カルデアの主人 作:けっかくん
新たに召喚されたサーヴァントは、あの男がカルデアに来てからはほぼすぐ『売却』……魔力の塊として、炉にくべられる。だがごくまれに、そのまま新しい玩具としてカルデアに招かれる者もいる。
叙事詩『ラーマーヤナ』に語られる猿獄の王、ラーマはそのケースに当て嵌められた。
中央管制室。
「やめろっ! おい! この――やめてくれ! おいマスター! これをすぐにやめさせろ! 貴様――貴様、本当にカルデアのマスターか!?」
「マスター」
男はこともなげに呟く。
「私は職種としてのマスターではありません。世界を救うなんて特に興味がない。しかし、私は紛れもなくあなたのマスターです。私はあなたを支配し、所有する。あなたは私の玩具となる――いえ、私の玩具の、奴隷になるのですから」
そこで初めてラーマは人類最後の砦が既に何者かによって陥落していることに気づく。が、遅すぎた。彼は今ロボットのように無機質な表情を貼り付けた複数人の女性サーヴァント達によって一度裸に剥かれ、長い髪をツインテールにまとめられて黒とピンクのリボンをつけられ、猛々しい鎧の代わりに、腕、首、脚――そして乳首と局部をリボンで飾った何とも背徳的な格好にされてしまった。
抵抗らしい抵抗ができない。イヤイヤと手で押す蹴り飛ばすくらいの行動はできるのだが、馬力が全くでない。平均的な女子高生程度の膂力しか出せなかった。
最初持っていた剣がいきなり重く感じたので、その時に力を奪われたのだろう。
「か、返せ――!」
はぎとった元の服は持ち去られた。追いかけようとするが、全くついていけない。力が制限された上に、恰好が格好なのでまともなフォームで走れない。羞恥心を無視して全力で走ろうとすると、可愛くデコレーションされたアレがプラプラ揺れる。ハハハハと表情を嘲る笑みに変えたサーヴァント達の視線がどうしても耐えられず、ラーマは両手で前を隠しながら追いかけるが――
「待ってください」
男がそれほど大きくない声でそう呟いた瞬間、ラーマの脚は鋼のように動かなくなった。
「な……」
遠ざかっていくサーヴァント達。
ラーマは前を押さえながら足を踏み出しかけた体勢のまま、微動だにせずそこで止まり続ける。
「いわゆる男の娘サーヴァントが追加で欲しくなったので呼んだのですが、チェーンの吊り下げは今四人いますからねえ、ここは差別化しましょう。ラーマさん、ブリッジをしてください」
ラーマが何かを言うより早く、ラーマの身体は動き始めた。両足の距離を少し広げて直立すると、腕を上げながら腰を反らして手を地面につく。一切無駄のない動きで彼はブリッジを完成させた。
ツインテールが地面に垂れる。
「ふ、ふざけるな! 辱めを受けるくらいなら死んだ方がましだ! おい、聞いているのか! 術を解け!」
男は彼の横に立っていたので、ラーマの身体が描く美しいアーチが一番よく見えた。
「今度は乗り物なんてどうでしょう」
男は僅かに口角をあげた。
「『らあま号』?」
先ほどと変わらぬブリッジの体勢。
カルデアの廊下――昨日まではいなかった、脇腹のあたりに黒いマジックで『ラーマ号』と書かれた新しいサーヴァントを見て、酒呑童子は怪訝そうに言った。
男はいない。そこにはフリフリのリボンだけをつけられたラーマが放置されていた。
「なんやろうなあ……」
「ち、近づくな!」
興味本位で酒呑が一歩踏み出すと、「それ」は何やら喋りだした。
「た、頼む! 余に近寄らないでくれ。寄られると困るんだ――それ以上来ないでくれ!」
ブリッジの体勢を一切崩さず、しかしラーマは必死で叫ぶ。誰かに近寄られるとまずいのだ。今でも十分死にたくなる屈辱を受けているが、更にそれ以上を味わわされる。
が、そんな努力の甲斐もなく酒呑はラーマの話などまったく聞いていないようで――
「なあなあボク? なんで勃起しとるん?」と質問してきた。
ラーマは既に血がのぼっている顔を更に一段と赤らめる。酒呑の指摘の通り、ラーマのイチモツはピンと屹立していた。根本には蝶結びでリボンが巻かれている。
「し、仕方ないんだ。あの男の命令で……余のせいじゃないんだ」
すると酒呑は不満そうに顔をしかめ、
「ウチは『何で』って聞いてるんよ? ちゃんと答えな」と、温度の抜けた声で言った。
それを『命令』と解釈したラーマの口はラーマの意図とは無関係に喋り始める。
「私は『常時発情しておちんちんを勃起させていなければならない』んだ。そして発情の為に、『今の自分の醜態と惨めさをいつも思い返さないといけない』……。私は、全裸フルちんにリボンで可愛くデコレーションされた今の境遇に興奮して発情して、おっ立てたおちんちんが休まる暇もない変態なんです」
自分はなんて無様なんだろうと考え続け、興奮し続ける。
自分で自分の馬鹿を説明させられるこの状況にすらゾクゾクとした快感を覚える自分自身に、果ての無い興奮に魘されながらラーマは怯えていた。
「へえ。でも何でウチに近づいてほしないの? 近づくとなんかやらないかん……とか?」
「その通りです。私に近づいてきた方は、この『ラーマ号』にご乗車いただくことになっています」
ペラペラと動く自分口から出る台詞に、ラーマは逃れることのできない恐怖に駆られる。
「乗るって……ああ、なるほど」
合点のいったらしい酒呑は、ブリッジを保ち続けるラーマのお腹に座ると、彼の身体を跨ぎ、彼の脚がある方を向いた。
嫌だ。
もう嫌だ。これ以上の辱めを受けるのはまっぴらだ。やめてくれ。早く殺してくれ。早く――
召喚に応じるんじゃなかった。
「これ、『操縦桿』なんやねえ」
酒呑の白い手がラーマのイチモツをひたりと握った。
「ああ、ああ、ああ――!」
その瞬間からラーマの身体を何かが駆け巡る。『おちんちんを握られると射精直前の興奮度に達する。尚、射精はできない』――やばい。やっぱりこれは駄目だ。正気じゃいられない。気持ち良すぎて頭おかしくなる――
「し、しし、シートベルトを、お締めください……」
「シートベルトぉ? ああ、そのツインテール」
ラーマの頭から伸びるツインテールを、酒呑は適当に腰で結ぶ。必然的にラーマは首を起こしたところで固定される。酒呑の背中が視界いっぱいに広がる。「はあ、はあ、はあ、はあ――」「ほな、行こか」酒呑がちんちんを前に倒した。「ああっ――、」ラーマの身体はブリッジのまま一歩一歩進み始める。だめだめだめやめてやめてやめて! 射精したい。出させて、出させてください。お願いします。もう全部どうでもいい。何もいらない。どんな格好にもなるしどんなポーズでもします。女の子みたいに扱っていただいても文句なんて言いません。だから射精、射精させて――
「ここは右……これでええの?」
グイっと右に倒される。天国のような地獄のような、言葉さえも喋れなくなったラーマは、「ああ、あひっ」と意味の無い喘ぎ声をあげながら、前立腺から脳に届く信号にそって右に曲がる。
「ええ子ねえ」
「ああっ、ありがとうございます――ん、ぃいっ」
褒めてくれた。
こちらを振り向いて、笑ってくれた。
酒呑童子が笑う時、鋭利な犬歯、細まる眼に、たまらないエロティシズムを感じる。彼女に全てを委ねている自分は今、世界で一番幸せだと信じられる。ああ、幸せだ。なんて幸せなんだ――
――シータ。
シータ、シータ、シータ。ごめんシータ、君を裏切ってしまう。ああでも仕方がないんだ。駄目なんだ、こんなの耐えられるわけない――
ちんちんを左に倒される。
そして、酒呑はラーマのキンタマ袋を優しく握った。
「はぁ……♡」
もう、何も考えられない。
ラーマの頭は、酒呑に揉まれ弄ばれるちんちんと金玉のことだけで埋め尽くされた。
私は乗り物、ラーマ号。
誰かを乗せて運ぶことが、私の生まれてきた意味。
「おもろいなあ。『あいつ』が言ってた新しい玩具ってこれのことか。ほんま、イイ感じに滑稽やわぁ」
「はぁ、はあっ、はあ、はぁはぁはあ――」
「ほな、この辺で降ろしてもらおか。えーと、お代は何したらええんやろか」
「しゃ、射精っ! ちんちん、ちんちんシコシコしてください!」
「それはかまへんけど……、ボク、それじゃあ射精の許可おりんやろ? 何かもういっこされたいことあるんとちゃうの?」
そうだ。このままどれだけ刺激を与えられ続けても、ラーマは射精ができない。その為にはもう一つやらなければいけないことがある。『ラーマ号』から下車した酒呑に、ラーマはブリッジのまま叫ぶ。
「わ、私に何なりと命令を――! 私が、『私が正気に戻った時、すぐにでも死にたくなるような無様な芸』をやらせてください! お願いします! それがないと射精できないんです!」
「そうかそうか。じゃあ、どうしようかねえ」
酒呑は少し考えるように腕を組む。その間、ラーマは息も荒く、飾り付けられたちんちんはこれでもかというほどピンと伸びきり、金玉袋は収縮している。しかしブリッジの姿勢は一切崩れない。あの男の支配力は絶大だった。
「ほんなら、ボクが考えるいちばんあほなポーズで、ぴゅーってしてもらおか。勿論、寝ながらやで? 二足歩行は許可降りん筈や」
「は――はいっ! ありがとうございます……!」
ラーマはブリッジを解き、背中を床につける。お尻を酒呑がいるがわに向けて、尻穴を見せるように脚を上げ、がに股に開く。両手に作ったピースサインを、リボンをつけられた乳首の前に持ってくる。
『完全降伏のポーズ』。
ラーマはだらしなく悦楽の表情を浮かべ、眼にはハートマークが見えていた。
「降参ですウキィっ♡」
あとは酒呑がこれで満足したかどうか。彼女は妖艶ににこりと微笑むと、「ええ子やねえ」と合格のサインを出した。
来る。
ギリギリで食い止められていた何かが来る。
これが来たら本当に私は終わってしまう、私は真の意味で奴隷になってしまう。嫌だ、来ないでくれ、ああ、あぁ、ああああ――
――来て♡
「……イグゥゥアウゥゥゥウゥウ……♡」
勢いよく飛び出た精液は、ラーマの顔にもかかった。
ドクドクと出る残り汁が終わると同時に、快楽の余韻が消え、そこには倦怠感だけが残る。「ほな、また」と言って去っていく酒呑の背中をぼんやりと眺めながら、今自分が何をやっていたのか思い返す。
射精直後は、ラーマが正気に戻る唯一の時間。
「くぅ……、ふ――ぐ、うぅ!?」
ラーマの身体は再びブリッジの姿勢に戻る。顔も、身体も洗えない。自分が出したイカ臭いにおいを嗅ぎながら、先ほどまでの自分の恥辱を鮮明に思い返し、ボロボロの心に更に傷を増やしながら、ムクムクとちんちんを再び勃起させる。
そして次なるお客が通りかかるのを待つ。
ラーマの眼は死にかけていた。
ラーマの一人称って公式でブレてんだけど