カルデアの主人 作:けっかくん
まあ細かいことは気にしないでいこう。
下半身裸のまま満面の笑みを浮かべて直立不動で廊下に立っているアルトリアの前を通り過ぎる時、レオナルド・ダ・ヴィンチは深く――とても深くため息をついた。
アルトリアを助けることは禁止されている。
『カルデアにいる者達が一切の尊厳無き奴隷となった象徴』とあの男は言っていた。彼に逆らうのは不可能。みじめなアルトリアに声をかけることも、立ち止まることすらもダ・ヴィンチには許されていなかった。
何とかしないといけない。
ダ・ヴィンチは歩むスピードを上げる。目的地へ急ぐためであったが、それ以外の意味も隠されていた。
「やはりマインドコントロールの魔術によるものだと考えるべきでしょう」
数分後。
ダ・ヴィンチはエレナ・ブラヴァツキーの部屋で彼女と難しい顔を突き合わせていた。
話題は無論、あの男についてである。
「しかし素人相手ならともかく、私たちサーヴァントにまで効果を発揮する洗脳魔術なんてあると思うかい?」
まともに反抗しても勝ち目がない。であるならばまず、あの男が自分達をどうやって操っているのかを探り、かけられた何かしらの「術」を解除しようと思い、同じ魔術の専門家であるエレナのもとを訪れたのだった。
「正攻法でサーヴァントの霊核を汚すのは難しいでしょうけど、でも私たちに絶大な命令権を発動させる術式があるじゃない」
「令呪、か……」
であるならばあの男、令呪システムを利用してカルデアのサーヴァント達を隷下に置いているのだろうか。言われてみればそれしかないように思えるが、しかし一口に「令呪を利用する」と言ってもどんな方法なのか。
「それは私にもまだ推測がついていないのだけれど……」
「うーん……」
行き詰まる二人。重く沈んだ雰囲気が部屋に漂う。
「そもそも、男性サーヴァント達はどこへ行ったんだ?」
別の切り口から攻めてみようと、ダ・ヴィンチが新しい疑問を口にする。
「ほぼ全ての男性職員、男性サーヴァントがカルデアから消えている。あの男の目的が性的なものだからっていうのはわかるけど、一体いつ、どうやってカルデアから消したんだろう?」
「そうね、それは確かに謎だわ――あの男が私たちの前に初めて姿を見せた時、既に男の人達は消えていたように思うのだけれど」
「そう言われてみればそうだった……。それにしても困ってしまうよ。男性があの男以外一人もいないってことは、私たちがお仕えするべきおちんぽ様がたった一つしかないってことじゃないか。これは何よりも憂慮すべき事態だ」
「あら? アストルフォ君にもデオン君にも、おちんぽ様は生えていらっしゃるじゃない」
「あんな雌ちんぽなんか駄目さ。金玉を拘束されてえんえん泣いているだけじゃないか。とてもおちんぽ様とは呼べないね」
「確かにそうかもしれないわね。共同の休憩スペースで裸に剥かれて、ぎりぎりつま先がつくかつかないかの位置でキンタマ錠から伸びた鎖を天井の滑車に通されて手錠に縛られたまま、『助けて~』って泣いてるあの二人じゃ、情けなさ過ぎておまんこも全く濡れないものね」
「つま先立ちに腕を真上にピンと伸ばした格好がまぬけ過ぎるからねえ。見たことあるかいエレナ。天井の滑車、実はたまに左右に動くんだよ。そのたびに悲鳴をあげながらつま先でピョンピョン跳ねる二人の姿といったら滑稽でね」
「へえ。それは笑えそうね。今度いっしょに観にいきましょうか」
「いや本当……ふっ、性転換しておいてよかったと心底思ったね」
「でもあなただって、ご主人様の気分次第でイチモツを生やすこともあるのでしょう?」
「ああ勿論さ。まだ経験は無いけれど、私がふたなりになったあかつきには、アストルフォ君たちの横にならんでひいひい言う役目を担うと思うよ。その時は是非とも正気の私を嗤いにきてくれたまえ」
「ふふふ、良くってよ――ああ、そうだ! この前、例によってご主人様の支配からどう逃れるか考えようとして思考を『いかに自分を無様に演出するか考える』ことにすり替えられた時、アストルフォ君たちのおちんぽ拘束を女性にも適用できないかって思って、ふたなり化の魔法薬を調合したの! ねえ一緒に使ってみない?」
「それは良いアイデアだ。特に、こんなところでこそこそとご主人様打倒の話し合いをしようとしている私と君には丁度いい罰に思えるよ」
「そうね。既に今後一週間の衣服着用禁止令と二足歩行禁止令、常時発情令が出ているけれど、それだけじゃご主人様への反抗に対する罰としては軽すぎるものね。今日から一週間、いえ無期限で、休憩スペースで正気に戻って醜態を晒しましょう」
「最高だ! じゃあさっそく服を脱いで四つん這いになろう。それで休憩スペースまで行くんだ」
「待って、出されているのは二足歩行禁止令でしょう? だったら四つん這いじゃなくて、ブリッジの姿勢のまま移動すれば更に無様になるんじゃないかしら」
「天才は君にこそ相応しい称号なんじゃないかと思えてきたよ。そのトチ狂った発想は一体どこから出てくるんだい?」
「さあ。私に聞かれてもわからないわよ」
ダ・ヴィンチとエレナは興奮冷めやらぬ調子で服のボタンに手をかける。またたく間に全裸になった二人は、床に一度仰向けに寝っ転がると、手足を張ってブリッジの姿勢をとった。『常時発情令』なる罰の効果か、二人の陰部からは異常な量の液体が滴っていた。
アストルフォの瞳から光が失われた。
元気の塊のような彼がここまで消耗している姿は見るに堪えない。最後に彼の笑顔を見たのはいつだろう。輝く太陽のような眩しさがあった――とは思うのだけど、記憶の中ですら朧気になってしまっている。虚ろな顔と、涙に濡れた顔しか最近は見ていない。
かくいう私――シュヴァリエ・デオンも酷い有様だ。裸に剥かれ――その、……キンタマを、この忌々しい鎖につながれてからというもの、地獄のような日々を過ごしている。上にあげている腕も、つま先立ちもいい加減疲れた。魔力を、疲労が取れないギリギリの量で断続的に供給され続けているため、肉体の限界はいつまで経ってもやってこない。自殺はもとより、気を失うこと、発狂すること、現実逃避、痛みに慣れること、全て『禁止』されているらしく、逃げ場なんてどこにもなかった。
手錠とキンタマ袋を根本できつく縛る錠は長いチェーンで繋がれていて、私たちの頭上の滑車に通されている。このチェーンの長さが絶妙で、私たちが滑車の真下に立って、腕を思いっきりピンとあげ、つま先立ちをして距離を稼がないと届かない。少しでも滑車の真下からずれたり、腕を降ろしたり、つま先立ちをやめてかかとを床につけたりすると、もう既にだいぶきつい状態のキンタマ袋がぐいっと更に引っ張りあげられてしまう。痛覚の鋭敏化、『痛みの我慢』の禁止を言い渡されている私とアストルフォにとって、キンタマのひっぱりは死よりも恐ろしく、私たち二人は必死になってこの姿勢を維持し続けようとしている。それでもたまに、耐え切れなくなってかかとを下げたり、腕をちょっとおろしてしまったりする時があって、その時はもう獣のような悲鳴をあげて泣きわめく。アストルフォも――そして私も。
更に、ただつま先立ちの姿勢で耐えていればいいという話でもないんだ。ランダムで発生する「イベント」に、私とアストルフォは怯えさせられている。
ギギ……。
来た。
金属が擦れ合う音だ。アストルフォにも聞こえたらしい。それまで下を向いて動かなかった彼はピクリと反応する。
「嫌だ!」
アストルフォが叫ぶ。恐怖に支配された顔をしていた。相手は装置――それが完全に無駄な頼みであるのなんて百も承知、でも叫ばずにはいられない……そんな本能からの絶叫を、今日もまたアストルフォが発する。
「もうやめてくれよ! どんなことでもやるから! 裸踊りだってアナルセックスだってなんだってする! だからもうこの鎖を解いてください! お願いします! お願いします!」
アストルフォの悲痛な叫びを完膚なきまでに無視し、場違いに景気の良い音楽がかかる。『ラジオ体操第一ー』と、私たちにとっては死神の宣告よりも重く不快な音声が流れ、頭上の滑車が左右にズレ始め――
「うううううぐぅ、うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!」
音楽は止まらない。
膝を曲げるほどの余裕なんて無い。足の先の、指を一センチ程度上下させられるか否か。発狂を禁止されたまま、気の狂いそうな激痛に襲われながら、私とアストルフォは左右30センチの距離をちょこちょこ歩きで往復する。
滝のように流れる涙と、それでも乾くほど見開かれる眼球。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!!」
もがくのは頭部のみ。足の先から手の先まで、全てこの音楽に支配されている。
滑車は音楽が止まるまで動き続ける。私とアストルフォは狂えない苦しみの中でひたすらにその時を待つ。
体感時間としては一時間以上経ったけれど、実際は五分もなかったのだろう。私もアストルフォも、ぜえぜえと荒い息を吐いていた。
「相変わらず滑稽ですねえあなた達は」
と、ここでようやく私たちに注がれる視線に気づく。私たちの絶叫はかなり遠くまで聞こえるらしく、「イベント」後はいつも女性サーヴァントのギャラリーができている。だからといって同情的な者は一人もいない。手が空いていて私たちの悲鳴を聞いたサーヴァントは、この休憩スペースに来て私たちを嘲笑しなければならない『ルール』が存在するらしく、私たちに刺さる視線は全て私たちを見下し、馬鹿にするものだった。
頬が赤くなるのが自分でもわかる。
「メスの癖にそんなものぶら下げているのがいけないんですよ」
冷笑を帯びた声でそう言ったのはメディア・リリィ。
「それにしても馬鹿みたいな恰好だな。なんだ? 勃起したちんこを身体全身で表現してんのか?」
カラカラと笑いながら荊軻が言う。
「おちんちんがついていても我らがご主人様とは雲泥の差ですわね。あなた達には、こうして私たちを笑わせる以外の存在意義が見当たらないんですもの」
気取って玉藻の前が言う。その横では、ジャンヌ・ダルクが声を殺して笑い転げていた。
反論することは許されていない。私たちはあの男の奴隷となった女性サーヴァント達よりも更に下。女性サーヴァント達の玩具としての身分を与えられているのだ。
アストルフォは既に下を向いていた。私も彼に倣おうとした時、新たにこの部屋へ足を踏み入れる影を認めた。
マリーだった。
マリーは最初驚いたように口元に手をあてた。次いで私とアストルフォ、そして女性サーヴァント達を順々に見遣る。口元を覆っていた右手をゆっくりと下におろし、唇の形を変える。
「…………ふっ」
と。
彼女は嗤った。
決して大きな声ではない、王族らしい上品な仕草で彼女は嗤った。『鼻で笑った』という表現が適切だろうか……、そうして彼女は帰っていった……。
こちらを振り返ることなどなかった。
「…………」
……あはは、……。
……おかしいな。
希望なんて、とっくに捨てた筈なのに……。
「勃起しなさい」
ジャンヌがそう言った瞬間、私とアストルフォのちんちんは鋼鉄のように屹立した。
女性サーヴァントの命令は絶対。これは運動神経以外にも適応される。
「最大でそれですか。情けないですね。デオンさんに至っては皮も剥けていないなんて……私のクリトリスの方が立派なんじゃないですか? 男としてどうなんですかね」
私もアストルフォも何も言わない。例え反論の自由があったとしても、私もアストルフォも何も言葉を発しなかっただろう。
何を言っても惨めだ。
「さて……ご主人様から聞いていますよ。あなた達、誰かに勃起したおちんぽを掴まれると感情を抑えられなくなって子供のようにわんわん泣いて、一分以上その状態が続くとピューって射精してしまう『仕様』になっているそうじゃないですか。昨日もジャックとアビーに、その大事な大事なつまようじを握られて上も下も大泣きしたとか。ここまで来たのですから、是非ともその光景を一度お目にかかりたいものです――が」
集まった女性サーヴァント達がくすくすと笑い合っている。何かを企んでいるのは明白だったが、私たちにはどうしようもないことだし、どうでもいいことである――る、るる、るっ。
『精神的防壁の成立を感知』
『除去開始――完了』
……駄目だ。
またリセットされた。
「ご主人様が教えてくれたんですよ。『デオンとアストルフォのギャン泣き射精を見るのに、わざわざ人の手で握り続ける必要はない』と」
とてもじゃないが聖女には見えない笑顔――かといってあの竜の魔女には絶対につくれない表情のまま、ジャンヌは後ろ手に持っていた物を私とアストルフォに見せつける。
「ジャジャーン! オナホとティッシュペーパーです。これで包んでも果たして効果はあるのでしょうか!? 早速実験してみましょう!」
「イエーイ!」
ジャンヌはまずアストルフォに近づき、そのちんけな存在感を示している彼のちんちんにオナホを乱暴に嵌める。するとアストルフォは堰を切ったように「うわああああああああああああん!」と泣き始めた。「もうこんなのいやだよおおおおお! だれかたすけてえええええええええ! これほどいてええええええええ! ちんちんいたいよおおおおおおお!」
「バーカ、痛いのはちんちんじゃなくてキンタマだろ」
荊軻がヤジる。女性サーヴァント達の間でまたどっと笑いが起こった。沈黙を保っているのは私だけだが、それもあと少しで終わる。
「オナホは効果がありましたか。ではティッシュはどうでしょう? デオン君? おちんぽを前に突き出してください」
キンタマが引き千切れそうになるのも無視して、私の身体はジャンヌの命令に忠実に動く。痛みで叫びそうになるけど「うるさいので悲鳴はあげないでください」という命令があったので私は無言のまま痛みに耐える。精一杯身体を弓ぞりにしてジャンヌの目の前にちんちんを捧げる。「まだ遠いですよ? ほら、もっと身体を反らせて。真面目にやってください」ジャンヌはティッシュをふんわり握り、トンネルをつくって私のちんちんを待っている。私の身体は全霊を以て私の精神を絶望の淵に叩きこもうとしていた。
もう嫌だ。
痛くて恥ずかしくて、重く暗い何かが私の心を埋めるんだ。
「もうっ、駄目な短小メスちんぽですね。えいっ」
いい加減鋭敏になっていた私のちんちんを何かが包み込む感覚が脳に走る。その途端、これまで歯を食いしばって耐えてきた感情が決壊して私の理性を呑み込む。我慢しなくちゃ、ここから更に醜態を晒すなんてイヤダって必死で思うのだけれど、そんなの無駄な足掻きで、もう、うう、ううううううううあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――!!!!!
「まりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!! みすてないでおくれえええええええええええええええええええええええええ!!」
涙、鼻水、汗、その他あらゆる液体を身体から噴き出しながら、私は抑えのきかなくなった思いを吐露する。「あっはっはっはっはっは! 情けなっ! 『マリー!』だって! 史上最も情けない告白だわこれ!」「『見捨てないでおくれー!』って! あなた恥ずかしくないのですか?」「勘違いしちゃったんでちゅか? マリーのおててとティッシュを間違えちゃったんでちゅよねえ?」
「まりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
死にたい。
頼むから殺してくれ。
「あっ、あっ、あっあっあっあっあっあっ」
アストルフォが小刻みに腰を振り始めた。本来ならばそれだけでキンタマに激痛が走る筈だが、今だけは痛みより快感が勝って腰が動く。アストルフォだけじゃない。すぐに私も、彼と同じ兆候が表れた。
「あっ、ああ、ああああああ……!」
「あ、とうとうフィニッシュか」
「とっても早いですね。たった一分で絶頂ですか」
「ねえデオンさん、射精する時『マリーたん大好き♡』って言ってくださいよ。馬鹿っぽく裏声でお願いします」
「おい、じゃあアストルフォはどうするんだよ」
「『デオンちゃん大好き♡』でいいんじゃないですか?」
「ハハハ! そいつはいいな。底辺のラブコメとかどーでも良すぎて笑える」
「じゃあお二方、それでよろしくお願いしますね?」
来る……、来る、来る――!
何もわからない。
その瞬間だけ、私はちんちんのことしか考えられなくなる。死んだ方がましなこの忌むべき拘束具も、まぬけな格好も、痛みも、屈辱的な命令も、女の子たちの馬鹿にした視線も――そして私の脳裏に焼き付いたマリーのあの表情も、その一瞬だけは快感を倍加させる燃料になる。
そして――
「はあ……はあ、はあ、はあっ、はあ――!? デオンちゃん大好きいいいいいいいいいいいいいいっ♡」
「マリーたん大好きいいいいいいいいいいいいいっ♡」
びゅるるっ。
私のちんちんを覆っていたティッシュが、勢いよく射出された精液に押されて飛んでいった。
その後、ドクンドクンと快感の波に襲われ、でろでろと残り汁を垂れ流す。
「はいよくできましたー。クソ雑魚ちんこクン」
……。
燃えるような興奮の後に残されたのは、『自分はなんてことをしたんだろう』という悔悟の思い。射精の瞬間に妄想した光景を思い返し、罪悪感がじんわりと胸に広がってゆく……申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
その、……射精の瞬間、私の頭にいたのは、実はマリーじゃなかったんだ。彼女のことは大好きだし敬愛しているけれど、そこにあまり恋愛感情は無くて。
私はあの男に「設定」を追加されていて、それは、その――
「デオン君?」
ジャンヌが悪魔の笑みをたたえたまま、私の名前を呼ぶ。
やめろ。
「白いおしっこぴゅーってした時、誰のことを思いましたか?」
言わせるな。
それだけはやめてくれ。
「……私が」
待て。言うな。止まれ。止まれ! 止まってくれ――
「白いおしっこぴゅーってした時……私は――」
「待ってくださいデオンさん。まだ言わないでください」
「なんだメディア。興が醒めちまう。さっさとこいつに『マリーたんです!』って宣言させようじゃないか」
「違いますよ荊軻さん。ジャンヌさんはそんな程度の屈辱を味わわせるために聞いたんじゃありませんよ。いいこと思いついたんです――デオンさん。私がこれからデオンさんのお射精妄想パートナーの名前を予想するので、もしそれが当たっていたら、その人物に力の限り大声で愛の告白をしながらもう一度射精してください」
「え――……」
そんな。
「ナイスアイデアですメディア・リリィ!」
そんな仕打ち、そんな、そんな……。そんなの。
ああ……。
「えー、ではいきますよ? あなたが今妄想したのはマリーさんではなく、アストルフォ君です!」
終わった。
私の全てが終わった。
既に終わり尽くしたと思っていたけど、さらに終わりの終わりが訪れた。
「え……」と、彼は私とメディア・リリィ達を交互に見比べる。驚愕と困惑が入り混じったその表情は、急激に私の身体を巡る快感の波を更に大きく揺らし――
「アストルフォちゃん大好きいぃっ♡!!!!」
再び射出された精液は、天井まで飛んだ。
うわ……。こいつやべえな。