コレデモカノジョデス 作:トクメイデス
昨晩からずっと嫌な予感がしていた。
購入したロトくじを外し、次回の予想を立てていたら何故か机の上で朝日を拝む羽目になってしまった。分かっている、単に寝落ちしただけだ。
まあ、それ自体は別に構わないので、汗で気持ち悪い身体を流そうと通いつけの銭湯(名前は草津っぽい何かだった筈だが、とりあえず草津風といつも呼んでいる)に向かっていた時のことである。
「ええ――!? 結婚!?」
何故か銭湯の方から聞き慣れた声が飛んできたので、気持ち早めに駆け寄っていく。そうしたら見慣れた顔がいたので、一先ず声を掛けることにした。
「このロリコン野郎修正してやる――!!」
「誰がロリコン野郎か――!!」
しかし、俺は言葉を一旦飲み込んだ。何往来で叫んでるんだこいつらは。
ひとしきり頭を下げているのを眺めてから、改めて俺は声を掛けることにした。
「……で、何叫んでたんだ、お前ら?」
「あ、雄一君おはよう」
「おはようっス」
軽く流されてしまった。切り替え早いなこいつら。
「いやあれっスよ。先輩が結婚したみたいで」
「へえ、そうなのか……は?」
結婚、という言葉に、俺の思考がフリーズしかけた。そうか、昨日からの嫌な予感はこれか。
「……由崎」
「どうしたの?」
俺は由崎の肩を持ち、可能な限り冷静さを持たせてから、ゆっくりと口を開いた。
「……美人局なら相談に乗るぞ。大丈夫、チンピラまでなら何とかなる」
「違うよ!! 仮にそうだとしてもそれはそれでなんとかしてみせるよ!!」
「ああ、はいはいすごいね。流石由崎、平気でNASAに喧嘩を売れる男だ」
まあ、バイト生活のこいつよか、もっと金持ってて簡単に狙える奴が腐る程いるか。
「……というか、そのことあいつ知ってるの?」
「ああ、そうでした。先輩、彩姉には、まだ言ってないんですよね?」
「は? どうして僕が彩さんに結婚のことを?」
このイカレ数学野郎の発言に、俺達は並んで息を吐いた。
「出たよ、これだからイカレ数学野郎は……」
「いいかげん、気付くと思ってたんだがな……このイカレ数学野郎め」
「二人共その言い方止めてくれる!?」
アホらしくなって、二人して結婚式云々の話をし出してから俺はその場を離れ、券売機に万札を突っ込んでいた。いや、丁度回数券切らしてて。
由崎がなにやら叫んでいる中札の整理に手間取っていると、暖簾を避けて一人の少女が出てきた。
「あ、ごめんナサくん……」
もしかして、この娘が由崎の結婚相手か?
「僕は司ちゃんのことが、大好きだから!!」
あ、顔が赤くなっている。
「路上でそういうことを叫ばれるのはちょっと……」
「き、気を付けます……」
どうやら当たりらしい。
「由崎、彼女がお前の嫁さん?」
「え、え、あ、う、うん……そう」
券売機の前に居たので、彼女からは丁度死角になっていたのだろう。向こうは慌ててこちらの方を向いてきた。
「えっと、その……」
「ああ、こっちが先に自己紹介するから。その間に落ち着いてくれ」
未だかつて、相手を落ち着かせるという理由で先に自己紹介するなんてことがあっただろうか。いや、普通にあるな。
「はじめまして、由崎の中学時代の同級生だった江崎雄一です。名字が似てるからというショボい理由でつるみ始めました」
「あ~はじめまして、由崎司です。よろしくお願いします」
「彼も一人暮らしをしているんだけど、高校に通いながら働いてて偉いんだよ」
「いや、お前の場合やらないだけで同じことできるだろ。高認どうなった?」
とか軽口をたたきつつも、俺の目は司という少女に向けられていた。
しかし礼儀正しいな。見た感じ年下っぽいのだが、
(……ニコ)
どうも人生経験が濃ゆそうな気がする。
「……由崎、ちょっと」
「どうしたの? 雄一君」
近づいてきた由崎の肩を抱き、声を潜めた。
「お前、あの嫁さん放さない方がいいぞ」
「元々そのつもりだけど、なんで?」
なんでって、それは……
「いやだってお前、偶に変な計算して暴走するじゃん。彼女年下みたいだけどその辺りしっかりしてそうだし」
もう正直にぶっちゃけよう。
「実のところ、お前が結婚するとしたら、暴走止められる年上の方がいいんじゃないかと思ってたんだわ。有栖川には悪いが」
「暴走ってなにさ。後有栖川には悪いが、ってなに?」
後日、結婚指輪を買おうとして嫁さんに止められる未来を、この時点の俺達は知る由もなかった。
「……ってあれ、有栖川?」
「ん?」
俺、なんか変なことを言ったか?
「どうしたの? いつもは『有栖川姉・妹』って言い分けているのに」
「……え、あれ言ってなかったっけ?」
そう言えば、ここしばらくは挨拶だけでまともな近況報告してなかったな。
「実は俺にも彼女ができてさ」
「へえ、そうなんだおめでとう。でもそれとどんな関係があるの?」
「先輩、今ので気づかないんスか?」
すると要の奴は、俺の傍に立ってから背伸びし、チュッと頬にキスしてきた。
「私が雄一君の彼女っスよ」
「ああ、そうだったんだ……へ?」
由崎の嫁さんが白けた目を旦那に向けるが、当の由崎は声なき声で叫んでいた。
「ちなみにとっくにキスも済ませてるっス」
「ええ――!!」
あ、今度は声が出た。キスでこれだったら、それ以上、とか言わない方がいいかもしれないな。
「てことは、そっちは未だなの?」
「まあ籍を入れるどころか、再会したのも昨晩なので」
なるほど、これが嫌な予感の正体か。結婚自体否定はせんが、若い内から三段飛ばしで籍を入れて、周囲が黙ってるわけがないだろうに。
「まあ、偶に暴走することを除けば悪い奴ではないので、よろしくしてやってください」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
適当に叫ばせてから、由崎を要と嫁さんに任せて俺は一人暖簾をくぐった。
入浴中に要にからかわれはしたが、有栖川の一件がある為、面倒臭そうだからとさっさと立ち去って正解だったらしい。案の定、由崎の嫁さんを妹かなにかだと勘違いしているようだと、放課後に遊びに来た要から聞いたのだ。
「しかし今朝はびっくりしたっスね。まさか先輩が結婚していたなんて」
「ホントだよ、結婚自体もいつもの計算暴走じゃなければいいけど……」
台所で調理器具を洗いながら、俺は隣で鍋を掻き混ぜている要と話していた。
本人曰く天然と大雑把の相手をするのが疲れるらしく、息抜きと称してはよく家に遊びに来る。年若い経営者なのだから仕方がないのだろうが、気晴らしになってくれれば彼氏としては幸いである、ってところだな。
「カレーできたっスよ……どうしたんスか?」
「いや、頑張り屋の彼女がいて良かったな、って思っただけだ」
布巾を置いて軽く頭を撫でてやると、要は若干不機嫌そうに顔を赤らめてきやがった。
「子供扱いしないで欲しいっス……」
「悪い悪い……晩飯どうする? 食ってくか?」
「今日もやめとくっス……そ、れ、よ、り」
撫でていた手を掴まれ、引っ張られるままに身体を鎮めると、そのまま唇を奪われてしまった。顔を離しながら、年下の癖に艶っぽい眼差しを向けてきやがる。
「今日も一発の方、お願いしますね……このロリコン野郎め」
「悪かったなロリコン野郎で」
確かにもう、手を出したんだよな。由崎にばれたらなんて言われるか。
「ほら、さっさと脱がないと皺になっちまうぞ~」
「やめるっスよこのロリコン強姦魔め~」
とまあふざけ合いながら、俺は要の制服+エプロン装備を剥がしていく。リボンは……どっちでもいいか。
白い下着だけにしてから要を担ぎ、台所から離れてソファの上に降ろした。もう我慢ができなくなっている俺は、手早く服を脱いで全裸になってから、瑞々しくも肉付きのいい身体を貪っていく。
「ちょ……あ……やぁ…………」
「ほれほれここか?」
「んぅ…………」
顔から首、ブラを剥いだ胸へと舌を舐め動かしながら、手を胸から下半身へと持っていく。ショーツをずらして閉じられた縦筋に指を這わせ、徐々にその門を開かせていった。
「わ、わたし、も……」
「いいからいいから」
少し強引だが、羞恥で顔を赤く歪めている要の身体を裏返らせ、身体を貪りながら、凝り固まっている個所を探していく。この可愛い彼女さんは小さな身体で頑張って生きているのだから、男の欲望でさらに疲れさせるのも忍びない。
愛撫しつつも、身体をマッサージしてやる位の甲斐性はないとな。
「ああ、そこあぁ、ぁぁ……ぁあん」
愛撫かマッサージの結果かは分からないが、どうやら気持ちよくはなっているらしい。要の嬌声を耳にしながら、うつ伏せにした状態で身体を反転させて覆い被さり、目の前に人参をぶら提げながら腰の部分を指圧し、臀部を菊門に向けて舐め上げていく。
「ゆういちくぅん、わたしもぉ~」
「いいからいいから、揉み終わるまで待ってなさいって」
流石に片手で指圧しながらだと、体勢を保つのに苦労する。小さなお尻を舐めながら咥えてもらうのもいいかもしれないが、体力及び精力が持たない可能性があるので、下半身を持ち上げた情けない姿で断念する。
こいつ、結構フェラうまいんだよな。
「足も凝ってるかな、ちょっと重いぞ~」
「つ、つぶれるぅ~……」
若干大袈裟に呻く要の尻の割れ目に顎を乗せ、太腿を両手で片方ずつ指圧していく。但し下半身の人参はぶら提げたままで。
「今度はソープごっこでもするか。部屋にビニールシートを張って」
「うちの銭湯でやりたい、とかじゃないんスね」
「いや、流石にばれたらいたたまれないからね」
揉み終わり、俺は起き上がってから一度立ち、仰向けになった要の股間に舌を這わせた。
「ああ、そこ……いいっスよ~」
ひとしきり舐め終わり、俺はゴムで人参を包装してから、要の袋口に宛がった。
「きて……」
後は言葉もなかった。
要と手を繋ぎながら腰を振り、上も下も口を合わせての抱き合い。人によってはただ動くだけで苦痛を伴うだろうが、俺達にとっては立派な性行為だった。
「射精すぞ……っ!!」
「ん…………」
同時に果てたのか、要がソファの方にもたれかかるのを、俺は抱きしめながらゆっくりと降ろしてやった。
「ん――いい運動だったっス」
「元気だな、お前は……」
少し休憩しただけで、要は下着をはだけさせたまま立ち上がって伸びをしていた。俺も体力はある方だが、余韻に浸りたいのも相まって未だにソファに腰掛けている。
「じゃあ雄一君、私はもう帰るっスね」
「ちょっと待て、送ってくから」
手早く服を着直し、俺と要は街中に繰り出した。
「しっかし、先輩ちゃんとやってるんスかね~」
「そればっかりは何とも言えんな。暴走しなけりゃいい奴なんだが……」
数歩先を行く要に遅れて、ポケットに手を突っ込みながら俺は歩いていた。
解けたからと結い直された二つ縛りが揺れるのを眺めながら歩くのは、そこはかとなく優越感が生まれていた。
「現役JKと付き合っている上に肉体関係持ってるとか、完全リア充っスもんね~」
「いや俺DK、JKと付き合う位なら普通だろ」
こいつ偶に目をグル白に変えてくるからおっかないんだよな……
「まあ、安心しろよ」
「ふみゃっ!!」
ポン、と頭を撫でてから、俺は先行して歩き出した。要も慌ててついてきている。
「ちゃんと買い取ってやるから、さ……銭湯も、お前の人生も」
「……まあ、期待しないで待ってるっスよ」
腕を組んでくる要に歩調を合わせ、並んで銭湯へと向かった。
そう、ここまで付き合ったんだ。互いに愛想を尽かさない限りは、最後まで寄り添っていこう。それが俺の覚悟だ。
そう……
「絶対にロトくじを当ててみせる!!」
「これさえなければいい人なんスけどね……」
若干呆れられもしたが、これが俺なんだと理解してくれているのだから、俺は幸せ者である。
「勝手に結論付けないで欲しいっス」
「ごめんなさい……」
江崎雄一 18歳
高校三年生。自称ロトくじ研究家。一人暮らし。中学時代にナサと同級生だった頃からの付き合い。現在でも銭湯等でちょくちょく会っては話している。成績は中の上だが喧嘩は上の上。生半可な武道家すらぶちのめす。