いって、綺麗!」
「かなり高いところにいる筈なのに、水遁で寒さを遮るとは、なんとも贅沢な天体観測だな……」
「魔界の荒廃した空じゃこうはいかないもの。リィズに何度も連れられて、私も癖になったの」
「冬だと寒さは増すけれどもっと綺麗に見えるわ。リィズ、また見に来ましょうね」
「ああ、メイア。今度はどこかの山の頂上っていうのもいいかもしれないね。テントでも持ち込んでさ、泊りがけもいいな。寒さ暑さ対策は何とでも出来るわけだし」
「平和的な忍術の使い方よね。ふふ、でもこうしてゆきかぜともう一度星空を眺められるなんて夢みたいよ……」
凛子も継続回復が施されていたこともあり、強い疲労感を感じることもなく、夜空を楽しみながら移動を続ける。凜子とゆきかぜを抱き上げているリヴァイスに寄りかかる形を取る不知火は、魔力で浮くという感覚をおおむねつかんで、遊泳の途中からはリヴァイスの疲労を取るべく、ナディアの癒しの魔力と共に水遁の回復術を使う余裕すら見せていた。
「ワイバーンの背中に乗って魔界の景色を見ることになろうとは……昨晩、見た夜景とまた違った趣きがあるな」
「達郎にはゼキナさんを通して言付けを頼めたしね。まずは身体を元に戻さないと……」
そして、東京キングダムのゼキナの元へと戻った一行は、ゲートを通過し魔界の空を飛んでいく。彼が手配したワイバーンの背中は全員が乗っても余裕があり、空中遊泳と違って安定した飛行となっている。風圧や気温の影響は水遁で変わらずカットしているため、全面ガラス張りの小型飛行機に乗っているような感覚であった。
「そっちに腕のいい魔科医がいるのは知っているから、すぐ戻るのも選択肢なんだけどね。ただ、俺もそういう伝手はあるし、不知火と一緒に過ごしてほしいとも思うからさ」
全身性感帯と発情体質にされただけではなく、魔界器具などによる洗脳で安易に悦楽を求める思考を植え付けられ、さらにどのような性行為であっても拒否すれば頭に激しい頭痛を巻き起こすマイクロチップの埋め込みを経て、ゆきかぜ達は通常の思考が出来る時間が著しく短くなっている。
この移動中もリヴァイスやナディアの癒しの魔力を注がれることにより、強制的な発情や悦楽欲求の遅延をはかりつつの移動であり、ゲート通過前にキングダムで一晩を過ごした際もリヴァイスに抱いてもらって鎮める始末であった。
マイクロチップについては、娼館でメイアが血液の流れを確認した時に、リヴァイスが不知火の時と確認したのとほぼ同じ位置に澱みを感じたため、推測とはなるが、ゆきかぜ達自身にも恐らくチップが埋め込まれていると説明を終えている。
また、彼女達の血液中にキメラ微生体が投与されていることもメイアは突き止めており、娼館崩壊前に血の女王たる彼女の手により無効化の上、既に体内から除去されていた。微生体の能力で血中濃度に干渉するようなシロモノのため、血液を自在に操るメイアにとっては造作もないことである。メイアの力を転写しているリヴァイスでも対応は可能だったはずだと彼女自身は嘯いていたが。
「発情体質や植え付けられた享楽的な思考は、俺やナディアの魔力を注いでいれば徐々に緩和されているけど……チップだけは取り除くなり機能停止させないと、ずっと思考を縛られるようなものだから」
リヴァイスによれば自宅に戻ればMRI装置があるため、それで確定診断ができるという。不知火の回復への過程で設置したものであるらしい。ただ、医者でもない彼がなぜ操作方法などを分かるのかと、ゆきかぜが聞けば色々あったのだと苦笑いしながら口を濁し、またナディアやメイアの機嫌が急降下したため、それ以上触れるのをやめる。直情猛進型であるゆきかぜであるが、病み上がりに近い身体で魔王を起こすような真似は流石に思い止まる。
「……ふふ、リィズ。少し休んだら? また屋敷までは時間がかかるでしょう?」
また、女性陣の相手で物理的に一番睡眠時間が短いリヴァイスが疲れ気味なのも一同は分かっており、大きなあくびをした彼を不知火が膝枕したことで、屋敷の位置を知るナディア、メイア、不知火が交代で方向誘導を担当しつつ、他の皆もリヴァイスの周りで昼寝と洒落込むのであった。なお、誘導担当は膝枕担当でもあり、ナディア達としてもどこか満足げであったという。
あけましておめでとうございます。本年もよろしくおねがいします。
新年属性限定でやっと恒常ママン保護できました。
閑話回みたいですんませんな。次回はエロいことしたいです。