IS(インフィニット・ストラトス) 楽しく過ごしたい転生者 作:ナハト・リコリス
「くそが!くそがあ!!」
バイオネットの総帥《釈迦堂牙儖》は荒れていた。その周りには無数の人の形の一部をした《モノ》や大量の血ど臓物、阿鼻叫喚の地獄絵図を生み出していた。
ココはバイオネットの研究所の一角、しかし彼の意に反した研究をしていたのと、GGGの思わぬ行動が重なりふらりと現れ、出迎えた研究者を薙ぎ払うように血祭りにあげ、命乞いをしようとも意に介さずまるでゴミを掃除するかのように血祭りに上げていたが、怒りはおさまらずストレスは増していた。
当初の計画では、GGG機動部隊を二度とこの世界に帰って来れないように次元の狭間に入れ、その間に自分達の邪魔をする協力者、後見人的関係にあるサンジェルマンファウンデーションに真綿でじっくりと締め上げるように父親と共にGGG解散決議を再び行おうと目論んでいたのだ。
しかし、計画実行直前にGGG機動部隊は帰って来た。
おまけに行っていた世界が自分と同じ転生者で、アフリカのプラネットエナジー開放点と、新製品の先行試作品ガオガイゴーの発表を邪魔した《不動統夜のいる世界》で、更には向こうの世界で採用された第3世代型の訓練機用新型ISの設計図、2体の支援機の譲渡に加えて、織斑一夏の白式を改良し射撃兵装運用可能にされていたコトが彼の怒りに火を注いだのだ。
第3世代型の訓練用機と白式に改造に関しては帰って来た面々から、数日前に国連へ報告されたと父親から聞いたので間違いはない。
それにあのGGGが嘘の報告をするとは思えない、確実な情報から次世代型訓練機の運用はこの世界でも対応でき、こっち(バイオネット)でも改造等は比較的簡単に出来る。
エルデを通じてGGGが帰って来れた理由も聞いたが、すでにあの世界へ外部から干渉できないように特殊フィールドを展開したのは良かったものの、逆にこちらからの増援等も送れなくなってしまった。
GGG機動部隊が行った世界があの世界とは思わなかったし、何より原子レベルにまで分解しアレに組み込んだヘリオスの意思が干渉したコトとが伽藍の計画を潰したことも苛立ちを増させていた。
(何故だ、俺様の計画は全て完璧だったはずだ。何故こんな事態になった!!)
「おぉ、思い切り荒れているね」
「何のようだドライアス。貴様の戯言なぞ聞きたくもないぞ?」
あの世界から出られないはずのドライアスがいることに気づく、今回の特殊フィールドの展開にも少し関わっていたはずなのに関わらず、ここへコレが簡単には来られたのかが疑問を抱く伽藍が耳にしたのは、あの忌々しいGGGの人間を統夜のいる世界に送り込んだ張本人だとと、怒りを露わにしドライアスに襲い掛かったのだが・・・
「まったく下らないな、君は」
軽く手をかざした瞬間、地面へと叩きつけられるようにめり込む…常人なら圧殺もしくはソレすらも超えた高重力が伽藍の躰を捉えていたからだ。
「君は頭に血が上ると短気だね、知っているかな牙儖は短気は損気だ。少しは冷静になりたまえ?」
「ふざけるなよ、ドライアス。貴様との関係なんてものは、俺からすれば『関係ないだろうね。』……貴様…」
「確かに私は次元の狭間にあったGGGとゾンダーを一緒にあの世界に送ったのは事実だ。だがしかし、私は『何時の何処に』でるかまでは干渉してはいない。本来ならあの世界のどの時代で、どんな時間に行くかまではね。つまり、彼等があの世界に恐竜がいた時代や、悪ければあの世界の惑星が出来る前の時代、更にはあの統夜君すらいない未来へ行くとしても、一切関係の無い事だ(まぁ実際は少し時間の方面は弄ったが、あんなピンポイントは流石の《今の私》では無理だからね)」
「つまり何かテメェ、お前はあいつ等(GGG)をあの世界には誘導したが、あの世界の何処に行くのには関与していないって言うのか」
「当たり前だ。究極完全体とも言える大邪神の状態ならともかく、今の私は君との関係もあってもまだ8割弱だぞ?おまけに余計な存在は色々と私にとっても面倒だからね。特に君の敵対視しているGGGの技術は私としても鬼門に近いのだ。わざわざ自分から死ぬ真似はしないよ」
「………………なるほどね…わかったよドライアス」
…先ほどまでの怒りを露わにした態度がなりを潜めた伽藍。かわりに凍てつくような声と共に威圧感が満ちる…ドライアスの空間操作をまるで埃を払うように躰を撫で穏やかな笑みを浮かべ立ち上がった。
「はじめましてだね……《私の一人》が君に無礼を働いたようだ…」
「君は…」
「ああ、自己紹介がまだだったね……私が釈迦堂ガラン。本物のね…もう一人の私。まあ伽藍は短気でね、気に入らないことがあれば幼稚な行動を取るから困っていてね…GGGの技術に関しては君にとって鬼門と言っていたね。あの金属と命の宝石は厄介だ、でもねもう一人の私を自由にさせているのは理由があるんだ…君ならわかるかも知れないけどヒントをあげよう…《時間》……《命は有限》…」
笑みを浮かべ語るガランから、ドライアスは凄まじいまでの穏やかな口調から威圧感を肌で感じながらもわざと平然とした態度を取る…時間、命は有限…コレが何を意味するのか計りかねていた。
「さて、此方の動きを国連とシャッセールが嗅ぎつけたみたいだ……まったく《もう一人の私》には困ったものだ………ドライアス。ココを破棄するから出よう」
空間転位したガランとドライアスがいるのは、伽藍が暴れ回った研究施設の遙か上空…施設へ手をかざすと不可視のナニカが包み込んでいく。
幾重にも解読不能な文字が輪を作っていき内部にある施設が弾け消えた、いや時を巻き戻すかのように消える様をドライアスはみていた。
「ふう、こんなところかな…ドライアス、そろそろ私は消えるよ……《もう一人の私》と良き付き合いをしてくれるとうれしいよ。いつかまた会おう」
ソレを最後に姿を消し、ドライアスのみがその場に残された
ドライアス Sids
次元の狭間の中でドライアスは先程まであっていた牙儖との会話や思惑に少し飽きれていたりもした。
「(やれやれ、彼との付き合いは間違えたかもしれないな)」
牙儖があの場所にいる事を知ったのは偶然であり、同時にあの場所にいた存在とその近くにあった物を自分のいる世界の過去に送ったのだ。
無論それが今の自分にとっては後々最悪な事態を引き起こすものかもしれないが、自分からすればその程度の障害があったほうが面白い。
「牙儖、君は人の中にある《無数の闇の塊》なのだろう。だがしかし、私としてはいい加減に《人とのちゃんとした対話》もできない君との付き合いも飽きた。もう少しすれば私も完全に成れるが、それでは面白くないな」
ドライアス自身、牙儖の《不死の秘密》を見破れるほどには回復していた。そして同時にこの世界でいる時間も残り少ないと思ってきていた。
余りにも他の次元への干渉等もしたのが原因で、《今使用している肉体の寿命》が短くなり、新たに候補にしていた肉体に移しかえる時期になってきていたのだ。
だがしかし、新たな肉体の候補にしている『織斑春樹』の肉体は余りにも『脆弱』なのだ。
自分という存在が乗り移れば、多分数年程度しか生きられないほど、余りにも肉体的に脆弱なのだ。今使用している身体に関しては色々と使える面もあったのだが、それもこれまでなのだ。
同時にドライアスは牙儖のもう一つの人格《ガラン》にも気をつけるようにしていた。何しろ彼は今まで姿を見せなかったのもあるが、同時に自分相手に《まったく気付かせなかった、今の今まで》・・・
「(牙儖よりもガランのほうが分が悪いかもしれないが、だがしかし、彼も牙儖の一つだとしても、あの存在の本質は・・・)」
元の世界への移動しながらも、ドライアスは釈迦堂牙儖というバイオネットの総帥たる存在の《在り方》をドライアス自身は認識していた。
例えそれがどれだけ最低な存在であってもだ。
同時に肉体を移し変えなければいけない時期が最低だとも思っていた。何しろ織斑春樹は自分の歴代の中でも最弱の存在だったからだ。
「(彼が持っていた転生特典とやらも初見程度ならいいが、今では役に立たなさ過ぎる。それに肉体も精神も脆弱なせいでこれまでで一番の最低な時期だ。まぁ同時にそれが私にかせられた『運命』なのかもしれないな)」
悲観的な事実もあるが、同時に彼はそれを受け入れていた。何千年も生きてきて、『人間』という存在を知り、その中で生まれてしまったある《一つの思い》が彼をそうさせていた。
『今度生まれ変わりが出来るなら、人間になりたい。そしてその人生を謳歌してみたい』
大邪神と言われた存在が思ってしまったその思いは、後に叶えられる事になる。
彼自身の持っている『悪の美学』と、そして彼の持つ『神という存在としての意地』が、彼を邪神でありながら善神としての行動をさせるほどに・・・
そしてドライアスのこの思いこそが、GGGと不動統夜達と一緒にバイオネットを打ち砕くもう一つの『絶対勝利の鍵』だったのだ