幻影の魔族 作:オーク初心者
「あらあら。意外と積極的ね、紫藤さんたら」
「ご主人様への安心感と、開き直りの良さが出た感じでしょうか。しかし、この米連からの虫型ドローンはあれだけ小型なのに、映像も音声も鮮明ですね……」
「魔力や忍法だとかえって察知されやすいこともあるから、機械も使いようよ。対抗策をしっかり打つためにも、知ることは大事ね」
ナノマシンへの対応策など知覚が困難な攻撃方法への手立てとして、リヴァイスや不知火はその辺りの研究にも余念がない。むしろリヴァイスがのめり込み過ぎるのを不知火が性的に襲いかかることで止めることも数多い話なのだが……その研究の一環で鹵獲した米連製の機器も改造して使うぐらいのことは二人には日常の延長であった。
『おほぅ♪ あひぃ、またイッて、おほぉぉおおぉっ! いまいじるのらめなのぉ、おほっ♪』
しゃぁぁぁぁ……。
なお、その技術の成果を使ってやっていることは、自分の男の情事を覗き見しているわけだが……残念ながら、ツッコミ役のゆきかぜは別の客室で達郎とヨロシクやっている最中である。
凜花のアヘ顔やイキ声以外に、しっかり聞こえてくる放尿音。気位の高さで有名だった凜花を鑑みれば、見るに絶えない醜態を晒し続けている。そんなことを感じる余裕も無いほどに彼女は責め立てられ、悦楽の海に深く沈んでしまっていた。
「凜花は潮吹きしやすい体質だったのか……ご主人様は流石です。風呂場ならいくら責めても掃除の手間が省ける」
「クンニも初体験でしょうしね。壁を背に浴槽の縁に座らせたのはリィズの判断だけど、それでも彼女の身体が今にも崩れ落ちてしまいそうね」
「……ご主人様の寵愛を頂いている時の私は、ああいう顔をしているのでしょうか」
「お互いさまよ。最近のリィズは本当に……本当に優秀な教え子だから、私も飲み込まれてしまうほどだもの」
救出された頃の自分は半ば淫魔化しかけていたこともあり、間の取り方や声の掛け方も含めた男女の営みに関する技法を徹底的に教え込んで、自分の渇きを満たしていた不知火だったが、ここ最近のリヴァイスの上達ぶりに逆に圧倒される日も出てきていた。不知火ですらそうなのだから、リヴァイスがその気になれば、凜子やナディア達は歓喜の雄叫びを上げ続ける発声装置と化してしまう。
「ご主人様が女性を組み敷いて悦に入るタイプで無くて良かったですよねぇ……」
「ええ、痛感しているわ。以前は私の教えを吸収するのに必死なところがあったけれど、最近はリィズ自身に随分と楽しむ余裕が出てきているもの」
責め方の細かい強弱で、こちらの反応の違いを見て楽しんでいる節すらある。いい意味で遊び心が出てきたのだ。ともあれ、その根底には女をより気持ち良くさせようという意思があるから大きく外すこともなく、受ける不知火達からすると、新しい性感帯を開発されているような一面すらある。
『はぁ、はぁ……夢、みたいね。自分が認められる強い男に、女として愛される。どこかで夢見てた、けど、私は対魔忍だから、多分無理だって。割り切ったつもりでいたの』
『うん』
『ここまで蕩けさせられて、お腹の中がずっと啼いてる。……ねえ、貴方は最後まで、素敵な時間にしてくれる?』
『俺なりの、やり方になるけど』
『じゃあ、間違いないわね。いいわよ、私の初めてを奪ってちょうだい』
モニターに映る凜花の表情は、リヴァイスに愛され満ち足りる時の不知火や凜子の顔にそっくりになっている。
「ああ、凜花が完全に女の貌になってます。これは堕ちますね、明日からはご主人様の女ですよ」
即堕ち経験者の凜子がドヤ顔で呟くのを見て、不知火は対魔忍の業の深さを思わず省みてしまいながらも、画面の向こうの営みは続いている──。
幾度もアクメをキメさせられ続けて、それなりの体力と一緒に、身体の強張りも奪われ、程よく弛緩した状態の凜花はリヴァイスの両腕でベッドに運ばれるままになっていた。むしろ自分から彼の胸に頭を預けて、運びやすいように手助けまでしている。
「もう、まるでどこかのお姫様を扱うみたいね」
「……今晩だけはそんな感じでもいいんじゃないかな」
「責めは随分徹底してるみたいだけどね?」
こんな軽口を叩いても笑って流してくれると分かる程度に、心の距離感は縮まっていた。自分より強い男であることを分かりやすく体現するかのような、鍛え抜かれた肉体。古傷が残っているのが厳しい戦いを潜り抜けてきた証のように見えて、凜花の鼓動は高鳴ったまま落ち着きを見せない。舞い上がっている自覚がある分、意識して普段どおりの自分を演じていた。普段どおりの自分を出来るだけ装っていないと、自分が一気に変わってしまいそうな怖さも覚えてしまっている。
「そりゃ身体が強張っていたら、痛いだけで終わってしまうから。俺とのセックスっていいな、気持ちいいもんなんだなって思わせたいんだ。だから必死なんだよ、わりと」
「ゆきかぜちゃんのお母さまや、凜子ちゃん、ナディアさん達だけじゃ足りずに、私まで本気で落とそうというわけ? 強欲ね」
「ん? 凜花はそこまで安い女じゃないだろ。まずは御眼鏡に叶うところまで行ければ御の字ってとこだ」
ううん、貴方の身体つきは私の好みど真ん中なのよ! などと叫びかねない凜花はもういっそ恥も外聞も捨て去って、自分から貴方の女になる宣言をしてしまおうかぐらいには頭の中が錯乱していた。性格は魔族であることを疑うほどで十分に合格点、肉体的には満点の倍満である。一人ぐらい女が増えても何とでもしてみせる甲斐性もあるようだし、別に働くのを苦にするわけでもない自分が稼ぎ頭になっても問題は──。
「何が稼ぎ頭なんだい?」
「え? う、嘘、私、口に出して……」
とっくに普段どおりにすら出来ていない始末。凜花さん、大暴走中であった。身体が茹っている以上に脳内がふやけてしまっている。
「落ち着いて、凜花。不快なら止めるから、言っていいんだぞ?」
耳元で囁かれた、低く落ち着いた声。凜子とまた違った方向性で残念な一面を隠し持つ凜花はとうとう勢いのままに、リヴァイスを押し倒し、目をぐるぐる回したまま、彼の剛直に自分の股座の位置を合わせてしまう。
「逆よっ! 私好みの身体つき過ぎて、もう我慢できないのよぉっ!」
経験もなく、さらに混乱の極みである凜花が自らによる挿入がうまくできるわけもなく、二人の性器は繋がらずにするりと滑るばかり。その擦る感触もまた気持ち良さを生むのだが、待ち望むものではなく。
「凜花、大丈夫。ちゃんと一つになれるから」
声をかけるリヴァイスが自分の腰を支え、少し位置を合わせれば……。
「あ、あぁぁぁ、入って、きたぁ……!? はぅんっ! あ、あれ、全然、い、痛く、ない?」
ぷつっと身体の中で千切れる音の後に、ズンっと一番深いところに伝わる振動。その衝撃に甘い声が漏れるものの、覚悟していた痛みは襲ってこなかった。
「これでも淫魔の端くれだよ? 痛みの感覚を鈍くすることぐらい出来るさ。力は極力使わないといっても、こういう使い方はしていかないとね」
奇しくも、騎乗するような体勢で自らの奥深くまで挿入された初めての男の生殖器。構えたはずの痛みが殆どなく、困惑の声が漏れてしまう。そんな凜花にリヴァイスはすぐに動くことなく、実際の痛みを疼きに似た感覚に変えているだけだからと、身体を起こしてキスや胸部への愛撫を続けていく。
「やぁっ、こんなの、狡い、狡いわよぉ。最初にこんなに丁寧に優しくしてもらえたら、ずっとあなたのこと忘れられなくなるぅ」
「それが狙いだって。ただ、動き過ぎると翌日の痛みが酷くなるから、あまり動かなくても、繋がったまま気持ち良くなれるようにするよ」
リヴァイスは身を起こして対面座位の姿勢となる。子宮への入口を軽く押し上げられつつ、円運動に近い動きで解されていく感覚を覚えながら、唇へ、首筋へ、乳房へ、乳首へ……リヴァイスの唇や手は休むことなく、柔らかな刺激を与え続けていく。凜花は自分の身体と心がどんどん堕ちていくような体感に囚われている。なのに、身体も心もこの状況から逃れることを考えようともしない。もっと深いところまで堕ちたいと望んでいるかのように。
「ひどいぃ、ひどいわよぉ、魔族って本当にずるいぃ、ひゃん、ああん、いいの、いいのぉ♪」
「うん、俺のせいでいいから、凜花。もっと気持ち良くなればいい。俺も凜花の中すごく締め付けてきて、とても、くっ、いいんだ」
「知らないんだからぁ、ここまで蕩けさせて優しくしてぇ、私を引き剥がすなんて、そんな身勝手なことさせないんだからぁ、ねぇ、あぁん♪」
それは従属宣言に等しい。女として目の前の男のモノになると自ら誓いを立てるようなものだ。場の雰囲気に流されている部分があるのは否めないが、凜花が心のどこかで強く望むからこその言葉。
「重たいんだからね、私だって凜子ちゃんと似たようなものなんだからぁ♪ やっと見つけた、私が認められる男を離してなんかあげないし、無理やり孕んで、産んだ子供と一緒に付きまとうぐらいするんだからぁ!」
思考や人格を壊すような破壊的な快楽ではなく、気持ち良くなって欲しいという相手の気持ちが感じ取れるやり方だから、凜花は構えることなく快楽に浸っている。やっと見つけた相手を離すものかと、熱に蕩けた脳が理屈を吹き飛ばして本能のままに叫んでいた。
「孕ませられるんじゃなくて、凜花が自分から孕むのか!? それは一生、最後まで俺の女でいるってことだろ! 実に男冥利に尽きるなっ」
腰の動きを早めるリヴァイスに必死で合わせる凜花。言葉でも剥き出しの本音を休むことなくぶつけていく。
「だってぇ! ああぁん、学園で強い子はぁ、ほとんど女の子ばっかりでぇ! 先生達も大半が女! たまに強いのがいても、性格最悪、はぁん♪ だったりするんだからぁ! 男なんてって、どこかでぇ、ひゃん、思ってたぁ!」
「親しくなったばかりの、凜花を抱いてる、俺だって!」
「本気で、私をぉ……気持ち良くしようとしてくれてるセックスだもん! 女はそういうの、絶対に分かるんだからぁ! あぁ、あぁ、わかる? ねえ、分かる!?」
絶頂の予兆。接合した男根へ精を吐き出せと本能の為せる強まっていく内部の締め付け。凜花は挿入で初めてのオルガズムを迎えようとしていた。
「貴方のおちんぽでイっちゃうからぁ、私のオマンコ貴方のオチンポに堕ちちゃうからぁ! 気持ちいいのっ、貴方とのセックス、もうやめられない、あ、あぁぁぁぁ、イクぅ、イグぅぅぅうううううううううっ!!!」
首を折れんがばかりに仰け反らせながら、潮を我慢することなく壮大に噴き出しつつ、凜花は挿入アクメをキメる。タイミングを合わせるように同時に始まるリヴァイスの吐精。その勢いと熱にさらに子宮が咽び泣き、いよいよ凜花はアクメから降りてこられなくなっていた。全身は激しく痙攣し、彼の首にしがみついていたはずの腕はだらりと垂れ下がり、彼に首筋や背中を支えられるがまま、ただただオルガズムの大波に飲まれ続ける。
──凜花が自分の身体の制御を取り戻したのは、彼の吐精が収まってから随分と経ってからのことだった。
「凜花、はい、白湯だよ。ゆっくりと飲んで」
彼から渡されたコップの水分を言われるがままに飲んで、一息をつき、やっと凜花の思考が戻ってくる。淫魔の力を使われたのではないかと思うほどに深く長い絶頂。ただ、そうではないことを凜花が一番分かっていた。時間をかけて快感や絶頂の感覚に慣らされて、心を解放して全て相手に預けたことにより、身体も引っ張られる形になったのだと。
「もう……初夜の女の子にここまでセックスの気持ち良さを教え込んじゃって、本当に悪い男ね、貴方。ふふ、絶対に離れてあげないんだから、覚悟してちょうだいよ?」
繋がったまま、リヴァイスに寄りかかる形でベッドへ寝そべる体勢となった凜花は微笑む。その微笑みに凜子と同じような想いの強さを感じ取ったリヴァイスは親友同士、気質まで似る部分があるのかと苦笑いしてしまう。
「あはは、一晩で認めてもらえたのは予想外だけど、こうなった以上自分から凜花を手放すなんて考えられないな。ただ……」
「……ただ、なあに?」
リヴァイスの声に落ち込むものを感じた凜花は、硬さを取り戻しつつあるリヴァイスの下半身から与えられる気持ち良さを意識から極力取り払う。理性を手放すも引き寄せるも、今は彼女の制御下にある証拠だった。あとは彼女が『いい女』ムーブをしっかり決めたいというカッコつけな一面があることも影響している。
「凜子に元の世界の繋がりをしっかり考えろと言ってたのに、凜花に傍にいろっていうのも都合のいい話だよなって」
「ふふ、元は凜子ちゃんに、私も含めて人との繋がりを切るなって話でしょ? だったらね、逆に考えちゃいましょうよ。人は連れてきちゃえばいいんだって」
モニターの向こうで『凜花は天才か!?』と素に戻って一気にボルテージを上げるメイドさんの姿があることは二人からは見えないわけで、話はそのまま続いていく。
「際限なく引き抜いたら、対魔忍としての組織が弱体化してしまうけれど──そこは厳選すればいいし、貴方、敵も多いみたいだしね? 足手まといになる子を連れてきても仕方ないもの。人間よりの魔族と提携して遂行する長期任務の体を取れば、長期間キングダムなり魔界で過ごすとしても任務だから、で通せる。というか、そういう任務に就いてる先輩方も多いって聞くわ」
細かい部分はもちろん詰める必要はあるでしょうけど、ゆきかぜちゃんのお母さんがその辺り詳しそうだからと凜花は話を結んだ。
「人を捨てて欲しくないと思ったから、ゆきかぜは達郎と共に元の世界へ戻すつもりだったんだ。凜子にも安易に魔族になることを選んで欲しくなかった。不知火は自分で覚悟を決めてくれたし、将来俺の子供を産むためにも魔族になることを選んでくれたけど……」
魔族として生きるからには、種族柄どうしても闘争と無縁とはいかないから。あと、長い時を共に生きるっていうことを、その意味を何年か掛けて考えて欲しかったのだと。
「ただ、結局俺の覚悟が足りなかっただけか。俺の手で絶対に幸せにして、幸せなままでいさせるって覚悟を」
「うーん。確かにそれぐらいの気概は持っていてほしいけど……そうね、私も凜子ちゃんも相手に求める条件が多いの。この男だって決めたら他への興味がすっと失せちゃう性質だって、自分が一番良く分かってるから」
だから、と凜花は続ける。一族の血を繋ぐための両親のどこかビジネスライクな関係性を見て、彼女はうんざりしていたのだ、十二分に。人だろうが魔だろうが、相手を見て相手を思える男ならば……。
「それで自分が見定めたのなら、その男とどうやってずっと幸せでいるかを考える感じ? 最初の難しい条件をクリアしてるんだから、後は自分の努力次第っていうか。男をうまく輝かせられるのも『いい女』の条件だと思うのよね」
互いにうまくやろうとする努力や歩み寄りが出来なければ、仲睦まじい男女関係なんて無理でしょうと。
「……一緒に暮らすにしても、眷属になるかはゆっくり考えて欲しいな」
「まぁ、ね。私もわりとややこしい家の生まれだし。でも、貴方以外の子種はいらないっていうのは本気よ? うーん、まだ父は子供が出来ない年齢でもないし、早めに生死不明扱いになっちゃうのも一つかも」
「凜花もわりと過激思想なのな……」
「あら、自分にとって一番大切なことは何かを常に見据えてるだけよ? これからは貴方とその家族も含めて、になるけれど」
元々、割り切りと思い切りの良さを持ち合わせる凜花である。理想の男と親友がいるこの環境。邪魔する者を色んな意味で叩き潰せばいいと、至ってシンプルな結論に辿りついているのだった。