幻影の魔族 作:オーク初心者
若さくらさん二人ドロップ確保したぁ疲れたよぉママンんんんんんんんん!
でもまだスキルの書ががががg(ry
あ、すいません、中繋ぎ回です。
「えらい大荷物になりましたね、旦那。荷台に荷物いっぱいにして小型トラックで帰ってくるから何事かと思いましたよ」
「いや、良い機会だから欲しい調味料とか米を全部補充したらこうなってしまって……あはは」
温泉とショッピングの旅を終えて、キングダムまで大荷物と共に戻ってきていた二人は情報屋のゼキナに連絡し、再び戻ったことと荷物の運搬について相談を持ちかけている。
「半年か、もしくは一年も余裕でしょうな、この量だと。流石に旦那の使い魔を活用しても、抱えていくのはしんどいでしょう。二、三日頂きますが、大型のワイバーンを手配しましょう。旦那も一度乗ったことのあるやつです。トラックの処分もこっちでやりましょう。……で、次月の定期支払いにこれぐらい乗せて頂けますかね」
「しっかりしてるよな。でも、助かるよ。うん、上乗せで届けに行かせるから」
「へい、宜しくお願いしますぜ。これからもご贔屓に頼みます。定期で現金か貴金属できっちり払ってくれる旦那は本当にありがたいお客様でさぁ。支払いを渋ったあげく、しまいにゃ鉛玉や火の玉をくれてやるって奴も多いもんで……」
「身体を厭ってくれよ、ゼキナ。質の高い情報を仕入れてくれるアンタのことは頼りにしてるんだからさ」
ゼキナは情報屋だけではなく、その伝手の広さを生かし便利屋的な仕事も行っている。命に関わるようなことであれば断ることもあれど、受けた仕事についての遂行率はリヴァイスが一定の信を置くほどの高さを持っている。
「そりゃあっしにも家族がいますからね、そうそう死ねませんさ。あとはお伝えしたい情報の裏が取れたんで、一杯やりながらどうですかね?」
「買ってきた日本酒を一本開ける。あと、七輪を前に使ってそっちの事務所に預けてただろ。炭もまだ余ってたはずだ。干物はあるから、あとはキノコやネギはないか?」
「へへっ、旦那は話が分かるっ。すぐに準備しまさぁ!」
リヴァイスが時折、急におじさんめいた行動を取ることにそろそろ慣れてきた感のある不知火である。路地裏で七輪を囲みながら、瓶ケースをひっくり返して座って呑む体験は初めてだったが、これはこれで面白いと思う程度の余裕が持てていた。
「こんな小さいフライパンも役に立つもんですなぁ……」
「炭に油や水分が落ちないから煙も出ないしな。干物は網で焼くけど、ネギとかキノコ類はこっちの方が便利だったりする。まあ形に拘るよりはとにかく食べられるのが第一だろ」
リヴァイスと不知火は交代で酒が入った紙コップ片手にトングを持って、焼けたつまみを各自の紙皿に分けていく。ゼキナはもっぱら飲み食い専任だが、がっつくことはなく、酒とツマミをゆったりと楽しんでいた。
「旦那とお連れさん、なんだか変わりましたな。より自然な感じになったっていうか」
「ん……これから長い付き合いになるが宜しくってことになったよ」
不知火は隣でリヴァイスの言葉に一つ頷くだけだ。ゼキナの問いかけに躊躇うことなく答えてくれることに心が温かくなる。それで幸せを感じるのだから、彼女にとっては十分な言葉だった。
「それはようござんした。では、そんなお二人につかんだ内容をお渡ししましょう」
ゼキナから手渡された報告書。その内容は二人の次の動きを即座に決めるほどのものだった。リヴァイスが不知火を救出することになった、ヨミハラに潜む人身売買組織の再暗躍、そして──。
「……俺が潰した連中の残党が再び蠢いてることと、この対魔忍一族の名前。裏が取れたんだな」
「へい。ヨミハラでまた派手に始めているようです。新たな出資先を確保したようで。そこで旦那が警戒している対魔忍の名字を持つ者が働いていると……潜入任務という線もありやすが、客からの聞き取り内容を見る限り、可能性は薄いかと」
不知火が声を発するのを押し止められたのは、リヴァイスの手が自分の手を強く握ってくれたからだ。なぜ、その組織の店で働くことになったのか。理由は分からずとも、最愛の娘が娼婦に身をやつしている……!
『ゆきかぜ、どうして……!』
『不知火、行こう。残党どもを潰す前に、まずは兎にも角にも娘さんをそこから連れ出す。対魔忍の任務であろうが関係ない。そうだよな?』
視界が暗転し思考がまとまらない中でも、ハッキリしているのはゆきかぜを自らが囚われていた組織から取り戻す。だからこそ、リヴァイスの言に迷わず首を縦に振っていた。
『リィズ、お願い。力を貸してっ』
『当たり前だ。不知火の娘だ、助ける以外の選択肢なんてあるか』
迷いのない強い気持ちが頭に直接伝わる。その力強さにどこか泣きそうになりながら、不知火は乱れていた心を強引に立て直す。支えるのだろう、寄りかかるために隣にいるわけではないのだからと。
『ありがとう、リィズ。それにゆきかぜだけじゃない。この子の名前までどうして……』
『まとめて助け出してから理由は聞けばいいさ。ただ、不知火の娘さん達がいるとなれば、建物ごとぶっ潰す強攻策というわけにはいかない。辛いだろうが、洗脳状態にあるかも含めて娘さんの状態確認からだ。すまないが、堪えてくれ』
不知火とて分かっている。苛烈で人の尊厳を奪い尽くす壮絶な調教は、容易くゆきかぜの理性を塗り潰し、自ら性奴隷であることを誓い、率先して組織の手先として動いている可能性を捨てるわけには行かないのだと。
『……ええ、そうね。その通りだわ』
念話を一度打ち切り、リヴァイスが短く瞑目し、眼を見開く。彼の正面に座るゼキナも隣に寄り添う不知火も、思わず身を正すほどの覇気が放たれていた。自分自身をしっかり持っていない者ならば、思わず頭を垂れてしまいそうになる。その覇気は繋がりを知る者ならば、彼の血縁上の父親をどこか想起させるものだった。
「ゼキナ、仕事を一つ追加だ」
「へい、承りやす」
「偽名でその店の予約をしてくれ。どこぞの魔族の放蕩息子が自分の娼婦と若き対魔忍達を抱き比べるために長時間貸し切りたい、とな。ああ、淫魔とのハーフという話は使って構わない」
「若い盛りっ放しのガキ……そんな風に伝えてよろしいので?」
「目的のためなら、安い誇りなど邪魔でしかない。侮ってもらうなら、なおさら動きやすい話じゃないか。資金はかかっても構わない。ただ、急いでくれ」
中肉中背の身体からは考えにくい、軽快な動きで立ち上がったゼキナはにかっと口角を上げて笑う。先程、垣間見た覇気はリヴァイスの身体からはもう霧散していたが、それなりに長い付き合いであるがゆえか、その指示に従い動くこと自体に利害以外の意義を感じ取っている部分がある。
「承知しやした。少し外しますが、酒は残しておいてくださいよ?」
「ああ。つまみを焼きながら待っているさ」
普段は飄々としてどこか天然な若者といった風情であるが、『魔界の踊り子』や『血の君主』が後見となる男である。ただの魔族がその庇護を受けられるわけもないのだから。
「失礼するわね、貴女が水城不知火? 私はメイア・ブラッドロード。リィズの姉みたいなものよ。ゼキナから今日は此方に宿を取ったと聞いてね、寄らせてもらったわ」
「こうして会うのは初めてね。私はナディア。えっと、一応育ての親になるのかな。ごめんなさいね、大事な仕事の前とは聞いたのだけど……」
そう、潜入の手配が整うまでの一両日程度、キングダムに留まることになった二人の元に、その後見魔族達が突然訪ねてくる出来事が起こるぐらいには。
「リィズは……ああ、なるほど。自分の内側へと集中しているのね」
「不知火さんの世界で『メイソー』だったかしら? あの子、前から日本の文化に妙に詳しいのよ」
客室に招き入れられた二人と不知火の先には座禅を組んだ格好のまま微動だにしないリィズの姿がある。不知火には夕食は不要と告げ、万全に力を引き出すために自分と向き合う作業をするが、明朝には戻るから周りのことは任せたと言い残し、既に数時間あの体勢のままである。
突然、客室を訪ねてきた女の二人組に、不知火はリィズをすぐに揺り起こそうとしたものの、ナディアの『リィズ、いるんでしょう? 開けて~』とどこか間延びした声に来客者を確認したところ、訪問者は彼の身内と言える二人だったのだ。
「あの子に本当に信じられているのね、貴女。なにかの術まで使って目と耳を殺して、完全に内側に集中しているわ。ひょっとしたら……触覚まで切っているわね、これは」
不知火の得意とする水遁の幻影陣、そのバリエーションの中の一つ。リヴァイスはそれを自分に使用し、一部の五感を遮断していた。その間、不知火が自分を守り、いざとなれば現実へすぐに連れ戻してくれる信頼があるからこそだ。
詫びの言葉と共にリヴァイスの肩にそっと触れたメイアは、彼の反応が全く返らないことに得心がいったとばかりに一つ小さく頷いてみせる。
「リィズは万全を期するための下準備だって、そう言っていたわ……」
「ねえ、不知火さん。ゼキナさんは目的は知らないって言っていたけど、リィズがここまで集中するって相当のことよ? 余程の難しい仕事か、あるいは絶対に失敗が許されない案件ぐらいのものだと思う」
「口惜しいけれど……不知火、貴女はリィズが選んだ眷属。長き時を共に歩むと決めた存在。言いたいことや聞きたいことはたくさんあるけれど、それは後よ。今、重要なのはリィズと貴女は何をしようとしているのかということ。さぁ、偽り無く答えなさい?」
ナディアは疑問を呈し、年端も行かない容姿であるのに、何百年と『血の君主』として君臨しているメイアの有無を言わさぬという魔力が目の前で膨れ上がっていく。
不知火はその力の強大さに身体が凍てつくような感覚を覚えながらも、同時に視界の隅で動く存在を確認し、慌てることなく自然体を装うことが出来ていた。
「ちょっと、メイア?」
「ナディア、止めないで。貴女だって気になっているはず……わぷっ」
「はい、そこまで。メイア姉さん、その物騒な魔力を抑えてくれよ?」
そう、瞑想を終えたリヴァイスが後ろから抱え込む形で、小柄なメイアを腕の中に包んでいた。漏れ出る魔力を気に留めずに、メイアの黄金色の長い髪を手で梳いていくと、あら不思議。手櫛が入るごとに魔力はみるみる小さくなっていき、メイアは自分から振り返りリヴァイスの胸に顔を埋めてされるがままになり始める。『ふわぁ……』と気の抜けた言葉や吐息が漏れ出しているし、メイアもメイアで自分から腕を回して抱きついているのはご愛嬌といったところだろうか。
「ただいま、不知火。それにナディア母……」
「ナディアって呼んでって、前に約束したはずよ?」
「長年の呼び方だからさ、なかなか抜けないんだよ。……ナディア、久しぶり。どうしたのさ、巡業の真っ最中だったはずじゃなかったっけ」
名前呼びを強要するあたり、ナディア側としては母親としての立場から既に変化を求めているようで、ナディア達に対するリヴァイスの目は節穴で情報屋の目の方が確かだということのようだった。
「中止したのよ、リィズが不知火さんを眷属化したって聞いて。呑気に踊っていられないわ。リィズの結論は尊重するけど、ちゃんと直接理由を聞きたいって思ったから」
話に聞いてはいたが、実際にこうして高位魔族であるナディアや、年端も行かない容姿であっても、何百年と血の君主として君臨しているメイア・ブラックロードに対して砕けた話し方をしているリヴァイスを前にすると、家族として過ごしていたのは本当だったのだという驚きが先に立つ。
「ああ、ちゃんと説明はするけどさ。ただ、明日大事なヤマが控えてるんだ。その後にしてくれないか」
「あ、それなんだけど……私達も手伝っちゃダメ、かな?」
「え?」
「リィズが内に篭もるぐらいの案件なんでしょ? だから……」
ナディアが意を決した様子で申し出た内容に、リヴァイスは不知火に一度目を向ける。首が縦に動くのを確認し、リヴァイスはナディアに説明を始めていく。腕の中でなぜか身悶えしていたメイアもピタリと動きが止まり──抱きついたままなのは変わりなかったが──リヴァイスの説明に耳を傾けていた。
「なるほど、不知火さんのお嬢さんとお友達を救出するために潜入するのね。自意識を保っていたらそのまま救出して、娼館ごと地ならしすると」
「保っていなくても意識を奪えるなら同じことね。連れ出してから考えればいいのだから。リィズ、お姉さんに任せておきなさいな」
物騒な発言を事も無げに口にするナディアに、リヴァイスの腕の中にすっぽり包まれたままでは威厳も何もないが、えらく得意げなメイア。鉄火場なら数え切れないほどに経験しているがゆえの余裕だった。
「しかし、客として行くのに付いてくるってどうするつもりなのさ、姉さん」
「そうね。ナディアのマネージャーみたいなことをする内に、男装は慣れっこになってしまったのだけど……せっかくだから、幻影の対魔忍改め、『幻影の魔族』としての力を見せてもらおうかしら? それとリィズ、情報屋にお盛んな魔族の若者と専用娼婦の組み合わせが二組で行く、と伝えて頂戴な?」
主人公の後見魔族が登場しました。
が、メイアの口調については自信がございませんのでご許しくだされ。
(ゆきかぜが)何でもしますから!