※この作品はR-18です。

カルデアの主人   作:けっかくん

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アルトリアの回想

 満面の笑みを浮かべながら、私はカルデアの通路で直立している。恥ずかしいことに、下半身には何も着けていない。それでいて尚気をつけの姿勢を保ったまま、かれこれ半日以上そこにいる。痴女そのものではないかと罵倒を受けても何ら言い逃れできない状態ではあるのだが、したくてしているワケではないと固く弁解させてもらう。そこだけは譲れない。

 話はつい先日に遡る。私がおまんこ丸出しでバカみたいな笑顔のまま廊下に突っ立っている理由を説明するのに、何故こんな時間をさかのぼらなければならないのか、自分で言っていても信じられないくらいおかしな話なのだが、しかしそれが現実である。私の生前の祖国――蛮族に侵略されたブリテンの末路よりも、ある意味では凄惨極まりない現実ではあるのだが、いくら逃避したところで、行き着くところは袋小路。問題は何も解決しない。未だ思考能力を奪われていない私は、どうにかこの抜き差しならない状況を打開できないものかと考える。

 滑稽な程に満面の笑みを浮かべながら。

 

 

 

「皆さんこんにちは。えー、私のことは、そうですね、主人……カルデアの主人とでも呼んでください。そう、私が主人で皆さんは玩具です。今から貴女がたは私の玩具になりますので。これから良い関係を築けていければ幸いです」

 白い背広を着た中肉中背の男。顔はよく思い出せない。一日一度は顔を会わせている筈なのに、彼の顔を思い出すことはできなかった。頭の中に靄がかかったかのように記憶が引き出せないでいる。

 思い出せるのは、その時集まっていたサーヴァントの一人である私の不肖の息子であるモードレッドが、「ふざけたこと言ってんじゃねえぞ!」と啖呵を切って剣を展開したものの、「その剣をお尻に刺して猿の真似をしなさい」という背広の男の言葉を聞いて、一切躊躇わずにホットパンツを脱ぐと、可愛らしいお尻に剣の柄の部分を思いっきりぶっ刺して「ウキィ! ウキィ!」と奇声を上げながら司令室の中を獣の様に飛び回り始めた光景だった。

 目の前で何が起こっているのか、咄嗟には理解が追いつかなかった。激高して背広の男に斬りかかるものとばかり思っていたモードレッドが、よほどの馬鹿でもやらないような奇行を始めた。その表情には一切の恥じらいが無く、本当に猿の真似を楽しんでいる様に見えた。背広の男が催眠・暗示系の魔術を使ったのだと推測できた頃には、私は剣を投げ捨てて武装を解き、気をつけの姿勢に縛りつけられていた。

「な……!」

 あり得ない。

 サーヴァントである私たちをここまで一瞬で、ここまで完璧に支配する魔術なんて――

「貴様一体何者だ!」

 私は叫んだ。背広の男は私を見ると、口を開いて、何かを私に言った。

 次に意識が戻った時、私は目の前に突き出されたモードレッドのお尻に刺さっている剣を両手で持って、大鍋に入った混ぜ棒か何かの様に勢いよくかき混ぜていた。

「父上ぇ……、もうやめてくれぇ……」と、弱弱しい声で懇願するモードレッドの声で私は我に返る。その時、私は狂気的な笑みを浮かべていた。はっとなって剣から手を離す。彼女の魔剣はカランと音を立てて床に転がった。

 そこで全て思い出す――自分が何をしていたのかを。

 背広の男が「彼女のお尻を掻き混ぜなさい」と私に言ったのだ。私は嬉々として命令に従った。命令されていなくてもやっただろうと思われる程、モードレッドのお尻を掻き混ぜた。刺さっている剣のブレード部分を両手で掴み、「やめて、やめてくれ父上!」と叫びながら尻をこちらに突き出すモードレッドの青褪めた顔を見て、かつてないほどの興奮を覚えた。彼女を虐めてやりたい、彼女を滅茶苦茶にしてやりたいと心の底から熱望した。倫理観も常識も、全部どうでもよくなっていた。獣の様な衝動に突き動かされるまま、私は剣を荒っぽく振り回していた。

「す、すみません……」

 尻から剣を抜かれたモードレッドは、そのまま前のめりに倒れた。「うう、ううう……」と啜り泣きをする彼女の姿を見て、あろうことか私は下劣な感情に囚われた。股間が熱くなった。心拍数が上がった。おそらくあの男によっておかしな性癖を植え付けられていたのだと思うが、当時の私にそこまで考えられる余裕は無かった。

「アルトリア・ペンドラゴン。今の自分の立場と気持ちを言葉にしなさい」

「はい! 私アルトリア・ペンドラゴンは、カルデアに招かれた人類救済の任を負う英霊の身でありながら! いとも簡単に支配者様のコントロール下に置かれるという醜態を晒し! 息子であるモードレッドの尻を弄れという命令に嬉々として従い! 挙句その行為に性的興奮を覚え! 今もおまんこをきゅんきゅんさせております!」

 背広の男の言葉を理解するよりも早く私は命令に従っていた。口を動かしながら、元々赤くなりかけていた顔を真っ赤に染める。でも口は止まってくれない。私の言う通り、私の身体は完全に背広の男の制御下に置かれていた。

 恥ずかしい。

「よろしい。ではアルトリア、周りを見てみなさい」

 そう言われて私が真っ先に見たのは倒れ伏したモードレッドだった。彼女は化物を見るような怯えきった眼で私を見つめていた。「違う、違うんだモードレッド――」彼女の目は変わらなかった。もっと弁解したかったが、命令は『周りを見ろ』なのでモードレッド以外にも目を向けなければいけない。

 右隣にはアタランテがいた。彼女は全裸だった。屈辱的な赤い首輪だけがつけられていた。「わぅん! わおぉん!」と犬の様な雄叫びを上げながら、足をM字に開脚してひたすら股間を弄っていた。発情した雌犬のようだった。

 左隣にはメディアがいた。彼女も全裸だった。笑顔を浮かべ、「いっちにっ! いっちにっ!」とかけ声を出しながらその場で行進を続けていた。楽しくて仕方がなさそうだった。

 すぐ後ろにはスカサハがいた。当然服なんか着ていない。彼女は無言無表情で、親指と中指を使ってふにふにと自身の乳をリズミカルに揉んでいた。リズムにあわせて左右の膝を交互に曲げるのが余計に滑稽だった。

 その奥にはペンテシレイアがいた。彼女も全裸。脚を広げて座っていて、舌を出して俯いている。「お豆、お豆ぇ~。何でお豆さん食べられないの~」と、自分のクリトリスを見ながら泣きそうな顔で嘆いていた。涙と一緒によだれが垂れていた。

 その隣には私のオルタがいた。彼女は服を着ていた。しゃがんでいて、「ふんっ!」と表情が力んでいた。大便をしているのだとわかった。しばらくすると、「パンパカパーン! うんち出たー! オルタちゃんうんち出たよー!」と叫び、しゃがんだ体勢からカエルのように飛び跳ね、その後も「ぼよよーん! ぼよよーん!」と叫びながら気をつけの姿勢で跳ねていた。

 更に後方。女性サーヴァント達がバンザイの姿勢で立っていた。余裕そうな顔をしている者は一人もいなかった。彼女達の絶望の表情を私が眺めている間に、男がその中の一人――鈴鹿御前の名前を呼び、「裸でダンシングフラワー」とだけ言う。

「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ! やめてやめてやめてやめてやめろよおっ!」

 男が指を鳴らした瞬間、鈴鹿御前は急に黙ると、荒っぽく服を脱ぎ出す。「ちゃんちゃんちゃ~んちゃらら~ん」と適当なメロディを口ずさみながら、身体全身を波打たせて踊り始めた。

「アルトリア」

 男が私の名を呼んだ。

 私は彼をきっと睨みつける。抵抗すべく体に力を込めるが、動くことはできない。絶望が私にずしんとのしかかっていた。

「怒った顔も可愛いですね」

 男は笑った。私は無言を貫いた。

「皆、とんでもない醜態を晒していますが、この中で一番やりたくないのはどれですか?」

「うんち飛び跳ね報告です」

 即答していた。そんなのどれも嫌で、一番なんて決められるわけないと思ったが、私の深層意識はちゃんと順位をつけていたらしい。

 自分のオルタが晒していた芸、あれは別格だ。自分のオルタがやっていたから、というのもあるのだろう。あれがダントツだった。

 ――まさか、あれをやらされるのか。

 男の口が開く。やめろ、やめてくれ。命令するな! 私が、私が私でなくなってしまう——

「じゃあやってください」

「はい!」

 うんちだ。うんちしなくちゃ。しゃがんでうんち。うんちしたいうんちしたいうんちしたい。便意はないけどうんちうんち! もっとりきまなくちゃ! りきんで私! 早くうんちして、はやく報告したい! ああ楽しみだなあ! 報告のジャンプ! パンツにたまったうんちがべちゃって潰れるんだろうなあ! なんて素敵なんだろう!

「父上……そんな……」

「「モードレッド、貴女は裸でうんちしてくれますか?」

「はい!」

 その後私たち三人は、お尻にうんちをつけたまま、肩を組んでカルデア内を一緒に跳ね回るという醜態を晒した。お尻が綺麗になったのはその後、三人でお互いのうんちカスを舐め合ったから。下を履く暇も無く「笑顔でそこに立ってて」という命令を下された私は、脳内のみ正常に戻され今に至る。

 モードレッドとオルタの行方は知らない。廊下に立ち続ける私の視界には、あの後一回も入っていない。おそらくはどこかで私と同じような、私よりもひどい扱いを受けているのだろう。

 私は笑顔のまま涙を流した。

 

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