幻影の魔族 作:オーク初心者
若さくらイベ上級あと20周……なんだか精神修行している気になってくる。
イベかぜ当時は一人確保がやっとで……スキル書の確保は義務です、市民。次の市民はもっと上手くやるでしょう……
「なんだか楽しいわ……こほん、楽しいな、こういうのも!」
不知火の水遁による幻影効果は他人の認識に干渉する。自分よりも絶対的な強者にはその限りでは無いが、リヴァイスの眷属化を経て、その効果の範囲も干渉レベルも数段上のものへと進化していた。さらに、不知火の力を取り込んでいるリヴァイスが術の補助に回っており、どちらかが気を失っても幻影は維持されるという寸法である。
「あれが今日、あの二人を貸し切るっていう魔族の若造達か……?」
「あんだけいいオンナ連れてケツを撫で回しながら、男同士でも胸や尻を撫で合っていやがる。やべぇな、揃って両刀かよ……。あの金髪の男、普段はきっとオネエ言葉なんじゃねえか?」
その結果、潜入先の娼館の者達には男も女もどちらでもイケてしまうという男魔族二人組に映るようで、応対する職員からしてやけに腰が引けているような、臀部を無意識に守るような動きを見せている。
『すっごくカオスだなあ……アイツらが見えてる絵面を想像したくないぞ』
『同意するわ、リィズ。こちらに都合の良い幻想を見てもらってるけど、メイアさんが小柄な男性に見えている分、変わった嗜好を持っている人達が喜びそうな状況に映っているわね……』
なお、四名の間では互いは普段の姿に見えている。とはいえ、幻影が監視カメラ等の機械類まで誤魔化しは出来ないため、メイアは男装の麗人となっているし、不知火とナディアは背中が大きく開きスリットが深く入った丈が短めのノースリーブワンピースにニーハイブーツという分かりやすい出で立ちにファー付きのコートを羽織っていた。
その上で、リヴァイスとメイアがそれぞれ不知火とナディアの腰に手を回し、メイアがリヴァイスの腕に絡む姿勢で歩いているのだが、幻想の影響を受けている周りの者から見ると、どうもあまり想像したくない絵に見えているようだ。メイアは口調を変えているが、普段どおりの言葉遣いが見え隠れしているため、周りの幻影による誤解はより顕著になってしまっている。
「こっ、こちらのVIPプレイルームにご注文の二人を待たせておりますっ。今から半日の貸切でございますので、ルームサービスなどは室内の内線電話で……」
「ああ、キッチンはあると聞いているから、こちらで食材や調味料は持ち込んでいるよ。勝手にやらせてもらう」
ゼキナへの報酬も含めて、かなりの出費ではあったが、初訪問に関わらず別格の扱いである。また、ナディアやメイアが今回の一件に関わることで一緒に金銭面を負担してくれたため、実のところそこまで懐に寒波が吹いていることは無い。ただ、この案件が片付き次第、手稼ぎに出なければと考えるぐらいには重たい出費ではあった。
ただ今はこの扉の向こうにいる、不知火に深く関係する二人を保護するために状態の確認をするのが最優先。リヴァイス達は扉を開けて部屋の中へと入っていく──。
「ご主人様ぁ、ようこそいらっしゃいましたぁ♪ 元対魔忍で今は雌豚奴隷娼婦のゆきかぜで~す♪」
「お、同じく元対魔忍、奴隷娼婦の……あ、秋山凜子です。ほ、本日はよろしくお願い致します……」
部屋に入るや否や、目的の二人が対魔忍装束に身を包んだ姿で頭の後ろで両腕を組み、M字開脚の格好でリヴァイス達を出迎えた。ゆきかぜは完全に男に媚びる声色で瞳も潤んでおり、既に発情している様子だった。彼女の装束がレオタードタイプということもあり、局部の形がスーツ上からくっきり見て取れるほどに見事なM字開脚を披露している。
一方、凜子はいくらか正気を保っているのか、羞恥心に顔を赤くしながらの口上となっていた。本来の装束はボディスーツの彼女だが、局部にジッパーが付くように改造されており、そこを全開にした状態でのお出迎えを強要されていたため、局部を露出する格好を強いられている。
「……うわぁ」
メイアが思わず声を漏らすのも無理は無い。……これは酷い。まして、不知火の娘のゆきかぜは完全に洗脳まで完了しているのではないか。
だが、まずは部屋に監視カメラや盗聴器の類が無いか確認するのが先である。ある程度覚悟はしていたものの、少なからずショックを受けた不知火は迅速には動けない。その代わりではないが、ナディアが部屋の設備を見物するふりをしながら、ショーツの中に潜めていた小型の検知器を作動させて、手早くチェックを終えていく。
「とりあえず、その格好のままこちらが良いというまで動くなよ? しかし、まだ触られてもいないのに、もうレオタードやボディスーツの上からでもこんなに乳首尖らせて……随分と身体を弄られてるのかな?」
「あふぅ♪」
「あぁん♪」
時間稼ぎを兼ねてメイアが身体の状態を確認するように、ゆきかぜと凜子の肩口や乳房に指を這わせれば、さらにだらしなく口元を緩ませながら、二人の唇から容易く嬌声がこぼれだす。
「ふーん、いろいろ設備も揃っているし、躾もちゃんと出来てるみたい。これなら私達のご主人様を少しは満足させられるかもね」
ナディアがリヴァイスにしな垂れかかりながら、わざと軽薄そうな口調で吐き捨て、そのまま彼の耳元に唇を寄せた。
『大丈夫。VIPルームに仕掛けるほど愚かではないみたい』
ナディアの耳打ちに小さく息を吐きながら、リヴァイスは気付け代わりに不知火の肩を軽く叩いた。メイアにも頷いてみせて、本来の潜入目的を果たすために動き出す。
「呆けてる場合じゃないぞ、シーラ」
「ごめんなさい、リィズ。そうね、今は為すべきことを」
「ああ」
ゆきかぜと凜子は、身体改造についてはほぼ確実に、そして高確率で洗脳を受けている状態と推測される。まずは詳細の状態確認が第一だった。ゆえに、まだ不知火の無事は明かさずに、自分とナディアとメイアの幻影だけを解く。
「え、あれ?」
「男装した、女の子?」
「失礼ね、これでも数百年を生きている魔族よ。さて、体勢は崩していいわ。そして、スーツの貴女はファスナーを閉めて頂戴。その上で、とりあえずそちらのベッドにでも座りなさいな」
ゆきかぜと凜子が驚きから多少の理性を取り戻し、声に張りが戻るが、知らない相手であればそんな感じで言われるのはいつものこと。ただし、メイアは普段ならば子供扱いされたことに怒りを上げ、二人の首を掻っ切りかねない短気な性質をしているのだが……。
「姉さん、ありがと。抑えてくれて」
リヴァイスが近くにいれば別の話である。彼の前では出来るお姉さんでいたいメイアは自分の気質を少しずつ制御できるように変わってきていた。
「ふふん、私もいつまでも短慮な女王などと呼ばれるのは心外だもの。私はリィズのお姉さんなんだから」
なお、リヴァイスに頭を撫でられて胸を張る様子がそのまま背伸びしている子供に見えるというのは言わぬが花である。
「シーラ、リィズが調べを進める間にハーブティーでも淹れましょ。せっかく持ってきたのだから。メイアはリィズのフォローをお願いね」
まだ動揺が残る不知火の手を引き、ナディアは仕切りで区画分けされたキッチンへと移動していく。そして、リヴァイスとメイアは改めて、ベッドに腰を下ろした二人の前に移動した。
「いろいろ戸惑いや驚きもあると思うけれど、まずは説明を聞いて欲しい。その後で質問は受け付けるよ、カメラや盗聴器の類が無いのは確認できているしね。それと、説明を聞きながらでいいんだけど、二人とも俺の手を包むように持ってもらってもいいかな?」
困惑はあれど敵意も感じず、少なくとも半日間は彼の指示に従うように命令も受けている。火照り疼く身体に一つ息を吐いてから、ゆきかぜと凜子はリヴァイスの手を取っていく。
「ふわぁ……なに、とってもあったかい?」
「これは魔力か? しかし、こんな安らぐような力が……」
「魔力も術も使いようってのが信条でね。絶対的な力が無い者にとっちゃ、試せることは何でも試さないと生き残れもしないから。この力については近くにいい見本がいたからね」
ナディアの力を取り込んでいる彼は、魔力を癒しの力に使うための素養が根付いている。ただ、ナディアのように踊りにその力を込めるのではなく、気功のイメージで使う方が馴染みやすかったのだ。昨日のうちに自らの内側に潜り、使える力を見つめ直す工程を経ていることで、より効果を齎すのも早い。
とはいえ、一緒に踊ってくれないのかと彼女の悲しそうな顔を一度見てしまってからは、ペアで踊れる程度にはしっかり練習も続けてはいた。
「今は一時的に衝動を抑えるぐらいしか出来ないだろうけど、魔力を治療に転換できるとこういうことも出来るって話。さて、そのままで聞いていてね」
自己紹介、そして同行者の紹介。ただし、不知火については偽名を告げ、自らの眷属であることを伝えていく。二人の表情が驚きの連続で豊かに変わっていくことに、リヴァイスはこれならば間に合うという手応えを感じていた。
この間、メイアも黙ったまま、二人の頭や肩など色んな箇所に手を当てては何かを探ろうとしている。血液を自在に操る異能を持つ彼女は、服の上からであっても、他者の血液の流れを診るのはそう難しいことではなかった。
「貴方が、そうか貴方が、アンダーエデンを単騎で崩壊に追い込んだという──リヴァイス=グレイ。魔界の踊り子と血の女王の薫陶を受けた、若き魔族の実力者……」
「ねぇ、ねぇ、貴方は! 貴方はお母さんの居場所を知ってるんじゃないの!? アンダーエデンにお母さんが囚われている可能性が高いって聞いてから、それが崩壊した後、お母さんは未だ行方不明のままだって──!」
「落ち着いて、水城さん」
「私を好きにしてくれていいから! 肉体改造されて、男の人が近くに来ればすぐに発情しちゃう奴隷娼婦で、簡単に壊れなくなってるから、ねえ、何か知っていれば教え……あたっ!」
「落ち着いてって言ったよ? はい、もう一度手を持って。まだ収まってはないはずだ」
威力を弱めたデコピンで、身を思わず乗り出していたゆきかぜの動きが止まる。必死になった時の押しの強さが何とも不知火そっくりで、やはり母娘なのだと、リヴァイスは柔らかな笑みを浮かべる。その朗らかな笑みに、ゆきかぜと凜子はそれぞれ、想い人あるいは倒錯した感情を抱く実弟、達郎の笑顔を想起してしまった。
「あぁ……」
二人から一筋の涙がこぼれる。それは後悔の涙。そして──。
「辛い想いをしたね、よく頑張った。もう大丈夫だ、俺達が必ず助け出す」
安堵の涙へと変わる。涙を流す自分達の頭を胸の内に包み込むこの魔族の青年は、今も優しい力を自分達へと注いでくれている。
「うわぁぁあああああああああああああああ、辛かった、辛かったのぉ!」
「あぁぁぁぁ、もう駄目だと、どこまでも堕ちるしかないと、あぁぁぁぁ……!」
しばらく、二人はリヴァイスの胸を借りて、ただただ感情の高ぶるままに泣き続けた。その間も彼の力は二人の身体だけでなく、心に少しずつ力を与えていく。
「行方知れずのままのお母さんの消息をつかむために、残党達が再び娼館経営を始めたと聞いて、この任務に志願して……でも、全然お母さんの行方は分からないまま、身体だけが作り変えられて、そしてどんな男に抱かれても気持ち良くなって、すぐに何にも考えられなくなるようになっちゃって……。先輩まで巻き込んだのに、一日中おちんぽのことしか考えられなくなっていたのよぉ……!」
「ゆきかぜには平気だと言いながら、私も大差なくてな……犯されて、子宮にザーメンを注がれるためにどうすればいいのか、そんなことばかりを考える毎日になっていた……。ゆきかぜのことを心配する気持ちがどんどん薄れていって……」
「そうしなければ心が完全に壊れてしまう。それは自分の心を最後の一線で守るためだ。ほら、今はこうして他の事をちゃんと考えられる。ちゃんと互いを思えている。だから、大丈夫だ。時間はかかっても君達はまた元に戻れる。君達は家族みたいなものだろう?」
なぜだろう、疑いなく信じていいと思えて──。心が弱っていたから? 久方ぶりに欲しかった安らぎを感じることが出来ているから?
「家族は俺にとっても拠り所だからさ。他の家族が崩れていくのを見るのは、いい気分じゃないんだよ。崩れるべき家族なら別だけどね」
ああ、人でなくても、この魔族の男性は家族が大切で、家族を守るためならきっと自分の手を躊躇無く汚す。伝わってくる、家族という形に対する熱が。自分達と同じように。だから、出会って間もないのに、言葉に嘘が無いって信じられる。涙で瞼を晴らしながらも、顔を上げた二人は本当に久し振りに自然に笑顔が戻っていた。
「リィズがアンダーエデンを一度崩壊させたのは、私に手を出したからよ。私自身の強さへの過信や傲慢さを利用されて囚われ、感度が跳ね上がる媚薬を打たれて──。そこに悪鬼羅刹の修羅と化したリィズが、私をギリギリで救い出してくれたのよ……」
メイアは語る。そこから狂いそうになる自分が彼に抱かれ、一人の女になったのだと。リィズは知る由も無いが、義姉としてではなく、メイアは彼の女としてこれからの時を歩むと決め、いずれ彼の子を産むと決めていた。
「うわー、お兄さんが急に鬼畜外道に見えてきたよ? だって、ブラッドロードさんがお兄さんのモノを受け入れれるとなると……ないわー」
「ただ、ブラッドロード殿は既に一人の女性だった。容姿など関係なく、な。ふふ、人と違い、力のある魔族は複数の妻を持つのは別におかしいことではないと聞くしな」
幾分余裕が出てきたのか、二人の口調も普段の話し方に戻りつつある。この程度で勘気を被る男では無いと、相手を見る余力も出てきていた。
「俺はね、ある人の依頼を受けて、君達を連れ出すためにここに来た」
「もしかして、校長先生とか?」
「いや、ゆきかぜ。その線は薄いだろうさ。なんせ、接点が無い」
「紹介するよ。さぁ、二人とも前を向いて、心をしっかり持ってね?」
自分の位置を横へとずらし、リヴァイスはキッチンの方向を指し示す。ゆきかぜも凜子も自分の目を疑う。そこにいるのは紛れも無く、ずっと探し続けていた──。
「おかあ、さん?」
「不知火さん、なのか?」
ティーポットとカップが載ったトレイをナディアに預けて、幻影の効果を解いた不知火はゆっくりと二人の前へと歩み寄ってくる。既に瞳には涙があふれ、頬に一筋の線が出来ていたが、それでも不知火は微笑んでいた。
「ただいま、ゆきかぜ、凜子ちゃん。辛い思いをさせて、本当にごめんなさい」
真正面から数年分の想いを込めて、ぎゅうっと強く二人を抱き締める。その抱擁を行った不知火は震えていた。もう一度、こうして愛する娘と娘のように可愛がってきた子を抱き締められるとは、一年前にはもう諦めかけていた瞬間だ。
「お母さん、本当にお母さん、なの?」
「ええ、ゆきかぜ。五年も帰れなくて、ごめんね。お母さん、囚われてる間もずっとお父さんと貴女のことだけは忘れなかった。ああ、本当に大きくなって、もう立派な女の子ね……」
「不知火さん、無事だったの、ですか……!」
「アンダーエデンへの襲撃の際にリィズに救われて、でも、捕まっていた数年の間に負った後遺症が酷くて、日常生活がある程度問題なく送れるようになったのが、つい最近だったの……。ありがとう、ずっとゆきかぜの力になってくれていたのね」
「いえ、私は、私は貴女が無事で十分で、あぁぁ……」
「お母さん、お母さん、ずっと、ずっと会いたかった! お母さんっ!」
母と娘たちの抱擁はしばらくの間続き、リィズとナディア、メイアはハーブティーで喉を潤した後、キッチンへと入って行き、再会の時間を少しでも噛み締められるようにと気を回すのだった。
「それでね、訓練中にその子が……ん、あれ? なんだかいい匂い?」
ゆきかぜと凜子が過ごした五年間の話は尽きない。やっと会えた不知火は柔らかな微笑を浮かべたまま、ゆきかぜの話に耳を傾け相槌を打ち、その様子を隣で見ている凜子も想いが報われた喜びに満ちていた。
ただ、一時的にであれ身体の発情が落ち着き、精神状態が落ち着けば……鼻をくすぐる美味しそうな匂いに、久し振りに感じる空腹感。そう、食欲が戻ってきていたのだ。
「うむ、グレイ殿達の気配が薄くなったのはこちらへ気を使ってくれたのだろうが、なんともこれは……うむ、お腹にくるな」
「お、話もひと段落したかな? ちょうど出来上がったよ、飯食いながら話の続きといかないか?」
キッチンから顔を見せるリヴァイス達。その手には魚の味噌煮、野菜炒めなどの大皿料理やら汁物が入ったお鍋、そしてガラスボールに入った炊きたての白米などがある。
「相変わらずの手際よね。私はお米研いで、あとは殆ど見てるだけだったもの」
「私も火の加減を見ているのが殆どだったわ。電子レンジでご飯が炊けるなんて知らなかったもの。あと、温泉卵まで出来るなんてね」
最低でも三十分以上、可能なら一時間ほど水に漬ければ炊くのは炊飯器よりも早いし、十分美味しく出来る。その辺りのノウハウを教えたのは不知火だが、しっかりと生かす教え子に思わず嬉しくなってしまう。
「炊飯器が無くてもお米は食べたいからさ。不知火、お椀とか取皿、箸などを頼むよ。あと、小皿用に白和えも作ったんだけど、分けるところまではいってないんだ」
「分かったわ、リィズ。ゆきかぜ、凜子ちゃんも手伝ってちょうだいな」
リヴァイスと不知火の距離感が異様に近い気がすると、今更ながら違和感を抱くゆきかぜや凜子であったが、通常の思考が戻って間もないこともあり、まずは目の前の料理に舌鼓を打つことにするのであった。
くっ殺即堕ち感、待て次回!(やれんのか?やるしかねえダロォォオ!アクセルシンクロぉぉおお(ry