カルデアの主人 作:けっかくん
私があの男から受けた屈辱の数々をここに記す。いや、私は絶対に記したくないし、敢えて思い返したくもないのだが、『これまでの出来事をまとめた動画を正座しながら見返してその感想文を書きなさい』と言われたので、仕方なくこうやって筆をとっている。
最初の恥はあの男がカルデアにやってきた時だった。私はモードレッド、アルトリア、アタランテの次にあの男に指名され、『自分の股にあるマメを食べろ』という命令をくだされた。どこから撮っていたのか、当時の映像が残っていた。映像の中の私は全裸で地べたに座っていて、「お豆、お豆ぇ~。何でお豆さん食べられないの~」と情けない声をあげながらひたすら舌をのばして自分の股についた海綿体――クリトリスを舐めとろうとしていた。あの時の感想としては、自分のあれが絶品の料理に見えて、本当に美味しそうで、食べたくて食べたくて仕方なかった。何でどうやっても届かないのか、もどかしくてしょうがなかった。手でもぎとるなんて発想は、あの時の私には思い浮かばなかった。おそらくあの男が何かやっていたのだろうが、もぎ取っていたらと思うと今も股間に寒気が走る。
その後――アルトリアやモードレッドが飛び跳ねながら去っていった後、私たちは一斉に自慰を……オナニーを始めた。一切の理性を飛ばされて、獣のように、聖女も天才も剣聖も、ただの馬鹿なメスと化して必死に股間を弄った。時間にして一時間ほどだろうか。とにかくエッチな気持ちが抑えられなかった。目の前に突っ立っている元凶の男をどうこうするよりも、自分のお豆さんを弾く方が優先事項だった。寧ろ、あの男の視線すら私の快感の種だった。本当、情けないと思う。
集団オナニーについて、あの男は「偉大な先人へのリスペクト」と言っていたが、言葉の意味はわからない。
次の日、私は馬にされた。
裸の上に直接鞍をつけられ轡を嵌められ、頭に耳飾りをつけられて、当分の間、私は人ではなく馬としての役割をあの男に言い渡された。無論、おっぱいもおまんこもお尻も全部丸出しだ。間抜けな格好この上なかった。「カフカスの女は男と共に戦場を馬で駆け抜けるのですよ」――だから私は馬の役に選ばれたらしい。馬役は他にもいて、アルテラやランサー・アルトリア、アン・ボニー、牛若丸達もまた、私と同じ境遇にあった。
騎手はあの男ではなかった。私が背中に乗せたのはナーサリーライム。幼い姿で現界したサーヴァント達が、私たちの騎手だった(ちなみにアンにはメアリーが乗っていた)。
四つん這いの姿勢ではなく、二足歩行。腰を前に倒して、半分固定された後ろ手で少女をおんぶする形で背中に乗せる。ナーサリーたちはこの事態を異常と思えない状態にされていたらしく、私たちがいくら乗るのをやめてくれと頼んでも「お馬さんよ! お馬さんに乗れるわ!」と、無邪気にキャッキャとはしゃいでいた。
「どうすれば進むのかしら?」
ナーサリーの質問にあの男は「お尻を叩くと走ります」と答えた。しかし彼女達の手は私たちのお尻には届かない。そこで男は彼女たちにプラスチック製の安っぽい鞭を与えた。
それでお尻を叩かれた瞬間、私たちは猛然と駆け出した。身体が勝手に動いたのではない。お尻に――背後に、自分を狙う恐ろしい何かが迫っていると感じたのだ。
「ひ、ヒヒーン!?」
私は我を忘れて駆け出した。私の後ろに何かがいる。何か――私では絶対に勝てない何かが、私を襲っていると、怖くて怖くて必死で走った。アマゾネスの誇りなんかどうでもよかった。ただただ生き残りたかった。
場所はカルデア内部の修練場。疑似的なレイシフト空間につくられた草原を駆け抜ける。走って走って、もうさすがに安全かと思った矢先にもう一度「パァン」という刺激が私のお尻――右の尻たぶに来た。だからもう死ぬ思いでスピードを上げ、ひたすら前を目指して足を回転させる――と、そこで首をぐるりと曲げられた。無理やり右を向かせられて、私は草原の道を右に回った。右は小高い丘になっていた。スピードを少しでも落とすとお尻に「パァン」と刺激が来る。死にたくない。丘を駆け上り、また降り、ぐるぐると草原を走り続けるうちに、やがて体力の限界が来た。へとへとになって、もうこのスピードを維持するのは無理だと足を緩めると、先ほどよりも幾分強い刺激がやって来た。今度はちょうどお尻の割れ目――おまんこにも届く場所にビタンと入り、たまらず私は絶叫して飛び上がった。その時ナーサリーがとても喜んでいたことを、私は今日その映像を観て知った。私は鬼気迫る大声でヒヒーンヒヒーンと鳴き、ついでに涙を流しながら走っていた。
映像の中の私の下手な馬の物真似が、「死にたくない! 死にたくないんだあ!」と聞こえた。
映像を観ていて、怒りと情けなさと恥ずかしさで心がぐちゃぐちゃになった。おっぱいをゆさゆさ揺らしながら、お尻とおまんこ丸出しで、年端も行かない女の子にいいように操られて、挙句泣きながら命乞いをしている私がそこにいた。滑稽で哀れで、わけもわからないまま阿呆を晒している過去の自分を殺してやりたかった。殺して、楽にしてやりたかった。
だが、何か言ったり身体を動かすことは許されていない。画面だけが灯りの暗い自室で、私は正座のまま微動だにせず映像を鑑賞した。
衣装を替えられることのないまま、私たち「馬」は『馬小屋』に収容された。さして特徴のない、一般的な馬小屋だ。一頭ごとにスペースで区切られていて、通路に顔を出すことができるあれを想像してもらえれば良い。
「明日は皆で競走するから、今日はいっぱい寝て元気になってね」
と言いながら私の柵の前にナーサリーは水の入ったバケツを差し出した。私は彼女の優しさに感極まり、瞳を潤ませて彼女の顔に自分の顔を擦りつけた。ナーサリーは驚いていたが、私の為すがままにしてくれた。その後がぶがぶとバケツの水を飲み、先ほどナーサリーが別の疑似レイシフト空間にある畑からとってきたというニンジンにかぶりついた。
あのニンジンの味は今でも覚えている。世界にはこんな美味しいものが存在していたのかと感動した記憶も鮮明に残っている。水で洗っただけの生野菜に何であんな感銘を受けたのか……当時の自分は本当に馬になってしまっていたのだと思う。
身体中にシャワーを浴びせられ、洗われた。一応お湯だったが、湯沸かし器の調子が悪いらしくとてもぬるかった。ナーサリーはとても丁寧に私の身体を洗ってくれた。頭のてっぺんから足の先まで。首筋も、喉元も、おっぱいも、脇の下も、へその中も、おまんこも、おしりの穴も、全部。彼女は私を全部知っている。陰毛が一本も生えていないことも、乳首の先を触られるとくすぐったくて笑ってしまうことも。
同時に、私は私の身体を洗う彼女の手つきに性的興奮を覚えた。「ふぅ、ふぅ」と荒く息を吐く私に気づいたナーサリーは、「もしかして、興奮しちゃった?」と問いかけてきた。私は赤く上気した顔で頷く。ナーサリーは笑い、「しょうがないわねえ」と困ったように言った後、私の秘部――おまんこへ手を伸ばした。
一筋、なぞられる。ぞくぞくという快感が私の身体に走る。映像の中の私は、視線の焦点が合っていなかった。
「ここが気持ちいいの?」
クリトリス周辺から、膣へ。性の快感などまだ知らないであろう幼い少女の指先に、私は弄ばれていた。
自然、腰が動く。自分のスポットをナーサリーの指にこすりつける。彼女はまた笑い、「すなおねえ」と母性を感じさせる呟きを放ると、腕を固定して私の好きなようにさせた。
果てる。絶頂。
馬になっているために、初の体験となったオーガズムの余韻に浸る。ナーサリーへの絶対的信頼感に包まれていた当時の私は、「恥ずかしい」などという感情、獣の身故に存在しなかったのだが、今となってはただただ気まずい。廊下ですれ違った時、「あ……」と、遥か年下の少女に言葉を呑まれる恥辱は、もう、筆舌に尽くしがたい。彼女に会った際は必ず「あの時は自分の名前もわからなかった私を、おまんこもケツ穴も乳首も、隅々まで洗ってくださって、その上性処理までしていただき本当にありがとうございました。ひひん」と言って彼女に顔をこすりつけるように『設定』されている私は、彼女に会うのが恐くて、極力部屋の外に出ないようにしている。他の『馬』達も同じように設定されているらしく、アンとメアリーなどは、前の関係が完全に破壊されてしまったという。
競走――勿論競馬だ。五人の騎手と五頭の馬が、疑似レイシフト空間に設営された競馬場で走る。客席は超満員だった。おそらくは投影されたホログラムか何かなのだろうが、それでも私は緊張していた。あの男の奴隷――カルデアに残るほぼ全てのサーヴァントも、その中に混じって観客として来ていた。事態を正しく認識できていない「楽しそうなサーヴァント」と、地獄の公開処刑にでも立ち会っているような「気まずそうなサーヴァント」の比率は半々だった。「負けるんじゃないよメアリー!」と威勢よく叫ぶドレイクを、ブーティカがおろおろしながら座らせる。「本命がウシワカで次点がアルテラかな? ペンテシレイアは強靭だけど、敏捷性は普通だよね」と冷静に分析するキルケーに、微妙な顔で相槌を打つケツァルコアトル。カオスと言うべき状況で、それでもレースは始まった。
ナーサリーを上機嫌で背中に乗せた私は、わけのわからぬままトラックへと進み、スタート位置につく。何が起こっているかなんてわからなかったが、ナーサリーが楽しそうだったから私も楽しかった。
そんな能天気な私を大きな銃声と鞭の音が襲い、またしてもあの恐怖が私の背後から迫る。
――何かが私のお尻に噛みついた。
それと同時に私の脳を駆け抜けたのは『ゴールにたどり着くと昨日の素晴らしい御褒美が待っている』という啓示。おそらく、あの男が通達したのだろう。私は後ろから迫りくる恐怖と、前にぶらさがるご褒美の両方に突き動かされ、眼の色を変えて走り出した。
すぐ右横から背中に茶々を乗せた牛若丸が抜けていく。走り出したばかりなのに彼女もふんふん息を荒げていた。今度は左からジャックを乗せたランサー・アルトリアが躍り出る――と、牛若丸が転んだ。バランスを崩したのか、彼女は顔面から地面にダイブした。中空に投げ出された、全てが丸見えな彼女の下半身が今でも眼に焼きついている。
「ヒヒーンっ!」
「何をやっとるのじゃーっ!」
牛若丸を避けたランサー・アルトリアのスピードが落ちる。途端、私のお尻にまた鋭い痛みが走った。「ひひんっ!」と嘶いた私はそこで加速し、ランサー・アルトリアを追い抜く。
「あー! 駄目ー!」
ジャックが叫ぶがもう遅い。私は風のように走った。と、アン、メアリーコンビ、バニヤンを背負ったアルテラが両側面から追い上げてくる。「走ってペンテシレイア!」ナーサリーの声が聞こえた。彼女の願いに応えたい、彼女の為なら何だってする、彼女の御褒美が欲しい。あの天にも昇るような快感を、またこの私にください――この時の私は、真の意味でナーサリーの馬だった。
夢が終わったのは、優勝後。
スタート直前の啓示通り、ゴールを果たした「馬」にはあの素晴らしき快感が与えられた。股間から液体をまき散らし、がくがくと痙攣しながら私は歩みを緩める。後続の馬も同じらしかった。皆、一様に呆けた顔を晒して潮を地面に垂らしている。全ての記憶と全ての常識、全ての正常な意識が返ってきたのは、惜しむべき余韻が消えかかった時だった。
一括で正気に戻された私たちは、思わず騎手を振るい落としてしまった。「大丈夫ですかご主人!」と口走ったあの時の私を殴りたい。ナーサリーを助け起こすも、彼女は視線を私と合わせず「あ、ありがとう……」と歯切れ悪く礼を言った。
「ごめんなさい……」
私たちは絶望の淵に叩き落された。
まともじゃなかったサーヴァント達も正気に戻り、私たちに対する罪悪感と憐れみの混じった視線を私たちに向けていた。ホログラムである筈の観客までもが異変を感じたらしく、痴女そのものの格好をしている私たちを指さし、ざわざわと喋りはじめる。私たちは手で胸と秘部を隠そうとしていたが、映像で見返した限り、何の意味も無かった。牛若丸は顔も含めて全身泥だらけだったが、青褪めているのは簡単にわかった。「なにこれ……なにこれ……」とブツブツ呟いていた。アルテラとランサー・アルトリアも珍しく取り乱していて、きょろきょろと忙しなく周りを――主に客席の方を見渡していた。「あああ……」と意味の無い声をあげるのはアン。「ごめん……ごめんよアン……!」とメアリーが彼女に抱き着いていたが、アンにはメアリーの姿が目に入っていないようだった。
私も、この世が終わったような表情をしていたことが今回映像を見返してみてわかった。あの男の支配を受けたところで、決して屈しはしないと覚悟を決めていたつもりだったが、あの時は本当に「死にたい」と、心の底から思ってしまった。
その気持ちは今も変わらない。可能なら、今右手に持っているこのペンを自分の目に突き刺してしまいたい。終わらない地獄から抜け出したい。原稿用紙が涙でぐしょぐしょになって、ここに至るまで何度書き直したことか。
光が見えない。
今もっとも憂鬱なことを最後に書いてこの感想文を締めくくろうと思う。非常に残念なことに、この文章は明日、みんなの前で朗読することになっている。そういう『予定』をあの男が立てた。逆らうことはできない。読まないことも、書かないことも、明日までに命を断つこともできない。「馬」役の衣装とも言えない衣装を再び着て、あの競馬場のインタビュースペースで、ヒーローインタビューと称する場で私はこの文章を読む。ホログラムの観客と、正気のサーヴァント達、同じ「馬」だった牛若丸やアルテラ、私たちの騎手だった少女達を目の前にして、私は改めて自分の恥を晒す――いや、これを読んでいる今、私はその恥辱の真っ最中なのだろう。その時の私の気持ちを推し量ると、流れ尽くしたと思った涙がまた溢れてくる。
そしてその後、この感想文は私のオナネタになるらしい。この文章を読み返すと、私は果てしない鬱屈の感情と共に凄まじい性的興奮を覚えるように『設定』され、毎晩オナニーを義務付けられるそうだ。これから私は毎晩この文章で――自分がいかに愚かで、情けなくて恥ずかしくて、滑稽で無様であるかを書き綴った文章で、股間を濡らし、自分を慰めることになる。暗く重い感情に押しつぶされながら果てる私を想像すると……あァ、
希望が見えない。
アキレウスと一騎打ちする場面を語らせるのもいいかもね。
ニンジンに関しては突っ込まんといて。なんか普通の餌より興奮しない?
ちょくちょく誤字直してます。オーガニズムってなんだよ。有機栽培か?